迫る弾幕と笑みを浮かべる紫。
これこそまさに鬼の所業…頼んだのは自分だけど。
弾幕勝負において必要なのは回避技能。
だが今回技の練習のために、威力も数も多い弾幕は一点集中で俺に迫る。
まずは拒絶…『嫉妬』から始めるとしよう。
強度特化の霊力による壁。
それを五つ重ねる。
イメージは霊力をまとめた球を薄く引き伸ばすように。
「あ…」
「嘘だろ…!」
霊力に物言わせた壁だというのに、弾幕を二桁も止められなかった。
結果は…言わずもがなだろう。
―――――
「最初から駄目じゃない。」
「いや…実は改良ついでに少し創り変えたんだ。一人の時には石壁を創造してたんだよ。」
「それでいいじゃない。わざわざあんな紙みたいな壁よりずっとましよ?」
「…創る速さと大きさが問題なんだ。厚い壁は創る時の厚さによって想像通りに創る難易度が高い。一定の大きさだと無駄に霊力を消費する場合もあるし、他の調整はまた別になる。それに創り続けるには位置の指定も難しい。最もな問題は、創造で創るのはあくまで物質…重力に抗えない。」
「一番の問題が唯一の問題まであるわよそれ…でも確かに霊力を壁にするのは利にかなってるわね。」
「ああ。展開の速さはさっきの通り付加も石に力を加えるのと比べて流水ばりに流せる。」
「なら付加の問題は解決しているのね?」
「ほとんど。あとは何を付加するかの問題だが…まあ選択肢は日々増えるだろうよ。他の能力との互換性を考えると拒絶とはいえ吸収も……あ。」
「どうかした?」
吸収…なら暴食と組み換えればいい。
能力や弾幕、力そのものを喰う暴食と、弾幕を通して相手に触れ本人の力を奪う能力。
その『強大さ』こそ傲慢に相応しいのでは。
座標を指定して敵を拘束する怠惰、対象の魂…あるいは心とでも呼べるものを奪う『色欲』、そして暴食による能力の奪取。
それら全てを力にする『傲慢』。
「成る程…」
やはりイメージしやすい。
大罪を参考にしたのは正解だった。
そういえば死に関する能力なら貰っていたじゃないか。
十分に使えるものだ。
およそ戦闘における最高の能力を思いつき、しかも実行出来る力がある。
となるとあとはやはり出力。
主だっては加減だ。
「何か思いついたみたいだけれど…貴方の考える能力は過剰な威力のものしかないでしょう?一つずつ進める方がいいわよ。」
「分かってるよ。まあずっと付き合わせるわけにもいかないし、俺も留まり続ける時間もない。それにあの二人を放っとくのも悪いしな。」
「そうね。進展はないけど…ここまでにしておきましょう。」
「いや、最後にちょっとだけ付き合ってくれ。」
―――――
能力の訓練にはならなかった。
しかし紫から得られることは多かった。
付き合ってもらったのは他でもない。
紫の能力についてだ。
模倣は出来るが完璧ではない強欲を、完成に近付けるためだ。
使う力の量、展開範囲、通せる物質の限界、能力の及ぼす影響力。
俺の想像以上に幅の広い能力だ。
同時に会話しながら身体能力の訓練にも付き合わせた。
話ながら弾幕を避け続ける光景は中々見られるものではないだろう。
「この能力は隙間の概念を把握することで最も力を発揮出来るわ。概念の意識化。それさえ出来れば大抵出来る。」
「なら理論上限界はないのか。」
「理論上ならね。でもあくまでこれは想像力の問題よ。常に頭を働かせて理想を組み上げる。でも必ず、能力が発動出来る隙間を見つけ続ける。咄嗟に使うには脳一つの速度じゃ足りないわ。それに常に思考を急速に動かし続けるのは人間…いえ妖怪でも脳が耐えられない。」
「万能ではあるが完璧じゃないのか。でも時間さえかければ大抵出来る…戦闘向きじゃないな。ああだからお前の使い方は人の移動や物の取り出しでしか使わないのか。」
「ええ。」
「成る程な…」
理解は出来ても結局やるのは出来ることの把握。
理解度を上げても出来ることがそこまで増えないのはこの能力くらいだろう。
しかし万能には違いない。
あとは練度次第。
「ありがとな。この辺で終わりにしよう。」
避け続けていた弾幕を全て消滅させる。
空間ごと白に染めてしまえば弾幕勝負は終わる。
「貴方…それが一番の技でしょうに…」
「…あくまで切り札だよ。確殺技なんざろくに使う場面ねぇよ。…あったら駄目だ。」
多分さとりに止められなければ、魔法使いに対していたぶった上でやっていただろう最悪の行動。
こんなもの…使いたくはない。
「そろそろ戻るぞ。」
帰りは隙間に落とされることはなかった。
治った今はナイトレインに嵌まってます。もうきりよく10日ずつ更新出来てないな…