宇宙暦640 ダゴン星域会戦
宇宙暦669 コルネリアス1世の大親征
宇宙暦682 フェザーン成立
宇宙暦696 シャンダルーア星域の会戦
宇宙暦720 ★第一話スタート
宇宙暦726 730年マフィア 士官学校へ入校
宇宙暦728 ジークマイスター亡命事件
宇宙暦728 フォルセティ会戦
宇宙暦730 730年マフィア 士官学校卒業
宇宙暦738 ファイアザード会戦
宇宙暦742 ドラゴニア会戦
宇宙暦745 第二次ティアマト会戦
宇宙暦751 パランディア会戦 ミヒャールゼン提督暗殺事件
宇宙暦765 イゼルローン要塞完成
宇宙暦767 ヤンウェンリー誕生
宇宙暦770 シェーンコップ 祖父母と亡命
宇宙暦776 ラインハルト誕生
※星間図は『銀英伝 星間図』で画像検索すると出てくる帝国軍が青、同盟軍が赤で表現されている物を参照しています
宇宙暦737年 帝国暦428年 1月初旬
ティアマト星系 巡洋艦機関部
ハドソン軍曹
『ガタガタ......。ガタガタ......』
おそらくアステロイドベルト帯に突入したんだろう。軌道修正の必要が出て来た為、慣性の影響で艦が揺れ始めた。ただ、戦闘中の船外活動に向けて待機中でなければ、気にならない程度の揺れだ。
「軍曹、姐さんはやっぱり凄腕なんですね。アステロイドベルトに入っても減速しないし、それで揺れはこのレベルだ。緊急機動プログラムを作るより、通常機動プログラムを煮詰める方が良かったかもしれませんね」
「ったく。こんな時までプログラムの検討か?お前らも好きだねえ」
「カウントダウンをぼーっと待ってるのも勿体ないですしね。生きて帰れたら、『姐さんは凄腕だ!』って伝えて、煮詰める作業をお願いしないといけませんや」
「おい。ジンクスを忘れたのか?今は目の前の事に集中だ」
小説やらドラマで、山場の手前で『生きて帰れたら......』から始まるセリフをいう役は、大抵山場で死ぬんだ。そんなフラグなんて気にしねえ!って奴もいるが、俺は気にするタイプだ。個人的に日記なり手帳なりにタスクとして書いて置く位なら良いだろうが、しんみりした感じで同僚につぶやくのは最悪なんだよな。
『ザァー......。ザァー......』
豪雨が屋根に当たるような音と共に、わずかに艦が揺れる。避けるまでもない細かいデブリが防御磁場に当たる音だろう。プログラムの事に意識を向けていた部下の一人が、はっとした表情をした。ほらな。油断大敵なんだよ。何事も目の前の事を一つひとつ片づけるのがベストだ。
軍人なんて明日が来るかもあいまいな商売をしてるんだから。タイロン、軍人なんて因果な商売さ。羨望の目で俺達を見ていたが、お前は新型エンジンの開発費を納税してくれ。そうすりゃ、俺の軍務にも多少は潤いが出るってもんだ。
新設の部隊で、転換訓練中なのに、知り合いの子供を自由に出入りさせる隊長の意図が、はじめは分からなかった。でも、タイロンのお陰で、訓練にメリハリもついたし、士気も上がったと思う。ここでバカやってる連中だって木の股から生まれた訳じゃない。子弟や弟分の一人ぐらい、故郷に戻ればいるだろう。
タイロンには悪いが、そういう存在の代わりの様な立ち位置だった。これが広報課とかなら『同盟軍は未来の英雄を求めている!』とでも言って、志願を促すんだろうが、そんな事を言う奴は誰もいなかった。俺もそうだ。『戦争は任せろ!戦艦を買ってくれ!』ってよく言ってたな。
『軍曹、現在地はアステロイドベルトの中間位だ。もう少しでカウントダウンを開始する。危険手当は割増しで申請しておくから、エルファシルで慰労会の手配をひと段落ついたら頼むぞ』
「了解です。どうせならタイロンも呼びますか。あいつも特務隊員ですからね」
『そうだな。あいつも全員の帰還を待っているだろう。ちなみに賭けはしてるのか?枠があるなら全員帰還に500ディナール賭けたい所だが?』
「隊長。Betするならみんな『全員生還』ですよ。残念ながらその賭けは成立しませんや」
『それもそうだな』
通常の業務連絡かのように話していた隊長が、最後に少し笑みを浮かべた。通信を聞いていた部下たちが笑い声をあげる。どうやら緊張をほぐす意図があったようだ。まぁ、空元気でも笑えりゃ御の字だ。
『ザァー......。ザァー......』
また豪雨が屋根に当たるような音と共に、わずかに艦が揺れるが、あまり気にならなかった。緊張は適度にほぐれたかもしれない。
『アステロイドベルト通過までのカウントダウンを開始します。600......。599......』
オペレーターのアナウンスと共に、船外作業服のヘルメットの内面にカウントダウンが表示される。艦上部のエアロックに機材一式を運び込んで、内壁にロックをかけて俺達は待機中だ。気を落ち着けるかのように何人かが身体を少し動かす。両手足についた電磁石と命綱をちゃんと訓練通りに使えば事故は起きないはずだ。全員でタイロンと飯を食う。俺は自分の頭の中のタスクリストにそれを書き込んだ。
『5......4......3......2......1......Go』
上部ハッチが開き、後方で援護に入っている2番艦が視界に入った。機材を各々が抱えて右手の3番エンジンへ向かう。グングン遠ざかっていくアステロイドベルト。中尉、こんな速度でアステロイドベルトを突っ切るなよ。惚れた相手が観てる前だからって張り切り過ぎだ。まぁ、そういう所があんたの良さなんだろうが......。
3番エンジンに洗浄剤を吹きかけながら装甲板を外していく。パッと見でも黒く焼け焦げた部分が多い。活動計画に基づいて部下たちがテキパキと応急修理を進めていく。巡洋艦の艦型に無理やり戦艦クラスの核融合炉とエンジンを組みつけたせいで、余裕がないんだな。エンジンの応急処置を一部とは言え、船外活動で対処しないといけないなんて今思えば論外だろうに。
「命綱だけは絶対に外すなよ。焦らなくていい。一つひとつだ」
「「一つひとつ了解」」
多少の駆け足なんて、一回つまづくだけでチャラ。下手したら逆に時間がかかるんだ。焦らず一つひとつ進めれば問題ない。時間はまだあるんだ。損傷した部材の取り外しが終わり第2出力バルブが見えてくる。こいつを交換すれば、作業はほぼ完了だ。焦りそうになる自分に言い聞かせる様に、何度も『一つひとつ』とつぶやきながら、俺達は作業を進めた。
宇宙暦737年 帝国暦426年 1月初旬
ティアマト星系 巡洋艦艦橋
カーク・ターナー(中佐)
『600......。601......。602......』
モニターのひとつが船外活動を開始してからの時間をカウントしている。既に不具合が明らかになっている第2出力バルブの取り外しまでは完了した。計画と比べても順調に作業は進んでいる。焦る気持ちがない訳ではない。ただ、その道のプロが全力を尽くしてくれているんだ。信じて待つのが俺の役割だろう。
現にレッドランプもひとつづつグリーンに戻りつつある。進捗の共有はオペレーターが担当している。落ち着いた口調でアナウンスしているが、暑くもない艦橋で汗だくだ。それを見て、またひとつ落ち着けた。アステロイドベルトをすり抜けた事で、帝国軍との距離もまた少し離せた。さすがに分艦隊規模でアステロイドベルトを通り抜けるには減速が必要だろう。
本能的に危険を感じたのか?水平面下方へ迂回する判断をしたようだが、もともと20隻も分派すれば追跡用の戦力としては事足りるし、アステロイドベルトをすり抜ける事も出来ただろう。自分の手柄にしたいが、戦力を分けたくない......。そんな怯えが感じ取れる采配だった。
「それにしてもさすがエースだな。通常機動プログラムでここまでやるとは......」
俺は操艦に集中しているバスケス中尉に視線を向けた。巡洋艦クラスのスパルタニアンに比して巨大なこの艦を、慣性を活かしてアステロイドベルトをすり抜けさせた。冬季装備をフル装備で背負ってアルペンスキーをしたようなものだ。
ナビゲーター役を勤めた航海長の力量もあったのだろうが、急制動が全くなく、滑る様に予定進路をすり抜けたのには脱帽した。と同時に、おそらくこの艦型と出力がマッチしていなかったんだろう。言ってみればフル出力だと軽自動車にF1のエンジンを積んでいたようなものだ。出力が半分になったからこそ扱いやすくなり、神技のような操艦が可能になった面も否めない。
『ビーッ。ビッー......』
レッドアラート音が止まり、エンジンモニターがオールグリーンに変わる。
「船外作業班へ、こちら艦橋。エンジンモニターオールグリーン」
『こちら機関部、再起動チェック完了。行けます』
『船外作業班了解!これより撤収します』
船外作業服のヘルメットに取り付けられたカメラに映る視界が、上部ハッチに向かっていく様子を映している。一先ず何とかなったようだ。
「船外作業班へ、帰るまでが遠足だ。気を抜くなよ」
『了解です!隊長。ここで事故ったらさすがに笑いものだ。お前ら最後まで気を抜くなよ』
軍曹が明るい声で応じてくる。危機を脱したタイミングだからこそ、注意は促さないとな。まぁ、俺が言わなくても軍曹が一言添えただろうが、ここで事故が起きたら命に係わる。こういう時は小うるさい位が丁度良いんだ。そうこうしているうちに次々にカメラの映像が上部ハッチ内部に到着した様子を映していく。
「3番艦を通じて、第54分艦隊からアッシュビー中佐名義で入電。これは。進路指示と座標です」
ブルースが配属されている分艦隊から通信を受けたのは、ちょうど船外作業班の全員が上部ハッチに到着し、エアロックを終えたタイミングだった。
書いてて感じたのは、戦場の臨場感を表現するのが難しいって事。向いてないのか?慣れていないだけなのか?参考にできそうな作品があったら教えてくださいな。
作品といえば、BGMが聞きたくなってあるゲームのプレイ動画を見てたんですが、驚愕の事実が!分からないに人はごめんだけど、ラムザ達って公式では生還してるの知らなかった。私、死んじゃったと思ってたよ。では!明日!