ではどうぞ
「あなたは…誰なの?」
私の前に突如現れた男の人。私より少し身長は高めでさらさらしている髪が風でなびいている。首には陰陽玉?のようなアクセサリーを身に付けていた。
「俺の名前は間車朱雀(まぐるま すざく)。君の友人マエリベリーと俺の恩人、八雲紫を助けるために時空を越えて来たのさ」
え…時空を越えて来たってことはまさか未来から来たってこと?未来はもっと事が進んでいるの?ああもう、いろんなことが起きすぎて頭が追いつかないわ…
クラクラする…。
「お、おい!大丈夫か!?しっかりしろって」
ヨロヨロして倒れ込みそうになった時に朱雀が急いで身体を支えてくれた。メリーが連れ去られショックが大きすぎたしいきなり助けるとか言われてもそりゃ頭がついて行けないわけだ。…てか本当に助けるとか出来るの?
疑問に思ったので私は助ける方法について聞くことにした。
「あ、ありがとう、もういいわよ」
そう言って私は朱雀の方を借り、ゆっくりと立ち上がる。
「ねえ、助けるって言ったってどうやって助けるの?それに、あなたはいったい何者なの?」
「まあそれを聞くのはちょっと待ってくれ。ちゃんと順を追って説明してやるからさ。…まあ聞いてくれよ」
この世界にはもう1つの並行世界ってのが存在するんだ。その名も幻想郷。幻想郷はお前たちの世界で忘れ去られた存在、すなわち幻想になった奴らが住む所って言えば分かりやすいか。そういう所なんだ。その幻想郷を創るにあたって中心となったのが八雲紫というスキマ妖怪。その人は境界を操る程度の能力を持っていて自由に幻想郷とこっちの世界を行き来出来るんだ。ここの世界でたまに境界が見えたりするのも紫が締め忘れたっていうことが大半の原因だな。
「だが今回は違う。締め忘れもなければ開けたということもない。じゃあ何故こういうことが起こってしまったのか?それは…」
「あいつが八雲紫を取り込み、能力を吸収したということ?」
「だいたいは合っているが少し違うな。奴は紫の能力こそ奪いはしたが紫自身を吸収はしてはいないんだ。紫がちゃんと幻想郷に存在して対策を練っているからこそ俺がこうして使いに来れるわけだ」
「待って、その紫って人を狙うだけなら目的が分かりやすそうだけどメリーが狙われた理由は何なの?あの子は単に境界が見える目を持っているだけなのに…」
「それだ。奴はその目を欲しがってたんだよ。紫の能力は境界を操るだけ。…この世界や幻想郷の外側は特別な境界で覆われている。並行世界を越えるには境界が見えていないと操ったり移動することが出来ないんだ。実際にそれが見えるのは紫、もしくは境界を見る目を持つ者などごく一部の人材に限られている。奴はそれを持っていなかったから必要以上に欲しがったのだろう。実際にメリーはもう連れ去られていったからそれで俺もはっきり確信を得られたんだ」
「…そうなるとあいつがメリーを連れ去る時もあなたはここにいたということになるわね」
「…そういうことになるな」
「なんで!?なんでそこで助けてくれなかったの!?あなたが止めてくれればメリーは連れ去られなくて済んだかもしれないのに!!」
怒りのままに私は朱雀の胸倉を両手で掴んでいた。だが彼は申し訳なさそうにするが冷静を保っている。少し間が開いた後、朱雀はゆっくりと話し始めた。
「それについては申し訳ないとは思っている」
「じゃあどうしてっ…!?」
「だがそうしなければならない理由もあったんだ」
「なんですって?」
「……俺はあいつに1回負けてるんだ」
「え?」
「負けたんだよ。幻想郷で紫の能力が奪われた時に俺と紫であいつに戦んだんだ」
「───くそっ!!ちょこまかスキマ使いやがってっ…!」
「もうそろそろ…限界だわ…。次で確実に叩かないとね、朱雀、いくわよ」
「言われなくても分かってますよ紫さん!」
「結界 永夜四重結界!」
「うん?…なんだこれは?」
紫の強化結界により奴を四重の結界で囲む。しかし能力を奪われているだけに破られるのは時間の問題だろう。
だから俺がそこをカバーする。俺の能力は「時空と境界を司る能力」だ。しかし、この能力、俺はまだ修行中の身であまり使いこなせていない。上手くコントロール出来るかどうか…
「でもやるしかねーだろ!くらいやがれ!!…はっ!」
俺は時間を止める。…奴が動く気配はない、大丈夫だな。そう思い空間を操ってより紫の結界を網目状に強化、その内に両手に青白いエネルギーを溜めこむ。
「……解除!」
すぐさま奴が結界を破ろうと行動に出る。紫の結界の中ではスキマが使えないのだ。
「こんなもんすぐ壊せるわああああ!!!」
すごい勢いだ。こんなペースじゃすぐ壊される、気を引かねえと…!
「おい!こっち見ろボケ」
「あん?……!!!」
よし、上手く釣った。あとはなるようになれ!
「…結界 時空の狭間!!」
紫の中の結界の空間が俺のスペルにより時が止まり、空間を狭め、奴を完全に閉じ込めた。
「いまだ紫さん!」
「了解したわ!…封印結界 終わりの始まり」
終わりとはこの世からおさらばということ。その反対、始まりとはこの封印結界で地獄に飛ばし、そこで永遠に暮らすことを意味している。
そして紫が出した結界を封印結界が覆い、言わば五重結界というところになっている。
「あとは頼みますよっ…!」
「はあ…はあ…分かってるわよ!そう私はしくじらないですわ」
「はあ…はあ…さすがにこれからは出てこられないだろうな…?」
俺と紫共に肩が大きく動くくらい呼吸が乱れている。本当は膝でもつきたい所だ。俺も紫もこれで霊力、妖力を使い果たすだろう。あとは紫が奴を封印するのを俺は注意深く見ている。万が一破られたら俺が全力でまた止めてやる。
封印するのも最後の仕上げに入ってきた。紫が最後の力を振り絞って封印結界に妖力を注ぐ。
「よし…これで私の力が取り戻せますわ」
こっちを向いて笑顔を見せる紫。だがそれが油断だった。
ギンッ!
「…え?」
紫は安心したようなのかまだこっちを向いて話している。妖力だけは結界に注いでいるようだが、
明らかに油断していた。俺は見てしまった───俺の結界が巨大な目に破られたのを。
「ゆ、紫さん!!!結界!結界に集中して!!!」
「え?」
「いいから早く!!!」
紫が気づいたときには既に遅かった───その巨大な目はドクンドクンと大きく膨れ上がり、遂に。
バリイィィィィン!!!!!
「「うわああああああっ!!!!」」
俺達が苦労して作った封印結界が…紫の能力でも何でもない巨大な目によって破壊された。
「お、おい紫!」
呼びかけても紫に返事はない。さっきので妖力に限界が来てしまったのだ。…くそっ!俺がしっかり結界を張っていれば!
少しして、結界を割った奴が姿を表した。
「…ふう、なかなか危ないことをするじゃないか。だがそこのスキマ妖怪はともかく、お前の結界はお遊びか?」
「くっ…!ふざけんな畜生!!!」
ものすごい勢いで空を飛び、時を止めて奴に殴りかかろうとするが、一手先を読まれ、気付けば俺は地上に叩き落とされていた。
「…ぐあっ!!!」
もう身体が思うように動かない。これまでか……。とも思ったが奴の出した答えは違った。
「はっ、お前なんて殺す価値もない。また俺に挑んできてもどうせそこのスキマ妖怪に助けを求めないと互角に戦えもしないのだからな」
「ふ、ふざけんな!まだ俺は───」
「力を持っているとでも言いたいのか?」
俺は途端に黙ってしまう。そう言われるとはっきり答えられる自信は俺にはなかった。
「俺にはまだ次の段階がある。悔しかったら強くなってかかってきてみな。…まあ俺がこの世界を支配するまでの短期間に出来ればなあ!あははははっ!ではまた会えることを楽しみにしているよ」
そう言い残しそいつはスキマへ消えていった。俺はまだダメージがあり地面に横たわっている。
「んなこと分かってんだよ…強くならねえといけないって…。畜生…」
悔しい。とにかく悔しい。あれほどけなされ、通用せず結局紫の足手まといじゃねえかよ…。ああもう!!!
「畜生ーーーー!!!!」
俺の叫び声は虚しく空に消えていった。それと同時に俺は決意した。絶対に強くなろう───と。
朱雀くんの過去、紫は能力は奪われたとはいえ結界は操れます。ただ幻想郷と蓮子のいる世界に行けなくはなりました、ということでお願いします。
誤字脱字ありましたらお声掛けお願いします。質問なども歓迎です。
さて皆さんまた次回でお会いしましょう!