詭弁ですよ!霊夢ちゃん! 作:名は体を表す
「……つまり、偽の月を作り、地上を密室にした意味は無かった、と?」
「そうね。月からの使者が博麗大結界を超えてくる事はまずありえないわ」
「と、いう事は今まで隠れて生活する意味は無かった……って事?なによそれ……」
床に崩れ落ちる八意永琳。
「うーん……答えは仮説1だったかぁ。なんだ、かぐや姫の難題も意外と大したこと無いな」
「かぐや姫?何言ってんだお前」
「いや、そこでボコボコにされてる女の子が『竹取物語のかぐや姫』その人なんだと」
「はぁ、アレがねぇ」
「アンタが本当の黒幕ね!覚悟しなさい!!」
「詭弁さんと何していたか洗いざらい吐け!」
「ちょっと!!もう月は返したんだから弾幕放つのは止めなさいって!」
「……全く、血の気の多い連中だな」
「吸血鬼なんだから当たり前でしょ?」
「なるほど確かに。はぁ……あー疲れた……じゃ、俺はもう帰って寝る。つーか伊吹萃香の所為で完徹だよ」
夜が明けて朝になり、ようやく帰路につく。朝日に照らされた竹林の緑が眩しい……。
「ふぁぁ……ぁー眠ぅ!」
「どうやって永遠亭から里まで戻るつもりウサ?」
「げぇ、因幡てゐ」
いつもの如くニヤニヤと笑いながら茂みから顔を出す因幡てゐ。
「ウサウサ……無事に月を取り戻せたみたいだね」
「あ~?お前さっきの異変についてなんか知ってるのか?」
「そりゃ勿論。アタシがどれだけ永くこの竹林に居ると思ってるの?
「はぁー、つまりお前もここの奴等とグルだったって事……あ?待て待て、じゃあなんで永遠亭の連中はこの異変を起こした?昔からずっとこの幻想郷に居るお前が博麗大結界の事知らない訳ないだろ?」
「さぁて、なんでだろうね?」
より深くニヤニヤと笑う因幡てゐ。コイツ、さてはワザと博麗大結界の事話さなかったな?
「お前が大結界の事話してればこんな面倒な異変起こす事も無かっただろうに……」
「ん、そうかもねー」
そうすればこんな辺鄙な所に好き好んでくる奴も……待てよ?
「『異変を起こす事で力有る者を此処に招く事にした?』」
仮説2が脳裏をよぎる。『永遠の秘術を破る』、そんなもの術を掛けた者が外せば事足りる。なのに態々回りくどい手を使うのは、
「なんでそんな回りくどい事を……」
「決まってるでしょ?楽しい事は皆でやるモンさ。さ、野暮はそこまでにして里まで送ってやるさね」
そうしてぴょこぴょこ駆けて行く因幡てゐ。俺はその後を無言で追いかけた。
◆
家に帰りひと眠り。
あー良く寝た。
「起きたか」
「んぇ、妹紅先生」
妹紅先生が俺の部屋でタバコを吸いながら何かを読んでいた。
俺が布団から起き上がる頃には吸っていたタバコを消し、読んでいた本を閉じて床に置いていた。
「くぁ……ぁ。んで、妹紅先生は何の用で此処に?」
「……昨日
「あーそれは態々どうも(
「竹林にか?」
「え?ええ……あっ、そういえば妹紅先生と同じ『蓬莱人』を名乗る女の子に――」
「――輝夜に会ったのかっ!!!?」
突如凄い目つきで俺に掴みかかる妹紅先生。首が絞まるぅ……。妹紅先生の胸を揉んで宥める。
「ドサクサに紛れて何処触ってる!」
「痛いっ!」
思いっきりグーで殴られた。先に絞めてきた方が悪いと思うなぁ!
「……ったく、で?」
「で?」
「輝夜と何かあったか聞いてんだよ!」
「えぇ……何かあったと言えばありますし、ないと言えばなかったですし……」
「ハッキリしろ!」
「かぐや姫の難題を出されました」
なんで妹紅先生そんな敵意剥き出しなんですかね。ほら今も思いっきり歯をギリギリ鳴らして……。
「それで!?」
「えっ」
「それでお前はその難題に答えたんだろ!?そしてお前はかぐや姫の婿になった!違うか!?」
「全然違いますけど」
嫁に取るならまだしも、婿入りするのは……って、もしかして。
「妹紅先生、かぐや姫に嫉妬してんの?」
「はぁ!!?」
「大丈夫だよ妹紅先生!あんなこけし体型より妹紅先生の方がよっぽど立派な体つきしてますから!ほらおっぱいもこんなに揉みごたえあるブグッ!!?」
「誰が!誰に!嫉妬してるって!!?」
殴るところソコ?というか、妹紅先生と輝夜ちゃんは少なからず因縁が在るらしいな。
もしかして同じ蓬莱人であることに何か……はっ!そういえばかぐや姫は月に帰る(実際には帰ってないけど)時に不老不死になる薬を置いていった筈だ。その不老不死の薬を、なんの因果か妹紅先生が飲んで今に至るのでは!?
そうか……不老不死ってのはよく分からなかったけど、要するに永遠という時間に囚われ続ける事なんだな。あのかぐや姫も、妹紅先生も……ということは、俺が死ぬまでずっとこのおっぱいの張りが維持されるということか?
「ありがたいからとりあえず揉んどこ」
「何がだ!?」
妹紅先生のおっぱいをフニフニしてぶん殴られた後、玄関からノック音が聞こえた。
「おや、朝早くに誰だろう」
「朝って……今はもう昼過ぎだよ」
「……あっ、そうか。徹夜して寝て起きたら昼か」
昨日の異変のせいで時間感覚狂ってもーた。
そうこうしてると再びノック音が。はいはい今出ますよ。
「はーいどちら様ー」
「遅いわよ。姫を待たせるなんて随分偉いモノね」
扉を開けるとかぐや姫がどーん。
「すみません昨日の今日で……」
更にお供ウサギのウドンゲちゃんがどーん。
いや何の用だよ昨日の今日で。ウドンゲちゃんにいたっては昨日と性格違うくない?
「その声っ……!!輝夜ァ!!お前こんなところに何の用だ!!!」
「あら妹紅?貴方こそこんなところで何をしてるのよ」
「先に私の質問に答えろ!!」
妹紅先生が背中から炎を出しながら輝夜ちゃんに凄む。家が火事になるから止めぃ。
「嫁入りに来たのよ」
「あ?」
「はい?」
「だから、詭弁に嫁入りしに来たのよ」
「あっ、正確に言うと嫁入り
ああ、それでウドンゲちゃん背中に大量の荷物持ってるのね。あーなるほどーハイハイ。
「納得するかぁッ!!!」
妹紅先生の背中が更に激しく燃え上がる。だから火事になるから止めろって。
「なんでお前が嫁入り修業なんかっ……!!つーか修業するなら自分の家でしろよ!!!」
「あれだけ徹底的に私の魅力を否定したんだもの。なら
「ほーう、それで俺に嫁入りと」
「修業です、嫁入り修業。絶対に貴方に嫁ぎはしませんので。……はぁーお師匠様もなんで許可しちゃうのかなぁ……(いや待てよ?流石にいきなり押し掛けても普通は門前払いされる……そして家主の顔を立てて出直し、改めて姫様とお師匠様を説得すれば……)迷惑、ですよね?もしそうならまた出直し―――」
「良いよー。嫁入り修業だろうが本当に嫁入りしようが全然オッケー!」
「えっ、ええっ!!?良いんですか!?」
「あらイナバ、意外と乗り気?」
「いや、今の『良いんですか!?』はそういう意味じゃないですよ!?」
「おい詭弁ッ!!!お前さっきと言ってる事が違うじゃねえか!!!!」
更に火が強まる。だから火を止めろって。
「なにも違いませんよ。『俺が婿入り』するのと『向こうから嫁入り』するのじゃ意味が違うじゃないですか」
「変わんねえだろっ!!」
「俺が『蓬莱山答弁』になるのと、『詭弁輝夜』になるのでは全然違うと言ってるんです」
「だから婚姻する事には変わんねえだろう!!!」
メチャクチャ火が強まって、遂には玄関の屋根が黒く焦げだした。あーもう……。
「だから」
「あ”ぁ!?」
妹紅先生の首根っこを掴む。
「火を止めろって」
「あっ!!?何をす―――」
腰を強引に倒し、妹紅先生の尻を突き出させるように体勢を固定する。
「言ってるでしょうがっ!!!」
そして妹紅先生の尻を手のひらで思いっきり強く引っ叩く。
「あぎっ!!?」
パァンといい音が鳴った。火は収まった。
「里ん中の、しかも人ん家でよくまあボォボォ燃えられますねぇ貴方は!!」
「やめッ!!はぁッ!!?」
パァン!パァン!と里中に響き渡るのではないかと言う程に強く尻を叩き続ける。
「天井見てくださいよ!妹紅先生の炎で焦げてるじゃないですか!」
「待っ!!?待てっ!!?」
「火事になったらどうするんです!?俺の住むところ無くなりますが!?」
「止めろォ!!?止めっ……!?ぁ……っ!?♥」
「わかったならしっかり反省してください!!」
「わるっ!!♥悪かったってぇ!!♥謝るっ!??♥あやまるからぁっ!!♥」
「里の中でムヤミに火を焚かないで下さいね!!背中から炎を噴出させるなんてもっての外!!!」
「わかったっ!!♥わかったからぁ!!♥おしり……っ!?♥おしりたたかないでぇ……!!♥」
妹紅先生がポロポロ泣きだし、しっかり反省したようなので解放する。
「うぅ……お、覚えてろっ!!」
そうして尻を押さえながら捨て台詞を吐いて外に走っていった。……オシオキ不足かな?
「……ねえイナバ?」
「はい。怒ってますけど、波長はビックリするほど平常ですよあの男」
「無自覚なのね……キレる若者ってヤツかしら」
「な、なんにせよ変に怒らせない方が良さそうですね……」
……さて、妹紅先生はともかく。
「じゃ、早速二人が住む部屋に案内するよ!永遠亭ほど広くないけど、元々三人で暮らしてた家だから普通に暮らす分には余裕あるから大丈夫!それにいい加減ウドンゲちゃんの背負ってる荷物降ろしたいでしょ?さあさあいつまでも玄関に居ないで中に入った入った!」
「ま、まあ気を取り直していくわよイナバ。詭弁!貴方を私の新たな魅力でギャフンと言わせてあげるから!!」
「うぅ……本当にやるんですかぁ……」
「早速だけど寝室は俺と共用で良いよね!」
「良くない!!!」
◆
引っ越し……と言うには簡素なモノだが、まあ一応引っ越しは終わった。どうにも二人は俺の家と永遠亭を行ったり来たりするらしい。
荷解きを終え、俺の家の設備等を説明し終えたらもう夕暮れだ。
「おぅ、こんな時間か。輝夜ちゃん、ウドンゲちゃん、そろそろ神社に行くよ」
「ああ、宴会ね。異変の終わりには必ずそうするんだっけ?」
「『必ず』って訳じゃないんだけど……なんかそういう
「……あの、『ウドンゲちゃん』って呼ぶのは止めてもらえませんか?」
「そんな事言われても。そもそもウドンゲちゃんの正しい名前知らないし」
「あぁ、そういえばちゃんと自己紹介してませんでしたね。私の名前は『鈴仙・優曇華院・イナバ』です」
「ははは、俺に負けず劣らずの変な名前だ。なんで『ウドンゲちゃん』はダメなんだ?」
「変な名前……やっぱりそうですよねー……まあ『詭弁答弁』も相当変ですけど。とにかく『ウドンゲ』って響きが変なのと、あんま可愛くないじゃないですか……」
「そうかな?そうかも」
「適当ねぇ」
「とは言え、呼ぶとしたらー……イナバちゃん、じゃぁ因幡てゐと被るし、やっぱレーちゃん?」
「『ウドンゲちゃん』よりはマシかー」
「んぃ、でもさレーちゃん。『変なこと』って悪い事かな?」
「……えっ?」
「『変わってる』と言えばマイナスなイメージに思えるかもだけど、言い替えれば『唯一無二の個性』さ。ありきたりな言葉じゃ言い表せないような意味がその名前に込められてるんじゃないかな」
「唯一無二の個性……」
「まぁ『鈴仙・優曇華院・イナバ』って名前は変に思うけど、俺は好きだよ」
「!?」
「おっと、酒を大量に買ってこないと。じゃぁ輝夜ちゃん、レーちゃん、先に神社向かっといて。後から行くから」
「あっ……行っちゃった……」
「……落ちたわね」
「落ちてませんっ!」
◆
博麗神社に到着すると、既に俺以外が揃ってる状態だった。
「遅いわよ!」
「んぃ、ゴメンゴメン」
「じゃー詭弁も来た事だし、そろそろ始めるか!よし詭弁!そのまま乾杯の音頭取れ!」
「あいよ。えー……この度結婚して同棲することになりました。かんぱーい!」
「かんぱー……え?」
「「「 はぁ!!!? 」」」
波乱の宴会の幕開けである。
次回!詭弁刺される!(嘘)
月人の考えることは解らん(エキストラストーリー感)