星々の王と妃   作:旭姫

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四章 第十話 国防陸軍第一○一旅団独立魔装大隊

VIP会議室についた達也達は雫のアクセスキーで確認した警視庁のマップを確認していた。

 

地図には赤い丸が沢山あった。

 

つまり、戦いの形跡が沢山あったのだ。

 

レオ「ひでぇな、これは。」

 

達也「改めて言わなくても分かっているだろうが、状況はかなり悪い。この辺りでグズグズしていたら国防軍の到着より早く敵に捕捉されてしまうだろう。だからといって、簡単には脱出できそうにない。少なくとも陸路は無理だろうな。何より交通機関が動いていない」

 

レオ「じゃあ、海か?」

 

達也「それも望みは薄いな。出動した船では全員を収容できないだろう」

 

琢磨「じゃあシェルターに避難ですか?」

 

達也「それが現実的だろうな・・・」

 

エリカ「じゃ、地下通路だね」

 

達也「いや、地下はやめた方がいい。地上から行こう。」

 

エリカ「なんで……そうか。」

 

気付いた5人(リーナ、深雪、水波、琢磨、エリカ)が頷いた。

 

達也「行く前に、少し時間もらっていいか?」

 

リーナ「なんで?」

 

達也「機材のデータを消しておきたい。…機材を壊せればもっといいのだが…。」

 

深雪「わかりました。」

 

機材の処分のために動き出していたが、途中でとある男と遭遇した。

 

「風間、工藤」

 

達也「十文字先輩」

 

そう、声をかけたのは後ろに服部、沢木を従えた十文字克人だった。

 

克人「お前達は避難していないのか?」

 

達也「俺は機材を破壊しに、そして、後ろの人は一緒にいてくれた方が良いかなと思いまして。」

 

服部「他の生徒は地下通路に向かったぞ」

 

地下通路と言う言葉に達也が顔をしかめ、それに気付いた沢木が質問をした。

 

沢木「地下通路では不味いのか?」

 

達也「懸念にしか過ぎませんが…地下通路は直通ではないので」

 

服部「遭遇戦の可能性か!?」

 

克人「服部、沢木。今すぐに中条の後を追え。」

 

「「はっ!!」」

 

服部と沢木が克人の指示で地下通路に向けて走り出した。

 

克人「さて、機材の破壊だったな。行くぞ」

 

そして、ステージ裏の機材置き場に入ると、そこには、先客がいた。

 

克人「七草…お前は逃げ出していなかったのか。」

 

真由美「りんちゃんやこはるん、それに五十里君が残ってるのに私だけ逃げ出すなんて無理よ。」

 

啓「ここは僕たちがやっておくから、司波君は控え室に残っている機器を頼めるかな?」

 

花音「可能なら、他校が残した機材も壊してちょうだい」

 

摩利「こっちが終わったらあたしたちも控え室に行く。そこで今後の方針を決めよう」

 

達也がリーナと琢磨を連れて他校の機材の破壊を始めに行った。

 

克人「俺は逃げ遅れた人がいないか見てくる。桐原、ついてこい」

 

桐原「はい!!」

 

そのまま克人と桐原も部屋から出ていく。

 

真由美「そういえば、いつから七宝君がいたの?」

 

深雪「皆で正面玄関に行った時です。」

 

真由美「七宝琢磨…取り分け十師族への…特に七草家への執着が強いって聞いたけど……というか、達也君、七宝君と知り合いだったのね。」

 

エリカ「達也君何者なんだろう。」

 

そんな話をしている時に、達也達が戻ってきた。

 

そのまま話し合いを始める。そこで真由美からもたらされた情報は、達也たちが会議室で確認した情報と一致していた。

 

避難船の収容力も期待はできそうにないようで、摩利がシェルターに避難することを提案した。

 

それに賛同する花音。他の三年生、二年生が異議を唱えないということは皆同じ意見ということだろう。

一年生の目は達也に向けられている。

 

一年生と摩利の視線を受けた彼の目は・・・全く別の方向を見ていた。

 

自身のシルバー・ホーンを構えて後ろに向いた。

 

深雪「お兄様?」

 

達也がそれに気付いたのは偶々だった。

 

自身の眼の訓練のために公瑾と立ち会っていた時に、公謹から眼に頼るなという助言を受けていた

 

そして、直感で急激な危機感を感じた達也は『精霊の眼』を展開する。

 

すると、大きなトラックが入り口に向かって高速で走って来た。

 

さらに、運転手が硬化魔法まで使ってきた。

 

達也はそのまま想子を活性化させる。

 

「「お兄様(達也兄様)!?」」

 

深雪と水波の驚く声が聞こえた。

 

達也は真由美にみられている前提で『雲散霧消(ミスト・ディスパージョン)』を放つ。

 

真由美「え!?…何…今の…」

 

達也は答えることもなく、真由美の声は虚空に消えた。

 

が、今度はロケットランチャーが放たれた。

 

しかし、それは横からソニックブームの如く穿たれた攻撃によって防がれた。

 

「お待たせ~!!――久し振りね、真由美さん」

 

真由美「え!?…響子さん?」

 

突如入ってきたのは真由美の旧知の人間だった。

 

――――――――――――――――――

 

克人は会場周辺を見回りしていた時に、会場に向けて撃たれたミサイルを発見し、『ファランクス』を展開した。

 

しかし、ミサイルはその前にソニックブームの如く穿たれた攻撃によって防がれ、克人の『ファランクス』はその余波の熱波を防いだだけだった。

 

横には大型車にのってロケットランチャーを担いだ男がいた。

 

克人「〈ソニックブームランチャー〉…一○一の方ですか。」

 

真田「国防陸軍第一○一旅団独立魔装大隊大尉、真田繁留であります。」

 

克人「師族会議十文字家代表代理、十文字克人です。」

 

真田「我々をご存知とは、流石は()()()()()()()。お見逸れいたしました」

 

克人の眉毛がピクッと動いたのを真田は見抜いた。

 

真田「失礼。…では、行きましょうか、十文字家次期当主殿。」

 

―――――――――――――――――

 

部屋に入ってきたのは響子だけではなかった。

 

響子「()()殿()、情報統制は一時的に解除されています。」

 

響子は達也に頼まれていた()()ではなく、元の階級である()()という階級を使った。

 

その事に達也とリーナは驚いたが、すぐに落ち着きを取り戻し、敬礼で返した(琢磨はこんな一般人の多いところで言うのかと驚いている)。

 

このやり取りに、深雪と水波を除く全員が(さっき入ってきた克人も含めて)驚き固まっていた。

 

風間「国防陸軍少佐、風間晴信です。訳あって所属についてはご勘弁頂きたい。」

 

克人「(風間…なる程。通りで…)貴官があの風間少佐ですか。師族会議十文字家代表代理の十文字克人です。」

 

風間「藤林、現在の状況を教えて差し上げなさい。」

 

響子「はっ!…我が軍は現在、保土ヶ谷駐留部隊が侵攻軍と交戦中。また、鶴見と藤沢より各一個大隊が当地に急行中。魔法協会関東支部も独自に義勇軍を編成し、自衛行動に入っています。」

 

風間「ご苦労。さて、中佐、両特尉。現下の特殊な状況を鑑み、別任務で保土ヶ谷に出動中だった我が隊も防衛へ加わるよう、先程命令が下った。国防軍特務規則に基づき、貴官らにも出動を命じる。」

 

流石に話に付いていけなくなったのか、それとも達也達に向けて言った言葉に動揺したのか、花音や摩利の方から声が上がろうとする。

 

が、風間がその前に釘を刺した。

 

風間「国防軍は皆さんに対し、中佐達の地位について守秘義務を要求する。本件は国家機密保護法に基づく措置であるとご理解されたい。」

 

真田「中佐殿、特尉。君達専用のスーツはトレーラーに置いてあります。」

 

響子「中佐殿、皆さんは私の部隊が護衛いたします。」

 

達也「少尉、よろしくお願いします。」

 

深雪「お兄様!!」

 

達也「深雪」

 

深雪「お兄様…ご存分に…行ってらっしゃいませ。」

 

水波「深雪姉様のことはお任せください。」

 

達也「深雪、水波。…ありがとう。行ってくる」

 




次回は早速戦線参加です。

では、また次回。

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