展開早すぎ?
分かんないや。
お兄ちゃん!大好き!!・・・・・・とか言うと思ったかビチグソ兄貴ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!
なんてね、思っていた時期もありましたよ。
あの瞬間、確かに私はお兄ちゃん大好きでした。
でもね、でもさぁ・・・・
「あら、目が覚めたの?あなたー、
「ホントか?ああ、可愛いなぁ」
私の顔を覗き込む一組の男女。とてつもない美男美女である。国宝級の顔が私を見下ろしているのである。
私、歓喜する。転生成功だ、と。
だが、どうしようもない違和感。何なのかは分からないけど、銀魂としては違和感がある。それでも転生できたことへの喜びが大きすぎて、その時は気付かぬふりをした。
(うぉっしゃーー!!銀魂ライフ満喫してやろうではないか!!)
こうして、私の楽しい楽しい銀魂転生ライフは幕を開けた。
〜それから二年〜
はい、ここで最初に戻りまっす。うん。私ね、お兄ちゃん大好きだった。家族のうちで、私のことを唯一可愛がってくれた人だしね。大好きだった。大好き
「さぁ琴華、ご飯だよぉ」
私の新ママがスプーンでご飯を差しだす。美人にアーン、一度はされたいよね。私、幸福を感じてモグモグ。
「いっぱい食べて大きくなれよ」
私の新パパが大きな優しい手で頭を撫でる。美男にナデナデ、されたら嬉しいよね。私、幸福を感じてニコニコ。
でもさぁ・・・
これさぁ・・・
おもっくそ現代じゃねぇかァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!
ンだよ、あの馬鹿兄貴ぃ!!期待させるだけさせといて!この仕打ちかよ!
この二人、着物じゃなくて洋服じゃん!出かけた時も、ターミナルとか空飛ぶ船とか天人とか二年間一度も見てないよ!!立ち並ぶ住宅、騒がしい学生の声、車の音。何もかも現代なんだよ!!
騙しやがったなビチグソバカ兄貴ぃぃぃぃぃぃぃ!!ひき肉じゃ生ぬるい、コネにコネてマッズイハンバーグにしてやる!この恨みはらさでおくべきかぁ!!
二歳児がそんなことを考えてると知らない二人は、ニコニコと私に話しかけてくる。
「可愛いねぇ」
とか
「お前に似てな」
とか
「いやあなたに似たのよ」
とか。
私の中身が十九歳とは知らずに惚気けまくる。親の仲がいいのは喜ばしいが、こちとら二歳児、何も口は出せなんだ。イチャイチャに二年も耐えている私を誰かヨシヨシしてくれないかなぁ。
「あなた!琴華が全部食べたわ!」
「偉いぞぉ琴華」
「好き嫌いしないなんて、いい子ねぇ」
我が子にデレデレの二人に撫でまくられる。
うん。そうじゃなくてね。
このようにラブラブ夫婦に溺愛され、私は育つこととなる。
~さらに三年~
おーい聞いてくれ。私ついに幼稚園デビューしたぞー。あれから変わらず親はラブラブ、言葉は楽々話せるようになり、すくすくと私は成長している。
いやぁ、喜ばしいことである。
じゃねぇんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!
何これ!マジで普通の幸せ一本道!!まっしぐら!道が舗装されてるよ!コンクリートで固められてるよ!誘導員雇ってあるよ!めっちゃ整備されてるよ!
ふざけんなよ!中身はもう二十歳超えたんだけど!
二年前の三歳の誕生日に与えられた広い部屋の真ん中で、私は四つん這え状態。この世の終わりのごとく絶望している。転生して五年、何の音沙汰もなく、すくすくと成長しているのだ。
(私の転生の意味!!)
あれほど胸を高鳴らせた転生。全てがガラガラと崩れてゆく。あぁ、私の愛しき銀魂ライフ・・・・!
今日は家族で公園にお出かけだ。わざわざ大切な休みを私のような中身が二十歳越えの娘に費やさせてしまい、本当に申し訳なくぞんじております。
「うぅ・・・」
悲しみの涙を流しながら、立ち上がって周りを見渡す。
淡いピンクで統一されたThe.女子の部屋。パステルピンクの壁紙、白の勉強机、ピンクのハートのカーペット、白の薄いレースカーテンとピンクのカーテン、パステルピンクと白のタンスとクローゼット、白のベットにピンクの布団、真ん中には白い小さなテーブル、さらには可愛らしい鏡台まで。
全て、母上のご意向である。「やっぱり女の子はピンクよね!」と、私のために色々と買ってくれた。父上は女子同士に口は出さぬとカートを押してばかりで、暴走する母上を止めなかった。
勉強机とかまだ先じゃね!?早くね!?いくらなんでもさ!父上よ、何故母上を止めなかったのだ!!いやだよ、勉強嫌いだもん!!大学受験で終わりたかったよ!また1+1から!?あのクソめんどい九九から!?つーか何気に金持ちな!!一日で一式揃えやがったよ!
心で盛大に慣れないツッコミをしつつ、鏡台の椅子によじ登って鏡を覗く。真っ黒な長い髪と幼い顔の私が鏡に映りこみ、間抜けな顔がこちらを見つめる。だけど、真っ先に目につくのは・・・
(オッドアイってホントにあるんだなぁ)
左右で色が違う瞳だ。自分から見て右目が黒、左目がほとんど透明に近い水色だ。日本人離れしている瞳の色に初めは驚いたが、今ではさすがに見慣れた。
「琴華〜?あら、一人でお着替えできたの?偉いわねぇ」
ガチャッと扉を開けて母さんが入ってきた。爽やかな色の服を着ている母さんは、すれ違った人全てが振り返る可憐さだろう。私なら微笑まれただけで落ちる。
そんな美人に「偉いわねぇ」と抱かれてナデナデされる。
私、先程の絶望を忘れてデレデレ。
「えへへ、かぁさんだいすき!」
「まあ!」
はい。私、なんやかんや言いましたけど、母さんと父さんが大好きです。可愛くて、カッコよくて、美人で、イケメンで、優しいて。完璧やん。好きにならんはずないやん。
「おいおい、時間だぞ」
なかなか部屋から出てこない私たちを迎えに来た父さん。整った顔で苦笑いをしていらっしゃる。
「あなた!琴華が母さん大好きって言ってくれたのよ!」
「分かった分かったから。ほら、早く出るぞ」
父さんは私を抱き抱えて玄関へ歩いていく。父さんは高身長なので、景色が全然違う。高い高いのセルフサービスごちそうさまです。
シルバーの普通車に乗って、目指すは公園。駐車場がある公園があるらしいのだ。もちろん私はチャイルドシート&シートベルトは装着済み。運転は父さん、助手席には母さん、後部座席は私。私、ボッチなり。
私はいつものように窓の外を眺めた。桜の街路樹、色とりどりの車、空っぽの公園。綺麗にうつり変わっていく景色を黙って眺める。私、景色を眺めるのは嫌いじゃない。見ていて飽きないし、綺麗だし。転生前も星空とか夕焼けをよく見ていたものだ。キラキラと瞬く星々、日によって違う夕焼けの空。瞼に焼き付けようと見たそれらは、思い出せないほど霞んでいる。
私がボーッとしていると──
「琴華、新しいお友達はできたか?」
父さんに声をかけられた。前を向いたまま、バックミラーで私を見ている。私がつまらなそうに見えたのだろうか。
「好きな子はできた?」
「ううん!まだー」
大きく首を横に振り、満面の笑みをお届け。私、幼稚園は初めてなので楽しんでます。転生前は保育園だった。よって初幼稚です。うん、楽しい。
というか母さん、五歳児に恋愛の話はまだ早いよ。さすがに私は恋できませんよ。ロリコンの烙印は押されたくない。
それからは公園に着くまで、家族でしりとりをして遊んだ。私を楽しませるために・・・!ありがとう!母さん、父さん!
ごめんね、子供らしくなくて!『おかし』で回ってきて『塩辛』と答えてごめんよ!!ビックリしたよね!!
「わぁーい!!」
漫画のセリフのようなセリフを吐いている私。現在、絶賛サッカー中。
父さん、運動が万能らしい。サッカーめっちゃくちゃ上手い。
母さん、そこまででもないらしい。ベンチでカメラを回しております。
到着した公園は、なかなかに広い場所だった。ブランコ、滑り台はもちろん。フリースペースとしてまっさらな広い敷地もある。夕方になったら高校生とかが部活の自主練をしに来そう。家からさほど遠くないから、ここに通い詰めようかな。楽しそう。
「そろそろお昼にするわよ〜」
「もうそんな時間か」
「ごはんだぁ〜!」
11時半を過ぎた頃、母さんから召集がかかり、お昼休憩。母さんのそれはそれは美味であるお弁当のお時間である。
三人でワイワイと食事を取り、お茶を飲んで少し休憩。だがしかし、活発な私がそう長くじっとしているはずがないのだ。分かってくれ、母さん父さん。
「わたし、あそびにいってくる!」
元気よく立ち上がり、両親の返事も聞かずに駆け出す。
「気をつけるのよ〜」
「何かあったら大きな声で呼ぶんだぞ!」
「はぁーい!」
うん、いい返事!偉いぞ私!!
私はそのまま一人で遊べる遊具の元へ向かった。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+
「うぅーん」
はい、母さんたちのところから抜け出してきて約二十分経ちました。ほとんど遊び尽くした。尽くしてしまった。
というのも、ここにあるほとんどの遊具が二人以上で遊ぶものが多いのだ。シーソー然り、あのジャングルジムみたいなグルグル回るヤツ然り。ブランコや砂場のお城、ターザンみたいにジャーってなるロープのやつ、ジャングルジムに長ーい滑り台。ほとんど遊び尽くした。
↑中身二十歳越えだろとかツッコんだやつ!ボコすから覚えてろよ!
さて、次はどうしようかと辺りを見回す。
「あ!」
目についたのは登りがいのありそうな木。でこぼこも結構あるし、登りやすそう。
というわけで、登ります。
「んーと・・・」
木をマジマジと見つめて、登るルートを考える。え?ガチすぎる?ほっとけ、私は野生児だ!!
ある程度計画を立て終わり、私は木に足をかけた。
「うわぁ、たっかーい!!」
木の枝に腰かけ足をバタバタ、両手をバンザイ。父さんの高い高いよりも高い場所。私は、一番低い木の枝に座って景色を眺めていた。高さは・・・三、四メートルくらい?かな。
肺にいっぱい空気を吸って、いっぱい吐く。それだけで、少し気持ちがいい。葉がいい感じに日を遮ってくれるから暑くもないし、風が吹いているから寧ろ涼しい。
場所は全然違うけど、高杉と桂に出会った時は銀さん木の上で昼寝してたんだよね。
同じシチュエーションに胸が高鳴る。と同時に、現実を突きつけられる。転生失敗の現実を。
あ、ヤバい。腹立ってきた。
「・・・っもう!バカクソあにき!なぁにがカミだよ、ちゅうにやろー!ハゲちまえ!──ん?」
周りに聞こえないように少し小さな声で兄貴への愚痴を吐いていた時だ。公園の端──正確には入口付近で人だかりを見つけた。数名を大勢で囲んでいるらしい。だが、私にとってそんなことはどうでもよかった。その中心で異彩を放つ者達。
キラキラと光る銀色、フワフワした髪。
紫色に反射する黒髪、翡翠に輝く瞳。
私は思わず木から飛び降りて、そこへ駆け寄る。
諦めていた人、夢までに見た輝く魂、一度でいいから本物に会ってみたかった。
「なんだよ、おまえら!!」
「「・・・・・」」
近づいてみると、囲まれているのは先ほど目を奪われた二人で、囲んでいるのは五、六人であることが分かった。歳は今の私と同じくらい。
こんなに小さな時からイジメとか、お姉さん見過ごせませんよ。
ましてや、私の大事な人達に・・・何してんのさ・・・。
「ねぇねぇ!」
囲んでいる奴らに近づいて、
「っ、な、なんだよ!」
「なにしてるの?」
「おまえにはカンケーないだろ!」
首を傾げて子供らしく聞いてみるが、答えてはくれないらしい。まあ、答えられなくても分かるんだけど。
「ふーん・・・」
そこで私は囲んでる奴らを掻き分けて進み、目当ての二人に近づいた。
「・・・・」
「・・・・」
私のことを珍しげに見つめる二人。何も言わないままだ。
片方はフワフワした銀髪で赤い瞳。
もう片方はサラサラした黒髪が太陽の光を紫色に反射している。
転生前に私を支えてくれた人達が、今、目の前にいる。
私はその事実に顔が緩んでいくのが分かった。
「こんにちは!わたしといっしょにあそぼ!」
──ごめんね、お兄ちゃん。クソ兄貴とか言っちゃって。やっぱり私、お兄ちゃんが大好きです!──
「はぁぁあ・・・やっと出会ったァ・・・」
はい、俺です。アイツの兄貴です。
これでも俺、頑張ってたからね。出会わせるために結構かなり頑張ってたから。なのに予測不可能すぎなアイツのせいで、三年間もロスした。
なんで、銀魂の世界そのものに転生させなかったのか。
理由は簡単だ。あんな死亡エンドありまくりの世界だと、アイツは絶対にすぐ死ぬから。
何のために転生させたのか分からないぐらい早死するだろう。そんな事態を避けるため、現代のパラレルに転生させた。
「ま、楽しめよ」
──俺の可愛い妹さん──