詭弁ですよ!霊夢ちゃん!   作:名は体を表す

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へーこれが歴代最強の博麗の巫女か!
詭弁くん…ボクは ずーっとこの巫女を倒す戦略を考えていたんだ。
でも なかなか見つからなくて……でもようやく見つけたよ……

こ う す れ ば よ か っ た ん だ !


※本編とは特に関係が無い事も無いかもしれません。


極寒地獄でまた会おう。

「寒すぎてマジサムシングエルス……」

 

「急にどうしたのよ」

 

 洞窟を抜けてナントカって言う極寒地獄に足を踏み入れれば、真冬の夜に吹雪の中全裸で歩いているかのような寒さが俺達に襲い掛かる。母さんはむしろこんな寒さの中で何故平然として居られるのですかね?

 魔法の炎を纏うことで寒さを拒絶する。これでなんとか普通に行動出来そうだ。襲い掛かってくる魔法生物を焼き捨てながら進攻すると、薄暗い極寒地獄の向こうに巨大な建物がぼんやりと浮かび上がってきた。

 

「この変な奴らはあそこから出てきてるっぽいわね」

 

「あんな遠くにあるのに、よく見えるなぁ」

 

「勘よ、勘」

 

 勘かぁ。

 そうしてその建物に近付いていくと、氷で出来た巨大な城だということが理解できた。そしてその城の前で大暴れしている星熊勇儀と、常人の二倍以上の大きさの魔法生物の群れも見えた。

 

「だァ!クソっ倒しても倒してもキリが無いねぇホントに!!!」

 

「夢想天星」

 

「んぁ?なんだ急に明るく―――」

 

「本当に問答無用だよなぁ母さんよぉ!?」

 

 空から数えるのも億劫なほどの霊撃が降り注ぐ。それらが地面へ当たる前に星熊勇儀のもとへ高速で移動し、抱き抱えながら強度を高めまくった結界を張って直後に来る衝撃に備える。

 

「き、詭弁!?おま、なんで!?」

 

「口閉じとけ星熊勇儀!舌噛むぞぉ!」

 

 直後、結界ごと揺さぶられるような轟音と共に目に見える世界が一瞬で変わった。

 先程まで見えていた白銀と極寒の世界が、今は地面がすべてひっくり返ったかのような土色の世界となった。俺達は結界の中で、凍りついた大地ごとミキサーに掛けられたかのように天と地がぐるぐる混ざり続けるように吹き飛ばされる。

 

 衝撃がようやく収まり、目を回しながら瞼を見開けば今にも割れ砕けそうになっている結界が見えた。もしこの結界が破られてたと思うと、少なくとも俺も星熊勇儀も五体満足にはいられなかっただろう。

 

「……詭弁、危ないところを助けてくれたようだな。感謝する。感謝はするが……そこを退け」

 

「おや失礼」

 

 俺は今、仰向けに倒れている星熊勇儀の胸に手をおいて四つん這いになっている姿勢だ。星熊勇儀はこの寒い地獄の中で暴れ続けたせいか体温が非常に低くなっている。ふむ。

 

「失礼ついでに凍傷にならないように暖めなければ。人肌で」

 

「んなァ!?バカ野郎止めっ!?」

 

 おぅ、冷やしおっぱいは身体に悪いぞぅ。女の子が身体を冷やしちゃいけません!血行良くするために揉まねば!揉まねば!

 

「くぅッ……!ち、力が……おいバカ止めっ……ぅあッ」

 

「これは医療行為!医療行為だから大丈夫!柔らけぇなぁおい!あーダメダメ!これは()()()()()()()()()()()()ですねぇ!ちょうど良く俺の『身体の内側暖め棒』の準備も―――」

 

 ビキッ!

 バキバキッ……

 バギィッ!!!

 

 空から降り注ぐ流星にも耐えきった結界が、罅が入っていたとは言え素手でガラスを砕くかのように破られるのはちょっと理解出来ないって言うか……ええっ?

 

「楽しそうなことしてるじゃないの答弁……」

 

「あっ……その、これは……おっと!あの城から誰か出てきた!きっとこの襲撃の犯人に違いない!母さん、勇儀、行くぞ!」

 

 粉々になった結界を破棄し、城に向かって駆け出す。侵略者とかいうヤツ!覚悟しろ!

 

「……オイ鬼」

 

「ひクッ!?な、なんだいいったい……?」

 

「ウチの息子に手を出したら、生きたまま全身すりつぶしてスムージーにして飲み干してやるわ」

 

「いや今手ぇ出されたのはアタシの方なんだがねぇ!?」

 

「関係ないわ」

 

「理不尽だな!」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 母さんからの執拗な追撃を躱しながら氷の城に近付いていくと、一人の男が立っていた。

 

「やれやれ、周囲の整備している最中だというのに騒がしい……んん?」

 

「お前は……」

 

 その男は襤褸切れのような灰色の長いローブを身に付け、顔はペストマスクによって隠されていた。

 

「……貴様のその顔……もしや……いや、まさかな……」

 

「一人で盛り上がってるところ悪いが、その城からポコポコ出てきてる魔法生物共に迷惑してるんだ。何とかしないとボコボコにした後でその城ブッ壊すぞ?」

 

「……ふん。あの凍魔共を越えて来たことは誉めてやるが、所詮辺境のゴミか。この城の価値を理解出来ないようだな」

 

「今私の息子を馬鹿にしたか変なお面野郎。夢想封印!」

 

 母さんから五色の霊撃が放たれ、ペストマスク男に直撃し氷の城に叩き戻した。……あの、ちょっと?

 

「何よ」

 

「せめてぶっ飛ばす前に『ここに来た目的はなんだ!?』くらいのやり取りはやってもいいんじゃないんでしょうかね」

 

「面倒くさいわ」

 

「さよですか……」

 

 母さんの夢想封印によって入口が無残に吹き飛んだ門を踏み越え、氷の城の中に足を踏み入れる。外も寒けりゃ中も寒いな!

 ド派手なエントリーをかましたせいで、音に釣られて城の中からワラワラと魔法生物が湧いて出てくる。氷の礫のような小さなモノから、人ほどの大きさを持っている氷塊の魔法生物、氷の結晶に手足の生えたような魔法生物、そして手足の数が半分しかない魔法生物や手足の代わりに羽根の生えた魔法生物が這いずる様に現れる。すっげえキモい。

 

「数もキモければ動き方もキモいわね、また纏めて潰すわよ。夢想天―――」

 

「城ごと俺達を潰す気か母さん!?」

 

「……そうだったわ、危ない危ない」

 

「大丈夫なのかいこの巫女……」

 

 母さんを訝しげに見る星熊勇儀。あまりそういう目で見るな、母さんのオツムは身体に対してあまりにも小さすぎるのだ……。

 そして母さんは大規模殲滅破壊が得意故に、この場所のように屋内での戦闘が難しい。下手に殴り飛ばして城ごとブッ壊すとか普通にあり得るからな……。

 

「そしてコイツらも下手に倒せば凍気を撒き散らす訳だ。かと言ってこんな氷の城の中で炎を撒き散らそうモンなら壁や床とかぶっこ抜けそうだしな」

 

「おいおい詭弁、のんびり考えてる暇は無いぞ!コイツ等は集まると厄介だ!」

 

「アンタ、さっきから『詭弁』『詭弁』煩いのよ。私も詭弁よ」

 

「おっ、おう……じゃなくて!」

 

 勿論言いたい事は分かる。コイツ等は()()()()。性質的には可愛くない事を除けば妖精に近い。つまり、集まれば集まる程より凶悪な事が出来るようになる。ざっと数えて……100匹程度か。成程。

 

 おや?まほうせいぶつたちのようすが……。

 

 なんと!まほうせいぶつたちはがったいしてしまった!

 

 そんなことある?

 広いエントランスとは言えども、限られた空間の中で次々に合体して巨大化する魔法生物。巨大化していくにつれ、その姿は透明度の高い水晶の様に澄み鋭くなっていく。

 そうしてエントランスの中いっぱいに巨大化した魔法生物は、まるで上半身だけの巨人のような姿で俺達の前に立ち塞がる。邪魔ァ!

 

「気をつけろ!合体したコイツらは、より強力な凍気を放ってくる!」

 

「炎のエレメンタルも無限じゃねぇってのに……!『炎獄の咆哮』!」

 

 灼熱に燃える閃光の魔法を口から放つ。水晶で出来た巨人の胸部を焼き飛ばしたが、閃光が巨人を貫通する前に放たれた凍気によって閃光が吹き消された。まじかよ。

 お返しと言わんばかりに、水晶の巨人は口から輝く息吹を吹き出し、俺達を襲う。

 

「博麗結界」

 

 母さんが片手を広げて見えない剛壁を作り出し、輝く息吹きをシャットアウトした。

 

「……ッチ。答弁、構えなさい」

 

「んマジかぁ」

 

 母さんが作りだした結界ごと空間が凍り付き、巨人は凍り付いた空間を殴り壊した。飛び散る凍った結界片が皮膚を切り裂く……が、俺達全員その程度で血を流す程ヤワな身体してない。

 一番の問題は母さんの結界ですら凍らせる規格外の凍気という事だろう。アレに直撃したら俺と星熊勇儀は流石に凍り付く。母さんは……多分大丈夫じゃないかな……。

 

「答弁、少しは私の心配してもいいのよ?」

 

「頭の心配はいつもしてるし無問題だな!『日輪片:陽炎焔(かげろうほむら)』!!」

 

 陽輝棒に気と魔力を込め、床を薙ぎ払うように振る。陽気棒の軌跡から熱波が放たれ、狭いエントランス内を暖めていく。巨人に直接攻撃しても反射で凍気が吹きつけられるなら、ジワリジワリと溶かせばどうだ?

 

「更にオマケだ!『熱風人拳』!」

 

 エントランス内をかき混ぜるように、熱風がつむじを巻いて巨人を溶かしていく。ジワジワと表面から溶けているが、凍気が反射で放たれることは無かった。よし、効いてるな。

 熱波を嫌うように巨人はその両腕を振り回し暴れ出すが、勇儀が左肘から先をねじり取り、母さんが右肩ごと捥ぎ取った。ええ……。

 

「じゃあ俺は首を切らなきゃ(使命感)」

 

「いやその理屈はおかしい」

 

 壁を駆け登り、跳んで巨人の肩に乗る。召喚『《陰》・《陽》』!

 

「勢いで()()ぞ。合わせろ」

 

「おうよっ!」

 

 俺は顎を、《陽》は側頭部を、それぞれ首を中心として回転させるように殴る。ボゴギッ!!と太い音と共に巨人が前のめりに倒れる。そう、まるで()()()()()()()()()()()()()()

 

「『断頭刑(エクセキューション)』」

 

 《陰》が巨人の短剣を持ち、高速回転しながら巨人の首を()()()()()

 巨人は断末魔と共に周囲に凍気を放ちながら消滅。部屋を渦巻いていた熱波と相殺し合って無風となった……が、めっちゃ寒い。

 

「流石に少し寒いわね……」

 

「コレを()()で済むアンタはどっかオカシイだろ……」

 

 鬼の勇儀でも両腕で自身を抱えるように寒がっているのに対し、母さんはまるで秋風に吹かれてるかのような感覚で寒がってる辺りほんともう人間辞めてるな……。俺?俺は魔法の炎で防寒してるし。

 立ってるだけで炎のエレメンタルと魔力がゴリゴリ無くなっていく。早い所解決しなきゃヤバいか。

 そうして俺達は城の中を進み、主犯格らしき者を探し始めた……。

 

 

 

 

「……侵入者か。人間二人と妖怪が一体。デカい女は霊能者で、ガキの方は魔法使い……か?妖怪はどうでも良いが……ふん、イケニエには丁度良いか」

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

「……来客?こんな忙しい中悪いけどお相手してる暇は無いの」

 

「まあそう言うなよ。ちょっと異変の解決ついでに身辺整理の手伝いをしてやろうと思ってな」

 

『泥棒してる暇は無いわよ魔理沙』

 

「全く、アンタがあの鬼共のボスなの?」

 

「いいえ。鬼のまとめ役は別の方ですよ、魔理沙さん。霊夢さん」

 

「おりょ?自己紹介なんてしたっけ?」

 

「一応こうして会うのは初めてですが、貴方達の事はよく知ってますよ。ええ、詭弁さんから()()()()()伺っています」

 

『コイツは地底一の嫌われ者さ。()()()()にも狙われてるのかい詭弁の奴は』

 

「地底一の嫌われ者ねぇ」

 

「酷い言われようね。……成程、()()()詭弁さんの事を……それに戦う気もあるみたいね」

 

「チッ、とにかく面倒な事はさっさと終わらせるに限るわ」

 

「これだけ広い屋敷なら目ぼしい物の一つや二つあるだろ。早いところ終わらせてゆっくり探索したい所だぜ」

 

「……二人とも、思っても無い事を口に出すものね。そんなにも詭弁さんの事が心配なら、あの大巫女を倒す気概を出せばいいのに」

 

「あぁ?なんだと?」

 

「……嫌われ者ってのも間違った評価じゃないわね」

 

「その通り、私はさとり。この地霊殿の主にして怨霊すら恐れる妖怪さとり。私の三つ目の目は、貴方の考えている事を嫌でも教えてくれるのよ。ねえ、()()()()()()()()?」

 

「あん?何言ってんだお前。んな妖怪居る訳ねえだろ」

 

「……魔理沙、とっととコイツぶちのめして先を急ぐわよ」

 

「おっ、おう」

 

「貴方の気持ちは手に取るように分かるわ。さあ、貴方達の全てを私に見せなさい。貴方の心の中に思い描いている想いを、弾幕を!」

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 城に侵入してから暫く。寒さに耐えながら城内を探索し、隠されていた登り階段を探し出していた。

 この城は見た目に反し、内部の空間が異常な広さを持っていた為に探索が難航した。更に面倒になった母さんが『外から最上階目指しましょ』と一度壁をぶち抜いて外に出た……と思えば、そこはまた別の部屋だったというオチ。

 

「内部の空間を弄りまわし過ぎだろ……紅魔館よりひでえな」

 

「なら真っすぐ壁をぶち抜いていくだけよ。夢想封印!」

 

「だから問答無用かよ!」

 

 母さんの夢想封印が真っすぐ壁をぶち抜いていき……俺達の横から母さんの夢想封印が飛んできた。

 

「んな事あるっ!?」

 

「うおお!!?」

 

「チッ」

 

 空間がねじ曲がっているせいで真っすぐ飛んでいた筈の夢想封印が突如真横から現れるという非常事態。直撃して跡形……残ればいいな。

 無論直撃する訳にもいかず、俺と勇儀は緊急回避と言わんばかりに不格好ながら飛び込むように避け、母さんは手刀でありがたい光を弾き返す。……もう何も言うまい。

 

「無駄に広いだけじゃなく、方角すら捻じ曲げる迷路……ね。次は上下も捻じ曲げるのかしら?」

 

「本当にありそうで困る……。しかし、こういった謎解きチックな仕掛けは嫌いなんだ」

 

「私もよ。仕方ない、ちょっと強引に外に出るわよ」

 

「強引ったってまず外の方角が分からないじゃしょうがないんじゃないか?」

 

「どうにでも出来るわよこんなの。飛ぶわよ」

 

「えっ、おい―――」

 

 パッと景色が切り替わり、気が付けば城の入り口ド真ん前に俺達は立っていた。ああ、二重結界か……おかしいな、二重結界ってめっちゃ短距離を()()技だと思ってたんだが、さっきの場所から此処まで飛ぶとかほんと……。

 

「じゃあここから直に一番上目指しましょうか」

 

「おっそうだな」

 

 そうして無駄足を踏んだが、改めて氷の城を外側から登っていく。大抵の場合こういう城に居る奴ってのは高い所に偉そうな奴が居るもんだ。

 

「……アンタ達は、その……なんだ?飛べないのか?」

 

「飛べなくて不便を感じた事は無いわ」

 

「そ、そうかい……」

 

 壁を蹴るように駆けあがる俺と母さん。その後をついて来るように飛行する勇儀。『おかしいな、人間ってほぼ垂直の壁を走れるっけか?』と顔に書いてあるが、どう見ても垂直の壁を走ってるだろう。考えるだけ無駄な疑問である。

 そうして中の迷路に掛けていた時間は何だったんだと思えるほどあっさり最上階に到着。侵入口が無いな。

 

「作れば問題ないわね」

 

 そう言って母さんは拳を振り上げ、壁をまたぶち抜いた。壁ぶち抜きすぎてヤバイ。

 

「なっ!?さっきまで城内の亜空間を彷徨ってた筈!?貴様等、何処から!!?」

 

「どう見ても外から来てんじゃない。目ん玉ついてんの?」

 

 そして壁をぶち抜いた先には、ペストマスクを着けた()()()()な連中がなんかよく分からない魔法陣と機械を囲んでいた。

 

「お前らが地底に襲撃仕掛けてきたっつー侵略者で間違いないな?」

 

「チィッ、辺境の者と油断したか!?まさかこの『極凍城』の壁が破られるなんて……」

 

「お前等落ち着け!所詮奴等はただの田舎者!魔を研究しつくした我等に敵うはずが―――」

 

「ゴチャゴチャ煩いのよ!封魔陣!!」

 

 母さんが袖から出した一枚のお札が瞬時に増加し、結界を押し広げる。広がっていく結界に巻き込まれたペストマスク達ごと城の壁を破壊し、退場させられていった。

 

「これで一件落着でしょ?さ、帰って一緒にお風呂に入りましょう答弁」

 

「……あー、うん。一件落着……かコレ?」

 

「なあ、詭弁。アタシが居る意味あったか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「『詭弁』?今『詭弁』と言ったか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如現れた()()()()()()()()にいち早く反応した母さんの拳が『ナニカ』を殴る。だがその『ナニカ』は母さんの拳を意に介さず、その不明瞭な腕を俺の首に伸ばしてきた。

 

「ぐッ!!?」

 

「詭弁!?」

 

「どれ、その忌々しい顔をよく御見せ」

 

「私の息子から汚い手を離せ!」

 

 母さんの殴打が()()()()()()に何度も当たるが、それに対し一切の反応を返さない。

 不明瞭な腕は首を絞めながら俺を持ち上げて、俺の顔を覗き込む。その瞳は、まるで骸の様にがらんどうで光さえ灯ってない不気味なモノだった。

 

 

「おお……我が身を滅ぼしたあやつの若い頃にそっくりだ……。ああ忌々しい。忌々しい」

 

「ぐっ……かはっ……」

 

 枯れ枝のような黒い腕が、鬼のような怪力でもって俺の首を絞めあげる。気を抜けばそのまま首の骨が砕かれてしまいそうだ。

 

「離れろって言ってるのよッ!!夢想天生ッッッ!!!

 

 母さんの身体がこの世界から掻き消える。母さんの夢想天生は霊夢ちゃんと同じように……否、霊夢ちゃんよりも理不尽な()()だ。()()()()()()()()()から解放され、『自分だけの法則(ルール)』を世界に強いる。どんな手段をもってしても母さんを捉える事は出来ないし、ましてや母さんに反撃する事は出来やしない。ただ一方的に相手を滅ぼす、母さんの()()()

 

「鬱陶しい小娘だね。『覇痲滅封』

 

 黒い腕は、法則(ルール)すら握りつぶした。

 

「あああああッ!!!」

 

「がっ……母さんっ……!!」

 

 世界に融け、自身の意思でなければ再び現れる筈が無かった母さんが、その全身に夥しい出血を伴いながら床に叩きつけられた。

 

「おお……貴様にはまだ生きてもらわないと困るんだった。全く、奴等は数ばかり揃ってイザという時に役に立たんから困る」

 

 枯れ枝の様な黒い腕から指が伸び、宙を彷徨うようになぞる。すると空間が裂け、床に倒れて荒い息を吐いている母さんの四肢に向けて鎖が突き刺さる。

 

「て、めぇ……母さんに何をッ……《陰》・《陽》!」

 

 俺の身体の内から《陰》と《陽》が飛び出し、魔法と霊力でもって黒い腕を攻撃する。

 

「『霊輝光陽(シャインソウル)』!!」

 

「『魔影天墜(ブラックバッシュ)』!!」

 

 光り輝く霊撃、闇の魔力を纏った気天魔戟の振り下ろし、それぞれが間違いなく不明瞭な存在に直撃した。にも、関わらず。まるで一切効いてないかのように、攻撃に対し一瞥もせずに、黒い腕は勇儀に向かって伸び、その身を母さんの隣へと叩きつけた。

 

「ごォッ!?かっ、ハっ……」

 

「勇儀っ!」

 

「うむ、これで二体目……。後は……」

 

 再び枯れ枝の様な黒い腕から指が伸び、宙をなぞる。空間が裂け、床に倒れてる勇儀と《陰》、《陽》に鎖が突き刺さった。

 

「ごふっ……」

 

「ぐぅゥッ……!?コイツは……!?」

 

「これで四体目。あと、一人」

 

「ッッッ!!」

 

 不気味な瞳が俺を覗き込む。吐き気がするほどの死の匂いが漂ってきた。

 

「小僧……貴様の名はなんと言う?」

 

「ぐっ……き、きべん……答弁……っ……」

 

 俺の意思に反するように、俺の口から言葉を引きずり出される。言葉と一緒に魂まで抜かれているような気分だ。

 

「うむ、うむ。やはり貴様はアヤツの息子か……!おぉぉ……このような辺境に来た甲斐があると言うものだ……!」

 

 表情すら不明瞭だというのに、ソイツは口が裂けんばかりに()()()

 

「う、おおおおお!!!」

 

 全力を出し、俺の首を掴みあげる黒い腕を両手で握り潰す勢いで締め上げる。極々僅かに首を絞める力が緩んだ隙にソイツの腹を蹴り飛ばし、反動で束縛から抜ける。首回りの肉が裂かれたが骨が潰れるよりかマシ―――

 

 ドッ

 

「……ぁ」

 

 俺の胸に、心臓に、鎖が突き刺さった。

 

「詭弁ッ!!?」

 

「本体ッ!!」

 

「と、答弁……?嘘、嘘よ……いやああああああ!!!

 

 身体から()が抜け出ていく。ああ……『死にかける感覚』と似ているようで違う、この感覚。いつだったかコレと同じ感覚を味わったな。あれは……いつだったか。

 ああ、そうだ。あれは、俺がまだ子供の頃で、魔理沙を、探しに行った時に……

 

 あー……『死にかける感覚』、じゃなくて……『死ぬ感覚―――

 

 意識が……暗く……

 

 寒―――

 

 

 

 

 

「これで五体目っ……くふっ……ふふっ……ふはははは!!!ああ、素晴らしい!素晴らしいぞ!!詭弁答弁ッ!!!貴様の血肉!経験ッ!命ッッッ!!!この我を満たすに相応しい()だ!!!」

 

「お前……お前ェ!!!よくも息子をッ!!殺すッ!!ブッ殺してやるッッッ!!!」

 

「ふはは、そう囀るな小娘!貴様もまた我のイケニエ、詭弁答弁と同じ場所に送ってやろう!」

 

「糞ッ!くそッ!!!殺すッ!絶対に殺してやるッ!!!」

 

「暴れるな、手元が狂う……貴様も息子のように、苦しみ無く我が身と同化するが良い……ふはははは!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔装:幻想賢者(ネクロファンタジア)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しゃららん

 

 鈴が鳴る音と共に詭弁巫女、星熊勇儀、《陰》、《陽》を縛っていた鎖が粉々に砕ける。

 

「……巫女、大丈夫か?」

 

「ぅ……あ、貴方は……!」

 

「おお……おおぉ……貴様、貴様貴様貴様ァァァっ!!!!何故此処に居るぅッ!!!」

 

 治癒の雨

 

 極寒の地獄の中に、癒しの力が込められた仄かに暖かい雨が降り注ぐ。

 

「ぐっ……ありゃ?痛みが引いていく……」

 

「マジか……なんて魔力だこりゃぁ」

 

「……答弁、久しぶりだな……なんて、言ってる場合じゃねえなァ。名も亡き『魔神』よ、オレの息子を返してもらうぞ!」

 

 壮年の人間。紫衣を纏った者。幻想郷とは違う世界より現れたのは、()()()()()()()()()()

 

 

 

「さあ、三度(みたび)テメエの魂を粉微塵にしてやる!!!」

 

「此度こそ貴様を黄泉へ送ってやろう……!!!」

 

 

 

 異界の勇者『詭弁勉号』が、家族を守る()()()()世界を脅かす魔神を始末しに来た。

 




紫ん「私が別件で居ない間になんか幻想郷の未来がとんでもねえ事になりそうな件」

えっ?詭弁の母親はともかく、父親の方は『普通』じゃなかったのかって?
父親ってのはな、家族を守る為なら誰だって勇者になるモンなのさ……。

さとりん、恋敵に会ってテンションアゲアゲ↑

それはそうと65話過ぎても原作キャラ放っておいてオリ展開始める作者が居るらしいっすよ。一体誰なんだろうね。


・詭弁勉号
 極普通の外の世界の住人。ワイルドなイケメン。えっ?どこが普通だって?そりゃ勇者してる経験の一つや二つくらい、皆もあるでしょ?この人は偶々リアルで勇者してたってだけの話で。
 勇者と言うが、実際には賢者に近い()()()()使()()
 幻想郷に来る前に一度、博麗巫女と結婚し詭弁が生まれた後に一度、魔神を討伐した。ゆかりんとは一度目の魔神討伐の際に出会い、二度目の魔神討伐の際命に関わる重傷を負った為幻想郷に戻る事は叶わなかった。

・名も亡き『魔神』
 外の世界の魔法カルト集団で信仰されている女神。何だかんだあって詭弁父に二度滅ぼされかけ、世界的に見て辺境である幻想郷の端も端である極寒地獄に信者が逃げ込んで再起を図る()()()に幻想郷(地底)を侵略していた。


・魔装:幻想賢者(ネクロファンタジア)
 詭弁父のオリジナル魔法。物質・概念等の境界を操り、人の身にして神を殺す為の魔法。効果は絶大だが消耗も激しい。


次回予告!

 魔と混沌、不変の象徴である氷を司る魔神を完全に滅ぼすには、『魔神』に対する信仰全てを消さなければならない。しかしそれは余りにも非現実的なモノである。だが、幾ら強くても人間が神を直接滅ぼす事は決して出来ない。存在の格が違うからだ。
 なら同格である神に滅ぼしてもらう事を願えば?それもまた難しい。神同士の戦争でも無ければ、同格の神を滅ぼす事を忌諱するだろう。人間が同じ人間を殺す事を忌諱するのと同じように。
 幻想郷を守るには魔神を滅ぼすしかない。だが、その手段は非常に限られていた。

次回、『神の殺し方、神殺しの勇者』

氷を融かすのは、自然の力だ。
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