詭弁ですよ!霊夢ちゃん!   作:名は体を表す

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ブンブン「便利屋って具体的に何やってるんですか?」
クズ「そりゃもう色々よ。人里の中だけで完全な自給自足は無理だから、里の外から建材用の木や岩を採ってきたり、食料を狩ってきたり、必要なら妖怪退治とかだ。後、俺や他の退治屋でもダメな妖怪被害が起きた時に博麗の巫女まで繋いだりとか、代わりに参拝しに行ったりとか。まあ本当に何でもやるよ」
ブンブン「へぇー。基本的に人里の外で活動してる訳ですね」
クズ「そゆこと」



紅い霧は割と迷惑!

 日差しの強い夏の日。妖怪退治のお礼として、里から大量の食糧や酒を乗せた大八車を博麗神社まで運んだ帰りの出来事だった。

 ふと見上げた西の空から紅い霧が広がっていた。わあおー。

 

「これは……異変じゃな!」

 

 瞬く間に紅い霧が世界に広がっていき、夏の日差しすら遮る程になってしまった。

 霧からは微弱な妖気を感じ取れ、放置すると何かヤベー感じがする。空の大八車を強く押し、急いで里に帰った。

 

 太陽が頂点から僅かに傾き始めた頃、里に戻ると霧は里内まで満ちていた。

 

「詭弁、戻ったか!」

 

「先生!」

 

 里内は閑散として、昼間なのに眠っているかのように静かだ。慧音先生はぐったりしている子供達を担いで、一時的に寺子屋に避難させているようだ。

 身体の弱い子供や老人が微弱な妖気を感じる紅い霧に晒されているのはマズいと判断し、先生は一か所に集めるつもりのようだ。

 

「詭弁、私は子供達を一旦集めていく!その大八車を借りるぞ!」

 

「はい!俺は先に寺子屋に簡易結界張ってきます!」

 

「頼んだ!」

 

 慧音先生に大八車を渡し、寺子屋に向かって駆ける。道中手ごろな棒を持って魔力を込めた。

 寺子屋に到着したら、寺子屋全体を囲うように魔力を込めた棒で地面に線を引く。この()は境界。線を引き終えたら、霊力を込めて言葉を紡ぐ。

 

「『排魔の陣結界』」

 

 ぼう、と線の内側がぼんやり光り出して紅い霧を弾いていく。

 その現象を確認したら寺子屋の中に入り、中で寝かされている幼い子供達に声を掛けていく。

 

「あ、便利屋のにーちゃん……」

 

「にーちゃん……大丈夫なの……?」

 

「はっはっは、安心しろお前ら!今はちょっと外が赤くなって、皆ビックリしてるだけだ!笑ってればその内何ともなくなる!皆少し外に出て鬼ごっこでもしよう!」

 

 笑いながら子供達を寺子屋の中庭に連れ出す。中庭も陣結界の内側だから既に紅い霧は排されていた。

 

「うわーメチャクチャ赤いな!こんな光景メッタに見れんぞ!」

 

「わー、スゲー……!」

 

「さあ、鬼ごっこをしようか!先ずは俺が鬼だ!皆、十数えるから逃げろー!あっ、寺子屋の外に出るなよ!はい、いーち!」

 

「きゃー!」

 

「にげろー!」

 

 さっきまでぐったりしていた姿は何処に行ったのやら、外に出て来た子供達は元気に走り出し、後からのっそり出て来た子供達も次第に元気を取り戻していった。

 

 ……これが、俺の能力。『言葉』にした事を現実に影響させる能力(ちから)だ。勿論限度はあるが、俺の言葉を聞いた人間に元気を与える事は造作無い。

 『排魔の陣結界』も、単にそれっぽい『言葉』と『陣』を用意しただけだ。簡単に準備が出来るが、多少腕に覚えのある妖怪なら難なく破る事が出来る。今はただ紅い霧を寺子屋から排除するだけだからこの程度で良かった。

 唯人が持つには過ぎた能力(ちから)。だからこそ俺は『妖怪寄り』の生を強いられている。

 

「詭弁!大丈夫そうだな……!」

 

「先生、戻りましたか」

 

 小さな子達と鬼ごっこしていると、慧音先生が戻ってきた。

 

「ああ。……しかし驚いた。こんな効果の結界をよく短時間で組めたな。子供達もすぐに元気が回復して何よりだ」

 

「そうですね。……先生、今度は里全体にこの結界を張ってきます。広いから寺子屋のより効果が薄いでしょうが、無いよりかマシです」

 

「お前は……。はぁ、無理をするんじゃないぞ」

 

「分かってますよ。先生は子供達の相手、お願いします」

 

「私からすればお前も子供なのだがな……」

 

 慧音先生の言葉には曖昧に返し、寺子屋から里の外に向かう。紅い霧は更に濃くなっていき、まだ昼間なのに辺りは薄闇が広がっているようだった。日が沈み、暗闇になる前に終わらせなければ妖怪達に襲われる確率が上がる。急がねば。

 

「……すぅー……『俺の脚は風のように速い!』」

 

 里の外を、魔力の込めた棒で線を引きながら駆け出す。この能力(ちから)で出来る事は幅広い。自己暗示による強化なんてお手の物。更に身体強化の魔法を掛けて駆け抜ける。

 それで約片時(一時間)かけて里の外周に線を引き、魔力を込める。里全体を覆う大きさの魔法陣なんてどれだけ魔力があれば起動できるのかは知らないが、これはあくまでも境界に過ぎない。弱小妖怪や或いは人間が何かの間違えで線を踏み消したとしても、効果が早々切れないようにするために魔力を込める。

 引いた線に魔力が満ちるのと同時に、俺の中にある魔力が丁度空になった。あーしんど。

 

「『排魔の陣結界』」

 

 霊力を込めて言葉を紡げば、結界は起動して紅い霧を里から排除していった。

 

「……はぁ、疲れた。後は……まぁ霊夢ちゃんが異変を何とかしてくれるでしょ……」

 

 真っ赤に染まった空を見上げながら呟く。うわー、太陽がもう全然見えねえや。

 辛うじて日が出ていると分かる程の薄闇に包まれながら里に戻ろうと―――

 

「気に入らないわね」

 

 ぞっとする程の()()が向けられた。

 手に持った棒を声のする方に投げつけた瞬間棒が弾け飛んだ。

 

「ふーん、勘は良いようね。それとも運が良いだけかしら?」

 

「……何の用ですかねぇ」

 

 臨戦態勢を取りながら狂気の発生源に顔を向けると、そこには幼き少女が()()()いた。

 里の外で活動する者達には、暗黙のルールがある。それは、『顔の良い妖怪には近づくな』だ。

 

「こんにちは、生意気な人間さん」

 

「ええこんにちわ。アナタはドナタでしょうかね?」

 

「ワタシは偉大なる吸血鬼ヴラド・ツェペシュの末裔、レミリア・スカーレットよ」

 

「初対面でいきなり嘘吐くなよ……」

 

「……」

 

 こんな言葉に関する能力(ちから)を持っている所為か、相手が嘘を吐いてるのかどうかが何となく分かる。なんというか、なんか……えー。偉大なる吸血鬼ヴラド・ツェペシュの末裔?嘘乙。

 

「……」

 

「……」

 

「それで?こっちが名乗ったら貴方も名乗るのが筋じゃないかしら」

 

「(無かった事にしやがった……)俺は詭弁答弁。一応普通の人間だ」

 

「そう。それで普通の人間如きが私の出した霧を弾くなんて、どういうつもりかしら?」

 

「どうもこうもねえよ。その霧のせいで子供達が体調不良起こしてんだよ」

 

「だから何?それがこの私に盾突く理由になると?」

 

「十分なるだろ……考えてもみろ。もし里の子供達全員が死んだらどうするつもりだ?里にはそれなりに若い男女が居るとは言え、新たに子供を産み育てるにも限界はある。ましてや子供達が死んだショックでマトモに出産できるかどうかも怪しい。そうすればいずれ若い世代が居なくなって人里は崩壊する。そして人が居なくなれば当然、人の心に由来する妖怪達も生きていくことは出来なくなるだろう。……幻想郷は終焉するだろうな。そうなったら妖怪の賢者がどう出るか……むしろ俺は怒り狂う賢者からお前を守ったんだが、礼の一つも言えないのか?」

 

 俺の言葉に沈黙するレミリア・スカーレット。霧が深くてよく見えないが、なんとなく顔が青ざめているようにも見える。

 ……まあ、半分以上は出鱈目のでまかせなのだが。まず間違いなくそんな事態になる前に妖怪の賢者が子供を何らかの方法で()()するだろうなぁ。

 

「……ん”ん”っ、まあいいわ。そんな事より唯の人間風情が私の霧を弾いたって事の方が重要なのよ」

 

()()()()?おいおい話は終わりじゃねえぞ。アンタがこの霧をいつまで出し続けるかは知らんけど、もしこの紅い霧が続くとどうなると思う?太陽の光が地表に届かなくなるじゃねえか」

 

「あら、良い事じゃない」

 

「ほう。太陽の光が地表に届かなくなるって事は、当然植物は育たなくなる。植物が育たなくなれば、草木を食べる虫や動物が餓え死に、それらを食べる鳥や肉食動物も餓え死に、当たり前だが人も皆死ぬ。それでも良い事だと?」

 

「……」

 

「草木が枯れたら、紅茶なんて飲めなくなるだろうなー。いや、そもそも紅茶を淹れる者が居なくなるな。まあ?偉大なる吸血鬼様は?そんな事になっても良い事だと言いますし?」

 

「うるさい!うるさい!」

 

 まあそんな事態になる前に妖怪の賢者が(以下略

 

「悪い事は言わんからさぁ、早いとここの紅い霧収めな?」

 

「まだ出したばかりなのに、すぐに引っ込めるような情けないマネできる訳無いでしょう!」

 

「そうか、うん……。本当に悪い事は言わないから、この霧を収めた方が良いぞ?じゃないとお前は後悔する事になる」

 

「ふん。人間に何言われても『はいそうですか』と収めるような事はしないわ」

 

「そうか……分かった。じゃあ少し昔話をしようか」

 

 

 昔々の話。まだ幻想郷の枠組みが出来たばかりの頃の話だ。

 妖怪は好き勝手暴れ、幻想郷の人間はその妖怪によって滅ぼされかけた……だが、そこでとある人間が立ち上がった。その人間は今まで一度も霊能修行を行ったことが無い()()()()()だったが、暴れる妖怪によって命の危機に瀕した時に眠っていた才能が開花した。

 その少女は天賦の才を持っていた。あっという間に暴れまわる妖怪の殆どを倒し、幻想郷を平定した。そうして彼女の力によって今の幻想郷の形、ひいては人里の礎が築かれた。……彼女の今際の際に、残った妖怪達に向けて『人里の人間を襲えば、黄泉の国からお前達を八つ裂きにする為に甦る』と遺言を残し、彼女は冥府の旅に出た。

 その彼女の魂を引き継ぎし者を、彼女の名から取り『博麗の巫女』と言い、代々幻想郷を見守っている。

 もし幻想郷を乱す者が居れば、其の物を()()()()にする為に……

 

 

「そして今代の博麗の巫女は俺と同年代でありながら、かの妖怪の賢者が『博麗の鬼才』と呼ぶほどに強い……。レミリア・スカーレット、アンタがどれだけ強いか分からんけど、死にたくなければ博麗の巫女が動き出す前に止めた方が良い……死ぬぞ」

 

「……嘘ぉ……」

 

「俺は何度も霊夢……今代の博麗の巫女な、が戦っている所を見た事があるが、ありゃぁ……ウン。俺は妖怪に生まれなくて心底良かったって思えるほどの蹂躙具合だ。少なくともどんな大妖怪相手でも霊夢に傷一つ付けることが出来るとは思えんね。こうして吸血鬼なんていう大妖怪が目の前にいても、霊夢に慣れてれば全然怖くねえもん」

 

「……私、死ぬの……?」

 

「霊夢はやべえぞ……なんせ弱小妖怪なら視線を向けるだけで滅ぼされる。多少腕に覚えのある妖怪でも一睨みで塵も残らない。霊夢が朝起きただけで幻想郷中の妖怪の一割が消え、ちょっと空を飛んだだけで山の天狗達は全て地に墜ち、霊力を込めてない唯のお札を投げつけただけで大妖怪に大怪我を負わせ、霊力を込めたお札を作ろうとした瞬間妖怪の賢者が土下座して許しを乞うレベルだからな」

 

「怖……」

 

「そんな人間居る訳無いでしょ……」

 

 俺達の頭上の()()が裂け、中から金髪の美女がぬるぅと垂れ落ちてきた。

 

「でたな隙間産業」

 

「スキマ妖怪よ。そんなニッチな商売してそうな会社みたいに言わないで頂戴」

 

「八雲紫、か……おい、なんか聞いていた話と違うぞ!このままじゃ私博麗の巫女に殺されるんだが!?」

 

「……あのねえ、レミリア・スカーレット……今の話、一から十まで全部その男のデタラメよ」

 

「……は?」

 

 心底頭が痛いと言わんばかりに額を押さえる妖怪の賢者。それとポカーンと口を開ける吸血鬼レミリア・スカーレット。

 さて、今の話的にこの異変は……まさか妖怪の賢者が一枚噛んでいる?え?やばない?

 

「ええ、お察しの通り。()()()()()()()()()()()

 

「ほぼ首謀者的なこのロリの自爆じゃぁ~ん……」

 

 やばたにえんののりちゃづけ。ヤバイ。何がヤバイって、今の()に盛大に引っかかったロリが結構な殺気を向けている&スキマ妖怪が俺を逃がす気が無いというダブルパンチ。

 なんで妖怪の賢者が異変に一枚噛んでいるのかは分からんが、きっと碌でもない事なのだろう。少なくとも、俺が今死ぬかもしれないという事に比べれば。

 

「詭弁、と言ったわね……?初対面で嘘を吐くな、なんてよく言えたわね」

 

「はっはっは、あんなに会話したんだから俺達初対面じゃなくて()()やん()()!なぁレミィちゃん!」

 

「人間如きに愛称で呼ばれるなんて虫唾が走るわ」

 

 いつの間にかレミリア・スカーレットのその右手に、紅い槍が握られていた。

 ほんの僅か魔法を齧っている程度の俺でも分かる。()()()()()()

 

「『グングニルの槍』を聞いた事あるかしら?これに狙いを定められたら、()()()()()()()()()()()()()の。コレは本物じゃないけど……()()()よ。私は()()を操る」

 

「は、はは……冗談すぎるぜレミリア嬢さんや。あ、そうだ!そんなモノよりもっといいモンあるぜ?コレ、『スペルカード』って言うんだけど」

 

「生憎、男と()()()()する趣味は無いわ」

 

「ぴえん」

 

 おい、なんか聞いてた話と違うぞ。今幻想郷で大ブームのナウなヤングにバカウケなお遊びちゃうんか。

 持っている槍先が俺の心臓に向けられる。ただそれだけでその心臓が凍り付いたかのように鋭い痛みが走った。それでも歯を食いしばって、両足で地面を踏みしめて耐える。

 

「フフフ、この槍を向けられて立っていられた人間は貴方で二人目……。有象無象なら槍先を向けられただけで地に這いつくばるわ。さあ、無様に泣き叫んで命乞いしなさい人間。そうすれば命だけは助けてあげる」

 

「……はは、命()()は、か。お優しい事で」

 

 それってアレでしょ。命(四肢欠損)でしょ。俺は詳しいんだ。

 

「そんな生き延び方なんて御免だね。例え地べたに這いつくばっても泥水啜っても生き延びるが、誰かに首を垂れる生き方なんて()()()()()だ。人間舐めるんじゃねえよ吸血鬼」

 

「威勢だけは良いのね。でも、そんなヤツはこの世にゴマンと居るわ……死に際にどんな顔をするのか見物ね!」

 

 レミリア・スカーレットがその紅槍を振りかぶる。吸血鬼ってのがどれ程の強さなのかイマイチ分からんが、幻想郷全体を妖力纏った霧で満たせるくらいには()鹿()()()存在なのは間違いない。そう、大妖怪の中でもトップクラスなのだろう。そんな妖怪に目をつけられた時点で『詰み』だったんだ、そもそも。

 ……もし、その力がトップクラスなら。当然投げる槍なんかは人間一人貫いた程度で止まる物じゃぁないだろう。俺の後ろには、里がある。()()()()。なら、せめて……

 

 ザッ!

 

「逃げようとしても無駄よ!この槍は既に貴方の心臓を捉えている!貴方が吸血鬼並みに速くとも、心臓を穿たれる『運命』は変わらないッ!!」

 

 レミリア・スカーレットが脚を一歩分踏み出す。それだけで地面が大きく揺れた気がした。構うものか。俺の後ろに、誰も居ない所まで。

 腰が捻られる。

 肩が伸びる。

 手首が曲がる。

 

 

 

 紅い槍が、神速で放たれる。

 

 

 

「■■■―――ッ!!!!」

 

 

 

 瞬間、俺の意識は消し飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お前が、何かしたのか……?八雲紫!」

 

「……いいえ。()()、何も」

 

「そう……か……(運命を()()()()()人間、か……。)くく、ふふふ、ふはははは!!!面白いッ!!!コイツはウチで預かるぞ八雲紫!」

 

「どうぞお好きに」

 

 レミリア・スカーレットと八雲紫の間には、心臓()()()()左肩が穿たれた男が倒れていた。

 




三話目にしてシリアス死しそうな主人公が居るってマ?

そして皆さん、もしかしたら察してるかもしれませんが……





割とタイトル詐欺です。すみません。

ギャグ!ギャグパートは霊夢ちゃんメインにしますから!!許して!!!お願い!!何でも(
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