宇宙暦640 ダゴン星域会戦
宇宙暦669 コルネリアス1世の大親征
宇宙暦682 フェザーン成立
宇宙暦696 シャンダルーア星域の会戦
宇宙暦720 ★第一話スタート
宇宙暦726 730年マフィア 士官学校へ入校
宇宙暦728 ジークマイスター亡命事件
宇宙暦728 フォルセティ会戦
宇宙暦730 730年マフィア 士官学校卒業
宇宙暦738 ファイアザード会戦
宇宙暦742 ドラゴニア会戦
宇宙暦745 第二次ティアマト会戦
宇宙暦751 パランディア会戦 ミヒャールゼン提督暗殺事件
宇宙暦765 イゼルローン要塞完成
宇宙暦767 ヤンウェンリー誕生
宇宙暦770 シェーンコップ 祖父母と亡命
宇宙暦776 ラインハルト誕生
※星間図は『銀英伝 星間図』で画像検索すると出てくる帝国軍が青、同盟軍が赤で表現されている物を参照しています
※PYさん、第一話からの見直し誤字報告感謝です
宇宙暦737年 帝国暦428年 1月初旬
ティアマト星系 惑星アンシャル近郊
カーク・ターナー
『ビーッ。ビッー。ビッー......』
「3番艦は先行して味方分艦隊への通報。2番艦へは可能な限り援護を指示」
「了解、3番艦は先行して味方分艦隊へ通報せよ。2番艦へは可能な限り援護を求む」
俺の指示をオペレーターが僚艦たちへ伝達していく。俺が腰を下ろしている司令席のモニターのいくつかはレッドアラート音を鳴らし続けている。
「進路に関しては帝国軍の欺瞞分析を踏まえて設定する様に!。3番艦にも念を押しておいてくれ」
オペレーターの復唱を聞きながら、どうしたものかと俺は考えをめぐらせていた。ダゴン星域で新年を祝った第111強行偵察大隊は、ダゴン星系外縁部からティアマト星系にワープを行った。ワープアウトし、隠密航行を始めた11時間前に、時を巻き戻そう。
「ワープアウト完了。僚艦も異常なし。隠密航行を開始します」
「了解、隠密航行を開始」
オペレーターたちの緊張した声が艦橋に響く。実戦経験者で揃えられた隊員たちも、帝国の勢力圏に入るとなると緊張するようだ。自分でも意外だったが、初めての実戦が近づいているにも関わらず落ち着いている自分がいた。
隊長と言う職責もあったのかもしれないが、フェザーンで工作を担当した際は身一つだ。弁務官府を拠点にしていたとは言え、頼れるのは脇に吊っていたブラスターが最後の頼みの綱。それに比べれば本職の軍人たちが周囲を固めてくれているし、乗船している艦は、速度と防御に特化した巡洋艦。あの時に比べれば、むしろ安心感を感じるのが普通だろう。
「まもなく超長距離カメラの撮影圏内に惑星アンシャルが入ります」
「良し、偵察カメラ起動。撮影に入れ。慣性航行はそのまま維持」
アンシャルを軸に水平方向から見て7時方向からアプローチし、重力の影響による減速を最低限にしながら撮影を進めていく。地上には帝国軍の基地が存在しており、撮影された画像から施設規模を確認し、補給頻度の分析精度を高めるのが狙いだ。定期的なありきたりの偵察任務になるはずだった。
「船首パッシブレーダーに感あり。惑星の影に約2000隻の反応」
オペレーターの慌てるような一声で、在り来たりな偵察任務の幕は下り、圧倒的な敵からの逃亡劇が幕を開けた。
「偵察カメラは撮影を停止。本艦はこれより撤収に入る。敵さんはこちらに気づいているか?」
「可能性は高いです。一部の艦に動きがあります」
「では、惑星重力を活かしたスイング・バイ航法で一気に距離を取るぞ。バスケス中尉、やれるか?」
「お任せを。僚艦との操艦リンク開始、角度補正良し。緊急機動開始まで10、9、8......」
「総員、衝撃に備えよ!」
「3、2、1、緊急機動開始」
着席していた俺ですら結構な衝撃を感じる。シャトルの離陸時を何倍かにしたような慣性を全身で感じながら緊急機動を見守る。スペースシャトルの打ち上げの際には、こんな感じだったのだろうか?モニターに映る予定航路を現在地を表す光点が通過していき、帝国軍とかなりの距離を取れた辺りで
『ドォン』
と右舷後方から爆発音が響き、モニターからレッドアラート音が鳴り始め、右舷上部にある3番エンジンが緊急停止、推進軸を保つために対角線上にある左舷下部の2番エンジンも緊急停止した。
「機関部、負傷者はいないか?状況報告が可能か?こちらターナーだ」
『こちら機関部ハドソン、幸いなことにけが人はいませんが、4番エンジンの冷却が追い付かずに火を噴きました。現在消火中』
「了解だハドソン。消火班を送る。機関員に言うまでもないと思うが防護マスクの着用を急げよ」
『了解。対処が完了したら報告します』
艦内通信で軍曹との通信を終えると、バスケス中尉が申し訳なさそうにこちらに視線を向けていた。
「隊長、私......」
「中尉、君が変な責任を感じる必要はない。半分の出力で逃げ切れるかは中尉の腕にかかっている。余計なことは考えるな。エンジンの摩耗を考慮しなかった私に責任がある」
視線を向けると、悔しそうに『イエッサー』と応じて来た。航海長も申し訳なさそうな表情をしているが、視線を向けてうなずくと気持ちを切り替えて、モニターに視線を向けた。
「3番艦は先行して味方分艦隊への通報。2番艦へは可能な限り援護を指示」
「了解、3番艦は先行して味方分艦隊へ通報せよ。2番艦へは可能な限り援護を求む」
俺の指示をオペレーターが僚艦たちへ伝達していく。俺が腰を下ろしている司令席のモニターのいくつかはレットアラート音を鳴らし続けている。
「進路に関しては帝国軍の欺瞞分析を踏まえて設定する様に!3番艦にも念を押しておいてくれ」
逃げ切れれば良いが、帝国軍の指揮官が『名ばかり少将』殿だった事が、逆に災いした。少数の我々を攻撃射界に入れるためにわざわざ回頭した素人だが、少数とみて全艦で追撃にかかっている。艦列もかなり乱れているが、こちらには攻撃能力はない。振り切れないと厄介だ。
「2番艦から入電、本艦の後方でカバーに入るとの事です」
「感謝すると応答を。防御磁場のコントロール権は2番艦に移譲、操艦リンクを開始。バスケス中尉、僚艦と超近距離でのリンクになるがやれるか?」
「任せてください!」
気持ちを切り替えたのか?いつもの雰囲気に戻った中尉が大きめに応じた。エンジンが短時間で修復できれば問題ないが、そこは軍曹の報告待ちだな。こうして、ターナーとゆかいな仲間たちの逃走劇が幕を開けた。
宇宙暦737年 帝国暦426年 1月初旬
ティアマト星系 巡洋艦機関部
ハドソン軍曹
「消火活動は完了。応急修理にこれからかかります」
『軍曹、了解した。大変だろうが、見込みがついたら報告を頼む。必要なものは軍曹の判断で使ってくれて構わない。では』
3番エンジンが火を噴いて20分。消火は何とか終えたが、エンジンは煤と消火剤まみれだ。おまけにケツを追いかけられてる。隊長は落ち着いた様子だったが、3番が停止したままじゃ2番も使えない。帝国軍の坊ちゃんたちを振り切るには出力を取り戻さないと厳しいだろう。
「軍曹、申し訳ありません。俺達が緊急機動プログラムを楽しみ過ぎたせいで......」
「それは俺も同じだ。変な責任を感じている暇があったら作業を進めるぞ。優秀だが折れやすいサラブレッドを元気にしてやろう」
緊急機動プログラムの作成には機関部も全面協力した。戦艦クラスの核融合炉に4つの新型エンジン。エンジニアの端くれならみんな夢中になる。そんなじゃじゃ馬を乗りこなすプログラムを作るとなったら大はしゃぎするのも無理はない。操艦担当はスパルタニアンパイロットでエースのバスケス中尉。
自分たちでチューニングした最高級のマシーンを、実績十分な女性ドライバーが運転する。おまけに監督も成果を出すだけ大喜び。気前の良さもピカ一だ。俺も含めて、任務以上に楽しみ過ぎたのは事実だな。
「でもいいんですかね。船外活動服を着れば、温度を気にせずに作業できますが、さすがに贅沢すぎるような......」
「状況を考えろ。距離は取れているが、帝国軍にケツを追いかけられてるんだ。4番を修復できれば逃げ切れる。そうじゃなきゃ、折角の新型エンジンも含めて帝国に取られちまうんだよ。少しばかり贅沢に備品を使っても文句は出ないさ。隊長も必要なものは使えって指示してただろ?」
「そんなもんなんですかねえ。んじゃ、はじめますか」
俺がそう応じると納得したのか作業に取り掛かる。消火はしたとは言え、中には高熱のままの部分もある。洗浄液を散布しながら破裂した配管やらを切断し、亀裂の有無も確認しながら破損個所の洗い出しを進める。
破棄する部分は、船外作業服を着た連中が次々に運び出していく。応急処置も終わり、起動チェックを開始するのに2時間かかった。エンジンの応急処置としてはかなり手早く出来たはずだった。
「軍曹、何度も試しましたし、バイパスも検討しましたが、第2出力バルブの異常だけが解決できません」
青くなった起動チェック担当が報告してきたのは、廃棄部材を格納庫に押し込んで戻って来たタイミングだった。
「第2出力バルブがダメとなると、船外活動で直接交換するしかないな」
戦闘行動中の船外活動か、こりゃ一気にヤバイ話になって来たな。とは言え、まずは隊長に報告しなきゃならない。
『そうか。中尉、外縁部のアステロイドベルトを通過するまでの時間は?』
『通過までなら2時間です』
『軍曹、2時間で船外活動のプランを作ってくれ。可能か?』
「了解しました。何とかしてみせます」
帝国軍との間にアステロイドベルトを挟めれば攻撃を受ける確率は激減する。その間に船外活動をするわけか。どっちにしてもやるしかねえんだ。
「お前ら、聞いた通りだ。仕様書と設計図をもう一度確認するぞ!」
隊長との通話を聞いていた部下たちは、既に資料を壁に貼り始めていた。バスケス中尉の腕もあり、何とか帝国軍との距離を維持しながら一直線にアステロイドベルトへ進む。帝国軍がアステロイドベルトを抜ける前にエンジンを再起動できなければやばいことになる。それ位の事は連中も分かっている様だ。
消火活動を終えてかなりの時間が経っているはずなのに、やけに艦内温度が暑く感じる。袖で汗を拭うが、いやに汗をかいているのは、俺に限った事ではなかった。
という訳で、初挑戦の緊急対応の導入部でした。いやあ、筆が進まなかった。シナリオがどこかで見た事がある?SFや宇宙物だと定番ですからね。定番だから書いてみたかったんです!では!明日!