星々の王と妃   作:旭姫

88 / 89
エピローグ② 四葉家次期当主発表

七草と七宝の『七』の数字付きが同時に入学したということで、第一高校内はピリピリした空気だった。

 

しかし、起こったことと言えば、七宝琢磨が生徒会&風紀委員を蹴ったことや、達也主導で行った〖常駐型重力制御魔法式継続熱核融合炉〗の実験だったりだった。

 

〖常駐型重力制御魔法式継続熱核融合炉〗

 

第一高校に魔法師を国防に関わることをよく思わない派閥に属している民権党所属の国会議員である神田議員がアピールのためにマスコミを引き連れて第一高校に乗り込んできたことが原因で達也が計画を早めて行うことにした実験である

 

実験には中条あずさを総監督とし、達也が指示役、司波深雪、桜井水波、光井ほのか、五十里啓、七草の双子の6人が魔法を発動し、それの警護をリーナや琢磨、エリカやレオが2人1組でついて実験をしていた

 

マスコミを撃退した後は、九校戦へむけ準備していた

 

今年は昨年の一高の独壇場が今後も起こらないようにするために、本戦は1人一種目とされ、達也とリーナがアイス・ピラーズ・ブレイク、水波と鋼がクラウド・ボール、ほのかがバトル・ボード、雫とエイミイがスピード・シューティング、幹比古が3年生の人(服部刑部)とモノリス・コード、そして、深雪がミラージ・バットに知り合い達が別れていった

 

一方、1年生は七宝・七草を中心に実力者(それぞれの競技に似合った魔法を持つ人など)を起用して、連覇を狙いに行った

 

そして、対する三高が将輝がアイス・ピラーズ・ブレイク、真紅郎と栞がスピード・シューティング、沓子がバトル・ボード、愛梨がミラージ・バットに入ったことで、それぞれでライバル対決が見られた

 

特に、達也VS将輝、深雪VS愛梨は昨年の決勝対決ということで、観客が凄かった。

 

―達也VS将輝―

 

2年生ながら決勝に上がった2人の試合に多くの観客が集まった

 

2人が櫓から出てきた

 

将輝「今年は俺の勝ちだな。」

 

達也「いいや。今年は俺の勝ちだ。」

 

合図が鳴ると同時に2人のCADから『フォノン・メーザー』が飛び出した

 

その後、達也が将輝の『爆裂』を『術式解散』で破壊したり、達也の『スパーク』を『情報強化』で防いだりして、拮抗した戦いが続いた

 

去年とほとんど同じ流れだ。

 

唯一違うとすれば、達也は『氷炎地獄』を、将輝は『叫喚地獄』を、それぞれ使わなかったことだろう。

 

結局、お互いは、最後まで『フォノン・メーザー』で氷柱を壊していき、最後は達也が切り札であるリーナの十八番『ムスペルスヘイム』を使って将輝の氷柱を全て破壊したことで達也の勝利が決まった

 

達也「今回は俺の勝ちだな。…だが、もう『ムスペルスヘイム』は将輝には効かないな。」

 

将輝「よく分かっているじゃないか。次は俺が勝つ。」

 

―深雪VS愛梨―

 

2年連続同じカードになったミラージ・バット決勝

 

昨年同様、真ん中の一番高い柱に深雪が、その外側の中で一番高い柱に愛梨がそれぞれ立っていた

 

愛梨「深雪、今年こそは貴方に勝つわ。」

 

深雪「お兄様の為にも…そして私自身のためにも…愛梨。私は負けない!」

 

合図が鳴ると、全員が『跳躍』を発動する

 

今年から『飛行魔法』による想子量差での勝負がつかないように、()()()()()()()()()()()()での『飛行魔法』の使用を禁じた

 

よって、計3ピリオドあるうちの前半2つのピリオドでどれだけ稼げるかが大事になっている

 

ちなみに余談だが、新人戦では、四高代表で選出された亜夜子が『疑似瞬間移動』で『飛行魔法』をもろともせずに優勝した

 

深雪も愛梨も点差が広がらずとも、他の選手を圧倒していた

 

第二ピリオドを終了して得点は深雪が52ポイント、愛梨が50ポイントと深雪が若干リードしていた

 

そして、少し長めの休憩を挟んで第三ピリオド

 

全ての選手が『飛行魔法』を使用し、残り1分になった段階で深雪と愛梨の一騎討ちになり、結果は89-84で深雪が優勝した

 

そんな一大イベント並みの試合が多く見られた2096年度の九校戦は今年も第一高校の優勝で終わった。

 

そして、九校戦を終えて向かえた2学期は大きな事件もなく、月日は冬休みを向かえた

 

2学期最初に行われた生徒会長選挙では、深雪の独壇場で終わり、生徒会長の座についた

 

そして、部活連会頭に前会頭服部刑部が指定したのが、十三束鋼で鋼が拒否せずにそれを受けたので部活連会頭には鋼が就いた

 

さらに、2年生になってから風紀委員入りが決まった北山雫・吉田幹比古両名のうち、前風紀委員長千代田花音は吉田幹比古を次期風紀委員長に任命した。幹比古は断ったのだが、雫が強引に幹比古を押し立てたので、結局は幹比古が風紀委員長となった。

 

その為、2096年度後期からは生徒会長司波深雪、風紀委員長吉田幹比古、部活連会頭十三束鋼をトップとして新たな一高首脳部が発足した

 

また、10月に行われた全国高校生論文コンペティションで、九島光宣がメインで発表した第二高校が優勝した。

 

論文コンペは開催場所によってその論文のジャンルを変えている

 

例えば昨年行われた横浜の場合はCADやそれに準ずる機械を利用した、謂わば魔法理論に関するテーマ

 

一方、今年行われる京都の場合は魔法そのものについてのテーマになる

 

そして、魔法科高校性の中にはその魔法そのものについて研究した〈カーディナル・ジョージ〉という研究者が第三高校にいた。

 

勿論、京都大会では真紅郎をメインとして発表を行った

 

結果は第二高校が勝ったが…

 

そんなこんなで向かえた冬休み、久しぶりに〈わたつみシリーズ〉の様子を見に行こうと考えていた達也のもとに面倒臭い報が舞い込んできた

 

深雪宛に送られた〈四葉家慶春会〉の招待状

 

翌日、達也のもとにもタツヤ=アルデバラン宛に〈四葉家慶春会〉の招待状が届いてしまった

 

名目としては、深雪宛には次期当主発表について、達也宛には同盟相手の次期当主紹介の為、だろう。

 

達也には12/29に四葉家へ来るように、深雪にはその2日前の12/27に四葉家へ来るようにそれぞれ書かれていた

 

水波は冬休み当日に四葉家へと戻っていたので、深雪は26日に穂波が車で迎えに来る手筈になっている

 

達也には葉山が迎えに行くと書かれていた

 

そんなわけで、達也と深雪は別々に四葉家へと入っていった

 

一方のリーナは今回呼ばれていないので、達也の頼みを受けた一条家が達也が戻るまでリーナを家へと招いてくれるということで達也が四葉家へ向かう前日に金沢へと向かった

 

―――――――――――――――――――――――

 

達也が四葉家にたどり着いて、真夜の書斎で聞いた話はこの通りだ

 

・次期当主として司波深雪が決定した

 

・婚約者は募集しないことにした

 

・四葉家次期当主候補であった新発田勝成が次期当主の座を返納、ガーディアンの堤琴鳴との結婚を四葉真夜の名のもとに認められる

 

・国際魔法協会常任理事タツヤ=アルデバランの四葉家スポンサー化

 

・〈わたつみシリーズ〉の魔法の使用を禁じること

 

の計5つだった。

 

自身が協力関係からスポンサーになっていたことは驚いたが、これで自由に四葉に入れると考えると利点だった

 

さらに、〈わたつみシリーズ〉の魔法使用禁止は彼女達の状況から考えると魔法による自我喪失の危険性から賛成だった

 

問題があるとすれば、深雪が次期当主であると発表した場合、達也と深雪は兄妹だと世間に知られている。そんなわけで、自身にも他家からの干渉が起きかねないし、深雪の婚約者を決定していないことも他家からの横槍の可能性を充分孕んでしまっている

 

そして、次期当主決定後の分家当主達の話し合いで風間達也、すなわち司波達也についても議題に表れた

 

()()()()()()()が生きていて、さらに司波深雪の次期当主発表で達也が四葉家の人間であることが知られてしまう

 

そんなことをする前に彼を殺すべきだと

 

しかし、真夜はそれを一蹴し、達也のことを分家当主に細かく説明した

 

よって、分家当主達(達也殺害派)は嫌々ながらも(達也を殺した時のメリットの少なさとデメリットの多さに渋々だが)殺すという案を取り消し、四葉家への復縁を求めた

 

要は、殺せないのなら自分達で囲んで表へと立たせなければ良いと。

 

しかし、その見え透いた考えを真夜は却下し、もし達也に何かした場合にどうなっても知らないと圧をかけて黙らせた

 

真夜「―というわけで、たっくんはわざわざ変装して四葉に入る必要がなくなったわ」

 

達也「…はっ?」

 

そんな話を真夜から聞かされた達也は来ないほうがよかったのでは?と本気で思った

 

達也「ちょっと待ってください。分家当主に俺のことを話したのはまぁ良いです。問題はタツヤ=アルデバランのスポンサー化です。あれはどういう意味ですか?」

 

真夜「タツヤ=アルデバランの一声で世界最強の戦闘集団〈S.T.A.R.S.〉と世界最強の魔法師一家である四葉家が動くって考えたら凄くないかしら?」

 

達也「そんなことしたらタツヤ=アルデバランが世界征服を目指してるみたいな言い方になるじゃないですか!!」

 

真夜「いいじゃない!もともと私の願いは世界への復讐だったんだし」

 

達也「はぁ…それで、何処まで公表するんですか?」

 

真夜「とりあえず深雪さんの次期当主発表と、風間達也は四葉を離反しているということ、後はタツヤ=アルデバランと四葉真夜が同盟を結んだこと…かしら?」

 

達也「なんですか、最後のやつは!言う必要ないじゃないですか!」

 

真夜「いいじゃない!」

 

達也「だめです!絶対に公表しないでください!そもそも俺は母さんと同盟は組んでません!嘘を公表しないでください」

 

達也の物言いに真夜が上目遣いで対抗する

 

真夜「だめ?」

 

達也「だめです。…その代わり、風間達也が四葉真夜の息子であることを発表しましょう。それなら問題ない筈です」

 

真夜「うう…分かったわ」

 

達也「はぁ…すみません、葉山さん。俺と母さんに飲み物のおかわりをお願いできますか?」

 

「かしこまりました。」

 

葉山が達也のコップにコーヒーを、真夜のコップに紅茶を入れると一礼をして部屋からでた

 

達也「事務的な話も終わりましたし、お茶会でもしますか?」

 

真夜「いいわ。夜まで話しましょう?」

 

――――――――――――――――――――――

 

翌日、日本魔法協会を経由して四葉家が声明を出した

 

四葉が示したのは3点

 

・四葉家次期当主として第一高校2年司波深雪を指名した

 

・司波深雪は四葉深夜の娘である

 

・風間達也は四葉真夜の息子であり、四葉家から離反している

 

この報告により、日本魔法師界に大きな衝撃を与えた

 

師族会議では、この報告が勿論話題になり、深雪の婚約者について自分の息子や、自分の家と関係のある家の嫡子を婚約者にさせようと画策するもの達が数家程いたのだが、それを真夜が却下し、黙らせて終わった。

 

学校でも、深雪や達也は居心地が多少悪くなるものの良い友人に恵まれたのもあり、3年生に上がる頃には居心地の悪さも無くなった。

 

3年生になってからも特にかわりなく、九校戦も昨年同様の決勝カードが相次ぎ、将輝と達也の試合は引き分けに、愛梨と深雪の試合は深雪の勝利で終わった。

 

総合結果としては、一高は優勝し、三連覇、否過去からの連勝を含めると七連覇を達成した

 

そして、2学期からは七草泉美が生徒会長に、七草香澄が風紀委員長に、七宝琢磨が部活連会頭になった

 

その後に行われた論文コンペは、達也をメイン発表者として2年前に市原鈴音も行った〖重力制御魔法式熱核融合炉〗を別の視点から論文を発表し、優勝した

 

そして、年が明けて2098年3月、達也達はついに卒業した

 

卒業式に四葉真夜と九島烈が遊びに来ていたことは参列していた3年生や準備などをしていた生徒会役員達しか知らない

 

そんなこんなで向かえた3/31

 

達也の友人達にはとても衝撃的な報が風の噂と共に流れた

 

〝“風間達也”と“工藤利奈”のPD(パーソナル・データ)が抹消され、その2名が姿を消した〟

 

 




というわけで、エピローグ編②でした

たぶん今回が後にも先にも最長文字数になったと思います

2096年度入学式終わりから卒業まで流れで進めました

今回のメインは2096年度九校戦と四葉家次期当主発表、達也とリーナのPD抹消の計3点です。

次回がこの『星々の王と妃』の最終回です。

では、また次回

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。