詭弁ですよ!霊夢ちゃん! 作:名は体を表す
母さんが復活してから数日経った。俺は何とか母さんに
「ふふふ。どうも地獄に居た間、身体は年を取っていないようね。むしろ若返った気分……今の私は全盛期よ(性欲的な意味で)」
「だからそれを息子に言ってどうする」
「貴方は私の息子でもあるけどその前に一人前(意味深)の男だという事を自覚しなさい」
「俺が一人前の男になる前から俺の母親なんだから自覚しなさい」
「あらあら勉号さんに似て口も上手くなってムラムラしてきたわちょっと寝室に来なさい」
「行かねえよ!!?」
これが普通に赤の他人とかだったら全然問題ない……むしろバッチ来いくらいの感覚なのだが、相手は母親である。どうして……。
そして下手に
「答弁。今の私の嗅覚は、たとえ一日前の
「どういう事なの……」
と風呂場だろうが便所だろうが、鍵を閉めていても持ち前の『開錠スキル(物理)』で入ってくる始末。
そして最悪の手段として
「おい詭弁……お前、凄い顔色してるな……」
「おう五福……それはそうとお前死ねェ!!!」
「おぼぶゥ!!?」
溜まってるムシャクシャと天子ちゃんとの結婚式を台無しにしてくれた怒りを込めた
「ゴボッ!?お、お前……容赦ねえな……」
「可愛い女の子との結婚を邪魔したヤツに対する行動としては非常に慈悲のある方だと思いますが」
「それはスマンて!だがオレの言い分も聞けって!」
「聞いたらお前を沈めていい?」
「良い訳ねえだろなんだよその殺意の高さは!?」
五福曰く、幻想郷天下一武闘会は天子ちゃんと俺に対するヘイトを下げる意味もあったらしい。幻想郷全体を
「ましてやお前は幻想郷一
「……お前が全部考えたのか?本当に???」
「…………天人の名居守さんにアイデアを出して貰いました」
お前さぁ……。いや、もう過ぎた事は良いとしよう。
「しかし……まあ、なんだ?お前のお母さん……生きててよかった……な?」
「何で疑問形なんだよ」
「いやぁ……だって、なあ?意味分かんねえよ。お前目当ての妖怪全員里から排除しながら……今もお前にずっと引っ付いてるとか理解の範疇超えとる」
「それな」
そう、今の俺は家の外に出ようものなら背中に母さんが飛び付いてくるという謎仕様を受けている。無論、今も。これなんて刑罰?
「しかし……あれだな、それだけ強ければ里でも伝説になっててもおかしくないと思うんだが」
「
「ふーん……『人は忘れられた時に再び死ぬ』って言うし、妖怪の賢者もそういうのを狙ってたのかねー」
「さて、八雲紫の真意なんて理解できるとも思えないが……っと、今日はまだ依頼が残ってるんだった。じゃあな」
「ん、おう。…………結局背中の母親、一言も喋らなかったな?」
「……答弁、答弁」
「なんだよ母さん」
「さ、さっきの人は貴方のお友達……?あ、挨拶とかした方が良かったかしら?母親として」
「そんな事気にするくらいなら初めから背中に引っ付かなければいいのに」
「む、無理よ……だって相手が妖怪とかならブッ殺……退治すればいいけど、に、人間の男と目を合わせるなんて……そのうえ会話とか……う”ッ、想像しただけで吐きそう……」
「俺の背中に吐くなよ!?つーかそれでよく父さんと結婚出来たな!?」
「あの人はすごく会話しやすかったから……」
両親にコミュニケーション能力に差があり過ぎ問題。つーかそんなナリでコミュ症なのかよ母さん。
「人間の男相手だけよ……妖怪とか、同じ女だったら普通なのよ?」
「ンのくせに日常的に『セックスしてーなー』とか言ってんのかよ」
妖怪はアレだろ?どうせ最終的に殺せば同じか、みたいな思考回路だからだろ?
「そ、それにお酒入ればもっと饒舌よ私!」
「はいはい」
酒入って急に滅茶苦茶な距離のつめ方とかしか予想出来ないんだが。父さんは本当によく母さんと結婚したな……。
「答弁今失礼な事考えてる!?母親だから分かるのよ!?」
「母親なら今息子が抱えてる不満も分かって?」
「大丈夫よ!一発ヤれば気にもならなくなるわ!」
「ンもうそういう所だぞ!?」
誰か助けて……。
* * * * *
-人里外-
「はぁ……はぁ……こ、これが『先代巫女』の力……か……!」
「くっ……
「天狗共。悪い事は言わないわ、今すぐ山に戻りなさい。答弁たっての希望だから五体満足に留めてあげてるけど、貴方達程度の雑魚妖怪を原形留めたまま攻撃するってのもかなり気を使うのよ」
「……椛、ここは一旦引くわよ」
「くそっ……詭弁……」
「……やれやれ。これで……何組目だ?あの子が健やかに成長していた事は喜ばしいとは言え、人妖問わず口説きまわってるとはね。誰に似たんだか……親の私が答弁に適した嫁を探さないとね」
-妖怪の山 守矢神社-
「……と、いう訳で手も足も出せず、
「ふむ……ウチの早苗も追い返されたし、あの女の目的がイマイチ分からんな。何故詭弁に執着する?いくら息子とはいえ既に元服は済ませてる様な年齢だろう?」
「母親にとっちゃ幾つになろうとも子は可愛いものだよ、神奈子。……まあ、ありゃ流石に行き過ぎな気もするけどねー」
「里に隠れ住む、詭弁さんの事を慕う妖怪達を全員叩き出すのは行き過ぎとかそう言うレベルでは無い気も……」
「『先代巫女』ねぇ……それだけ強いのならもっと有名になっててもおかしくないのだけど……ブン屋、『先代巫女』に関するニュースとか残ってないのかい?」
「それが何処にも……私自身、以前にも『先代巫女』に接触した記憶自体はあるのですが、何故か『先代巫女』に関する記事の一切が残ってないんですよねぇ……
「ふむ……自分で隠してるのか、或いは
「じゃないと詭弁の童貞が実の母親に戴かれるという悍ましい結果になりそうだからね!」
「諏訪子、お前ちょっと黙ってろ……」
「ねえ白狼天狗、今も詭弁の貞操は危機に瀕しているんだろう?」
「えっ!?あ、えっと……」
「だから黙ってろ諏訪子!!天狗の子が凄い困ってるだろ!……はぁ、なんにせようまく『先代巫女』から詭弁を引き離すには実力行使じゃ難しいな。単純な力比べでも鬼に勝り、速さでも天狗に勝り、数の利をひっくり返す純粋な実力の持ち主。あの魔理沙や早苗、咲夜と言ったか?あのメイドと半人半霊の者達も有象無象と扱う強さ……どうしたものか」
「ねえ神奈子、それならこの前手に入れた
「ん……だがいくら何でも
「あ、あの?話が見えてこないのですが?」
「ん?ああ悪いなブン屋、とりあえずこっちはこっちで手を考えておく。お前達は『先代巫女』の急所、弱点、とにかく何でもいいから情報を集めてくれ。今の所分かってるのが『詭弁の母親』と『幻想郷最強生命体』という二つだけじゃぁ割とどうしようもないからな……」
「分かりました。天狗としても、幻想郷が『先代巫女』に支配されるのは回避したい所ですからね。椛、貴方は山の哨戒任務から外れて『先代巫女及び詭弁さんの監視』を徹底しなさい。大天狗達には私から言っておくわ」
「はっ。(いつもこう
神二柱に対し一礼した後、高速で飛び去る天狗二人。後に残った神二柱は肘を突きながら
「……早いところ詭弁を『先代巫女』の保護下から出さないとな」
「あのままじゃ
「良い相手がいるかどうかは分からないが……良い
「へー……そりゃ何処だい?」
「決まってる。……地獄だ」
* * * * *
今までの俺はもの凄く恵まれていたという事を自覚しだした今日この頃。可愛い女の子との接触を断たれて……もう、何日だ?俺は何故生きているという哲学的な問いを繰り返しながら今日も仕事をこなす。里の中だけでも慧音先生や妹紅先生、ピンク髪の仙人や鯨呑亭の看板娘等々、美女美少女は幾らでも会う事が出来る筈……なのにっ!何故っ!顔すら合わせられぬっ!
「美女なら此処に居るじゃない」
「一般的に母親を指す言葉として美女とは言わない」
俺は……俺はただセクハラをしたいだけなのに……どうしてこんなことに……。このままじゃ阿求嬢でもよくなっちまうよ……。
「詭弁さんそれ普通に暴言ですからね」
「今すぐ阿求嬢が大人になぁ~れ!」
「悪かったですね子供体形で!!!」
「おいお前私の息子に色目を使っ―――」
「そぉい!!」
「へぶっ」
そして気を抜けば阿求嬢相手でも容赦なく殺気を飛ばす我が母上の顔面に掌を打ち込む。ほんともういいかげんにせーよほんと。
「答弁が家庭内暴力を振るってきた……」
「言っておくけど息子を性的に襲うのも家庭内暴力だからな?」
知らん顔してそっぽを向く母さんにため息を吐く。あーあ、生活に
「だ、大地震の前兆ですか!?」
「いや、違う……これは―――」
―――幻想郷の各地に、高々と間欠泉が噴き上がった。
◆
「私も異変解決についていくわよ!」
「来ないでくれ頼むから、切実に」
異変解決の準備を整え、現在も噴き上がっている間欠泉に向かえばそこには怨霊がうようよと漂っていた。コイツ等は一体……?
「怨霊……しかも湧き出る温泉と共にぽこぽこ出てくるわね……」
「温泉と共に、か……って事は地底から来てるのか?」
はて、怨霊を操る……何処かで聞いたことあるような無いような……
「無双拍手」
パン!と霊力が過剰に籠った
えっ、怖。
「さあ答弁、お風呂に入りましょう?」
「入らねえよ!?異変解決しに来たんだよ!」
「大丈夫よ。怨霊が湧いて出てきても片っ端から
「やだこの母上様脳筋……つーか各地で間欠泉噴きあがってるし、多分怨霊も各地で湧いてきてる筈だろうから根本的解決に至ってねえぞ」
「えー。じゃあどうするのよ、怨霊が湧いて出てくるくらい大したことないじゃない」
「えっ」
「えっ」
「お、怨霊が妖怪に憑りつくと、その妖怪が死ぬんだって。だから放置してたら幻想郷がヤバいだろ?」
「別に妖怪が幾ら死のうが大したことないでしょ?あいつらまたその内ポンと湧くわよ」
「えっ」
「えっ」
本当に博麗の巫女だったのかよ。幻想郷のパワーバランスを保つ役割とは……
「と、とりあえず地底に向かおう。地底世界は怨霊がいっぱい居たから、多分誰かが地上に怨霊を送り込んでるんだろうし」
「なるほど。つまりその地底世界をブッ壊して埋め立ててしまえば良いのね!」
「完璧な案だな、地上がどうなるか予想つかないって事を除けばなァァァ!!!」
もうヤダこの母上。
何とか牽制しながら、地底へと続く大穴を降りていく。飛べないってのは不便なモノで、魔法を使って大穴の側面に階段を作りながら降りていく。母さんも空を飛べないらしく、俺が作った階段を後からついてくる。
「飛ぶより跳んだ方が速いもの」
「……そうだな」
昔は飛べない事に対し不便を感じていたが、今は重い物を運ぶ事とかザラにあるし重量制限のある飛行に利便性を見出せなくなっているのも確かである。
そうして階段を作りながらゆっくり降りていくのに飽きてきて、だんだんと階段の間隔が大きくなっていき、ついには身長の五倍はあろうかと思われる程度の段差をチョンチョンと降りていく。
「(ああ、そういえば少し前に地底へ落ちた時は本気で死ぬのを覚悟したなぁ。今じゃあれくらいの高さから落ちても死ぬ気しないけど)」
なんせ天界から地上まで隕石と共に落ちてきたのだ。いい加減人間辞めてる。
そうしてほぼ落ちるような速度で大穴を降りていき、ようやく地の底に到着。穴の底には、足を踏み外した哀れな者達の残骸が散らばってる……と、いう事も無く。上を見上げれば、遥か遠くに日の光が見える。
「……妖怪の気配がするけど……近くには居ないようね。大方少し前までこの辺に住んでたって所かしら?」
「んぃ?」
そうして辺りを軽く見回してみると、何処かで見たような白い糸が壁に付着してるのが見えた。ふむ?
……ああ、そういえば前に地底落ちした時に出会ったヤマメちゃんは土蜘蛛だったな。あれは本当に良いケツだった……じゃなくて、この糸を見るにヤマメちゃんがココに住んでたって所か。
はて、だとしたら何故ヤマメちゃんはここの巣を捨てて引っ越ししたのだろうか。……まあ、良いか。
そうして俺と母さんは妖怪の気配が濃い方向に進んでいった。
道中、不気味な程に妖怪や妖精達の襲撃を受ける事も無く……。
やる気おきないぬぇ