(最悪だ…!)
助けてやれって…助けるって…言ったくせに。
そりゃ絶対とは言えないから濁しはしたが…俺だって助けたいからここに来たんだ。
それなのに状況はどうだ。
妹の首を掴み、今まさに仕留めようとする人間が一人…彼女の目にはそう見えるはずだ。
無論第三の目がなければ心も読めないだろう。
とにかく何か収拾を付ける方法が必要だ。
でなければ彼女はパニックを起こすだろう。
まずやることは決まっている。
俺はこいしの背に手を回し頭を打たないようそっと床に寝かせた。
そして流れるような動作で手と膝を床に付け、頭を叩きつけて叫んだ。
「すいませんっしたぁぁ!」
土下座である。
手っ取り早い収拾の付け方…それは困惑の暇を与えないこと。
まあこの行動に困惑はするだろうが、こいしを殺めようとする危険人物から意識は変わるだろう。
それと同時に妹への攻撃の最大限の謝罪も行う。
これなら混乱しながらも話は聞く気になるだろう。
「ひっ…!…あ…あの…」
「突然攻撃を受けて対応のために気絶させるしかなかったんだ!ほら!殺す気ならもうやってるだろ!?戦いたいわけじゃないんだ!」
「お…落ち着いて下さい…!分かりましたから…!」
「そ、そうか?すまん…取り乱した。」
勿論嘘である。
取り乱したとか言いつつ凄く冷静に演技を続けた。
おかげで話せそうだ。
「俺は望だ。ここには…何と言うか…お前らのことを聞いて来た。」
「私達の…?」
「ああ。」
それから数分、先日の地上の亀裂からここに至るまでの経緯を説明した。
どうにも話を聞くのと目の前の少女が同一とは思えないのが感想だ。
俺に対する恐怖の念は見えるが、こいし程の拒絶は見えない。
全然他の連中とも話せそうな普通さだ。
…普通過ぎるくらいに。
(…おかしい…)
何故かそれに違和感を感じた。
―――――
「うぅ……」
「起きたか。」
「こいし!」
「お姉…ちゃん?ここ…―!」
目が覚めるやいなや臨戦態勢。
俺に気付いて即構えたようだ。
それを姉が宥めるのはありがたい。
「落ち着いてこいし。彼に戦う気はないわ。」
「ああ。殺る気ならもう殺ってる。少しは落ち着いたか?もう急に暴れるなよ?」
「…うん…」
やはり創作とは違うものだ。
ここまで感情の起伏が激しい上に分かりやすいこいしなんて中々ない。
人間がそこまでのことをしたのだろう。
「…お姉ちゃん。少し出てってほしいの。」
「え?」
「…この人と話したいの。」
「……ええ。扉の前で待ってるわね。」
そう言いさとりは部屋を出た。
さとりが部屋を出てからすぐ、こいしは口を開いた。
とても真剣な面持ちで。
「ここに貴方は何しに来たの?お姉ちゃんをもっと苦しめに来たの?」
「そんなわけ…助けてくれって凄く遠回しに頼まれたんだよ。それに…そういうのほっとけない性格でな。」
「…お姉ちゃんは…人間に殺されたの。」
「!…いや…え?」
「命を奪われたんじゃないよ。心を壊されたの。」
「…それは…見れば分かるが…何があったかは?」
「……本当のことは知らない。けど生きるために、お姉ちゃんは笑わなくなった。」
前は普通に笑っていた。
明るい声で、雰囲気で、自分も周りも楽しそうだった。
でも次第に変わっていった。
さとりは人間に協力してもらって、支えてもらっていた。
仕事をして、食料をもらって、妖怪なのに人間と仲良く暮らしていた。
周りも覚妖怪の能力を嫌わない人ばかりだった。
知っていても気にしない優しい人達だった。
それなのに…気が着いたらさとりは変わっていた。
第三の目は閉じて、人形みたいに物静か。
感情なんて感じられない。
「もう…どうしたらいいか分からない…お姉ちゃんに何があったかも話してくれない。ねえ…助けるなら助けてよ…もう…耐えられない…」
「…出来ることはする。だから…お前も第三の目を閉じるなんて結末は…勘弁してくれ。」
違和感はこれか。
創作のこいしはある種吹っ切れた状態。
人間の悪意に耐えれず、原因の能力を封じた。
能力を封じて、心を閉ざして、閉じた心と違う自分を産み出した。
対してさとりは似ているが、違う自分に任せることなく、閉じた心そのままに話している。
心を閉ざして蹲る少女が、片や違う自分に全てを投げ出し、心の壁を通り抜け。
片や全てを内に秘め、心の壁に囲まれた。
違和感を感じたのはこいしの言葉通り、人形…機械的過ぎたのだ。
「本当に…ほっとけるかよ…」
来月は10日に更新したい!…モンハン出るな…うん!