達也達3人が祝勝会と称してご飯を食べた日から数日が経ち、この日は日曜日。
達也の予定は2つだけ。
1つは、メールでレイモンドからレリックの扱いを気をつけるようにと連絡を受けたので、MSTに置きに行くこと。
もう1つは、論文コンペの作業(護衛)である。
そんなこんなで達也は(今日は深雪を連れて)MSTに向かっていた。
しかし、それを
達也「尾行がついてる。」
深雪「え!?…でも、後には車は…」
達也「尾行しているのはカラスの化成体だ。」
深雪「化成体ってこの国では使われてないのでは?」
達也「ああ。敵も何となくは分かるが、確証はない。…幹比古に聞いたら分かるだろうがな。……だが、このままついてこさせるのは不味いな。…深雪、頼めるか?」
深雪「お任せください、お兄様。」
深雪は振り向かずに、尾行を消した。
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尾行が消されたという部下の言葉に陳は苦虫を噛み締めていた。
「風間達也の行き先は分かるか?」
「おそらくMSTになると思います。」
「到着推定時刻は?」
「およそ30分後です。」
「よし、MSTにサイバー攻撃を仕掛けろ」
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達也達がMSTに到着すると、中は騒然としていた。
「さっさと回線を切れ!!」
「回線切断、再起動しますか?」
「馬鹿野郎!!再起動なんかするか!!」
「侵入経路発見、カウンタープログラムを起動します。」
達也「牛山さん。」
「御曹司、それに姫。おい、誰だ。今日2人が来ることを知らせなかったやつは!!」
牛山の言葉に全員が振り向こうとするが、達也が止めた。
達也「手を止めてはダメだ!!」
「は、はい!!」
達也「ハッキングは何時から?」
「10分程前からです。」
達也「そうですか…(国防軍共め、余計なものを連れてきやがって)」
牛山「ハッキングが収まったか…。今日は厳戒態勢を引くぞ!!……さて、御曹司。今日はどんなご用で?」
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「MSTからのカウンター攻撃です。」
「予定通り切断しろ!!」
「呂上尉、どう出ると思う?」
「不明です。」
「だが、10分間にも渡り、攻撃を防げなかったんだ。…やつも、そんな不安定な場所に置くまい。」
「普通なら……ですがね。」
「多分、お前にも出てもらうことになるぞ。」
「お任せください。」
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そんな、MSTでの一幕も終えて、達也達(達也と深雪とリーナと水波の4人と途中の駅で紗耶香と小春と合流した為、現在6人)は学校に向かっていた。
そして、深雪は生徒会の仕事の為水波とリーナを連れて達也達とは別行動した。
達也達3人はそのままロボ研のガレージに向かった。
ロボ研のガレージに入ると、中からメイド服を来た3Hだった。
達也「誰の趣味だよ……。」
紗耶香「本当ね。」
そして、3H(P94型だから、名前はピクシー)に自分の学年クラスと名前を伝えた。
小春「3-C 平河小春」
紗耶香「2-E 壬生紗耶香」
達也「1-B 風間達也」
3人がそれぞれの場所につくと、達也はピクシーにサスペンドモードでの待機を命じた。
その後、紗耶香が中のソファーに座って、達也は小春の横で一緒に作業していた。
が、暫くすると、達也達の体に異常が起こった。
達也(体が動かない……まさか、催眠ガスか!!)
達也はすぐに自身に『再生』を施した後、紗耶香にも『再生』を施す。
達也「ピクシー。強制換気装置を作動。避難時の二次災害を警戒し、俺はここに留まる。監視モードで待機。救助のための入室に備え、排除行動を禁止する。」
『了解しました。強制換気装置を起動します。』
達也「紗耶香さん、俺はこれをやった不届きものを捕まえるために寝た振りをするので、紗耶香さんは一旦部屋の外に出て犯人がここに入ってきたら戻ってきてください。」
紗耶香「了解よ。」
紗耶香が出ていき、達也も狸寝入りに入ったところで、待ち人はやって来た。
「平河、風間寝ているのか…。壬生は…逃げ出したか。まぁいい。」
待ち人の正体は達也達が(一応)警戒していた関本だった。
彼はそのままハッキングツールを取り出して、術式を吸い取ろうと悪戦苦闘する。
そこへ、
紗耶香「なにやってるんですか、関本先輩。」
「な!?壬生。なんでここに」
紗耶香「外を見回ってたら警報が届いたので確認しに来たのですよ。」
「ばかな…警報は切ってた筈。」
紗耶香「警報は達也君から直接来ましたからね。……それより、警報を切ったとはどう言うことですか?」
「……」
紗耶香「黙っているということは、犯人だと自白しているようなものですよ。」
「は、犯人?僕がいったいなんの犯人だって言うんだ?」
紗耶香「エアコンに細工をして睡眠ガスを流した犯人です。それに産学スパイの犯人でもありますよ。」
「失礼だぞ、壬生! 僕は事故によるデータ滅失を恐れてバックアップを取っていただけだ」
紗耶香「その持ってるハッキングツールでバックアップですか? あり得ないでしょう。そんなこと、詳しくなくても分かりますよ。そうよね、達也君?」
達也「確かに紗耶香さんの言う通りですね。」
「バカな…ガスが効いてないのか?」
紗耶香「達也君はガスなんかで無力化出きる程弱くはないですよ。」
達也「そうですね。」
紗耶香は持っていた竹刀を関本に向けた。
その時には既に、関本のことを先輩ではなく犯罪者として見ていた。
紗耶香「関本勲、CADを置いて膝をつけなさい」
「壬生!!……ガァ」
関本がCADに手をかけた時には既に、関本の脳天に竹刀が叩きつけられており、関本はそのまま気絶した。
紗耶香「魔法は絶対ではないのよ?」
達也「さて、まずはこいつを運びましょう。…援軍を要請しないといけないな。」
紗耶香「その必要はないわ。」
その言葉と同時に、ロボ研の扉が開き、沢木と千代田が入ってきた。
「紗耶香ちゃん大丈夫!?」
紗耶香「ええ。大丈夫よ。」
達也「そう言うことですか。」
紗耶香「そう言うことよ。」
そのまま沢木達は関本を連れて去っていった。
達也「ピクシー、監視モード解除。監視命令時点から現在までの映像と音声をメモリーキューブに記録した後、マスターファイルを破棄しろ」
『かしこまりました。データを・メモリーキューブに・複写します。……複写完了。マスターファイルを・完全削除・します』
達也はメモリーキューブを受け取って、ポケットの中に入れた。
その数分後、小春が起きた。
小春「あ、ごめんなさいね。寝ちゃったみたいで。」
達也「いえ、お疲れのようでしたし。問題ありません。…作業を続けましょうか。」
小春「そうね。」
そして、小春には何も悟らせずに、この日を終えた。
次回は達也と呂剛虎が対峙するシーンです。