Joker-Angel Ripper   作:萬三昧

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【異変、そして闇蠢】

吹き飛ばし、その上意識を手放させた隻腕の甲冑の人物を、まるで生ごみでも見るような嫌悪する目で奏は見る。

「貴様、このような狼藉。ただでは済まさんぞ!!」

リーダー格らしき吹き飛ばした人物と同じ甲冑姿の男の怒声を無視し、隻腕の人物にどこからか、奏はトランプを一枚腕の切り口にねじ込む。

絵柄はハートの10。するとたちまち切り落とされた腕が生き物のように持ち主のもとへ戻り、何事もなかったように無事一つに戻った。

「…な」

さすがの男もこれの光景を見て押し黙る。

すると、

「...10秒」

と、奏は小さく言葉を放つ。そしてもう一度...

「10秒、それまでにその子を置いて消えなさい」

その言葉を聞いて押し黙る甲冑の集団。

しかしリーダー格の男が

「ふざけるな!逃げるのはむしろ貴様のほうだ!!慈悲のある今のうちに疾くと消え去れ!!」

と吠える。もちろん緑髪の少女の腕を握ったまま。

「…」

その握る腕に視点が当たる

10

呼吸を整える          

                                

9「おい、聞こえているのか!!」

短剣を握る右手を一瞬緩ませる   

                               

8

右手を前にゆっくりと出す  

                                  

7

目を閉じて耳を澄ます     

                                 

6

持ち手の感覚をしっかり感じる

                                      

5

カードを握る 

                                          

4「今すぐその武器を置いて疾くと去れ!!」

絵柄はスペードの8  

                                      

3

目をうっすらと開く          

                              

2

あの子の目、怯えてる     

                                  

1

ナイフを手から離す     

                                   

0「よし、それでい…」

 

 

 

―轟ッッ!!

まるで弾丸のようには垂れた奏の身体は一瞬のうちにリーダー格の男との距離を詰めていた。

「な゛っっ!!」

気が付くもすでに遅い。

ナイフを手放しているのを見ていたが故に、油断していた男は防御も回避も間に合わない

対して奏は飛び出したと同時に屈んだ格好で短剣を手に取り、ゆっくりと全身の力を使って体を右捻りさせ、

「お返し」

そう言うと足、腰、上体、腕を伝い

―ズバァァァァンっ!!と、短剣がリーダー格の男の少女の腕をつかんでいた手に当たった瞬間、右手を弾かせるようにインパクト。

初動で使ったエネルギーだけで相手を吹き飛ばす

「がはっ…!!」

そして先に奏が弾き飛ばされたブロック塀にきりもみ回転しながら体全体が塀にめり込む。

ガチャ…という思い鈍い甲冑が音を立てて動かなくなる

「き、貴様ああああああああああ!」

激高し、槍を勢いよく上に振り上げて刃っ先を奏の脳天にめがけて振り下ろさんとするまた甲冑チームの一員

だがしかし、大ぶりなモーションが仇になる

振り下ろしたその腕を奏は掴み、その勢いを受け止めて殺そうとはせずあえてその力を体全体で地面に伝えるように足を曲げる。

そして少しつかんだ腕を手前に引くように力を加える、するとどうだ。グルンっ!!と身長150センチの奏よりも大柄な甲冑は宙を舞い背中から地面へと倒れる。

すかさず、体を捩じると。-カァァァァンッッ!!という甲高い音と共に甲冑の頭の向きが地面と平行になるように一蹴り入れる。

その左右から槍で突き刺そうと突進する二人組

息をひそめ声も出さずに貫こうとする辺りから隙をずっと狙っていたのだろう。

しかし、軽いステップを踏む後ろに3歩、軽やかにコンクリートの壁の前まで下がると、その壁を使ってバネの様に足をコンクリートに押し付けて膝を曲げると、限界まで押しつぶされたばねが飛び跳ねるように、一気に右の敵の顔面に飛び込むように接敵。

驚くように一瞬後ろに体を傾ける敵の頭の甲冑を両手で鷲摑みにすれば、膝蹴り。そこからヘッドロックを足でキメて太ももの甲冑で覆われていない部分を的確に狙い靭帯を短剣で切断

「――――!!!!」

声にならない悲鳴を上げて倒れこむ甲冑を尻目にもう一方の甲冑にかみつく獣のように飛び込むと地面と平行に身構えていた甲冑の槍を踏み台にして頭上を跳び、そのまま背後をとると、また太ももを切り付けてバランスを崩させると一気に押し倒して、喉元の布地の部分に肘を押し付ける

「あが…っが…」

泡を吹いて窒息しそうな声を出しだすがそれを尻目に皿に押し付ける。やがて胸部が本当に小さく上下するだけ、声も出なくなる。それに気が付くと肘を離して残る甲冑たちのほうを見る。

騒然とした様子で、槍を構えるその姿は狐に化かされ呆然とする狩人のようにも見える

そんな甲冑どもに奏は刃の切っ先を向けて睨みつける

「…消えなさい」

そうただ告げる、だがしかしそこには凄みがあった。立ち去らねば殺しかねないと云わんばかりの凄みが

しかしまるで地面に差し込まれた棒のように突っ立っている甲冑達に負傷した甲冑たちを一体一体、丁寧に投げ捨て渡す

「…」

「「「「「「…!!」」」」」」

しばらくの時を経る…そして…

「…撤収だ」と甲冑の内の一人が言うとけが人をそれぞれ背負い空へと旅立つ

しかし、撤収を命令した甲冑は一瞬浮遊、奏のほうを向く

「貴様は、私たち天使たちに刃を向けた。このことを覚えておけ。いつか我らが大天使長様が貴様の首をはねに来るだろう!」

そう吐き捨てると今度こそ甲冑たちは天へと吸い込まれるように飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲冑たち飛び立ってしばらくして…

「...はぁっ!」

息苦しさから解放されたかのようにペタン...と地面にお尻から座り込んでしまう奏。

「な、何だったの、今の動き...」

そういいながら自分の手を、足を見る奏。

いくら昔やっていて今も特技であるローラースケートの動きを体が自然に使っていたとしても、あんなにもスムーズに敵をせん滅するような動きができるだろうか...?

と、自問自答を繰り返していると...

「あ、あの...」

と、恐る恐るといった口調で緑髪の少女が緊張した強張った面持ちで近づいてきた。

「え、あ...」

一瞬呆けたように少女の顔を見る。

ポニーテールに束ねられた緑髪故にボーイッシュに見えるものの、顔つきがまるで創られたものの様に整い、かわいらしいもの故に女である奏さえも一瞬見惚れてしまう。服装は動きやすそうなグレーの服に白を基調として金色の模様がつけられたボロボロの手甲。そこにオレンジに赤を混ぜたよう色のホットパンツ姿そして首元には赤いマフラーが、まぁ今はその全部が全部煤や傷で汚れボロボロなのだが。

対して奏は紺を基調とした通学する高校基準のスカートにブレザーにリボンとカッターシャツ。当然こちらも煤で汚れてしまっているのだが

「ちょ、え、あなた...大丈夫なの、歩いても...!?」

と少女の全身をペタペタと触りながら、傷はどこに行った!?と言わんばかりにくまなく全身を見る奏。

「え、あ、はい...その、えっと...」

「何で、あんなにも重傷だったのに...どうやって...」

そういいながらペタペタと少女の背中を触るが傷跡さえ背中にはなかった

「あ、あの...っ」

と、少し声を詰まらせるように少女が奏に訴えかける

「な、何?」

「え、えっと、その、背中の、布が…」

「…あ」

ここで奏は漸く気が付く。少女の服の背は傷を負った際に大ダメージを受け、布地がなくなっていたのだ。つまり、背中が丸見えなのだ。

どうやらその状態で思い切りペタペタと触られるのが相当羞恥心をあおっていたのだろう。

「あ、ご、ごめっ!!」

「い、いえ、私のほうこそ…すみません…」

先までの緊張した殺伐とした空気はどこへ行ったのか…何とも言えない空気管が二人の間を漂う。

「と、とりあえず。アンタのいえまでついてったげる。また襲われないこともないかもしれないし…どの辺住みなの?」

そういって奏が空気感を払拭しようと声をかける。が…

「…」

少女は悲しそうに表情を曇らせ首を左右に振ってこう言った

「...覚えていないんです。自分のことも、あの人達の事も...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー?やられちゃったの~!?」

「も、申し訳ありません!!」

そういって片膝をついて報告するのは先の襲撃犯の一人、声からして若い男のように聞こえる。

その報告を聞くのはピンク髪をポニーテールでまとめ黄色の上着に明るい赤色のスカートをはいた明るい笑みを浮かべた表情をする少女

そしてもう一人、金髪のポニーテールを先の少女と左右対称の向きに束ね紫の上着に紺色のスカートを履いた少女

互いの瞳の色は同じ輝くように明るいオレンジ色。笑みを浮かべる少女とは対照的に金髪の少女はジト目で感情をのぞき込みにくい表情なのだが…

「ま、いいや♪とりあえず怪我した子たちの治療は?」

「全員気絶していますが命に係わるけがはないとのことで治療のほうもそろそろ終わるかと」

と、ピンク髪の少女の質問に答える甲冑姿の男、すると金髪の少女が。

「襲撃犯は、堕天使?魔物…なの?」

と聞く、すると甲冑の男はおびえたように

「…に、人間の、女…です。短剣一振りで、次から次へと...仲間を…」

と、息を詰まらせるように答えた

「人間の…女…なの?」

「えー?人間に擬態した魔物か堕天使か、悪魔じゃないのぉ~??」

「い、いえ!レーダーも人間と出ていました。現に仲間の一人がガブリエル様の保護のためにその女に攻撃したときは人間らしくしっかりと塀に埋もれるように吹き飛ばされていました...ですが、ガブリエル様の気が動転されていたので少し麻酔薬でお眠りいただこうとした際に…あの女が兵士の一人の腕を…!!」

「...わかった、もういい。下がって、なの」

怒り、恐怖、様々な感情を吹き出すようにしゃべる甲冑の男の声を制止させ金髪の少女が告げる。

「...は。失礼しました。...では、私はこれにて」

「うん!お疲れさまぁ♪」

というやり取りをした後に、甲冑の男は部屋を後にした。

「う~ん、人間の女の人が天使相手に、かぁ。いろんな人がいるんだねぇ外の世界には、」

「...でも、人間相手なら」

「うん!」

「「私たちの敵じゃない!(...!)。あ、ハモっちゃった♪」」 

ころころと純粋無垢な笑みで二人は笑った

 

 




サイゴニデテキタフタリッテダレナンダロ―ナー
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