「さぁ、早速始めるぞ」
「いきなりだなッ!」
あの話し合いが終わり、冬獅郎は早速奏と翼をトレーニングルームにつれてきてその扱い方を教えることにした。この力は覚えるには多少の時間が必要になるのわかっていた、だからこそ、少しでも早く始めるのが得策だった。
「でも、”魂”を使役とは具体的にどうするのですか?」
翼の当然の質問に、奏も隣で頷く。霊圧を感じたことすらなかった二人にはわからない話だった。
「”誇り”だ」
「「誇り?」」
「そうだ、お前達がシンフォギアの力で戦う中で感じた、誇り。それを思い浮かべろ」
冬獅郎の言葉で二人はギアペンダントを握りしめ、瞳を閉じて言われたとおり、誇りを思い浮かべる。そこへ、冬獅郎が更に細かいアドバイスを送る。
「お前達の魂に今までのノイズとの戦いが刻まれているように、お前達が纏ってきた
(瀞霊廷通信の
九番隊副隊長が編集長を務めている、瀞霊廷での様々な情報を載せた雑誌。そこに乗せられていた
一応、隊長として
そして、そんなかつての自分への感謝を終えるとギアペンダントを握りしめ自分の誇りを探る二人に視線を向ける。
(私達が……。)
(シンフォギアで戦うことで感じた、誇り)
二人の中に様々な記憶が行き交う。今まで戦ってきた記憶、数え切れない程シンフォギアを纏い、歌い、戦ってきた記憶。その根底にあるもの、誇り。
(誰かを勇気づけ、救うことができる―――)
(防人として、誰かを護ることができる―――)
((歌))
二人がその結論に至った瞬間、ギアペンダントから薄緑色の発光が現れる。
「これはっ!」
(出たな……。)
―――
やがて、ギアペンダントから放たれていた完現光の色が奏が赤、翼が蒼に変わり彼女たちの体を覆っていく。やがて、その形は彼女たちの見覚えのあるものに近い形となって固定される。
「これは……。」
「シンフォギア……。」
二人の体を包んだ光はゆらゆらと光りながら、鎧のように彼女たちの体に張り付いている。そう、その形は確かにシンフォギアに近い形をしていた。二人の手に握られている武器も剣と槍とアームドギアと同じ形状だった。
「お前らが戦うのに最もふさわしい姿がそれだと、聖遺物が判断したってことだろう」
「なるほど」
「魂を使役する感覚は今のでなんとなくわかったか?」
「あぁ」
「はい」
「なら、あとは実践だけだな」
冬獅郎の背中に氷輪丸が現れ、それを抜く。
「人間の姿でも斬魄刀出せるのか」
「あぁ、それとここからの修行は命を賭けてもらうぜ。俺も霊圧の戦い方を教える以上、半端なことを教えるわけには行かねぇからな」
「「ッ!!?」」
二人は、冬獅郎の周りに殺気を伴った霊圧を感じた。はっきりと実態をつかめたような感覚ではないが、モヤのようななにかがあることが冬獅郎の霊圧を譲渡されたことで感じられるようになったのだろう。
だが二人は臆することなく、刃を構える。
「命がけなんていつものことだろ。あたしたちは命を救い、自分たちも生きるために戦ってるんだから、命くらい賭けなきゃ釣り合わないだろ」
「そう、なによりこんなところで怖気づいていて後輩の立花に合わせる顔がない」
「……言うようになったじゃねぇか」
冬獅郎は氷輪丸を構え、二人を見る。
「来いっ!」
「行くよっ!」
冬獅郎が叫ぶと、奏が地面を踏みしめる。そして、次の瞬間には冬獅郎の背後で槍を構えていた。
(やるな、既に俺が教えた例を実践している……。)
トレーニングルームの床のコンクリートを
「力に浮かれて、正面から来なかったことは褒めてやるぜ」
「そう教えたのは冬獅郎だろっ!!」
「あぁ、だが、こうも教えたはずだぜッ!」
「ガッ!」
回し蹴りを腹部に喰らい、肺の中の空気が逆流する。
「二撃目に繋げなきゃ、意味がねぇって」
「ならばっ!」
「ッ!!」
「二撃目は私の役目ですっ!」
正面から突っ込んできた翼の刀を氷輪丸で受け止めようと足を地につけようとするが、足が動かない。視線を向けると、腹部にめり込んだ足を掴んでいる奏の姿があった。
「チッ!」
冬獅郎は舌打ちをすると、翼の剣に向き直る。そして刃の側面を右手でそらし、斬魄刀の柄で腹部に一撃を見舞う。
「グッ!」
「翼ッ!」
「人の心配ばっかしてんじゃねぇ」
冬獅郎は奏が掴んでいる足を振り抜き、空中で動きを止めた翼目掛けて蹴り飛ばした。二人は数回地面を鞠のように跳ねると、そのまま地面に倒れ伏す。冬獅郎は二人の
「やはり、最初の発現はそんなもんか」
「どういう、意味だよ……?」
腹部を抑えながら立ち上がる、奏と翼。冬獅郎は諭すような口調で二人に説明する。
「なぜ、その鎧が形を保ててねぇかわかるか?それはお前らの
「「ッ!!?」」
冬獅郎は自身の斬魄刀、氷輪丸を二人に見せるように持つ。
「俺の斬魄刀を見ろ、こいつも俺の霊圧で形成されている、この刀を俺の霊圧を圧縮し硬度を保っている。だが、お前らのそれはまだ煙のように形が保ててない。だから、打撃を受けただけでいとも簡単に崩れる。そんなんじゃ、シンフォギアとの併用なんて不可能だ」
冬獅郎の言うように二人の完現術は未完成だ。そんな形すら伴わない状態で並装したとしても、
(場数から言って最初は発現まではできると踏んでいたが、やはりここから先は時間をかけるしかねぇのかも知れねぇな)
そう、冬獅郎が考えていると彼の耳によく聞き慣れた旋律が聞こえてきた。
「―――――――。」
(歌……?)
視線を転じると、二人が歌を口ずさんでるのが見えた。
「なんのつもりだ?お前達が今纏ってんのは
「……師匠は言いましたね」
「?」
「私達の
「だったら、
「!?」
冬獅郎が自分たちの言いたいことに気づいたように驚くと、二人の口元に笑みが浮かぶと、それと同時に二人の姿が視界からかき消える。そして、彼の頭上に二つの影が現れる。
冬獅郎は氷輪丸を頭上に構え、振り下ろされた二人の武器を受け止める。
(さっきよりも速いッ……その上、重いッ!!)
その重い一撃に冬獅郎の体がトレーニングルームの足場にめりこむ。
「奏ッ!!」
「おうっ!」
着地した二人は翼は足元を奏は頭上を、それぞれの高さの違う横薙ぎを放つ。身を屈めても空中に逃げても攻撃が当たるように。だが、冬獅郎は、地面に氷輪丸を付きたて足元を狙っていた翼の剣を強引に押し止める。そのまま翼を蹴り飛ばして、地面から氷輪丸を抜いて奏の突きをそらす。しかし、攻撃をかわされた奏の口には未だに笑みが浮かんでいる。
「かかったね……!」
「ッ!?」
瞬間、彼女の槍の先端が回転を始め、竜巻となり至近距離から冬獅郎を吹き飛ばした。竜巻は冬獅郎を巻き込んで、壁に叩きつけられる。突風と舞い上がった瓦礫の破片でできた粉塵が冬獅郎の姿を遮る、そして、やがてそれが晴れると冬獅郎の姿が見えてくる。
「まさか、ふっとばされるとは思ってなかった。ここ数年、受け身の特訓はしてなかったせいかもな」
「素直に驚いたって言えよ、冬獅郎」
死覇装ではないため、ぼろぼろになってしまった私服の埃を払うと冬獅郎は二人を見る。まるで、いたずらが成功した子供のような表情をした二人、奏はともかく、翼まで似たような顔をしていたのを見て新鮮な気分になる冬獅郎。
「―――なるほどな、お前達の能力はただシンフォギアの形を真似てるわけじゃない。歌そのものがお前達の能力を強化するための材料というわけか」
「そう、あたし達の
「シンフォギアを纏う私達にとってもっと最もふさわしい能力」
「ったく、随分都合のいい能力に目覚めやがって」
口では皮肉を言いながらも冬獅郎は内心でホッとしていた。この能力なら、万が一にも人生を狂わせる心配がないからだ。
「さっきの攻撃も完現術の能力を把握するための小手調べか」
「そういうこと」
「師匠相手に失礼かと思いましたが、それも油断を誘うためとご容赦を」
「いや、それも十分戦略だ。恥じることはねぇ。しかし、そうか……。」
冬獅郎は自分の中に今までなかった感情が生まれたのを感じていた。それは今まで弟子などとっていなかった彼が感じることのない感覚。自分の弟子が自分の予想を超えてくることへの喜び。
(黒崎、もしかしたらこいつらはお前よりこの力に適正があるかもしれねぇぞ)
「もう少し、上げていくか……!」
「上等だ」
「こちらもまだまだいけます」
三人の間の空気が張り詰めるなか、
ビリリッ!!
トレーニングルームにタイマーのような音が鳴り響く。
『冬獅郎さん、お二人の完現術の発現から三十分経過しました』
「チッ……!もう三十分経ったのかよ。―――了解だ、タイマーを切ってくれ」
『はい』
冬獅郎は舌打ちをしながら、トレーニングルームの外で完現術の記録を頼んでいた緒川の声に答えると、二人に向き直る。
「今日はここまでだ」
「はぁ!?なんでだよ、せっかく乗ってきたのに……!!」
「馬鹿野郎。お前らは生身の体で魂の力を使役してんだ。その肉体への負担は自分で思っている以上にデカイ。さらに言えば、お前ら自身はまだ霊圧を感じられてないから分からないだろうが、既にお前らの霊力はないに等しい。だから、今日はもうお開きだ」
「ちえぇ……。」
奏が突っかかろうとしたが、冬獅郎の正論に押し黙る。
「一日、三十分。それがこの力の特訓をする目安だ。そこから徐々に伸ばしていく」
「「……………。」」
明らかに不安そうな顔をする二人だったが、次の冬獅郎の言葉でそれも吹き飛ぶ。
「安心しろよ、このペースなら数日でお前らは力を使いこなせるようになる。並装できるようになるのも時間の問題だろう」
「本当ですか!?」
「あぁ」
冬獅郎のその言葉でようやく二人は納得したようだ。
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「奏さん、翼さん凄かったです!」
「ありがとう、立花」
「サンキュー、響」
トレーニングルームから出てきた奏と翼に称賛の声を送る、響。それを尻目に冬獅郎は弦十郎の視線を向ける。
「おっさん、あの二人から発せられた霊圧。計器に記録できたか?」
「あぁ、なんとかな。未知のエネルギーだったが、ギアペンダントを通じて、なんとか記録できた」
「そうか、じゃあ桜井に頼んでそれを遮断する装置とか作らせられるか?できるだけ小型の」
冬獅郎も了子の性格はともかくその腕は認めていた、数年間、二課の技術を支えてきた人間だ。その実績は確かだ。
「本人に伝えればいいんじゃないか?」
「苦手なんだよ、アイツ」
冬獅郎は了子の”目”が嫌いだった、瞳の奥でなにか値踏みするような―――冬獅郎が一番嫌いな男を連想させるその目が。
「俺は疲れたから帰るぜ、あと頼む」
「ま〜ってよ、冬獅郎!」
帰ろうと、歩き始めようとしたが背後から奏に肩を組まれ足を止める。そして、冬獅郎は忌々しそうに奏を睨みつける。
「なんだよ?」
「時間も丁度いいし、飯でも食い行こうよ」
「はぁ……!?」
「あっ、私美味しいお好み焼きさん知ってます!」
何いってんだこいつ、という目を向けるがそれを口にするよりも早く、響が次の言葉を放った。
「よし、そこ行こう!翼も行くよな?」
「えぇ、そうね」
「じゃあ、汗流してくるから待っててくれよ〜」
翼を連れ立ってシャワールームに走っていく、奏の背中を冬獅郎はなんとも言えない表情で眺めていた。
「死神図鑑!」
???「どうも〜、今日は日番谷君が虚化できたことについてのこの作品での設定を話しや。え?メタイ?僕もそう思うわ」
???「さて熱心な読者は日番谷君が滅却師に卍解を奪われたことは知っとるやろ?その卍解を取り戻す際、浦腹喜助が作った卍解を一瞬だけ虚化させる薬侵影薬の影響がなぜか日番谷君の氷輪丸にだけ残っちゃたんやね〜……。」
???「つまり氷輪丸は斬魄刀でありながら、虚の性質を持ち合わせる刀になってしまったってわけや。おや?なんや、こんな感じの斬魄刀持っとる子がもう一人いた気がするな〜?」
???「もしかしたら、彼の得意技使えるようになっとるかもね〜。ほな、そういうわけでさよなら〜」