ここまでの戦闘音となるとこいしが来るまで数分かからないだろう。
接近の時間を考えるならチャンスは一度。
意識を残して無力化させないとこいしと再び拗れる。
近づいて、身動き取れないよう手足を縛る。
情報が入らないよう目を塞ぐ。
こいしが戻ったら記憶に干渉する話しをする。
これがベスト。
「どうして弾幕が…!?来るなぁ!」
「焦って弾幕増やしても効かねぇよ!」
弾幕を全て、時には妖力の単なる放出まで、全ての攻撃を吸収して接近する。
暴食は吸収して霊力を増やすようなもの。
上限を超えれば破裂する風船だ。
逆に言えば超えなければ無限。
今までの攻撃からしてあと三回は耐えられる。
弾幕の壁は二つ。
十分だ。
(捕らえた!)
弾幕を消しながら体制を屈めて潜り込む。
屈んだ体制から足をバネのようにして射出する。
背後に回り、瞬時に吸収した弾幕を逆噴射して急停止。
ロープと布を創る。
布で目を塞ぎロープで腕ごと体を縛り上げる。
足まで縛って完了だ。
この間一秒と満たない。
「ぐっ!?離…せぇ!」
「あんま暴れんな。こいしが来てから話そう。」
しかしとてつもない犯罪臭がする。
早く来てくれるといいが…
―――――
遅い。
遅過ぎる。
戦闘終了から既に十分。
来て…なんなら話終わっててもおかしくない。
「あれに気付かないわけないよな…」
「…解いて下さい。もう…暴れませんから。」
「…駄目だ。いくら俺でも…今のお前を信用は―」
「私は…!…貴方を信じます。あれだけ強くて…真剣な顔で…それでいて悲しそうで…心が読めなくても分かります。本気だと…」
「…分かった。少し動くな。」
解くより消すのが早いため、触れることなくさとりの拘束を外した。
確かに暴れる様子はない。
これが完全な信頼でなくとも、一時的にも留まる要因になれたなら…あの戦いも無駄ではない。
「それで…こいしが来ない理由分かるか?」
「…動物の世話程度しか予想がつきません。」
「そうか…なら探すか…お前はここに居てくれ。こいし連れて来て…必ず話すから。」
「分かりました。」
―――――
はっきり行って心当たり皆無だ。
そもそもこの広さで人一人捜す労力は計り知れない。
「まあとにかく歩き回るしか……?」
地面が揺れてる。
先のさとり戦と同じような…
「…向こうか?」
その状況に対し、とても嫌な予感がした。
―――――
着いた先で俺は、目を疑う程の現場に遭遇していた。
気を失っているこいしを持つ人間。
辺りは室内と言うには難しい程の破壊痕。
地面には動物達の死体が無造作に転がっている。
何よりも…こいしのサードアイからは血が滴っていた。
「は……?」
「おや?おやおやぁ?思ったより速いですねぇ?んふふふ♪いや~貴方には感謝していますよぉ?妖怪共を蹴散らして町を破壊して注意を引いてくれて…しかも姉妹を離してくれて…♪」
「お前…!」
「そう怒らないで下さいよ~私の目的はこの瞳だけなのですから~♪」
「瞳…サードアイのことか…!それをどうするつもりだ!?」
「我々『魔法使い』は研究こそ生き甲斐なのでねぇ…心を読む魔法なんて…とても素晴らしいではありませんか!?」
「そのために…少女も少女が大切にしていたものも奪うのか…!」
「ええ…心を読む能力。時を操る能力。果ては世界を創る能力まで…あらゆる全てを探求する…そのための犠牲など…些細なものでしょう?」
「お前…凄ぇよ…今世最高の悪党だよ…後にも先にも超える奴は現れねぇだろうよ。」
「んふふふ♪悪党結構ですよぉ?それで?如何致しますか?私と戦いますかぁ?大量の妖怪と町を吹き飛ばす力を使い、直すためにも体力を使い、姉と戦い疲労困憊の貴方が?んふふふ♪」
「…成る程な…お前地上の人間に紛れ混んでたな?その上全部計算尽くでここにいる。」
「えぇ!えぇえぇ!その通りです!まあ誤算は妹の戦闘力が思いの外高いことですかねぇ?しかし今!こうして目的は達せられた!ああ…なんて素晴らしい…♪」
「……そうか。」
ここまでの問答でどれ程イカれた奴かを理解した。
今まで殺しは控えていたが…控える必要がない程の悪だ。
そしてこいつは…簡単には殺さない。
場所を指定して消滅させるのはそう難しくない。
だから俺は、こいしを持つ奴の右腕を消し飛ばした。
支えを無くしたこいしは背中から地面に落ちることになった。
それだけは申し訳ないが、奴だけは許さない。
だから少し気を失ったままでいてくれ。
この顔だけは…見せたくない。
「はぇ…?あ…え…?…ひ…ぎぃやああぁあぁ!」
「腕一つで騒ぐなよ…ここからは…残る部位のが少ねぇんだからよ。」
今の俺は…とんな顔をしているだろうか。
30と10は歯が激痛で睡眠も不足レベルでして…更新忘れてましたすみません。