詭弁ですよ!霊夢ちゃん!   作:名は体を表す

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また閑話。
読み方はピンフではないです。


平和ですよ!霊夢ちゃん!

 人里での納涼百物語大会を何事もなく終えると、幻想郷ではひっそりと怪談ブームが巻き起こっていた。

 さて、そういった怪談ブームは流行り事に敏感な妖怪達の琴線に触れたらしく、『妖怪版百物語』とでも言うようなものが徐々に出来上がってきた。

 

 そんな時勢の中、俺は紅魔館の中庭に集まった妖怪達に『妖怪版百物語』を語っている最中だった。

 

「―――『博麗の巫女』は決して妖怪を逃しはしない。例えその身が滅び、魂だけになろうとも……絶対に妖怪を封印するのだ。そう、今日の犠牲者は……お前だァァァ!!!

 

「「あ”あ”あ”あ”あ”!!!」」

 

 互いの身体を抱き合い、ガチ絶叫する妖怪達。

 

「人を脅かす妖怪が、人間に驚かされてどうするのよ……ねえレミィ?」

 

「そそそそそうね!えっ?今なんか言ったパチェ!?」

 

「……何でもないわ」

 

 今この場所には、下はルーミアやミスティア・ローレライ、リグル・ナイトバグから、上は風見幽香や八雲紫といった大妖怪、他にもアリス・マーガトロイドや西行寺幽々子といった、そうそうたるメンツが集まっている。この会の主催者である紅魔館の主、レミリア・スカーレットが手当たり次第集めた結果だ。

 まあ勿論とでも言うべきか、大妖怪と呼ばれる者達にとっては取るに足らない話ばかりだったらしい。……極一部を除いて。

 

「もう、退屈な話ばかりでうんざりするわ。ゆかりんうんざり」

 

「大妖怪サマが退屈しない話とは何なのか是非ともご教授いただきたいものですねぇ」

 

「まぁ良いじゃん紫。たまにはこういう酒の肴があってもさぁー」

 

 わはは。と笑いながら豪快に瓢箪を傾ける伊吹萃香。酒を飲みながら参加してるのはお前だけだよ……と思いきや、わりと飲んでいる妖怪は多かった。

 

「ひい、何故山の四天王がこんなところに……」

 

 ビックリするくらい身体を小さくして隅に隠れているのは射命丸文。可哀想に、鬼に良い記憶が無いらしい。あーかわいそうかわいそう。

 

「という訳で次は、かつて幻想郷を支配したと言う『鬼』に関するお話。題して『鬼の退治屋』」

 

「詭弁さんの鬼っ!」

 

 俺は人間だ。

 

「さて、昔昔の遥か昔。刀を持った武士が世で活躍するより前の話。その時の人間達は―――」

 

 

 

 ◆

 

 

 

「―――その鬼は今でも地獄の奥底で妖怪達が墜ちてくるのを待っている。その身が燃え尽き、骨だけになろうとも……己の愛する女性を、半身と言える兄弟を、親しき友を、そして全てを殺した妖怪を地獄の業火で焼き殺すために……」

 

「ひぃ、地獄には落ちたくないー……」

 

「……ふう、馬鹿馬鹿しい。そんな鬼が居るわけ無いでしょ?」

 

「それはお前だァァァ!!!

 

「「「あ"あ"あ"あ"あ"!!!」」」

 

「それもういいわよ!!!」

 

「ん~……そんなヤツが昔居たような……」

 

 むう、永く生きている大妖怪を怖がらせるにはまだ足りないと言うのか……いや、まあそもそも大妖怪を怖がらせるのが無理難題と言えばそうなんだが、悔しいモノは悔しいのである。

 

 よし、こうなったらもう取って置き。今まで温めに温めた()()()で驚かしてやろう。

 

「……さて、長いようで短かった『妖怪版百物語』も、次で最後。大妖怪サマガタも、()()()()()()()()()()馬鹿話で締めくくりたいと思います。題して―――」

 

 

 ()()()

 

 

 そう口にした瞬間、八雲紫の纏う空気が変わった気がした。

 

 

 

 

 《月の都》

 

 昔昔の遥か昔。今此処に居る大妖怪達皆がこの世に生まれ落ちるよりも遥かに昔。今の世よりも、人の世界は()()していた。生まれたばかりの子供でも空を飛ぶのは当たり前。人の移動手段は歩きではなく、馬でもなく、もっぱら()に乗って移動するのが当たり前だった。

 その当時の妖怪は、()のように()()()()を食べるモノを指す言葉ではなく、主に人間を物理的に食べるモノを指していた。当時の人間にとって、『妖怪』とは『死』のメタファーであったのだ。

 当然、当時の人間はあの手この手で『妖怪』を遠ざけようとし、また失敗し続けた。

 

 しかしある日の事。人間は『妖怪』を遠ざける名案を思いつき、そして実行した。

 それは、『妖怪が居ない月に移住する事』。

 作戦は成功し、地上を支配していた人間全てが居なくなった事で地上に残された妖怪達はほぼ全て死滅した。

 

 それから『人』が居なくなった地上に、新たな『人』が生まれ、新たな『妖怪』が生まれる程に気が遠くなるような永い時間を掛けて、月で発展し続けた『月人』は、河童ですら目を剥くような卓越した()()()()()()を武器に引っ提げてこの地上を支配する時を伏して待ち望んでいる。

 

 忌むべき『死』であった『かつての妖怪達の残党』を全て滅ぼすために……。

 

 

 

「そして真っ先に狙われるのは、当然多くの妖怪達が住む楽園『幻想郷』。そう、もしかしたら月よりの使者は既に貴方の隣に居るのかも知れない……」

 

 そうして100本目の蝋燭に()()()()()

 

 煌々と燃え上がる百本の蝋燭に灯された火とは裏腹に、辺りの空気は淀んだように()()

 

「月の使者はお前だァァァ!!!

 

「「「あ"あ"あ"あ"あ"!!!」」」

 

「だからもういいって言ってるでしょ!!」

 

 最後に空気が弛緩し、漸く会は締めとなる。

 

「さてさて。()()より始まったこの会ですが、これにて100本目の蝋燭に火が灯った事で()()()とさせていただきます。……あぁ、そうそう。妖怪が怪談話の真似事は結構ですが、怪談話には『退治譚』が付き物です。努々人を侮るなかれや……。話し手は『二枚舌の妖怪』でお送りしました。それでは、これにて」

 

 百本の蝋燭が轟と音を立てて燃え上がり、俺を包む。

 火が収まれば、後に残ったのは『舌が二枚描かれているお面』のみ。

 ウソつきは地獄の炎で焼かれ死ぬのがお似合いだ、なんてな。

 

 以上、《陰》が紅魔館よりお届けしました。それでは、お粗末。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 同時刻、博麗神社。

 

「はぁぁー……暑くて何もやる気が起きないし、平和すぎて退屈だわ。詭弁、あんた何か異変起こしなさいよ」

 

「んにぃ……じゃ、会う妖怪全員のパンツを強奪していく異変でも起こすかぁ……」

 

「なら異変が起きる前に退治しておきましょ」

 

「待ってよ霊夢ちゃん、ちょっとした冗談じゃないかぁ……ぐわぁー」

 

 縁側でゴロゴロしてたら、霊夢ちゃんに叩き落とされた。ひどいよぉ、ぐすん。

 

「……暑いわねぇ」

 

「んぅー……まあ、もうすぐ夏も終わるから……もう少しの辛抱……っ!?し、しまったぁ!!!?」

 

「なっ……急にどうしたのよ詭弁!?」

 

「折角の夏なのに『水着回』が無いじゃん!!霊夢ちゃん!今すぐ霧の湖に行ぐへぇ!!?」

 

「慌てて損したわ」

 

 霊夢ちゃんから陰陽玉を投げつけられる。酷い仕打ちだ。

 

「うぅ……急に霊夢ちゃんの水着を見ないと全身の穴という穴から血を噴き出して死ぬ呪いに掛かってしまった……お願い助けて霊夢ちゃん……」

 

「野良妖怪の餌にしたら治るかしら?」

 

「容赦という言葉をどこに捨ててきた霊夢ちゃん……」

 

 くそっ、とりつく島もないとはこの事か。メイちゃんならゴリ押しすれば水着を着てくれたのに……ぐへへ、あの身体を思い出しただけでも勃――

 

「夢想封印っ!!!」

 

「ほぐわぁー!!!?なんで!?なんで急に夢想(むそ)ったの!?」

 

「なんかムカつくからよっ!」

 

「くそぅ!こうなれば強引にでも水着を着させてやるっ!そうしてスケベな脇を接写してやるぐへへ」

 

「夢想天生」

 

「えちょ―――」

 

 

 直後、俺の意識は三途の川まで飛ばされた。

 

 

「……はぁ。あたいはサボろうとする度にお前さんに邪魔される呪いにでも掛かってるのかい……」

 

「小町っちゃん!小町っちゃんも水着着る!?」

 

「あたいはいつも嫌になるほど()()()してるんだ。なんでオフでも水浴びしにゃならんのよ」

 

「なん……だと……」

 

 サラバ俺の幻想郷。もうこうなったら慧音先生の水着姿を拝むしかない……。

 

「という訳でまた会おうね小町ちゃん!」

 

「はいはい、もう来るなよ」

 

 

 そうして意識が博麗神社に戻ってくる。

 

 

「―――はっ!まだ見ぬ理想郷!?」

 

「……起きて早々何言ってんのよ……」

 

 意識が戻れば、目の前に霊夢ちゃんの顔が見えた。

 視線だけをキョロキョロ動かすと、どうやら博麗神社の縁側に寝転がされていたらしい。

 

 

 霊夢ちゃんの膝枕付きで。

 

 

「えっ、急にデレ期来た?」

 

「その頭落とすわよ!」

 

「ごめんなさいっ!」

 

 霊夢ちゃんの持ってるおおぬさの一撃が俺の腹を叩く。もー気まぐれなんだから。そんなんだから猫巫女とか呼ばれるんだよ……(呼ぶのは主に俺)。

 

「……あんた、今日は泊まってくでしょ?」

 

「んぇ、それはつまり結婚……」

 

「違うわよ!」

 

 だよね。うん。

 もーほんとに霊夢ちゃんは気まぐれなんだからー。

 年頃の異性をそう易々家に泊めちゃダメだぞぉー。

 

「あんただから良いのよ……」

 

「なんか言った?」

 

「別に、ご飯の仕度してくるから退きなさい」

 

「断るっ!もう一時間こうしてる!」

 

「後にしなさい!」

 

「後っ!?後って言ったね!?言質取ったぞ!?」

 

「あーもー……はいはい」

 

 そして霊夢ちゃんの膝から、ペッと膝から剥がされた俺は縁側でごろごろし続ける。本当は食事の準備とか手伝いたいが、こういう時霊夢ちゃんは絶対台所に入れてくれない。なんでかは知らん。

 即ち、暇である。

 

「……んぃ……もうすぐ日が沈むなぁ……」

 

 

 じきに、夏が終わる。

 

 

 

 そうして完全に日が沈んだと同時に、血相を変えて俺を探しに来た妖怪達が博麗神社に襲撃してきて全員仲良く霊夢ちゃんによってシバキ倒されたのはまた別の話。

 

 




「詭弁が!詭弁が火に包まれて!火が詭弁を焼き尽くしたと思って!詭弁が!詭弁生きてるじゃないですかやだー!!?」
「落ち着け、俺はずっと生きてる」

基本的に《陰》《陽》本体で記憶は共有してません。だから紅魔館で派手に格好良く消えた(と当人は思っている)《陰》がやってきた事は本体は知りません。
本体「紅魔館で百物語……ねぇ?」
《陰》「あ、俺それ参加したい」
《陽》「いてらー」
的な会話がなされたとか何とか。

『妖怪版百物語』
普通の百物語は夜になってから行い、蝋燭100本の火を一つづつ消していくのだが、妖怪版百物語は()()から行い、蝋燭100本に一つづつ火を灯していく。
更に話す怪談は『その場にいる妖怪の話以外』でないといけない縛り。嘘は可。
多くの妖怪が参加するので大抵の怪談はNGだが、そういう時に嘘八百の二枚舌、詭弁に話し手として声が掛かった。

霊夢ちゃんは詭弁と二人きりの時はわりと素直になってくれるんだ!可愛い!

伏線まみれな所で次回、永夜抄編!
と思いましたが、わりとダークネス展開が望まれてるので無い頭絞って書くね!無論、別作品として投稿するので座して待て!
と書いておきながら、しれっと次話投稿してるかもだから気長にね。

これからの更新内容について参考までにご意見をください。あくまで参考程度にします。

  • なるべく原作時間軸沿いで異変に絡ませて!
  • 気が付いたら異変解決してる体で日常回多め
  • 時間軸バラバラでも書きたい事だけ書けば?
  • ダークネス展開(R-18)はよ!
  • 詭弁君には違う世界線に行って貰いたいな!
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