「状況が変わった。」
その男は、関本が捕まった当日にその情報を手に入れていた。
「第一高校における我らの協力者…関本勲が任務に失敗し当局の手に落ちた。収容先は八王子特殊鑑別所だ」
八王子特殊鑑別所とは未成年犯罪者の内、魔法師を収監する場所で、国防軍の人間が警備をしている国営の少年院である。
「呂上尉、関本勲を処分しろ」
「是」
―――――――――――――――――
翌日、達也は真由美と摩利に連れられて関本の収監されている八王子特殊鑑別所に向かっていた。
当初は達也は1人で行く予定だったが、風紀委員長に「風紀委員になってくれるなら考えてあげる」という達也にデメリットしかない交換条件を提示されたので悩んでいたところ、たまたま風紀委員室に入ってきた摩利と真由美に「私達も行くんだが、達也君も付いてくるか?」という言葉に達也が乗ったことで無事に行けることになった。
八王子特殊鑑別所につくと、そのまま関本のいる部屋まで向かった。
部屋には摩利が入って尋問することになった。
達也と真由美は横にある部屋だ。
「何しに来た。」
摩利「話を聞きに来た。」
「ここでは、魔法は使えないぞ!!使えば〈アンティナイト〉を所持した警備員が駆け付け…こ、これは」
関本はすぐに口元を押さえるが、もう遅い。
摩利は空気を利用して意識操作をしたのだ。
達也「匂いを使った意識操作ですか。」
摩利「さて、何が目的なんだ?」
その後、関本の口からは術式を吸い上げると達也の所持品を調べるつもりだったと言われて、摩利に何で?と聞かれると、関本は「レリックだ。」といったのだ。
真由美「達也君、そんなの持ってたの?」
達也「いえ、持ってません。(やはり、レリックだったか。)…ですが、」
達也が言葉を発しようとすると、警報がなった。
その音に達也と真由美は廊下に出て、さらに摩利も出てくると、達也は『精霊の眼』で確認した。
達也「屋上に4人、ハイパワーライフル所持ですか。」
真由美「正解よ。…そっちは既に警備員がいるから問題ないと思う。」
達也「……本命はこっちですか。」
達也が振り向くと、大柄な青年が歩いてきた。
摩利「あいつは?」
達也「彼奴は、大亜連合特殊工作部隊エースの【人喰い虎】
摩利「彼奴が。…達也君、真由美を任せた。」
達也「いいえ、ここは俺に任せてくれませんか?」
摩利「何でだ?」
達也「俺は彼を
真由美と摩利はその言葉に達也の正体を疑うが、何も出てこずに、素直に達也に譲った。(摩利は渋々だったが)
達也「(そんなに戦いたかったのか…この戦闘狂は。)……さて、久し振りだな、呂剛虎。」
「なるほど、他人の空似にしては似すぎていたが、対峙して分かった。…久し振りだな、
達也「ちっ、そっちの名で呼ぶな。今の俺はお前が調べた方の名前だ。」
「この時をどれだけ待ったことか。一年前、貴様に負けてから俺は身体強化を徹底した。」
この会話は真由美と摩利には大きすぎて、目が点になっている。
達也「そうか。あの時よりも強くなってるなら好都合だ。お前と戦ってから、任務に対する虚無感が大きかったからな。…久し振りに楽しませろ、【人喰い虎】。」
「言われなくても!!」
その言葉を合図に2人が衝突した。
高速で動く両者の腕や足。2人の世界最高峰の実力者の体術に、摩利と真由美は見入っていた。
2人には辛うじて互角に見える戦いだった。
摩利は驚いていた。
呂剛虎の噂は聞いていたし、自身の恋人と同じくらいの実力の大男相手に達也が勝てるのかと不思議に思っていたが、呂の口から出てきた【星王】という言葉に摩利は自身の記憶の底から【星王】に関する情報を思い出した。
【星王】とはUSNA軍魔法師部隊スターズの総隊長アンジー=シリウスの副官で、国際魔法協会の常任理事。…っと、ここまでなら唯の武官だと思われるが、もう1つ彼に対する噂がある。…それは、先代シリウスに体術だけで勝ったという話や各地の武力衝突をたった1人で沈めるなどといった、あり得ないような噂がある。…そして、呂と互角に戦う達也を見て、その噂は全て事実なのだと知った。
一方の真由美も驚いていた。
彼女は【星王】という話も父親から聞いて知っていたし、その噂も知っていた。だからこそあり得ないと思っていた。スターズの実質ナンバーツーが何で日本にいるのだろうと。さらに、達也の彼女である工藤利奈とは何者か。もし、その工藤利奈がスターズの人間だったとしたらなんの目的で来たのだろうか。…真由美の頭は完全に混乱していた。…それと同時に理解した点もあった。九校戦で一条将輝を倒した実力、先日の十文字克人に勝ったあの戦術、それらは達也が【星王】であるのなら勝っても不思議ではない。…今目の前の戦いは既に目で追えなくなっているので唯々達也の勝利を願うだけであった。
達也と呂剛虎の戦いには魔法は使われていなかった。
達也「本当に強くなったようだな。」
「ふん、貴様も実力が上がっているじゃないか。…日本に来て、緩くなってると思ったがそうではないんだな。」
達也「俺だって理由もなしにこんなところには来ないさ。…さて、そろそろ終わらせるか。」
達也の言葉と同時に辺りが〝夜〟に包まれる
達也「貴様には色々と聞きたいことがあるからな、殺しはしない。」
呂に四つの流れ星が飛来し、呂の四肢を貫通した。
呂「グァァァ」
達也「四肢を撃ち抜かれてもなお、任務を遂行しようとするとは、流石だな。だが、もう眠れ。」
達也は呂を気絶させた。
達也はその後、通信をいれると、警備員達がやって来た。
そのまま達也がその警備員達に耳打ちすると、敬礼して呂剛虎を連れて去っていった。
達也「先輩方は今見たものは、誰にも言わないでくださいね?…絶対ですよ?…もし、言ってしまったら…お分かりですよね?」
達也の放つプレッシャーに2人は頷く以外に選択肢は無かった。
次回はこの続きです。