星々の王と妃   作:旭姫

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三章 第三十話 ミラージ・バットと飛行魔法

達也が一高テントに戻ると、案の定達也を見る目がおぞましいものを見る目になっていた。

 

深雪「お兄様!!」

 

達也「深雪」

 

深雪「お兄様が検査装置の所で怒ったのは…私のためですよね。」

 

達也「まぁな。今までの事故なんかよりも断然腹が立ったな。」

 

深雪「そう…ですか。」

 

達也「俺はどんなことがあっても深雪の味方だ。…だから、このくらいは普通だよ。あれでもまだ全然本気じゃないからね。…殺気で威嚇しただけですんだことを感謝してほしいな。」

 

深雪「……お兄様の殺気は本気でなくとも、辛いと思いますが…」

 

達也「あんなもの、只の序の口に過ぎないさ。…さて、予備のCADを用意するからついてきてくれ。」

 

深雪「はい!!」

 

真由美「なんだ、一高生徒が暴れたって聞いて驚いたけど、妹に危害を加えられて怒った兄ってことね。…なるほどね。」

 

達也「……。さて、行こうか。」

 

達也は真由美を無視してテントの奥にあるCADの調整台に深雪と2人で籠った。

 

深雪のCADを調整中、真由美の『マルチ・スコープ』の反応があったので認識阻害魔法と視覚遮断障壁、さらに会話の内容がばれないように遮音障壁魔法まで使って完全に防いだ。

 

達也「さて、深雪。…こっちのCADの調整は既に済んでいて、検査も終わっている。だから、使いたくなったら言ってくれ。」

 

深雪「わかりました。……一色さんも使ったことがあるのですよね?」

 

達也「ああ。だから、決勝まで深雪が使わなければ愛梨は飛行魔法を使うことができない。…まぁ、俺的には飛行魔法を使っても使わなくてもお前が勝つと思うけどな。」

 

深雪「お兄様の調整さえあれば、深雪は無敵です!!相手なんて返り討ちにして見せます!!」

 

達也「その意気だ。」

 

達也が深雪を伴ってテントの作業場から出た時に真由美に睨まれたがそれを見なかったふりをしてテントを後にして試合会場に向かった。

 

真由美「達也君のバカ……認識阻害魔法だけじゃなく視覚遮断障壁魔法まで使ってくるなんて!!…それに、私のことを無視して、許さないわよ、達也君!!」

 

達也のいなくなったテントには真由美の愚痴が木霊した。

 

そして、真由美の愚痴を聞いていた人は真由美の『マルチ・スコープ』を完全に封じた達也に心の中で拍手を送っていた。

 

そういう方法で防げるのか…と。

 

深雪の試合は『跳躍』のスペシャリストと呼ばれている二高選手の巧みな作戦に翻弄されて深雪は思った以上に点を伸ばせなかった。

 

そして、最終ラウンドの始まる前、深雪は遂に決意する。

 

深雪「お兄様、アレ(・・)を使わせていただけませんか?」

 

達也「いいのか?あれは決勝の保険だったはずだが」

 

深雪「決勝では、手の内を見せた状態で勝ちたいのです。」

 

達也「…はぁ、わかったよ。さっき言った通り調整も検査も終わっている。……行ってこい!!」

 

深雪「はい!!」

 

深雪は先程、達也から受け取ったとあるCADを持って舞台に上がった。

 

雫「あれ?深雪のCADが変わってる」

 

ほのか「深雪、アレを使うのね。」

 

エリカ「アレ?」

 

リーナ「達也が深雪の為に用意した秘密兵器よ。」

 

水波「見たら誰でも驚くと思います。…そして、この中なら深雪姉様にしか使いこなせない魔法です。」

 

 

真紅郎「あのCAD…なるほど。奥の手を出してきたわけだね。」

 

将輝「まさか、アレか?」

 

愛梨「司波深雪…、相手にとって不足はないわ!!」

 

 

試合が始まると、深雪以外の(・・・・・)選手が魔法を発動する。

 

そして、少し遅れて深雪が魔法を発動する。

 

すると、深雪の体が宙に浮く。

 

深雪は空中で止まって見せた。

 

それから、空中を泳ぐように飛び回り、得点を重ねていった。

 

「まさか…飛行魔法!?」

 

「嘘だろ!?…先月発表されたばかりの魔法だぞ!!」

 

「レギュレーション規定違反なんじゃ…でも、使ってるってことは規定以内ってことか?」

 

そして、試合が終了すると、深雪がトップで勝ち抜けた。

 

 

その試合が終わった時、とある男の体が急に動き出した。

 

その男が受けた命令は客の殺害

 

その男はたまたま目の前を通りかかった観客を殺害しようと手刀を繰り出した。

 

しかし、それは防がれて、気付くと、会場の外に投げ出されていた。

 

咄嗟に衝撃緩和の術式を自身にかけて着地する。

 

そして、目の前には自身を飛ばした相手―柳連が地面に手もつかずに着地していた。

 

「お前何者だ?いや、答えたくても答えられないか。…その動き、強化人間か。」

 

「質問をしたのは君だよ?…それに、同じ高さから飛び降りて、手もついていない君には言われたく無いんじゃない?」

 

「真田…。答えを期待しての問いではない。」

 

男に理性があれば逃げると言う選択を取れただろうが、その強化人間―ジェネレーターは組織の命令に対して忠実に動く。

 

よって、逃げ出しはせず、先程の観客()に襲いかかる。

 

柳はその男の額に手を当てて、それに力を入れてもとの位置へと飛ばした。

 

「いつ見ても綺麗だね。…『(まろばし)』の応用かい?」

 

「何度も言ってるだろうが、『(まろばし)』じゃなくて『(てん)』だ。…とにかく捕らえるのを手伝え。」

 

「もちろん、と言いたい所だけども既に藤林君の『避雷針』で捕獲済みだね。」

 

そのジェネレーターを捕らえた藤林響子は呆れながらも2人に話しかける。

 

「本当にお二人は仲がいいのですね?」

 

「藤林。お前、目はいいはずだよな?」

 

「感受性の問題かな?…いい医者を知ってるけど、紹介しようかい?」

 

「ほら、意気ぴったりじゃないですか。」

 

ジェネレーターは3人の軍人によって捕らえられた。

 

その後、響子は達也にこの事についての暗号メールを送った。




次回は達也がついに〈無頭龍〉を潰しに行きます。

そして、決勝戦で深雪VS愛梨をお楽しみにしてください。

では、また次回。

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