どんな風にしてやろう。
怒りに任せたとはいえ腕一つ消してしまった。
もっと苦しめるならどうする。
指を一つずつ落とす?
目玉を抉り出す?
骨だけ消して軟体生物にでもしてやろうか?
神経を引き摺り出すなんてのもいいだろう?
「ひ……!なんだよぉ…!お前ぇ…」
「……」
もっともっと…まだまだ苦しめる方法はある…
この屑を簡単に殺すなんて駄目だろう?
「く、来るなぁ!来るんじゃない!ひぃ…」
這って逃げるその魔法使いに、どんな拷問をするかしか考えられない。
この感情に任せれば…一体どんな惨状が産み出されるのだろうか。
いっそ全部やってしまおう。
「な…何で笑えるんだ…?」
「…笑ってるのか?…くく…想像したら…楽しいのかもな?俺も分からんがな?」
「っ――!」
いざ始めんと手を伸ばした時背後から声をかけられた。
今この場で背後から声をかける人物など一人しかいない。
「望さん!」
「…さとり?」
それからすぐに思考が戻る気がした。
自分がやろうとしたことがどんなことだったか…理解した気がした。
直後にとてつもない嘔吐感に襲われた。
「……う…」
「望さん…それは駄目です…そんなことをすれば…貴方はまともでいられない。まだ…引き返せます。」
「………すまん…助かった。だけど…」
殺さない程度に加減して、這いずる魔法使いの腹を殴る。
この威力に耐えられる精神のない魔法使いは、衝撃のあまり白目で意識を失った。
「こいつは閉じ込めておくよ。簀巻きにして煉瓦で囲っとく。…ありがとな。」
「いえ…望さんが本気だって…更に信じられましたよ。…とにかくこいしを介抱してあげましょう?」
「ああ。」
―――――
「ん……」
「!」
「こいし!」
「…お姉ちゃん…?…あ!あいつは…」
「もう大丈夫…大丈夫だから…」
さとりは目を覚ましたこいしをそっと抱き締める。
流石に事が事だ。
平静を保つにも難しい程だっただろう。
「あの魔法使いなら任せとけ。…殺しはしないけど。まあ記憶を消して上にでも連れてくさ。」
「記憶を…?」
「ああ。それでな…この能力をお前にも使おうと思う。」
「…望さんが…私の記憶を消してくれるんですか?」
「お姉ちゃんの…大丈夫なの?」
「やり方は簡単…ではないが、ほとんど問題なく出来るだろ。記憶に空白が残るのだけが問題だ。」
「…私の記憶を…見るん…ですね…」
「ああ。大抵のことなら俺なら平気だしな。まあ人間がやりそうなことなんて…いくらでも分かる。嫌なことを思い出させるのは申し訳ないが、消してほしい記憶を教えてくれ。それから…記憶はどうにか出来ても、サードアイは治せない。」
「……いえ。記憶は…そのままにしてもらえませんか?」
「!?どうして!?」
「あの時の人間が…あの悪意が、私にとって人間の全てだったんです。でも望さんは、心から私達を助けたいと言ってくれていました。人間の心も一つではないんです。」
「だからって…苦しむことには変わりないだろ?」
「確かに思い出したくない記憶ですが…あれのおかげで、学べたことも確かにあったんです。こいしを守るために、貴重な学びも捨てられません。」
「そんなのただの結果だ!そんな記憶がなかろうが、学びは与えてやる。」
「……貴方がそうまで忘れろと…焦ってまで言うのは、貴方がとても優しいからなんでしょう。本気で私達を救いたいから…だから私は、貴方に見てほしくないんです。」
「…!……俺なら大丈夫だって…」
「心を読めなくても、苦しむ顔は分かりますよ。きっと貴方は平気な振りをする。でも無意識に、心は病んでいく。いつか貴方が自分の苦しみに気付いた時は、もう壊れてるかもしれません。貴方はそういう人なんです。」
「……」
心を読む妖怪だからこそ心の機微に聡い。
能力を失っても、その特色は消えていない。
この少女は、俺より俺を理解している。
そして理解しているからこそ…判断を誤らない。
「……ふぅ…負けたよ。」
「口で悟り妖怪に勝てるとでも?」
「…お姉ちゃん…もう大丈夫なんだね。」
「ええ。もう大丈夫。今までごめんなさい。」
「ううん。お姉ちゃんが笑ってくれたら…私は満足だよ!」
まあこれなら…救えたと言えるのではないか?
二人の少女は幾年ぶりに笑い合えた。
その光景を見れば…自然と笑みが溢れるというものだ。
GW?なぁにそれ?シフト制で連休なんて関係ないね!あと関係ないけどまたモンハンやってたんですけど歴戦王弱くないですか?