何故だろう助けたのに警戒が恐ろしい。
男連中からの敵意が半端じゃない。
というか聖の背後からほぼ全員分の槍が向けられている。
気持ちは分かるが…やはり言葉が通じないのか。
「あー…ハロー?いやニーハオとか?」
「あ!大丈夫です!分かります!私だけですけど…」
いらん恥をかいたようだ。
予想通り聖だけは通じるらしい。
まあ日本名だし通じないならどこ生まれって話だ。
しかしやはりいるのがおかしい。
なにせ槍を向けてるのは全員人じゃない。
「…改めて挨拶するか…俺は筑城望だ。訳あってにほ…日ノ本に向かってる。ここへは完全迷子で来た。」
「そうなのですね…私は聖白蓮と申します。修行の身で偶然立ち寄った者です。」
「修行…?」
「はい。…長生きが目標なもので…」
「…そうか。」
あからさまに何かを隠した。
そういえば前世の記憶に…聖には弟がいたって話に覚えがある。
関係しているのかもしれない。
まああえて触れることはしない。
触らぬ神になんとやらだ。
「長生きはいいことだな。だけど…生き過ぎるのもすすめないがな…」
「はい…?」
「いや気にするな。まあ俺はただのお節介で助けただけだし、…後ろも怖いしな。そろそろおさらばさせて…」
「いけません。」
「……」
「あの戦は向こうから一方的に行われた蹂躙です。それを止めてもらい、お礼の一つもないのでは…無礼にも程がありましょう。」
「…まあなら…何日か留まりたい。こっちも事情があるんでな。」
妖怪連中の勧誘と道案内が。
「構いません。と言っても私が許可することではありませんね。村落の長に案内します。こちらへ。」
―――――
「………」
「こちらが長のお宅です。…どうかしましたか?」
「いや…何でもない。」
何でもなくはないが…周囲の視線が過去一痛い。
警戒五割嫉妬四割残りは疑いだろう。
歓迎のかの字もない。
「?そうですか?では…村長さん!いらっしゃいますか?」
「ええおりますよ。あんた!聖ちゃんがいらしたよ!」
「おおこれはこれは!戦には勝ったのですね!?」
「そのことでお話が…」
「そちらの方は…」
「初めまして。筑城望だ。…あれ?」
村長は人間だ。
しかも日本語を話している。
横の婆さんも日本語。
「村長さんは言語を理解する異能を持つのですよ。およそ六十年程前に住処を追われ、ここに移住したのです。」
「ええ。当時のことは今でも感謝しております。聖様がおられなければ、無事にたどり着くことも暮らすことも出来なかったでしょう。それに…」
「待った待った。長くなるなら遠慮する。」
「おお…申し訳ない。年寄りは長話が好きなもので…どうぞお入り下さい。」
「では私はこれで…用がありましたら隣の家屋に来て下さい。しばらく部屋には戻りませんが、話が終わる頃にはお礼も用意しておきます。
「お、おう…」
多分何か礼の用意で聖は席を外した。
その間に外の連中も落ち着いてくれればいいが。
礼より後者の方が重要だ。
―――――
「何もない場所ですがごゆっくりしていって下さいな。」
そう一言置いて婆さんは部屋を出た。
「それでどのようなご用で?」
「この村にしばらく残りたくてな。許可と…出来れば住んでいい空き家とか何もない空き地とか聞きたい。」
「なるほど…でしたら私の許可など必要ありませんな。権力を持つわけでもないのですから。全て自由に行って頂いて構いません。しかし報告は頂きたいですね。」
「そう…なのか。」
「はい。先の聖様のご様子ですし、隣の家屋にお泊まりしてはいかがですかな?定住を希望するわけでもありますまい。」
「まあ…そうだな。とりあえずここに残ってやりたいことを伝えとくか。二つ程頼みがあってな。」
「出来ることならなんなりと。」
「一つは案内だ。日ノ本に向かう途中でな。偶然この島に流れ着いて、偶然村にたどり着いた。案内人が欲しいんだ。生憎方向音痴で一生着ける気がしない。」
「であれば聖様に頼めばよろしいと思いますな。というより案内など彼女以外、出来る者などおりませぬ。」
「…そうか。後で頼む。次に…」
話を続ける前に、外で爆音が鳴り響いた。
「何だ?」
「外に行きましょう。聞き慣れぬ音です。」
―――――
「?婆さま?どうなされた?」
「あ…あぁ…爺さまや…聖ちゃんが…聖ちゃんが…」
「!」
外に出て驚いた。
隣の…聖の家は鉄球に潰されていた。
そしてその少し横には…家屋の破片が突き刺さった聖が、子供に覆い被さっていた。