妖怪との戦闘から半年、街は平和そのものだった。
新しく妖怪が襲ってくることもなく、街から少し歩いた程度で見つけることさえなく、もはや妖怪なんていないのではと思う程平凡な毎日。
そしてそんな平凡な毎日を送る俺の生活もまた平凡。
夜や永琳と話したり、街の色んなところで手伝いをしたり、これといった変化はない。
「…だから暇なんだけどな…」
「どうしたの?」
「別に…なんかやることなくて暇だと思って。」
「なら実験台にでもなる?」
「永琳先生…」
「お前の実験台なんてなったらどれだけ命があっても足りないわ。」
「不死身の力の見せ所ね?」
「足りないっつってんだろ。」
こんな会話をしては帰り、街で手伝いをしてまた帰る。
帰って寝て、起きたら出掛けて、やることないからまた帰宅。
課題のことなんてさっぱり進まず、見に行った二人はまだ生後半年。
進むことも出来ず、止まり続ける人生。
いつ動くか分からないこの生活が……まさか十年続くとは…
―――――
十年…十年も経った。
変わったことは街の防衛隊から軍に格が上がったことぐらい。
いや結構な変化とは思うがよく考えてほしい。
それしか変わってない。
元々施設や区分けはあったことを考えると名前だけではないだろうか。
科学は発達した、医学も発達した、学校は俺の知るようなもの…ではないかもしれない。
具体的には授業がやばい。
普通の座学と…能力と戦闘訓練がある。
現代なら色々おかしい。
これらを纏めると…結構変化してたな。
むしろ十年でこれはすごいのでは。
しかしどれだけ街が『都市』に変化しても、俺のやることは変わってない。
手伝いに臨時講師が追加されただけだ。
何か…そろそろ手に職付けないとまずいかもしれない。
―――――
逆に就職しない方がいいって言われた。
どこにでも行く何でも屋として既に名前が通ってた。
本人そんな気なかったのにいつの間にか就職してた。
じゃあ何でも屋として開業しよう。
と思い、夕方の広場に行き、掲示板に書きこんだ。
[何でも屋開業:依頼は家のポストへ。本人への直接の依頼はご遠慮下さい。また継続して続けるようなものもご遠慮下さい。 筑城 望]
これで依頼が来たら仕事になる。
なければないでいいや。
―――――
そう思っていた時期が自分にもありました。
朝起きたら五十七件もの依頼が入っていた。
雑用込みとはいえなんでここまで頼られているのか?
安易に仕事を手伝い過ぎていたのだろう。
全部見るのも大変だ。
―――――
「望くん、ありがとうねぇ。」
「いえ、荷物運びですし…それぐらいは…」
「年をとると物を持つのも辛くてねぇ。」
「また何かあったら呼んで下さい。」
「そうするよぉ。いくらかしら?」
「荷運びですし、五百円くらいでいいですよ。」
「あらいいのかい?結構歩いたと思うけど…年よりも気遣って歩いてたから大変だったろう?」
「いいんです。お金に困ってるわけでもないし。」
「そうかい。それじゃあこれ。」
「ありがとうございます。」
「こちらこそ、どうもねぇ。」
……代金考えてなかった。
ちなみに今のおばあちゃんの依頼は引っ越しの荷運び。
距離1km離れた息子夫婦の家まで。
これベースだと狂う気がする。
…永琳に相談しよう。
―――――
何でも屋はかなり順調だ。
ここ一月、特に問題もなく、値段管理も永琳がしてくれ、意味もなく稼いだ。
これからもこうやって過ごす…そう…思っていた。
依頼の一つに、『月読』と書いてあった。
月読…
今までかなりの時間があったのに一度も会ったことはない。
それがいきなり依頼をしてきた。
恐る恐る俺は依頼書を読み始めた。
略すと、軍に能力の持ち主や霊力の強い者のみで構成した隊を創る、暇なときでいいので講師をしろ。
務まるものでもないと思われる。
まあ何でも屋だから受けるのだが。
依頼者には詳細を聞くために会いに行く。
つまり月読と会わざるをえない。
「………断りたい…」
月に向かって呟いた。