詭弁ですよ!霊夢ちゃん!   作:名は体を表す

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妖夢ちゃんかわいいなぁ


春雪異変ですよ!

 あれから少し時間が経った。

 妖精達を使って春度を集める作戦は、最初のうちはうまくいってたが時期的に春が近づいてくるにつれ、妖精達が興奮して凶暴化してきたので断念した。

 やはり幻想郷中から春度を集めた影響で()()()な状況になり、妖精達が異変を感知して興奮し出したのだろう。まあ、とは言えだ。まだ妖精達が少し騒がしい程度の凶暴化で、『そんな日もあるか』くらいの誤差だ。

 

 今は俺一人で幻想郷中を歩き回って春度を集めている。霊夢ちゃんや魔理沙に気取られないように時々神社に顔を出しつつ、便利屋の依頼をこなしつつ、紅魔館の前でメイちゃんと組手しつつ。ぶっちゃけめちゃくちゃ大変だ。

 そして春度を集めまくれば終わり……というわけもなかった。冬が長引いて春の到来が遅れると、考えられる不利益は作物の影響だ。もし春が来ない影響で種蒔きが遅れて、不作にでもなってしまえば一大事だ。俺みたいに限られた人間だけが里の外で食料を探してこれるが、普通の人間では妖怪のエサになって終わり。

 そんなことにならないように、里で管理してる畑に近づいてコッソリと春度を使()()。春の結晶がこの春度なら、砕けば辺りに春が蒔かれると踏んで使ってみたらこれが正解だった。厚く積もっていた雪は徐々に溶けて、僅かに地面が見えるようになった。春は近い。

 ……と、集めては少し使い、また集めては少し使ってを繰り返している為に春度があまり集まらない。くっ、これでは妖夢ちゃんを辱しめる計画が……。

 家の中でウンウン唸っていると、戸を叩く音が聞こえてくる。はいはいどなたかしら?

 

「……こんにちは、詭弁さん」

 

「誰かと思えば妖夢ちゃん。何の用だ?」

 

「私と勝負してください!」

 

「良いよ」

 

「勿論突然こんなことを言われて困惑するのも分かりますが、これは便利屋の詭弁さんに依頼していると取ってもらっても構いません!」

 

「んぃ、だから良いよ」

 

「今日はキチンとお金を持ってきました!これでどうか勝負を受けてください!」

 

「良いって言ってるだろ乳首抓るぞ」

 

「…い、今なんて?」

 

「しつこいから乳首抓るね」

 

「止めてください!!」

 

 乳首をつねり損ねた妖夢ちゃんの言うことには、白玉楼の庭師であり剣術指南役でもあるのだが自分自身まだまだ半人前で、一人で刀を振り続ける修行だけでは限界もあるとの事。

 

「そこで同じ長物を扱う詭弁さんと試合をすることで、自分に足りない物を知る機会を作ろうと―――」

 

「理由は本当にそれだけ?」

 

「……そ、それと詭弁さんが持っている大量の春度を取る為に……」

 

「そういうのなんて言うか知ってる?」

 

「う、うるさい!変に交換しようとしてまた下着取られては堪ったものじゃありませんよぉ!」

 

「安心しなって、今度は上着()貰うから」

 

()!!?何一つ安心できる要素が無いじゃないですか!!!」

 

 閑話休題。

 まあ俺も強くなるという目標があるから、この手の勝負事はわりと歓迎だ。素手での組手はメイちゃんと行っているが、陽輝棒は組手では使わないから中々上達した感じがしないのだ。

 とまぁ、そういう事で人里から少し離れた開けた場所に移動し、間合いを取る。

 

「……私が勝ったら、詭弁さんの持っている春度全てを渡して貰います!」

 

「じゃあ俺が勝ったら妖夢ちゃんの着ている服全て渡して貰います」

 

「さっきの本気だったんですか!!?嫌ですよっ!!!」

 

「じゃあ服は着たまま一晩シケこむというのは……」

 

「シケこっ……!?だ、ダメですッ!!そういうのはちゃんと婚姻してから行う事ですからッ!!」

 

「ほう、じゃあ俺が勝ったら妖夢ちゃんと結婚するというのは?」

 

「ふええっ!?ほ、本気なんですか!?」

 

「それは妖夢ちゃん次第かなぁ。まあ、妖夢ちゃんが勝てば良い話じゃないか」

 

「そうですが……うぅぅ…………やっぱりダメですっ!!!」

 

「じゃあやっぱり、最初言った着ている服全部で良いな?」

 

「くっ……変態っ!」

 

 はいそうです。

 そうして始まる模擬戦。限りなく実戦に近い()()は、一気に互いの()()のギアを高めていった。

 妖夢ちゃんの振り下ろす刀と俺の陽輝棒の薙ぎ払いが交差する。ガァンとまるで巨岩を撃ったかのような手の()()に、手加減している余裕はないと意識を切り替えた。

 

「『身体強化魔法(エンハンス)』」

 

「くっ……!?一筋縄ではいきませんか!」

 

 魔法と()()()()によって身体能力を爆発的に上げ、残像が残る程の突きによる連撃を御見舞いする。だが妖夢ちゃんはその全てを見切って紙一重で回避しきった。

 

「次はこちらの番です!」

 

 妖夢ちゃんは長い方の刀を両手に持ち、刀を振り回す。振った後の残像が飛んできて、その直線状にある物を切断していった。

 

「飛ぶ斬撃!?ンだそれ面白いな」

 

 牽制の光弾を撃ち、妖夢ちゃんの脚を止めさせる。完全に脚が止まった所に陽輝棒を伸ばして振り抜く。妖夢ちゃんは刀で受け止めるが、身体強化されている俺の攻撃を受け止めきることが出来ずに薙ぎ飛ばされる。

 

「うぅっ!(力が上がったッ!?真正面から受け止めるのは不味いっ!)」

 

「離れた所を狙い打つ。『驚愕魔弾(ジャックインショット)』」

 

 妖夢ちゃんをホーミングする弾幕を張り、追撃する。無数の魔弾は駆け出す妖夢ちゃんを追い続け、追い詰める。

 

「く、しつこいです!」

 

 振り返り、魔弾を斬り落とす妖夢ちゃん。だが魔弾はそこから真価を発揮する。

 斬られた魔弾がはじけ、内側から氷の礫が飛び出す。予想してなかったのか、体勢を崩しながらかすり避け(グレイズ)。その隙を見逃さない。

 如意陽輝棒は多少の距離をものともしない。グンと伸ばして妖夢ちゃんを突く。

 

「ぐうっ!?(里の外を平然と出歩くだけあって、やはり強い……っ!)本気を出させてもらいます!魂魄『幽明求聞持聡明の法』!」

 

 妖夢ちゃんの側に憑いていた半霊が人となり、妖夢ちゃんが二人に増えた。そんなん有りかよ。

 

「「いきます!」」

 

「いやぁ勘弁。『斜陽陰気(トワイライトブラック)』」

 

 陽輝棒を強く光らせる。陽輝棒は日の光、つまり陽の気を操るだけじゃない。光が強まれば影もまた濃くなる。強い光に照らされた俺の影が()()()()()、増えた妖夢ちゃんの片方に向かう。

 

「「増えた!?」」

 

「影分身の術ってな。さあ第2ラウンドだ」

 

 影分身の俺の両腕に冷気が纏われる。冷気は氷の籠手となり、妖夢ちゃんの持っている刀を掴む。

 

「っ、冷たっ!!」

 

 冷気が刀を伝って妖夢ちゃんの手のひらまで通る。振り払うようにもう一人の妖夢ちゃんが影分身の腕を斬るが、一瞬霧のように散った後再び元の形に戻った。

 

「太陽が出ている限り影分身が消える事は無いぞ!」

 

「……ならば!」

 

 妖夢ちゃんは、今度は短い方の刀で影分身を斬る。影分身は氷の籠手で受け止めようとしたが、紙のようにあっさりと籠手ごと斬られて消滅した。

 

「やっぱり!白楼剣なら斬ることが出来る!影分身恐るるに足らず!」

 

「じゃぁもっといってみようか。『斜陽陰気(トワイライトブラック)3連』」

 

「……へ?」

 

 陽輝棒が更に強く光り、俺の後方に三つの影が出来る。影達は立ち上がり、妖夢ちゃん二人に向かっていった。

 

「なっ、何でぇ!?斬ったじゃないですか!!増えるなんてズルい!」

 

「先に増えたお前が言うな……。さあ、総攻撃だ!」

 

 影達は腕の氷籠手で、俺は陽輝棒で、増えた妖夢ちゃんごと囲んで叩く。妖夢ちゃん達は二刀と二刀で交戦するも、防戦一方だ。

 

「とどめ!『影四方凍結界(ボーダーオブトワイライト)』!」

 

 妖夢ちゃんから見て東西南北それぞれに俺と影分身が立ち、結界術で影分身ごと妖夢ちゃんを封印。そして封印の中で、影分身が自爆するように冷気を撒き散らす。

 そうして、あっという間に氷の棺が出来上がり。

 

 実戦で初めて影分身を使ってみたが、中々使い勝手の良い技だ。影分身自体に攻撃力が無いから魔法で補助しないとあまり意味が無いのと、影分身を出している間はずっと陽輝棒を持っていないと維持できない点が難点か。もっと積極的に使って習熟度を上げないとな。

 結界を解き、氷の棺を外側から破壊する。すると中から、寒さで縮こまっている妖夢ちゃんが這い出てきた。

 

「うぅぅぅ……寒いです……」

 

「影分身に氷のエレメンタルを持たせてたからな。強烈な氷属性魔法だったろ?」

 

「くぅ……本調子であればあの程度の技は破れた筈ですのに……」

 

「そうだな。じゃあなんで本調子じゃなかったと思う?」

 

「えっ……?そ、それは…………ずっと、詭弁さんのペースだったから……」

 

「つまりそういうことだ。勝負中、俺は常に自分のペース、自分の間合い、自分の()()で戦ってた。妖夢ちゃんのその刀は確かに長いが、その刀よりもっと長い間合いから攻撃され続ければそりゃいつかは負ける。じゃあどうする?」

 

「どう……するか……」

 

「一人で修行し続けて見える境地もあるだろう。でも、自分に出来ることを考えて、試して、また考えてって繰り返して、様々なことが出来るようになって見えてくる景色もあるはずだ。色々考えてごらん?」

 

「……詭弁さんは、もしそうなった場合にどうしますか?」

 

「俺だったら兎に角相手の意表を突く事を意識するね。魔法で地面を掘るとか、武器を投げるとか」

 

「武器を捨てるんですか!!?」

 

「捨てはしない……が、武器よりも俺の命の方が大事だ。必要なら大事に使ってる如意陽輝棒(コレ)も手離すだろうね」

 

「……愛着は、無いんですか?」

 

「あるに決まってるだろう。綺麗に輝かせるために一日一回は磨いてるんだぞ?でも、愛着があるからと言って判断を間違えば、待っているのは死だ。……まあ、とは言っても()()()程扱いやすい武器も無いから、コレを手離すのは本当に最終手段だな。むしろそんな事にならないように色々な奥の手を持っているワケでもあるし」

 

「……なるほど」

 

「んぃ、まぁ『道を極める』ってのは並大抵の覚悟や時間で達成出来るもんじゃない。時には寄り道回り道する事もあるけど、それは自分の中で()()にはならない筈だ。色々考えて、思いついた事を試してごらん。時間が合えば、こうして俺が試合出来るからさ。俺も色々試して鍛えたいし、俺に付き合ってよ」

 

「詭弁さん……!はいっ!何から何までありがとうございます!これからは剣を振り続けるだけでなく、必要な事は何か考える時間も取る事にします!」

 

「おう。しっかり考えれば、絶対無駄にはならねえからな」

 

「はい!ありがとうございました!それでは!」

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

「あの、なんでついてきてるのでしょうか……?」

 

「え?妖夢ちゃんの自室で、着ている服全部渡してくれるんじゃないの?」

 

「なんでそんな話になってるんですか!?」

 

「俺が持ってる春度全部と妖夢ちゃんが着ている服全部賭けるって話だったじゃないか」

 

「そうでした……(くっ、流れで帰って有耶無耶にする作戦が……)」

 

「流石に全裸で家まで帰すのは忍びないし、まあ折角だし妖夢ちゃん家までついてくよ」

 

「場所冥界ですよ!!!?死にたいんですか!?」

 

「でぇじょーぶだ。妖怪の賢者が『冥界までは地続きだから歩いていけるわ』って言ってた記憶がある」

 

「確かにそうですけども!!?普通生きた人間が冥界に来ます!?」

 

「そういう意味では俺は普通じゃないから平気だな」

 

「ああこの人はこういう人でした……」

 

「んまぁ、そんな訳で冥界案内ヨロシク!いやぁ妖夢ちゃんと『お家デート』とは燃えるな」

 

「『お家デート』とは!!?私と詭弁さんはまだそう言った関係ではないですよね!?」

 

「え?俺が『付き合って』って聞いたら、妖夢ちゃん『はい!』って答えてくれたじゃん」

 

()()そういう意味で言ったんですか!!?私てっきり試合に付き合ってという意味かと……」

 

「うん、試合デート」

 

「試合デートとはっ!!??」

 

 そうして、なんだかんだで妖夢ちゃんについていき冥界に入った。

 

 

 

 

 一か月後、詭弁は未だに人里に帰ってきていなかった。

 春は、まだ来ない。

 

 




ようやく東方妖々夢本編が始まる……ただし原作主人公たちの活躍場面はわりと割愛。


斜陽陰気(トワイライトブラック)
如意陽輝棒によって増幅された陰の気が具現化し人の形をとった物。動きは速いが、元がただの影なので質量はほぼ無い故に単体では攻撃力もゼロ。
魔法で武装する事で攻撃力を持つ事が出来るほか、弾幕の起点や結界術の基点としても使える。
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