詭弁ですよ!霊夢ちゃん!   作:名は体を表す

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(全略)
詭弁死す!デュエルスタンバイ!


冥界の空は明るいですよ!

 詭弁を見なくなって約一月。既に五月に入っていると言うのに、冬はまだ終わりを見せない。

 

「……それで、あのバカはまだ帰ってきてないのね?」

 

「ああ、居なくなる前から頻繁に里の外へ出ていたが、それでも里から3日以上離れる事はなかった。不在時に詭弁への依頼を纏めておく依頼箱も、ここのところ開けられた形跡もない」

 

「あの詭弁の事だ。どっかでのたれ死んでるなんてあり得ないぜ。大方どっかの妖怪の巣に移り住んでるだけだろ」

 

「なら尚更早く見つけなきゃいけないじゃないの。()()詭弁が女の子と一ヶ月近く一緒に居て、なにも起きない訳がないわ」

 

「おっ、そうだな」

 

 霊夢と魔理沙は人里に赴き、慧音に詭弁の居場所を問う。だが慧音もまた、詭弁を探している一人だった。

 

「……関係有るかどうかは分からないが、こうして冬が長く続いているだろう?だが、里の畑周りだけいつも雪が積もっていないんだ。……いや、本来ならそっちの方が普通なんだが、幻想郷中がこうだからな……」

 

「……ふーん。ま、一応見るだけ見てみましょうか」

 

「そうだな」

 

 そうして霊夢と魔理沙は里の外側にある畑を見に行く。すると見えてきたのは、周りが白銀の世界であるにも関わらず、雪が積もっていないどころか若芽がちらちら見え始めている畑が広がっていた。

 その辺を飛んでいた春告精を捕まえると、興味深い話が聞けた。

 

「ほう?つまり冥界は春真っ盛りだってことか?」

 

「そ、そうですよー……だからもう離して……」

 

「じゃあアンタなんで里まで降りてきたのよ」

 

「だって冥界にずっと居ると飽きるんですよー……詭弁さんにこの辺は春っぽいはずって教えてもらったから……」

 

「詭弁!?詭弁に会ったのね!?何処で会ったの!?案内しなさい!」

 

「会いましたけどー……だいぶ前の事ですから詭弁さんは居ないと思いますよー……」

 

「良いから案内し・な・さ・い!」

 

「霊夢が張り切ってるぜ」

 

 霊夢は春告精を捕まえ、冥界まで案内させる。魔理沙は首を振りながら、呆れたように霊夢の後に付いていった。

 

 そしてここにもう一人、長い冬を終わらせるため。それとついでに行方不明となった詭弁を探すために飛び立つ少女が一人居た。

 

「……咲夜さん、私の代わりにお願い致します……!」

 

「貴方のためではないわ。詭弁を見つけないと妹様がうるさいし、燃料が尽きる前にこの冬も終わらせてくるついでに探してくるわ」

 

 メイド服を着た少女が紅い館から飛び立つ。何の道しるべも無いが、なんとなく風上に向かって行くのであった。

 

 

 春は、まだ遠い。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 場所が変わって現世と冥界の境目にある幽明結界の前にて、幽霊()()が楽器をガチャガチャ掻き鳴らして音楽を紡ぎあげていた。

 騒霊のヴァイオリニスト、ルナサ・プリズムリバー

 騒霊のトランペッター、メルラン・プリズムリバー

 騒霊のキーボーディスト、リリカ・プリズムリバー

 騒霊の新人ヴォーカリスト兼ドラマー、????

 プリズムリバー三姉妹は新しく音楽団に加入した新人を歓迎する演奏を行い、新人の騒霊は即興で歌を歌いながら太鼓とも呼べない皮張りの板を叩く。そんなチャチな物であるはずなのに妙にサマになっていた。

 

「あはは!アンタ中々良い音感してるね!」

 

「歌も上手いし、あとはその楽器とも呼べないオモチャを何とかすれば言う事無しだわ」

 

「やっぱり生前から何かやってたの?」

 

「んにぃ……そう言われればずっと歌を歌ってたような気もしなくもない」

 

「もうじき大きなお屋敷でお花見が行われるわ。貴方はその時に大々的にデビューを飾るの!」

 

「私達プリズムリバー三姉妹と言えば、幻想郷でも有名な音楽団なんだから!」

 

「へぇ、『プリズムリバー三姉妹』に男の俺が加入したらなんて呼べばいいんだ?」

 

「うーん……『プリズムリバー四姉弟』?」

 

「俺が弟なのか」

 

「そりゃぁ貴方生まれたばかりでしょ?数えで一歳」

 

「私達こう見えて貴方より長く生きてるのよー。死んでるけど」

 

「長く死んでる?」

 

「腐ってそうね」

 

 歓迎の音楽を鳴らしながら会話をしている最中、その場に闖入してきたものが居た。紅白色のお目出度い巫女と白黒の不吉な魔女だ。

 

「妖精が急に逃げ出したと思ったら……アンタらそこで何してるのよ」

 

「見ての通り歓迎会中よ?」

 

「ガチャガチャ騒いでるようにしか見えないぜ」

 

「そりゃそうよ。だって私たち騒霊だもの」

 

「騒いでナンボよ」

 

「別にアンタらが何処で騒ごうがかまいはしないけど。それより……そこで何をしてるの、詭弁」

 

「んにぃ?俺の事か?」

 

「詭弁はアンタ以外に居ないでしょ」

 

「そんなこと言われても困る。俺は俺を知らないんだ。で、お前さんは誰だ?」

 

「……は?」

 

「彼は最近死んだばかりで、生前の記憶がないんですってー」

 

「冥界をうろうろしてたから話してみれば、なんかティンと来たからスカウトしたのよ」

 

「良い拾い物したわールナサ姉さん」

 

「んぃ、まあそういうわけで生前お世話になったっぽいが、俺は新たな幽生を送るから!えーと……巫女ちゃん?」

 

「……ふ、ふふふ。今の冗談は面白かったわよ詭弁。笑っているうちにさっさと帰るわよ」

 

「おい詭弁、下らない冗談言ってないで帰るぞ。ここら辺はなんか暖かいけど、幻想郷中は冬真っ盛りなんだぜ」

 

「……?ふーん、そう。帰るぞって言われてもなぁ……お花見も控えてるし、また今度で良くない?えー……白黒ちゃん?」

 

「……あぁ?この魔理沙様を忘れるとはどういう了見だ?健忘症か?」

 

「馴れ馴れしい子だな……挨拶ははじめましてからって親に教わんなかったか?」

 

「……はは、面白い冗談だぜ。なら思い出させてやるよ」

 

「死んでまで生前のシガラミに囚われるなんて……幽霊も楽じゃないぜ」

 

「あはは、慣れれば楽しいわよ!」

 

「じゃあ私たちのニューシングル聴いていきなさい!お代はその命よ!」

 

「シングル?カルテットでは?」

 

「そういう意味じゃなーい!」

 

『騒符「ライブポルターガイスト怪」』

 

 騒霊達は息を合わせて弾幕の雨を張る。四人の合同スペルによる弾幕は、避けるために針の穴を通すような精密な動きを強要する……はずだった。

 

『恋符「マスタースパーク」』

 

 極太のレーザーが四人纏めて薙ぎ払い、スペルカードを一気に粉砕した。

 墜落していくプリズムリバー三姉妹だが、男が声と気合いを発すれば墜落する以前より更に元気になって帰ってきた。

 

「あはは、素敵!なんだか力が湧いてくるわ!」

 

「今なら何でも出来そうよ」

 

「さっきはよくもやってくれたわね!百倍にして返してやる!」

 

『大合葬「霊車コンチェルトグロッソ害」』

 

 男の騒霊を中心に三姉妹が時計回りに周り始め、小さな弾幕を大量にばらまき出す。そしてプリズムを模した三本のレーザーブレードが小さな弾幕を屈折させ、複雑な弾幕の嵐を作り出した。

 

「もう一回纏めて倒してやるぜ!恋符『マスタースパーク』!!!」

 

 再び極太のレーザーが四人を纏めて薙ぎ払う……と思いきや、四人の前に大きなダイヤモンドのようなモノが出現し、レーザーを拡散させて被害を逸らした。

 

「ははは!派手なスポットライトをありがとう!」

 

「んのやろぉ!」

 

「どきなさい魔理沙。霊符『夢想封印 集』」

 

 大きな光弾が騒霊達に向かっていく。慌てて無数のダイヤモンドのようなモノで壁を作り出したが、それらを粉砕しながら騒霊達を叩き落とした。

 墜落していく男の騒霊を巫女が掴み、引きずるように振り回す。

 

「死体蹴りは止めろぉ」

 

「アンタは死体じゃないでしょ」

 

「確かに。それで俺を引き連れて何処に向かうんだ?」

 

「取り敢えず異変の黒幕の所よ。アンタらが行うお花見会場に案内しなさい」

 

「えー。良いよ」

 

 

 

「う、うーん……なんなのよあの巫女……」

 

「強すぎ……」

 

「あ、あれ?新しい弟は?」

 

「……拐われた?」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 そして時は進み、白玉楼へと続く長階段。そこに博麗の巫女With白黒の魔女feat.新人騒霊ヴォーカリストが空を飛んで階段を登っていく。

 

「色は~匂へど~♪」

 

「急に歌い出すんじゃないぜ詭弁」

 

「そのさ、俺の事『詭弁』って呼ぶの止めてくんない?俺の生前がどうだったか知らないけど今の俺はしがないポルターガイストだから」

 

「……お前本気で言ってるのか?」

 

「本気も本気だぜ。つーかそもそもお前らはなんなんだ?」

 

「おう、私達はともだ―――」

 

「嫁よ」

 

「嫁っ!?二人とも!?」

 

「ファッ!?おい霊夢!!」

 

「よく聴きなさい魔理沙。仮に詭弁の記憶が戻らなかったとしたら、この綺麗な詭弁のままに()()をする事が出来るわ」

 

「だからっていきなり嫁は飛躍しすぎだろ!」

 

「あら、良いの?じゃあ詭弁は私だけのお婿さんにするわ」

 

「……いや、それも……あーもう!おい聞け詭弁!今のは霊夢の悪い冗談だ!!」

 

「なんだ冗談か。その年で未亡人は何の冗談だと思ったが、冗談だったか。大丈夫大丈夫、生きてりゃそのうち結婚出来るさ。HAHAHA!!」

 

 騒霊の笑い声が遠くまで響く。その声に釣られたように、階段の上に二振りの刀を持った少女が一人浮いていた。

 

「……来ましたか。結局、詭弁さんが言った通りになってしまいましたね」

 

「……アンタは?」

 

「私の名は魂魄妖夢。持っている春度を置いて去れ、巫女、魔女!」

 

「生意気なヤツだな。だが、対詭弁用に組んだ戦術を試すには良い相手だぜ!霊夢、詭弁連れて先に行け!」

 

「言われなくても分かってるわよ」

 

「おいおい、俺の意見はー?」

 

 騒霊の首根っこを掴んで、刀を持った少女を飛び越えていく博麗の巫女。させじと刀を振るおうとしたが、その行動を魔女によって阻害された。

 

「お前の相手はこの私だ!」

 

「くっ、ならお前の春をすべて頂くわ!妖怪が鍛えたこの楼観剣に斬れぬ物など殆ど無い!」

 

 

 剣士の上を飛び越えて、白玉楼へと侵入した博麗の巫女と騒霊。白玉楼の敷地内には沢山の死霊が漂っていた。

 

「ああもう!死霊ばっかりでうんざりよ!」

 

「ええっ!?な、なんかゴメン……」

 

「アンタの事じゃないわよ!」

 

「しかし見事なまでの桜だな。すげぇ桜。超桜って感じ」

 

「幻想郷中の春は此処に集めていたのね。目的は何なのかしら」

 

「そりゃお花見だろ。桜見て、騒いで、あと酒でも飲めれば言う事無しだな」

 

「そう、でも残念ね。私はうちの神社の桜でお花見をするのよ」

 

「神社なのに桜が植えられてるのか?」

 

「何よ」

 

「知らないのか?桜の木の下には―――」

 

「―――死体が埋まっているのよ」

 

 白玉楼の縁側から突如声を掛けられて思わず振り向いた先には桃色髪の少女と、それに侍るように後方に座っている少年が居た。

 

「うぉ、俺だ!?俺が居るぞ!?」

 

「……知っているか?桜の美しい色は、下に埋められた死体の罪と血の色によって彩られているそうだ。俺の罪の色ってのは、どんな色だろうな?」

 

「なんだコイツ、俺と同じ顔して全然キャラ違うぞ!」

 

「アンタ等ちょっと黙ってなさい。それで、アンタが幻想郷の春を奪った黒幕?」

 

「ええ、そうよ」

 

「ならさっさと春と詭弁を返してくれる?私は神社の桜でお花見がしたいの」

 

「春は西行妖が満開になったら返すわ」

 

「なんなのよ、西行妖って」

 

「うちの妖怪桜。この程度の春じゃ、この桜の封印が解けないのよ」

 

「わざわざ封印してあるんだから、それは解かない方がいいんじゃないの?なんの封印だか判らないし」

 

「結界乗り越えてきた貴方が言う事かしら」

 

「ああそうだ!俺達ここのお花見でライブするんだから、春持ってかれたらライブ出来ないのでは!?」

 

「ここでライブ出来なくても神社でライブすればいいじゃないの」

 

「……それもそうだな!」

 

「ちょっと~、騒霊なら亡霊の味方をしてよー」

 

「そんな事言われても困る。と言うか俺とそっくりさんがソッチに居るんだからそれで我慢して!」

 

()()とはなんだ()()とは。陰気霊だからといって侮られる筋合いはない」

 

「え、なに?陰キャ霊?それでお前そんなド暗いの?」

 

「っていうかなんでアンタ達分裂してんの、さっさと一つに戻りなさい。さて、冗談はそこまでにして、幻想郷の春を返して貰おうかしら」

 

「最初からそう言えばいいのに」

 

「最初から2番目位に言った」

 

「最後の詰めが肝心なのよ」

 

 

「花の下に還るがいいわ、春の亡霊!」

「花の下で眠るがいいわ、紅白の蝶!」

 

 

 巫女と亡霊の少女が空に飛びあがり、美しい弾幕戦を繰り広げる。

 そして地に立つのは騒霊の少年と、全く同じ顔をした亡霊の少年。

 

「で、結局俺達ってなんなんだ?」

 

「俺達はある男の魂を陰と陽に分けた存在。互いに分けた為に生前の記憶が無いと言う」

 

「誰が?あの桃色髪の子が?」

 

「否、緑髪の少女だった」

 

「んにぃ……ここに来て新キャラ出さないでほしいな……で、どうすんの?光VS闇的な感じで戦えばいいのか?」

 

「陽ある限り陰は絶えず、また逆もしかり。無意味な事に費やす時間は無い」

 

「分かってないねぇー。無意味こそが人生だ……いや死んでるけど。んん?で、どうすれば良いんだ?ポタラで合体すればいいのか?」

 

「時が解決するそうだ」

 

「えー……じゃあ、歌う?」

 

「歌わない」

 

 白玉楼の空で盛大な弾幕勝負が繰り広げられている横で、白玉楼の敷地内に魔女・メイド・剣士・騒霊達と、続々人が集まってきた。

 

「うおっ!?詭弁が二人!?」

 

「あら……増えるのなら一人紅魔館に連れてっても問題無いわね」

 

「え!?増えてる!ルナサ姉さんどうしよう!プリズムリバー五姉弟になっちゃう!」

 

「うーん……何となく語呂が悪いから新しい名前考えようか」

 

「勝手に謎の団体に加えるな」

 

「ああ、幽々子様に殺されても知らないわよ……」

 

 集った面々が空の弾幕勝負を観戦していると、決着が着いたのか墜落していく桃色髪の少女。

 

「勝った!第三部完!」

 

「急に何言ってんだ詭弁」

 

 墜落していく桃色髪の少女を受け止める為に亡霊の少年と銀髪の剣士が落下地点に駆け込む……が、落ちていく最中に()()()

 

「なっ!?幽々子様!!?」

 

「……ッッ!!?皆、()()()()()()!!!」

 

 裂けんばかりに大きな声で警戒を促す言葉に、その場にいた全員が思わず身構える……と、その瞬間。白玉楼の奥にあるひと際大きな桜が一気に開花した。

 

「あれは、西行妖!なんで、このタイミングで!?」

 

「きゃっ!?」

 

 一筋の風が西行妖に向かって吹きつけたと思えば、その場にいた全員から桜の花びらが舞い上がる。

 

「春度!?」

 

「なんだあの桜!?春を吸ってるのか!?」

 

「うおぅ!?何だこりゃ!?引き寄せられるっ!」

 

「くっ、これは……!?」

 

 騒霊の少年と亡霊の少年が引き寄せられるように西行妖へ引きずられていく。

 西行妖の元に、二人の男女が立っていた。

 

「ゆ、幽々子様!?」

 

「詭弁!?おいおい、もう何が何だか分かんないぜ!!」

 

「どうしよう!男女比が完全に一対一になっちゃう!」

 

「メルランそんな事言ってる場合!?アレは絶対良くないものよ!!」

 

 剣士とメイドが亡霊の少年を、魔女と騒霊達が騒霊の少年を掴み引き留める。

 

 

 身のうさを思ひしらでややみなまし

  そむくならひのなき世なりせば

 

 

 風に舞い上がった春を吸収した西行妖から大量の弾幕が放たれる。それは『ごっこ遊び』の範疇を越え、生者も死者も等しく滅ぼす破滅の弾幕。

 

『「反魂蝶 -狂い咲-」』

 

 命を奪う大量の蝶が舞い上がり、光弾、光線が乱れ飛ぶ。空を飛んでいる巫女は悠々と避け続けるが、地面に立つ者達は決死の回避を強制し続けられていた。

 

「うおおお!!?飛べねえええええ!!!」

 

「くっ!お前達、俺の手を離して逃げろ!」

 

「馬鹿言わないでください!!貴方を置いて逃げられるわけないじゃないですか!!」

 

「連れて帰ると言った以上、意地でも連れて帰ります!」

 

「詭弁お前意地でも死なないんじゃなかったか!?男なら根性見せるんだぜ!!」

 

「馬鹿野郎お前馬鹿野郎絶対離すなよ!?手ェ離すなよ!?死にたくないぞ俺はまだ!?いや死んでるんだけどォ!!」

 

「貴方が居なくなったら誰がヴォーカルやるのよ!根性見せなさい!」

 

「いやぁぁぁ!!!今ちょうちょ掠ったぁぁぁ!!!」

 

「ちょっとリリカ!危ないから横で暴れないの!」

 

 時に光弾、時に刀、時にナイフ、時にレーザーで襲い掛かる弾幕の極一部を焼き払い、僅かに生まれた空間に身を投げ込んで弾幕の壁を避け続ける。

 

「全然キリがねえよ!もうあの俺のそっくりさん達ぶっ叩けばよくね!?」

 

「良い案ね、それが不可能って事を除けば!」

 

「恐らくですが、西行妖がため込んだ春を全て解き放つまで弾幕は続きます!何とか耐えましょう!!」

 

「でェそれはいつ全部解き放つの!?」

 

「分かりません!!」

 

「だぁーもぉぉぉ!!!『止まれクソ桜』!!!」

 

 ビシィッ!!

 空間が張り詰める様な割れた音が轟いたと思えば、西行妖から放たれていた弾幕がピタリと止んだ。

 

「……何?何事?今度は何が始まるの!?」

 

「今、貴方が止まれと言ったから止まったのかしら?」

 

「なんにせよ今がチャンスだ!一旦離れるぜ!」

 

「異議なし!」

 

 そして少し離れた瞬間、先程の勢いを取り戻すように再び弾幕が展開された。

 だが、その時には全員距離を取っていたので大きな問題は無く、そして西行妖から全ての春が解き放たれるまで全員無傷で乗り切った。

 

「お、終わり?今度こそ終わったの?」

 

「……そのようね」

 

「じゃあ後はとりあえず霊夢に任せて、私達は詭弁を回収して帰るとするか」

 

「ええ!?お花見は!?」

 

「神社でやればいいぜ。宴会と一緒にな」

 

「宴会!私達プリズムリバー三姉妹も呼んでくれるわよね?」

 

「勿論、宴会は自由参加だぜ!」

 

 静かになった西行妖の元に集まる男女四人。博麗の巫女と銀髪の剣士、騒霊と亡霊の少年。そしてその視線の先には、折り重なるようにして倒れてる男女が居た。

 

「だ、大丈夫なのかこれは……」

 

「大変だ皆!!二人とも息してない!!」

 

「そ、そんな!?幽々子様っ!詭弁さん!!」

 

「……二人とも死んでるから息してないのは当たり前だろう?」

 

「あ、そっか」

 

「アンタ達ちょっと退いてなさい」

 

 博麗の巫女が折り重なっている男女を引きはがし、女性の方を適当に投げ捨てた後男性の様子を調べる。

 

「幽々子様ぁぁ!!?ちょっと何してくれるの!!?」

 

「うるさいわね、ソッチは無事よ。……ふーん、身体自体は生きてるようね。良かった」

 

「つまりどういう事だ?」

 

「詭弁は霊魂だけを叩き出されている状態と言う訳よ。アンタ等を肉体に戻せば、詭弁は復活するわ」

 

「そうか」

 

「そうか、って……アンタ生き返られるのにそんな淡泊な……」

 

「元々()()()()になって、生前の記憶が無い故に生への執着も無かったからな。まあ、戻れるのなら戻ろうか」

 

「えーでも俺はもうちょっと幽霊生活を楽しみたいというか……」

 

「あ”あ”?」

 

「ひぃ、女の子がそんな顔しないで……」

 

「……まあ、なら先に肉体に戻らせてもらおうか」

 

 そう言って亡霊の少年は、魂の抜けた肉体に戻る。

 

「……ん、ぐぅ……何……?身体……重……」

 

「あ、あれぇ?俺まだ戻ってないのに、もう復活しちゃっていいのコレ……?」

 

「魂の半分だけで復活?普通は起こり得ないけど……あの変な棒の所為かしら?」

 

「あ、じゃあ俺は幽霊生活に戻りますね」

 

「アンタも戻るの!」

 

 巫女が騒霊の首根っこを掴んで、詭弁に押し込める。

 

「……あー」

 

「詭弁、私の事分かるかしら?」

 

「………………霊夢ちゃん?何でこんな所に?」

 

「……良かった」

 

「んにぃ?ん?ちょ、霊夢ちゃん?」

 

 巫女は詭弁に抱き着き、その胸で静かに涙を零した。

 

「アンタが死んだって……思ったら……寂しくて……そんな訳無いって思って……」

 

「んぁー……うん……心配かけたね。ごめんよ、霊夢ちゃん」

 

「嫌。許さない。罰として一生―――」

 

「おーい霊夢!詭弁!帰ってお花見の準備しようぜー!!」

 

「……アイツ元気だなオイ。んで、えー……今なんて?」

 

「……別に、何でもないわよ。ほら、帰るわよ。下らない心配かけた罰としてこき使ってあげるわ」

 

「ひえぇ、お手柔らかに……」

 

 そうして霊夢と詭弁は立ち上がり、魔理沙達と合流し並んで現世へと降りていった。

 生者達は現世へ行き、死者は冥界に残る。

 

「……あーあ。あの様子じゃ私達の事覚えてなさそうだったなー」

 

「フラれたわね、ざんねーん」

 

「ちぇ。まあ本当に死んだ時にまた誘えばいいか」

 

 騒霊の音楽団達は白玉楼から飛び立ち、再び何処かで音楽の練習をするために消えていく。

 

「……幽々子様」

 

「ふふ、失敗しちゃったわねぇ」

 

 花を散らした西行妖の元で、空を見上げて笑う亡霊。春が散っても、空は明るくなってゆく。

 

 

 

 長い冬が、終わりを告げた。

 

 




な、長かった……。

次回、宴会。


騒霊新人ヴォーカリスト兼ドラマー 名称不明

詭弁の陽の気が詰まった魂。歌を歌うのが得意。霊魂故に空を飛ぶのも得意。音感やリズム感も良いが、手先が絶望的に不器用。
主に気と霊力を扱う程度の能力を持つ。

幽明魔人の亡霊 名称不明

詭弁の陰の気が詰まった魂。近接戦闘に長け、主に妖夢の勝負相手として長物を扱っている。手先が器用だが口は不器用。
主に気と魔力を扱う程度の能力を持つ。
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