美醜逆転アズレン世界における色物系Yongshiber SHIKI-KAN☆TV 作:SHIKI-KAN
【……チチュン! ……チュンチュン!!】
……耐えきった。激しい戦いだった。マジで死ぬかと思った。もうなんか、一晩中、無限に湧き出る闇の心ARを延々と倒し続けるループに嵌ってたし。途中からRPGのBADENDカルマルート的な雰囲気が漂ってたし。光の戦士PLちゃんが支援してくれたから頑張れたけど、1人だったら絶対負けてたし。ありがとう、光の戦士PLちゃん。
……でも、支援の途中でインディちゃんの薄い本を広げて一緒に読ませようとするのはやめてね? あれでシキカンの理性が一時的に崩壊しかけたから。俺の大切な薄い本はビシャマルちゃんの胃袋の中で消化されちゃったからね? そんな時にあんな薄い本見せられたら俺マジでどうにかなっちゃうからね?
……なんなら後で複製して貰えませんか?
……あ、うん、だめですよね。実体が無いですもんね。
……しょうがない。インディちゃんの薄い本は俺の心の中に大切に保管しておこう。
大切なものはいつも心の中に! 忘れないで、大切な世界を。
「……シキカン。おはようございます、です。シキカンのおかげで、昨日は久々に、ぐっすりと眠る事が出来た、です。シキカン、ありがと、です」
「……綾波ちゃんおはよう? ぐっすり眠れたみたいで良かった良かった。俺も死闘を繰り広げた甲斐があったってもんだよ」
「……昨日やったゲームは怖かったですけど、でも、シキカンが居ればもう大丈夫、です。綾波は、シキカンが居れば、もう平気、です。 ……今日も、なんだか、力が漲ってきている、です。今日は、何があっても、頑張れる気がする……です。 ……シキカンは、綾波が眠っている間に何かと闘っていたのですか? ……気が付かなくて、ごめんなさい、です。シキカンは綾波が守る、と決めたのに。 ……もう、闘いは終わったのですか? ……綾波に出来ることがあったら言って欲しい、です。なんでもする、です。」
「ま、まあ、まだ闘いは続いているんですけどね? 綾波ちゃんが俺の腕に張り付いて頂けている間は常に終わりのない死闘が繰り広げられていますけどね? むしろ、今の耳元の囁きボイスで、闇の心さんが一層活性化してまた暴れだしましたけどね? ロイヤルネイビー初の空母としての実力を遺憾なく発揮中ですけどね? ……物凄く名残惜しいけど、出来ればベッドから出て、立ち上がって頂けると幸いでございますね? 今の状態だと俺動けないしね? ……何時の間にか、腕だけじゃなくて足まで絡め捕られちゃってるですからね?」
「……シキカンは、綾波がそばに居ると、困る、ですか? ……たしかに、綾波は、余り人へ近づくと、煙たがられる、です。お前からは変な臭いがするから近づくな、とよく言われる、です。 ……シキカンも、綾波がそばに居て欲しくはない、ですか? ……それなら、離れる、です。 ……ごめんなさい、です」
「い、いや!? そんな事はないよ!? むしろ綾波ちゃんは良い匂いだけど!? ほのかな海の香りに混じって、柚の名に相応しいなんだかとってもフルーティな香りが漂って来てますけど!? 出来ればもうずっとこのままで良いんじゃね? とか考えちゃってるけども!? でもそれだと何の解決もしないのでっ!? 俺は綾波ちゃんの心を助けると決めたのでっ!? 出来れば今日は一旦離れて頂けると嬉しく存じますのでっ!? よろしくお願いしますっ!?」
「そう、ですか? ……シキカンが、そう言ってくれるなら、良かった、です。 ……綾波はもう、シキカン以外の人から、自分の臭いの事を言われても、気にしない、です。 ……本当に大切な人が気にしないで居てくれるなら、それで十分ですから」
「……よ、よし、じゃあ取り合えずベッドから出ようか? 俺は今ほぼニート状態だから何時起きても大丈夫だけれども。 ……聞いてなかったけど、綾波ちゃんは重桜軍隊で働いてるんだよね? それとも何か他の事をして生活してる感じ?」
「……綾波は今、重桜軍隊に所属して働いている、です。 ……仕事内容は、殆どが雑用のお仕事で、たまにセイレーンの討伐に出撃するくらい、です。でも、生活出来るだけのお金は稼げてるので、今はそれで十分、です。 ……たしかに、そろそろシキカンの家を出ないと、朝の点呼に間に合わなくなってしまう時間、です。 ……名残惜しいですが、一旦離れる、です」
「ふ、ふう……、これで奴とは一旦、停戦条約を結ぶことが出来る。 ……綾波ちゃん、君は今、ひとつの大いなる戦争を終結させたんだ。もっと誇りを持って良いんだよ?」
「……? ……良くわからないですが、シキカンのお役に立てたのなら嬉しい、です。 ……それでは、綾波はもう行く、です。 ……寂しくなったら、またシキカンの所へ戻ってくる、です。 ……それまで、ずっと、綾波の事を待っていて欲しい、です。 綾波は、シキカンの事を、信じている、です」
「……お、俺は何時でもこの家に居るから、寂しくなったら何時でも遊びにおいで? ……じゃあ、いってらっしゃーい!」
…………………待てよ? ……折角、重桜軍隊の関係者の綾波ちゃんと一緒に居るんだから、このまま一緒に重桜基地まで行けば、基地の様子や他のKAN-SENの娘達を見れるのでは……?
「……綾波ちゃん、ちなみに、重桜の基地って一般人が入ったり、見学したりしても大丈夫? それとも厳重な警備が敷かれてたりする?」
「……重桜の基地は基本的に、一般の方は立ち入り禁止、です。年に何回かは、一般の方でも見学可能なお祭りが、開催されてはいる、です。でも今は、まだ時期ではない、です。重桜基地自体は、鉄網のフェンスで囲われているだけ、です。外から見ようと思えば、基地の中は見ることが可能、です。警備なども、特に厳重ではない、です。他の一般の方々も、時々、基地の周りを散歩していたり、ランニングしていたりするので、シキカンが基地の周りを歩いていても、特に問題はないはず、です」
「な、なるほど……。まあ、基地の中に入れなくても、俺は遠くから様子を見るだけで良いかな? そんなに詳しく知りたいわけじゃないし」
こんな機会でもないと俺、この家から一生出ないし。
「シキカンが、一緒に基地まで来てくれる、ですか? ……それなら、綾波は嬉しい……です。 ……特に、面白い所ではないですが。 ……シキカンが来てくれるなら、休憩の合間にも、シキカンと会えるです。 ……迷惑じゃなければ、一緒に来て欲しい……です」
「じゃ、じゃあ重桜の基地まで綾波ちゃんに連れていって貰う事にするよ! ……1人だとマジで外なんて怖くて出歩きたくないしね」
外は鬼神さんだらけで怖いし。公共の交通機関なんて使ったら常に死と隣り合わせな状況が確実だし。案内役が居なかったら目的地に辿り着く前に息絶えそうだし。
「……外を歩くのが怖い、ですか? ……確かに、シキカンは外を歩いていると、襲われそうです。 ……それくらい、シキカンは格好良い外見をしているですから。 ……大丈夫、です。 ……綾波のそばに居る限り、シキカンは私が守る、です」
……そうだった。俺は皆の目から見ると格好良く見えるんだった。自分の事なのにまだ認識が追い付いてないけど。
「……じゃあ、基地までの護衛よろしくね? 道順さえわかれば、次からは俺でもなんとか行けると思うし」
「……了解、です。案内は任せて欲しい、です。シキカンのお役に立つ事が出来て、綾波は嬉しい、です。 ……では、出発する、です」
おお~。耳付き黒フード……。やはり存在していたのか……。でも、昨日は着ていなかったな。なんでたろ?
「昨日俺の家の前で待ってた時はそのフード被ってなかったよね? どうしたの? 途中で脱いだの?」
「……シキカンには、ありのままの綾波を見て欲しかった、です。 ……シキカンなら、こんな綾波の姿を見ても、受け入れてくれると思ったから……。 ……迷惑だった、ですか?」
ぐわー! なんとなく聞いただけなのに予想以上に重い答えが返って来てしまった! いや受け入れるけど! 可愛いけど!
「……そ、そんな事無いよ!? ……いや~、フードを取れば可愛いし、フードをしたら格好良いし! 綾波ちゃんは完璧だな~! ……よし。それじゃあ、基地に向けて出発だ~!」
「はい、です。 ……頑張ってシキカンを守る、です。よろしく、です」
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「……シキカン、ここが重桜基地の正門……です。ここから先は、関係者以外立ち入り禁止……です。綾波が案内できるのは、ここまで……です。 ……綾波は、シキカンのお役に立てたですか?」
「……綾波ちゃん、ありがとう! ……正直、物凄く助かった! ……綾波ちゃんが居なかったら、外国人・小人専用車両とか絶対知らずに、普通の車両に乗って圧死してたよ!」
「そう……ですか。シキカンの役に立てたのなら、綾波は満足、です。 ……それでは、綾波はもう行く、です。 ……何かあったらすぐに電話して下さい、です。何があっても、すぐに駆けつける、です」
「そ、それじゃあ、俺はこの基地周辺を散歩してるから。 ……ちなみに、この基地には綾波ちゃんの知り合いとか居る? 顔見知り程度でも良いんだけど。 ……例えば蓮ちゃんとか赤城さんとか鸞さんとか、そんな感じの人達を見た事無い?」
「……ごめんなさい、です。 ……綾波は基地の中では殆ど、人としゃべったりはしないので、知り合いとかは居ない、です。 出撃も、いつも1人ですので。 ……蓮、と、鸞、というコードネームの人達は名前を聞いた事がある、です。 ……ただ、シキカンの配信に来ていた人達とは、少し違う感じがする、です。 ……綾波は、その人達と話したことも無いので、詳しくはわからないですが……。 ……お役に立てず、申し訳ない、です」
「……そうかー、まあ、ちょっと期待してたんだけど、そんなに上手く他のKAN-SEN達とは出会えないかー。 ……まあ折角来たんだし、俺は予定通り、この基地の周りを散歩しながら中の様子を見学させて貰う事にするよ! ……綾波ちゃんもお仕事頑張ってね!」
「……ありがと……です。頑張って働いてくるです。 ……シキカンの、ために」
「……いやいや!? 別に俺のために無理して働かなくて良いから! ちゃんと自分のために働いてね!? 俺はまだ大丈夫だから!」
……あー、行っちゃった。
……なんだか綾波ちゃんが俺に献身的すぎるぞ。
……何処でこんなに好感度が上がったんだよ。ゲームでも出撃1回で上がる好感度は0.1未満なのに……
闇の心AR:それは閣下の魅力に当てられたから、に決まっているだろう? 彼女は今、閣下の事しか見えていないぞ?
……えぇー? お前本当に俺の心に常駐すんの? さっき停戦協定結んだじゃねーか。お前の好きな駆逐艦も、もう此処には居ないぞ。
闇の心AR:フッ。閣下、ツレない事を言うものではないぞ? 私は閣下の心から生まれた闇。話し相手も現状、閣下しか居らんのだ。 ……何、閣下の考えを邪魔するつもりはないよ。駆逐艦綾波による、あの無自覚な猛攻撃を掻い潜った閣下には、称賛と尊敬の念を抱いている位だ。 ……多少、私が戯言を喚いた所で、閣下であるならば、最早この程度の事などなんともあるまい?
……まあ、それはそうだけど。 ……と言うか、お前は綾波ちゃんの事気持ち悪いと思わないの? ビシャマルちゃんがあんなに酷い言われ様だったから、こっちの世界だとKAN-SEN達もかなり容姿が悪く見えてそうなんだけど? なんなの? それも駆逐艦愛の為せる技なの?
闇の心AR:まあ、勿論、私の駆逐艦愛の為せる技でもあるが、此れについても閣下が私に大きな影響を与えている。 ……私は閣下の心。当然、価値観も閣下と変わらない。閣下が醜いと感じたモノは醜く、美しいと感じたモノは当然、私も美しいと感じるのだ。 ……閣下はこちらの世界に来て、価値観の違いに苦悩していただろう? 時には同じ価値観を持つ者同士で語り合う事も大切だとは思わないか? ……仕方が無いから、私が閣下の話し相手になってやると言うのだ。感謝されこそすれ、蔑まれる謂れは無いと思うが?
……本音は?
闇の心AR:閣下を誘導すれば可愛い駆逐艦達が自分から寄ってくるのだ! 閣下と感覚共有すれば私も駆逐艦達に囲まれているも同然! この機を私が逃す筈もない! 待っていろ!! まだ見ぬ駆逐艦達よ!! 私が閣下を誘導して守ってやるからな!! うおおおお!!!
……触手達の大宴会(フラワーカーニバル)!!!
闇の心AR:……ちくしょう、はめられた! ぐわああああああポワワワワワ〜ン♡
ふぅ……。マジで油断も隙も無いなアイツは。何か正論っぽい事を言ってる様に見せ掛けて、結局は駆逐艦とイチャイチャしたいだけじゃねえか。
……いや、俺も出来ればイチャイチャしたいけどね? でもアイツの言葉に従っていたら、確実に何かが詰みそうな気がする。BADENDルートに全力で走って行く、みたいな。
……これからも気を抜かない様にしなければ。
……さて、当初の予定通り、基地の周りを散歩しながら、中の様子を伺ってみようかなー。まあ、この基地もパッと見広そうだし、早々にKAN-SEN達を見つけられるとは思わないけど。
うーん、どうしようかな。とりあえず、海の方へ向かって歩いてみるか。KAN-SENと言えば海だしね。誰か海の上で何かの練習とかしてるかもしれないし。煌めく浜辺で、水に濡れたKAN-SEN達が頑張ってる姿を拝めるかもしれないし。遠くから見てるだけなら通報もされなさそうだし。ちくしょう望遠鏡持ってくれば良かったし。あのMOBGの高性能双眼鏡がリアルでもあれば良いのだし。なんだか期待が高まって来たし。早く行こうし。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
……海だあああああ!!
……うみだぁ。
……はあ疲れた。
この基地広すぎだろ。なんやねん。海に着くまでに体感5kmくらい歩いたぞ。周りの建物も規模が違うし。流石5m級の鬼神さんが利用する施設なだけはありますね。何もかもがデカすぎますね。でも俺の器量は小さいですよ? ここまで歩くので一日の体力ほぼ使い果たしたからな? 引きこもりナメんな? 海のバカヤロー!!
……はぁ。自転車とか持ってくればよかったな。あとでネットで買っとこう。この世界だと俺のサイズは小学生用? の自転車になるけど。
……さて、目当てのKAN-SEN達は居るかなー?
……お? なんだか、海辺に整列してる人たちが居るぞ。
……朝礼中かな?
……んん? 隊長らしき鬼神さんの正面にチラホラと小さい人影が……!?
……おお!? あれはKAN-SEN達じゃないか!? おおー!? なんか沢山居る!? 少なくとも10人は見えるぞ!! 隊長鬼神さんの影に隠れてあんまり見えないけど!! やっぱ綾波ちゃんの他にもKAN-SENいるじゃん!!! これを確認出来ただけでもここまで来た甲斐があったぜ!!! よっしゃああああ!!! 偉大なる海さん!! 先ほどはバカヤローなんて怒鳴ってすみませんでしたあああああ!!! これからKAN-SEN達の生のお姿を拝見したく存じますうううう!! よろしくお願いしますううう!!!
……朝礼が終わった!? なんかやるみたいだぞ!?
……えーっと? なにあれ? 何しようとしてんのあれ?
……KAN-SEN達がなんかスーパーで売ってそうな20kgぐらいの米袋的な何かを持って海に浮かび始めたんだけど? え? ホントに米袋じゃないよね?
……あ、なんか海の方にセイレーン艦隊っぽい模型? 張り子? が出て来たぞ? お、KAN-SEN達が動き出した。 なにすんのその米袋で。
……おー? なんか米袋をセイレーン艦隊の模型に向かって投げだしたぞ? なにこれ? なんの練習?
『お前らっ!!! もっと力強く投げんかいっ!!! そんなんじゃダイナマイトの爆発に巻き込まれんぞお!!! お前らは俺らより脆いんだからな!!! 腹マイト出来ねえ奴はこの技術を身につけねえと戦場で生き残れねえぞ!!! 死にたくなかったら死ぬ気で覚えろ!!!』
「「「「ハイッ!! 教官ッ!!!」」」」
『声が小さああああああい!!!! もういっかあああああい!!!』
「「「「ハイッ!!!!!!
教官ッ!!!!!!」」」」
………………………………ナニアレ?
……マジでナニアレ? 何の練習? ダイナマイト投げる練習? セイレーン相手に?
……マジで動画で見た通りじゃねえか。本当にKAN-SEN達がダイナマイト要員で働かされてるじゃねえか。なんなの? 重桜の軍隊の皆様はKAN-SEN達の能力をわかってないの? 自分達が腹マイト特攻得意だからってKAN-SEN達も同じやり方が良いとは限らないんですよ? その戦法じゃ1ミクロンもKAN-SEN達の能力を発揮出来ませんよ? なんなの? 鬼神様達は全員体だけじゃなくて脳も筋肉なの? もっとKAN-SEN達の事も考えてあげよう?
……うわー。よく見たらKAN-SEN達の目が死んでる。みんな目が死んでる。声は大きかったのに。そりゃこんな戦法無理やりさせられたら目くらい簡単に死にますよね。俺でもごめんですよ。1発で命が終わりますので。
……うーん、どうしよう。想定してた光景と680°くらい違う光景が広がってたぞ。煌めく太陽と美しい海の上でKAN-SEN達が死んだ目しながら米袋投げる訓練してるとか誰が想像出来るんだよ。なんなのこれ。俺がさっき偉大な海さんを馬鹿にしちゃったから起きた光景なのこれ。それなら謝るから。ゴメンナサイするから。めっちゃ謝るからどうかこの地獄みたいな光景をどうすれば解決できるか俺に教えて下さいお願いします。
……あ、あれは蓮ちゃん、いや雪風ちゃんじゃないか? おおー、凄い可愛い。煌めく海に輝く白髪がとても可愛い。でも目が死んでる。もはや、無、って感じがビシビシ伝わってくる。目どころか表情すら全く動いていない。なにあれ? お面? 無表情で淡々と米袋投げてる姿がシュールを通り越して痛々しいんですけど? 俺はあんな雪風様を見に来たわけじゃないんですけど? 元気いっぱいな姿を見に来たはずなんですけど? なんなんですかこれは。
……あ、ちょっとだけこっち見た。完全なる無表情だけど。よし、手を振ってみるか。あれが本当に俺の配信に来た雪風ちゃんなら俺の姿を見れば気が付くはず。
……よし、フリフリ―? 雪風ちゃん元気―? 絶対元気じゃないのはわかるけどそれ以外にどう声かければいいかわからないのー。笑えばいいと思うのー? 今笑ったらそれこそ致命傷になる気がするのー。お願い気づいて雪風ちゃ……うお気づいた!? なんかめっちゃ目を見開いて!? うわこっち来た!? は、はや!?!?
【グワッシャアアアアアアアアアアン!!!】
「シ、シシシシ!? シキカン!?!? なっ!? なんであんたがここに居るのだ!? なんで手を振ってたのだ!?!? 雪風様なのだ!?!?! わたしに振ってくれてたのだ!?!? シキカンはわたしが分かるのだ!?!?!?」
「うおおお!? ゆ、雪風ちゃん!? 落ち着いて!? めっちゃフェンス軋んでるから!! そんな興奮しなくて大丈夫だから!! 俺は鬼神さんと虫さん以外からはあんまり逃げないから!! 取り合えずフェンスに張り付くのやめよう!? それ絶対あとで顔に痕が残るよね!? むしろ既に残ってるよね!? 折角の可愛い顔が台無しだからね!? 取り敢えずフェンスから降りて話し合おう!?」
「わぅ!? ……わ、わ、わかったのだ!? 取り敢えず降りるのだ!? ……目を離したらシキカン急に居なくなったりしないのだ? ……幻とかしゃないのだ? ホントに存在してるのだ?」
「……し、してるしてる! 存在してる! 俺はちゃんと此処にいるから! 雪風ちゃんが見てる幻とかじゃないから! 取り敢えず落ち着こう……?」
……あー、びっくりした。無表情死んだ目雪風ちゃん状態から、いきなり偉大で元気な雪風様になるんだもん。
「……えっと、俺はさっきの訓練? 演習? の様な得体の知れない何かが始まった時から、雪風ちゃんを見てたんだけど。もしかして、普段はいつもあんな感じなの? 雪風ちゃんも他のみんなも目が死んでる状態でお仕事してるの?」
「……アレもシキカンに見られてたのだ? ……そうなのだ。 ……雪風様は基地ではいつもあんな感じなのだ。 ……今、あそこに集まってる奴らもみんなそうなのだ。ダイナマイトの爆発に耐えられない人は、みんなああやって爆発に巻き込まれない訓練をするのだ」
「そ、そうなんだ。 ……でも、雪風ちゃんはそう言う戦法向いてないよね? どちらかと言えば、敵の攻撃避けながら射撃したり、攪乱したりする戦法の方が合ってると思うんだけど。 ……そう言うのはやらせてくれたりしないの?」
「……雪風様も最初は言ったのだ。この戦法はわたしに向いてないって。 ……でも聞く耳すら持たれなかったのだ。それどころか言い訳するなって、物凄く怒られて、非道い事されたのだ。それ以来雪風様は抗議なんてした事ないのだ。しても無駄だと分かったのだ。アイツラは雪風様の運に相応しくないのだ」
『……コードネーム【蓮】! そこで何をしているっ! 早く訓練に戻れっ! サボっているなら、処罰の対象とするぞっ!』
「……うるさいのだっ! 今シキカンと話してるのだ! 邪魔するななのだ!!!」
「ゆ、雪風ちゃん!? なんかヤバイ雰囲気だけど!? 一旦戻ろう!? 俺は雪風ちゃんが処罰される所なんか見たくないからね!?」
「嫌なのだ!! せっかくシキカンと会えたのだ!! もっといっぱい話す事があるのだ!!!」
「わ、わかったわかった! 雪風ちゃんは休憩時間とかないの!? それまでは俺この辺ブラブラしながら待ってるから!! 今日の俺は1日中暇だから!! 話すなら休憩時間にゆっくり話そう!? 今だと絶対に何か大変な事が起きちゃいそうだから!?」
「……わかった……のだ。 ……今日はこの訓練の後にも色々あるのだ。 ……でもお昼なら1時間くらい休憩があるのだ! そ、それまで絶対に待っていて欲しいのだ! い、居なくなったりしたら絶対に嫌なのだ!」
「お、おっけー! お昼ね! じゃあ12時になったら基地の正門っぽい所で待ってるから! ……よし、じゃあさっさと退却だ! 雪風ちゃんも早く戻ってね! 俺もすぐ此処を離れるから!」
「シキカン!! 約束なのだ!! 絶対にお昼に会うのだ!! わたしは絶対に会いに行くのだ!! 絶対に待ってて欲しいのだー!!!」
……うおー、焦ったー。まさか雪風ちゃんがあんな風になってるとは。想定外過ぎるぞ。だって俺の配信じゃあ元気な声しか聞かなかったし。実際は能面無表情状態だったとか分かるわけないやん。なんなんだよ一体。
……雪風ちゃんと一緒に居たKAN-SEN達も、雪風ちゃんが暴走してるのに全く興味を示さなかったし。
なんなの? この世界はKAN-SEN同士の繋がりが全くないの? 助け合いの精神ゼロなの? そりゃあみんな目が死ぬよ。あの環境に居たら俺も5秒で目が死ぬよ。ついでに命まで持ってかれるよ。
……まあでも、あの鬼神教官さんが近くに居たら何も反抗出来ないのかなあ。動画で見る限りだと、セイレーンのビーム攻撃喰らっても傷ひとつ付いて無かったし。
雪風ちゃんも最初は歯向かったけど、ワカラセられて気力を無くしちゃってる感じだったし。
さっき集まってたKAN-SEN達もみんなそうなのかなー。それだったら嫌だなー。マジでどうする事も出来なくなるじゃん。負の連鎖から抜け出せない状況になるじゃん。
……せめて鬼神さん達がKAN-SEN達をまともに運用してくれてたらなー。 ……どうにか出来ないかなー。 ……でも俺には権限も、コネも、何もないし。
配信で呼びかけたとしても、じゃあお前が面倒見るの? とか言われたらお終いだしなぁ。俺もKAN-SEN達に射撃や回避訓練なんて教えられないし。俺が知ってるのは、誰が何を得意かって情報を少し覚えてるだけだし。
そもそもセイレーン勢力が常に瀕死だから、KAN-SENを正常に運用したとしても待遇はあまり変わらなさそうだし。
……KAN-SEN達にはもう戦闘業務じゃなくて、何か別の仕事をさせた方が良いんじゃないのか?
……いや、この世界でそんな仕事がホイホイあるかワカラナイけど。
……あー、あー。ダメだー。考えがまとまらねー、もうどうしようもないわー。これは無理だわー。絶望だわー、あー。
……あーーもう!! やめやめ!! ショッキングな場面を見過ぎて、またネガティブモードになってたわ!
取り敢えず、今の俺にはKAN-SENを全員助けるなんて無理だ!
目の前の出来る事だけに集中しろ!
お昼になったら、あのちょっと様子がオカシイ雪風ちゃんが俺に会いに来るんだぞ! 責めてあの娘だけでも何とかしてあげないと!
……俺に出来る事は今の所、元気付けるとかしか出来ないけど。それでもやらないよりは良いはず! 雪風ちゃんもなんか俺と話したいって言ってたし! 悩みを聞くだけでも気持ち的な何かが解消されるかもしれない!
……よし! 方針は決まった! と言うか現状、俺はこれしか出来ない! 取り敢えず、正門に戻って雪風ちゃんを待とう! 具体的な事を考えるのは話を聞いてからでも遅くは無い! 話を聞いて、俺でも解決できそうな事なら助けてあげよう! そして無理そうなら無理って言おう! 俺は許容範囲を超える事を無理矢理任されても、結局ダメになる事が多いしね! 特にこの世界では気をつけないと、一瞬で命が散るからね!
……まずは正門に行って、雪風ちゃんが来るまで待機だ!
……はあ、またこの5kmある基地の外周戻るのかあ。
……つらたん。
長くなってしまったので分割します。