氷華は戦姫の隣で咲き誇る   作:クロウド、

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タイトルの意味は刃から伝わるものです


Things transmitted from the blade

「シロ、ちゃん……。」

 

「……待ってろ、すぐに終わらせる」

 

 倒れ込んだ、響を奏と翼の近くに寝かせ冬獅郎は立ち上がる。

 

「冬獅郎」

 

「師匠」

 

「安心しろ、俺はまだ冷静だ」

 

 心配するように、声をかける奏と翼だったが冬獅郎は二人の言いたいことを悟り、そう告げた。

 

(不思議だ、さっきの言葉からして師匠はどう考えてもあの少女に怒りを感じてるはずだ)

 

(なのに、今の冬獅郎からはそんなものが全然感じない)

 

 冬獅郎は氷輪丸を肩に担ぎながら少女の前に立つ。

 

「てめぇ、なんでここにいる?」

 

「俺がここにいる、それだけで答えは見えてんだろ?」

 

(こいつ、あの数のノイズをこの短時間で倒してきたってのか?)

 

 少女はそのことに驚きを感じるが、すぐに余裕の笑みを取り戻す。

 

「今更てめぇ一人が来たからってなんだってんだ!?そこに転がってる三人がかりでも相手にならなかったアタシに一人で勝つつもりかよ!?」

 

「俺が風鳴を止めなきゃ吹き飛んでたやつがよく言うぜ」

 

「てめぇ……さっきから何小馬鹿にしてんだッ!ガキがっ!!」

 

 痺れを切らしたのか少女は刃のついた鞭で冬獅郎を狙う、冬獅郎は氷輪丸を振りしなる刃の連撃をさばき続ける。

 

(なんだ、こいつの刃……なにか、妙だ)

 

 冬獅郎はその刃と氷輪丸が交わるたびに感じる妙な妙な感覚に疑問をいだいていた。まるで、何かが刃を通して()()()()()()()、いや、()()()()()()ような。

 

(この鎧の能力か?斬魄刀と同じように特殊な能力があるのか?)

 

「ホラホラどうした!デカイ口叩いてこの程度かよ!」

 

「…………。」

 

 冬獅郎がその違和感の正体を探るために刃を受け続けるのを見て、防戦一方と見たのか少女は挑発を飛ばす。そこから冬獅郎は攻勢に動く。

 

「ッ!」

 

「何っ!?」

 

 鞭を空中に斬り飛ばし、少女への道を一気に切り開く。そこを瞬歩で一気に接近し、鎧の肩部分に氷輪丸を振り下ろす。だが、ガキンという金属同士がぶつかり合うと音と、火花が散るが彼女の鎧には傷一つつかない。そのことに驚くも冬獅郎は戻ってきた鞭の刃を瞬歩で回避する。

 

「大した硬度だ、氷輪丸で傷がつかないとはな」

 

「あたりめぇだっ!このネフシュタンの鎧は完全聖遺物!欠片ですらねぇ、てめぇの刀で斬れるわけねぇだろうが」

 

「……なるほど、それがお前の自信の源か。なら、」

 

 冬獅郎は自分の顔の前に手を構える。

 

(なんだ、あの構え!?)

 

「その鎧を壊せば、その戦意も折れるのか?」

 

 冬獅郎が手を振り下ろすと、その顔に白い仮面があらわれる。

 

「「「「ッ……!!?」」」」

 

 その仮面を見た瞬間、その場にいた全員の背筋が凍った。響達三人には見慣れた仮面、冬獅郎が二課に正体をばらさない際につけていた仮面だ、だが、今までのつけていただけの仮面ではない。()()本来の力を出すために出した仮面だ。

 

 本能的に危険を感じた少女は、鞭を仮面の死神に伸ばす。だが、彼は全く動こうとせずそのまま鞭は近くの地面をえぐり、粉塵が彼の姿を隠す。

 

「「「シロちゃん(冬獅郎)(師匠)!」」」

 

「………はっ!!そんな仮面をつけたからなんだっ!!?そんなもんで埋まる力の差『おい』……!?」

 

『お喋りに夢中で背後が留守だぞ』

 

 背後から聞こえた底冷えのする声に振り返ると、そこには氷輪丸を肩に担いだ仮面の死神が無傷の状態で立っていた。少女は振り向きざまに鞭をしならせ攻撃しようとするが、それよりも早く、氷輪丸が振るわれる。

 

「ぐっうぅぅうぅぅぅぅうぅ!!!」

 

 その一振りに少女は粉塵を撒き散らしながら吹き飛ばされていく。粉塵が晴れた先で息を切らした少女が立っていた。だが、ネフシュタンの鎧にはところどころヒビが入っている。

 

「はぁ……はぁ……。」

 

『本当に大した鎧のようだな。虚化した氷輪丸の”剣圧”を受けて原型をとどめてるとは』

 

「ッ!!?」

 

(剣圧?こいつ、剣圧だけでネフシュタンの鎧にひびを入れたのか?)

 

『だが、今度は確実に―――砕く』

 

 仮面の奥から、彼の翡翠色の瞳が鋭い光を帯びて少女を睨む。

 

「ッ……!?……ふざ……な」

 

『?』

 

「ふざけるなっ!!お前みたいなメチャクチャな力を持つ奴がいるから争いがなくならないんだっ!!だから、アタシはッ!!」

 

「ッ!?」

 

 圧倒的な力の差を見せつけられたバイザーの奥の少女の瞳に宿っていたのは『怒り』だった。いや、もはや憎悪と言ってもいいかも知れない。ほとばしる激情に冬獅郎のその少女の背後にかつての自分の影を見た気がした。

 

「消えちまえよッ!!」

 

 彼女は激昂とともに鞭を冬獅郎に伸ばす、だが、冬獅郎はその攻撃に回避の動作すら見せず、鞭を一刀両断に斬り捨てた。

 

「っく!だったら、こいつでどうだ!!」

 

「あれはっ!!」

 

「避けろっ、冬獅郎!!それはヤバイッ!!」

 

『…………。』

 

「避けられるわけねぇだろうがっ!避ければお荷物共が、大変なことになるんだからなっ!!」

 

 斬られた鞭の先端に黒い雷を放つ白濁した光を放つ光球が生み出される。それは翼や奏を戦闘不能にするきっかけを作った破壊の結晶、アレを喰らえば流石にまずいと奏が声を上げるが、だが、鎧の少女の言う通り冬獅郎が立っている軌道上には響達がいる。避けるわけには行かない。

 

 冬獅郎はおもむろに右手を自分の前に差し出すと、そこに赤黒い光の玉が現れる。

 

「「「「ッ!!!?」」」」

 

 その球体から感じる、圧と本能的に感じる恐怖は少女が生み出した光球の更に上を行った。

 

『―――加減はしてやる』

 

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!」

 

 ―――NIRVANA GEDONN

 

 冬獅郎のそのつぶやきに更に苛立った少女はその一撃を放つ。光球が地面をえぐりながら冬獅郎目掛けて迫ってくる。冬獅郎はただ一言、その技の名を口にする。

 

『―――虚閃(セロ)

 

「なっ……。」

 

 赤い閃光が光球ごと、ネフシュタンの少女を飲み込んだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「はぁっ……!!はぁっ……!!」

 

 虚閃を喰らった少女はもはや立つのもやっとの状態だった。鎧も半分以上が消し飛び、バイザーもひび割れ一部が砕けている。冬獅郎が加減をしていなければ間違いなく少女の体は原型を保っていなかっただろう。

 

 冬獅郎は氷輪丸の鋒を少女に向ける。このまま氷輪丸の能力で凍結させてしまえば、彼女はもう逃げることができなくなり、勝負は決する。だが、

 

 ―――なんでだ?

 

 冬獅郎は刃を彼女と刃を合わせるうちに己の心が抱いた疑問に直面する。彼女は敵だ、響や翼、奏を傷つけ人類の敵であるノイズを呼び出す、まぎれもない自分の敵だ。

 

(押しているのはどう考えても俺だ。このまま行けば確実に俺の勝ちだ。なのに、なんで……)

 

 ―――なんで、こいつと刃を合わせるたびに、胸がえぐられるように痛むんだ。

 

「「「「ッ!!?」」」」

 

 冬獅郎は氷輪丸の鋒をおろし、虚の仮面を取る。その光景に翼たちは勿論、鎧の少女も表情に動揺が現れる。

 

「おとなしく投降しろ、そうすればこれ以上危害は加えない」

 

「舐めて……んのか?」

 

「もうわかっただろう、お前じゃ俺には勝てねぇ。だから、もう止せ」

 

「ッ!!それを舐めてるっつってんだよ!!」

 

 背中の杖に手をかけて再び振り上げようとした少女だったが、杖を掴んだ手を振り下ろそうとした瞬間、瞬歩によって接近した冬獅郎に腕を掴まれる。

 

「止せって言っているのが聞こえねぇのかっ……!」

 

「ッ!!」

 

 少女は、自分の手を掴む冬獅郎の手を振りほどこうと冬獅郎の顔を向いた。そこで、彼女は彼の目を見た。その目は自分を嘲る目でも、勝ち誇った勝利者の目でもなかった。その目はまるで、

 

(なんっ……だよ、その目は……。)

 

 ―――その目はまるで自分の中の何かを見透かされ、理解されたような、そんな目をしていた。

 

 しばしの睨み合いの後、少女の杖を握る手から力が一瞬抜けた瞬間、彼の背後からドサリと何かが倒れる音が続いて聞こえた。

 

「おいっ、翼!?響!?」

 

「―――しまった!」

 

 冬獅郎は掴んでいた少女の手を話し、倒れた二人の側に膝をつく。二人は苦しそうに荒い息を繰り返している。

 

(虚の霊圧を近くで放出しすぎた……!俺の霊圧に当てられて、魂が崩れかかってる!)

 

 強すぎる霊圧はときに、魂に影響を及ぼすだけでなく魂を崩しかねない。冬獅郎が滅多に力を開放しないのはこれも理由の一つだった。元々、尸魂界には現世に赴く際副隊長以上の隊士は力を五分の一にまで制限される。冬獅郎は普段、それくらいの力で戦っているのだ。

 

 奏は冬獅朗の霊圧の一部を受けているので影響が薄くてすんだのだろう。

 

 冬獅郎は二人の胸元に手をかざし、自身の回道でなんとか魂を正常の状態へと、調整する。処置が終わると、二人の呼吸が安定し、危機は脱した。

 

「冬獅郎、二人は?」

 

「問題ない、だが……。」

 

 冬獅郎は鎧の少女がいた場所に視線を向ける。しかし、既に少女の姿は影も形もなかった。

 

「逃げた、か」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 ネフシュタンの鎧の少女の撃退に成功し、回道で三人の傷の処置をしていると、弦十郎達が到着し戦闘の後処理を始めた。奏と未だに気絶している二人は既に車乗せられたあとだった。

 

「冬獅朗君」

 

「…………。」

 

 戦闘の影響でできた折れた木の幹に座り空を眺めていた冬獅朗に弦十郎が声をかける。

 

「何故、そんな顔をしているんだ?」

 

「…………。」

 

 冬獅郎の表情はとても戦いに勝ったものがする顔ではなかった。それは弦十郎だけでなく、この場にいる誰の目から見てもそう見えたことだろう。

 

「確かにネフシュタンの鎧の確保には失敗したが、響君達は無事だ。君の鬼道で傷もほぼ完治していると言っていい。翼も絶唱を使わずにすんだ。君は響君だけじゃなく、翼や奏も護り抜いた。

 君がそんな顔をする道理はないはずだ」

 

「…………こっちが聞きてぇ」

 

 冬獅郎は弦十郎の顔を見ずに答え、そのまま響達の載せられた車に乗り込んだ。




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