この会議が開かれると分かった時から獪岳を鳴柱へ推薦しようと決めていた。昔の獪岳は何処か危なっかしい奴だったが、今の獪岳ならしっかりとした柱になれると確信して推薦した。
俺が獪岳を柱に推薦すると様々な反応が見られた。行冥や義勇達は獪岳を柱に推薦する事に賛成なのか静かに頷き、一人を除いた愛柱教の信者達は反対という視線で獪岳を見ていた。
「え、は、師範?俺が柱って...」
「お前は柱になれる条件を達している。柱の席が一つ空いてしまった今、お前を柱に昇格させた方が戦力に穴を開けずに済む」
俺が柱に推薦した事に戸惑っている獪岳に推薦した理由を話した。俺なんかが...って後ろ向きな事を言おうとした獪岳に耀哉は優しい声色で獪岳の仕事ぶりを褒めちぎり、柱になって欲しいと頼み込んだ。
「御館様、俺はそいつが柱になるのを認める事は出来ません」
「俺も不死川にド派手に賛成だ。そいつは雷の呼吸で基本となる壱ノ型が出来ないという情報がある。柱である奴が己が使う呼吸を極めてねぇなら、他の隊士に柱が甘く見られ士気が落ちる可能性が出て来る」
予想通り、風柱と音柱が獪岳が柱になる事を反対してきた。風柱と音柱に続いて蛇柱も水柱の片割れも反対してきたのだが…炎柱は特に何も言わずに俺を見ているだけだった。愛崎姫乃は笑顔を振り撒きながら、自分は中立だとアピールしていた。
「確かに獪岳は壱ノ型は出来ない...。だが、それを補う程の力と実績を持っている。十二鬼月・下弦ノ参と陸、普通の鬼を100以上討伐に成功している。炎柱が柱を退いて空いてしまった穴を埋めるのに適した人材は獪岳の他に居ない」
「穴埋めなら時透兄「俺は柱になるつもりは無い」チッ...」
有一朗に柱にはならないと言われた風柱は舌打ちした。
俺達のやり取りを静かに聞いていた耀哉は俺が言った獪岳の実績を肯定した。耀哉が獪岳の実績を肯定した事により、獪岳の柱反対派の奴らは何も言えなくなり静かになった。
「何も言うことは無いかな?何も無ければ獪岳に鳴柱になってもらいたいけど受けてくれるかな?」
「一つ...お願いがあります」
「何かな?」
「私が鳴柱になっても師範の屋敷に住んでもよろしいでしょうか?」
獪岳の願いが柱になっても俺の屋敷に住み続けたいという事だった。柱になれば屋敷が支給されるのにわざわざ俺の所に居なくても良いと言ったんだが、獪岳は俺の屋敷から出ていくのなら柱を断るなんて言い始めた。そんな獪岳に耀哉はクスクスと小さく笑いながら、折角の戦力を失いたくないって事で御館様命令で、獪岳は俺の所に住み続ける事になった。
「これからもよろしくお願いします師範」
「俺とお前は対等な関係になるだろ?何時までも師範呼びはどうなんだ?」
「俺にとって師範は師範です!」
「ふふ。改めてよろしく頼むよ獪岳」
「鳴柱の名に泥を塗らぬ様に日々精進致します」
炎柱が退き獪岳が新たに鳴柱として仲間に加わった。
〇
「忙しい所を集まってくれてありがとう。杏寿郎と透也はまだ傷を完治出来ていないから、怪我を治すことに専念するんだよ?」
「はいよ...」
「心遣い感謝します...」
緊急で開かれた柱合会議は産屋敷耀哉の一言で終了した。
透也は会議が終わった瞬間、絡まれる前に獪岳を連れて産屋敷邸から蝶屋敷へ向かった。
「お二人共待ってください〜」
蝶屋敷に向かおうとしている二人の後ろを胡蝶しのぶは素の笑顔で追いかけた。三人並んで歩いている後ろを煉獄杏寿郎が複雑な気持ちで見ていた。愛崎姫乃や胡蝶カナエに対して非道な行いをしてきたと噂されてきた男が産屋敷耀哉や一部の柱から信頼され、そんな彼に無限列車で絶体絶命の窮地を助けられ、煉獄杏寿郎は分からなくなっていた。
「俺は...俺はどうしたらいい...」
杏寿郎の呟きに誰も答える者はおらず、まだ怪我が完治していない杏寿郎も透也達の少し後ろを歩きながら蝶屋敷へ向かった。
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