無垢で無邪気な無意識少女。
そんなイメージがあるこいしは今…
「……」
「……」
何故かこちらを見続けている。
普通喜ぶべきなのか…それとも照れるべきなのか…この状況俺は怖いが。
「…どうした…?」
「うーん…心…見えないんだ~何で~?何で~?」
「そんなこと言われてもな…」
『強欲』使えば遮断は出来るが…わざわざする必要ないし。
見えないことに心当たりが…
(…天使か…?)
『正解!』
『遮断じゃなくて…むしろ切断ですね。』
『まあ詳しく言うなら私達と彼女達は正確には違う世界の住民でしょ?言うならチャンネル違い。トランシーバーの周波数が違う状態よ。』
(成る程…)
天敵じゃん。
覚り妖怪が心読めない天敵じゃん。
「……あー…」
「?」
ある意味一番覚り妖怪に寄り添えるのかもしれないが、心を閉ざした子供に寄り添うのは逆に出来ないのでは。
「……」
「おーい!何で喋んないの~?ね~え~?」
「いや…まあとりあえずお前の姉に会いたいんだが…」
会いたい…そう俺が言った瞬間、こいしの笑顔は消えた。
無邪気なこいしに似合わない程の暗い顔。
その空気は憎しみを持つように重かった。
「駄目だよ。」
「……」
「お姉ちゃんには会わせないよ…」
「…何故か聞いても?」
「…お姉ちゃんの話…皆から聞いたんでしょ?詳しくは私だって知らないけど…もう誰にも、お姉ちゃんには会わさない。」
「!」
「お姉ちゃんには…私さえいればいい!」
叫んだこいしは弾幕を展開した。
宙に浮き体を広げて威嚇する。
怒りに任せた数の暴力。
こいしらしさを微塵も感じない。
「―!こいし!少しは話を…!」
「知らないいらない聞かない!お姉ちゃんは私が守るの!」
「…チィ…!」
聞く耳持たず。
姉を守ると言って暴れている。
説得のためなら倒す他ない。
妖怪だし少しは頑丈…死なない程度に倒す。
「痛いだろうが我慢しろよ…!」
ここまで雑な弾幕…隙間も多い、洗練されてないためか威力も低い。
当たりもしないし当たってもダメージはない。
強引にでも近付く。
目の前まで全速力で跳ぶ。
飛翔でなく跳躍する。
弾幕を正面から破り、こいしのもとまで留まらず。
「耐えろよ?」
「え…?」
所詮は子供…戦闘経験など皆無に等しいだろう。
俺の動きに反応もしきれない。
そのまま反応が追い付く前に意識を刈り取る。
こいしの首を掴み地面に振り下ろす。
音速に届く程の速度で、力の限り振り下ろす。
叩きつけるのは意識が奪えない可能性が高い。
背中を打てば意識が残れば呼吸困難確実。
頭なら最悪死ぬ。
だからぶつけない。
直前に止めることで脳震盪、あるいは真空による無呼吸状態の発生。
戦闘機に訓練なしで乗るようなものだ。
意識を保てるはずがない。
過去の経験から妖怪も人間と内臓や三半規管は大差ないことは知っている。
人からかけ離れた形ならともかく、こいしは人間にしか見えない。
肉体に差はないはず。
どうかこれで意識を失ってくれ。
「!?」
そうした願いは届いた。
こいしは苦しそうに首を抑えて気絶していた。
だがそんな場面を最悪な者に見られてしまった。
「な…に…してる…の…?」
「――っ!」
館の扉を掴むように、もう一人の覚り妖怪…古明地さとりがそこにはいた。
そしてもう一つ、俺を驚愕させたことがある。
そのさとりの持つ第三の目は…閉じていた。