「とまあそういうわけだ……情けない話だがな」
「…あなたもけっこう大変な立ち位置だったのね」
「メリーを助けられなかったのは…実は監視されていたんだ。あの後奴はまた俺と紫の所に現れてこう言い残していった」
「───現代世界において俺が存在する限り、お前達に反撃する術はない」
これって……何か引っかかるわね。わざわざ現代世界って回りくどい言い方なのはなぜ…?と私はしばらく考えこんでしまう。
「蓮子?」
「あ、いや何でもないの。続けて」
そうすると朱雀は首を傾げて不思議に思っているようだ。
「まあ続けるけど、何かわからないことがあったら聞いてくれよ。もしかしたら俺でも疑問に思わなかった新しい考えが出てくるかもしれないからな」
これは考えがまとまってないしいつかにしよう、と思いとりあえずわかったと私が伝えると朱雀は頷き、少し間をあけて話し始めた。
「それでだ。奴が言うように今の俺では勝てないだろう。そこで1つ提案がある。俺の能力は時空と境界を司る程度の能力だ」
「ということは…タイムスリップして過去を変えるっていうこと?」
そうすると朱雀が待ってましたと言わんばかりに
「よくぞ言ってくれたな。その通り、俺の能力で過去の幻想郷に飛んで特訓するんだよ」
…特訓、ねえ。
「俺は勿論のことだけど蓮子。お前にも特訓をしてもらう」
「へ?」
思わず抜けた声が出てしまう。
「ち、ちょっと待ってよっ…!外の世界で暮らしてる私に何が出来るっていうのよ」
「それを考え出し、体現する所が幻想郷ってとこなんだ。あーそうだ。なんでも幻想郷では常識は通用しないらしいぜ?前に紫が言ってたぞ。俺はもともと幻想郷に育ったからなんとも言えんが」
今までこっちの世界で生きてきた私には月を見て時間と位置を知る能力はある。こっちの人間にとっては不思議な能力だろう。でも今は状況が違う。今まで空想と思っていた妖怪にメリーがさらわれ、朱雀は時空を越えてここに来た。ありえないと思っていたことが次々に起こり、空想を現実と受け止めなければならない。…なら私の力は?……こんな物はある意味オプションみたいなもの。妖怪なんかと戦うには無駄な能力だ。……なら。
「ねえ、私でも強くなれるかしら!?」
「それはお前の意志次第と言った所だな。なろうと思ってなれるものじゃない。強くなるには絶対に妥協しない精神力と折れない向上心。この2つがとても重要だと師匠から教わったぞ」
「師匠?」
「ああ。俺が紫さんに面倒かけられる前に世話になった恩師だ。今の俺の力はほとんど師匠から教わったな。……今のままだと会いに行きづれえな…」
と朱雀は顔をしかめて右手で顔を押さえる。いったいどんな人なのかしら?
「っていけね、そんなことじゃない。…さあ、どうするんだ?行くか行かないかはっきりしろ。…まあ最初から決まってるとは思うが」
マエリベリー・ハーン。秘封倶楽部所属。境界が見える程度の能力を持っている。
今までいろんなことがあった。メリーと出会い、お墓をめぐったりした。新幹線で東京に行ったりもした。他にもいろんな思い出がある。ふふっ懐かしいわね。…そういえばいつだったかこんなことを言ってたわよね。
「蓮子、蓮子はなんでこんな私を気持ち悪がったりしないの?」
あの時は恥ずかしくてはぐらかしたけど…今なら言える。けど今ここにメリーはいない。いないんだ。だからこそ、あいつから取り返し、はっきりと言いたい。それまではこの言葉は胸にしまっておこう。
…よし、決まりね。
そうして下を向いていた顔を上げ、自信を持ってこう告げる。
「いいわ。どこへでも連れて行って頂戴。強くなってメリーを絶対助けだすんだから。足引っ張らないでよ?」
「足引っ張るのはどっちかというとお前だろうがっ」
バシッ!と軽快な音で頭を叩かれる。
「痛っ!何もそこまで強くなくていいじゃないのー!」
「弱き者ほど物を言う。覚えておいた方がいいぞ?へっ」
涙目になりながら訴えるが朱雀は至って軽く笑い流す。…もう!絶対追い抜いてやる…!
「さて、長話が過ぎたな。決まったことだし早速行くかな…」
そう言い朱雀が何もない所に右手をかざすとスキマのような空間が開く。そしてその中に入っていく。それを見ててさっきメリーがさらわれる前の出来事を思い出し、また罪悪感が込み上げる。
「何してんだ?早く来いよ」
「あ、うん今行く」
そう言って私もその空間に入っていく。待っててね。メリー。絶対強くなって助けに行くから…!
短い。けど今の自分はこれが限界だっ…ごめんなさい!
感想お待ちしております…(震え声)