「本当に行っちゃうの?」
「…ああ。」
「こいし。そんな捨て犬みたいな顔しないの。また来てくれるから…ね?」
「うん…」
別れを惜しむ二人を後にし、再び果てのない航海へ出る。
まあ海に戻る必要があるわけではないが、紫の能力の移動はあくまで座標移動。
故に島の座標が分からない俺は海に帰るしかない。
はっきり言って辛い。
しかし留まる時間が長い程、人間は留まり続けることを選ぶものだ。
俺も例外じゃない。
そんな暇はないのだ。
知人の命と一時の苦労…天秤に掛けるまでもないのだから。
―――――
さて…もうお分かりのことだろう。
迷って二ヶ月だ。
これで計五ヶ月海で過ごしている。
まあ三ヶ月区切りにさとり達のところに行くことを決めたし、もう一度行くかもしれないな。
「にしたって島無すぎないか…?」
単純に五ヶ月真っ直ぐ(正確じゃない)飛んで島がないのは異常だろう。
かといって能力を受けた気配もない。
しばらく魚ばかり食っているが魚が通る時点で閉鎖もされてない。
鳥について行くことも今やってるが、付いて行くこと一ヶ月だ。
この鳥の種類は知らんが、一ヶ月飛び続ける鳥などいるのか?
渡り鳥には普通なのかもしれないが。
「どこまで行くんだよー…」
まあ鳥に付いていく限り島にはいずれたどり着くだろう。
それまで追い続けよう。
―――――
更に一ヶ月…諦めかけたその時に、島は見えた。
思わず絶叫した程嬉しい。
鳥には感謝しかない。
着かなかったら鳥肉にしてたかもしれない程魚飽きた。
「あ”あ”ーー…ありがとなーじゃなー」
向こうは何も知らないだろうが。
結局どこの島に着いたかも分からない以上、やることはただ一つ。
―――――
「それで来たのですか…」
「どうせしばらく来れないだろうからな。一時的な別れの挨拶ってとこだ。」
「でもお兄ちゃんならそう言って来てくれるんでしょ?優しいもんね♪」
「いやー多分無理だぞ?何故か知らなんが俺は巻き込まれ体質みたいだからな。なんか起きるぞ多分…」
「巻き込まれ体質じゃなくて割り込み体質でしょう?」
「なんだ。紫もいたのか。お前も三ヶ月区切りにしてるのか?」
「ええ。およそではあるけれど…『も』ということは貴方もなのね。」
「三ヶ月が丁度よくてな。」
「むー…お兄ちゃん!しばらく会えないんだったらしばらくいてよ!?」
「分かった分かった。ほら…フリスビーでもして遊ぼうな。」
広い館内で犬にフリスビーを取らせる。
他にも猫をじゃれつかせたりオウムの声真似で遊んだり、ここでは動物との触れあいが素晴らしい。
動物好きなら大喜びだろう。
動物以外でも勿論遊びはした。
ここにいる時だけは保育園の従業員な気もする。
こいしの体力…凄い。
―――――
気付けば地霊殿に二週間泊まった。
「…そろそろ行かないと堕落する!」
「今更なにを…貴方面倒泊嫌いでしょう?堕落なんて元々でしょうに。」
「ヤバい未来の回避に動いててどこが堕落だよ!そうでなくてもまずい。早く行かないと…」
「…行っちゃうの…?」
「こいし…悪いな。会わないと…謝らないといけない奴がいるんだ。俺はそいつを守りたいんだ。だから…もう行くよ。」
「……望さん。こちらを差し上げます。」
「これは…?」
札を三枚渡された。
見覚えがある。
これは紫が結界のために使う札だ。
「紫さんから貰って、更に教わって作ったものです。私じゃこれが限界でしたけど…能力を使えるよう封じ込めました。三回だけ、心を読む能力が使えます。発動から札が燃え尽きるまで、有効に活用して下さい。」
「これは……しれっととんでもないの作ったな?」
「お姉ちゃん紫さんが来る度に頑張ってたよ?」
「頑張って下さい。応援してますよ。」
「また早く来てね!絶対だよ!」
「……ああ!」
三度二人の下から旅立つ。
次の島では何があるのだろうか…
―――――
どれくらい歩いたのか。
飛ぶと仙人とか妖怪とか勘違いが酷いから飛ばなかったが、そろそろ飛ぶ必要を感じてきた。
まあ気長に歩くとしよう。
時間はまだまだあるのだから。
「……ん?」
上に影が出来たように暗くなった。
ふと見上げれば、轟音を立てて真横に何かが落下した。
見れば巨大な鉄球。
どうやら進行方向丁度から飛んできたようだ。
「…やっぱり巻き込まれ体質だろ…」
アマツバメって鳥は10ヶ月飛ぶんだって。調べてマジかてなった。