「それじゃまたな。」
「はい。」
「絶対すぐ会いに来てね!」
「分かってるよ…でも生憎直近は無理かもな。紫が言ってた通り旅してるからな。…本当に悪いとは思うが、数ヶ月単位で迷うことも珍しくなくてな。まあ迷ったら来るから、意外に早く来るかもな。」
「お待ちしてます。早く会えることを願って…」
「迷うことを祈るよ!」
「勘弁してくれ。」
こんな別れの言葉中々ないだろうな。
とにかくまずは町の方へ。
そっちの別れも済ませたら次は地上でまた挨拶。
どうにもいた時間は少ないくせに、深く関わり過ぎたようだ。
でも別れは惜しまない。
また会う約束はもうしたのだから。
―――――
「そうか…あの二人が…やっぱり俺の勘は間違いなかったな。俺からも礼を言うよ。」
「…しかしやっぱり疑問なんだよな…」
「何が?」
「お前だよ。そもそもあの二人を助けるのを妖怪が頼むか?世話になった相手ならとも…か…く……」
「気付いたか。そうさ。俺はあそこの元ペットだよ。長生きし過ぎて妖怪になったのさ。だから偶然は恐ろしいよ。何せここに来たのがお前で、話掛けたのは俺が最初。こういうのを運命っつーんだろうな。」
「成る程な…そりゃ助けたいと思うし多少詳しいよな…他の妖怪の常識ではやっぱりねぇんだろ?」
「おう。俺含め周り何人かだけさ。それ以外興味すら持たねぇよ。」
「…それはそれで何で出てったんだよ?」
「…俺が二人を苦しめる。そう形が変わったからさ。あそこのペットは長生きな奴ばかりさ。だから妖怪になるのもおかしくない。大事に飼われてたからな。そりゃいたかったさ。だが…苦しむ顔は見たくない。」
「…お前以外の妖怪化したペットは…」
「…五匹。内三匹は自害した。一匹は…さとり様が眼を潰した日から見ていない。」
「…そうか…」
これは想像でしかなく、実際のことはは分からない。
ペット達が人の姿になるのに、一番の願いは二人と同じ形をとりたい…または言葉を交わしたい…共に過ごしたい。
そんな願いが人の形を生み出した。
そんな妖怪にしたのだ。
なら…それほどの想い人に、拒絶されたなら?
人間なら心を病む。
それこそ自殺を選びかねない。
耐えられたのが、たった二匹だけだったのだろう。
それでも彼は信じたのだ。
いつかその愛を、再び自分に注いでくれると。
そのために、助けてくれる誰かを探したのだ。
「つくづく根っからの忠犬だな?」
「その通りさ。まあ今の今まで何も出来なかったんだ。忠犬っつーには…些か無能だな。」
「犬っころの浅知恵が、事実願いを叶えたんだ。誇っていい。お前はよくやった。」
「…そうさな…だが…まだ会えない。二人には時間が必要だ。…と思う。」
「ほう?それも勘か?」
「ああ。だがお前に誓う。もう二度と同じことが起きないことを。俺が護り続けると。そして必ず、笑顔の二人を拝んでやるってな。」
―――――
「もう行くんだね…」
「おう。ここは紫に任せるし、時が来るのを待つってこったな。だから…またな。」
「ああ。いずれ紫さんの創る理想郷で会おうじゃないか。」
「望様は確かに予言の通りでありました。此度の恩を決して忘れません。どうか良き旅路を…」
結局こいしとさとりには鈴を使えば会える環境にした。
だから俺は旅に戻り、後は狼男に任せることにした。
依存し過ぎはまずいって…もう分かったんだ。
回復の兆候が見られたなら、俺の役目はここまでだ。
「そういや…狼男の名前聞いてねぇな…」
そう思いながら、俺は村を飛び立った。
―――――
三月後…
―――――
「またかよ…」
しっかり海で迷子になっていた。
サブタイトルは漢字ミスじゃないです。