あっ、タイトルは適当です、なんかそれっぽくしたかったので。
「旦那ー、冬獅郎連れてきたよ」
「シロちゃん!!」
約束の時間となり、奏の案内で冬獅郎は再び二課の司令室にやってきていた。そこには既に翼と響がいた。今回冬獅郎は死覇装ではなく、人間の姿だ。
「なんで、奏さんと一緒にいるの?」
「こいつが俺を迎えに来たからだ」
「翼のバイクの後ろしか乗ったことなかったけど、冬獅郎が意外と運転上手いんだね」
「意外とってどういう意味だ?それはまさか身長からいってんのか?」
「…………。」
「目ぇそらしてんじゃねぇ!!」
「ごめん」
「謝んじゃねぇ!余計悲しくなるだろうが!!」
「―――シロちゃん」
冬獅郎が奏に詰め寄っていると、背後から強い力で肩を掴まれる。
「シロちゃん、奏さんをバイクに乗せたの?」
「あ、あぁ……。」
振り返り自分の方を掴む響の背後に冬獅郎は未来の姿を見た気がした。そして、響が言いたいのは自分の特等席を使われたことだけでない、冬獅郎と奏の身長差、その果てにあるものを言っているのである。もしも、霊圧を注いだときのことを知られたら間違いなくやられる、そう冬獅郎は本能的に思った。
「まぁまぁ、落ち着きなよ。響」
奏は冬獅郎から響を引き剥がし、その耳元で冬獅郎に聞こえないようにボソボソと呟くようになにかを響に耳打ちした、瞬間響の顔がゆでダコのように赤くなった。
「なにしてんだ、あいつら」
「日番谷さん、奏が迷惑をかけて申し訳ありません」
「別にテメェが謝ることじゃねぇよ」
話の内容が気になる冬獅郎だったが、話に割り込んではいけないと思いそうそうに離れていると翼が奏の非礼をわびた。彼女が敬語なのは彼が自分より優れた戦士であり、自分より遥かに修羅場を歩いたことのある存在だからだ。
「来てくれたか、その姿でいるということは少しは信頼してもらえたのかな冬獅郎君―――いや、日番谷殿と呼んだほうがいいかな」
今度は弦十郎が話しかけてくる、彼は昨日の話で冬獅郎が自分より年上だと知っている。故に相応の礼をするべきか迷っていた。
「必要ねぇ、俺はもう隊長じゃねぇんだからな。なにより、」
冬獅郎は鋭い視線で弦十郎を睨みつけながら重みのある言葉を放つ。
「ここの頭はテメェだろう、一番上にいるやつが俺みたいなやつにへりくだるんじゃねぇ」
「……流石に重みが違うな。わかった、君のことは冬獅郎君と呼ばせてもらう」
「好きにしろ」
「はいは〜い。いい感じにまとまったところで先日のメディカルチェックの「もう少し待ってくれ、了子くん」弦十郎くん?」
「―――冬獅郎君、話を始める前にもう一つ聞きたいことがある」
「…………。」
「君は何故、ノイズと戦っているんだ?」
昨日は彼が心を許していなかったがために聞くことができなかった、彼が戦う理由。一つは、わかりきっている立花響だ。彼女を護るために戦っている。だが、それだけなら彼女の周りにいるノイズだけを倒せばいいだけの話だ。他にもなにかの理由があると考えるべきだ。
冬獅郎は少し考える素振りを見せたあと、その言葉を口にした。
「―――死神としての最後の矜持ってところか」
「どういうことだい、冬獅郎?」
「俺は平等に魂に接することができない時点でもう死神としての資格はねぇ。だがな、そんな俺にもかつて隊長格だったことへの誇りがある。そして、俺は真央霊術院―――死神の学び舎でこう習った」
―――死神 皆 須らく 友と人間とを守り死すべし
「死神として人の命を守ることが正しい、それだけだ。俺なんかより、そいつの体のことだろうが」
顎で響をさしながら、冬獅郎は了子に話をただす。
「それじゃ、改めまして。初体験の負荷は若干残ってるものの、体に異常はほぼ見られませんでした〜」
了子は空中に映し出された響のバイタルデータの仮想ウィンドウを指差しながら結果を伝えた。
「ほぼ、ですか……」
「ん〜、そうね。あなた達が聞きたいのはこんなことじゃないわよね」
「回りくどい言い方はよせ」
そこから、了子はシンフォギアの説明に入った。奏と翼が取り出した二つのペンダントヘッド、あれが二人のまとうシンフォギアの核。この世界に現存している聖遺物の欠片を、了子の提唱した『櫻井理論』で残された僅かな力を増幅、開放することが可能となった。そのために必要なものが特定振幅の波動、すなわち『歌』なのである。
「なるほど、だから戦うたびになんか歌ってたのか」
「そう、歌の力で活性化した聖遺物を一度エネルギー還元して、鎧の形で再構成したものが奏ちゃんや翼ちゃん、そして響ちゃんが身に纏うアンチノイズプロテクター―――【シンフォギア】なの」
「そして、それを使いこなせる僅かな人間、それを我々は【適合者】とよんでいて。それが翼であり、奏であり、君なわけだ」
「は、はぁ・・・」
「よく解らんって。顔に書いてあるな」
「あはは……すみません、全然わからないです」
「こいつに理論を叩き込もうなんてコト自体間違いだ。こいつ成績そんなに良くねぇぞ」
「シロちゃん、酷いよ!」
「毎週、テメェに勉強教えさせられる俺の身にもなれ!!」
毎週の週末、成績がそんなに良くない響に勉強を教えさせられる冬獅郎。休みくらいゆっくりしたいのである。
「でも、私はその聖遺物というものを持ってないんですけど……」
響はシンフォギアの核となる聖遺物を持っていない、なのに何故その力を使えるのか。答えは、了子が映し出した響のレントゲン写真にある。そして、胸元心臓近くにある小さな鋭利な破片。
「これがなんなのか、君たちにはわかるはずだ」
「は、はい。二年前の怪我です」
「心臓付近に複雑に食い込んでいるため手術でも摘出不可な無数の破片……調査の結果、これらは奏ちゃんの纏っているガングニールの破片だということが判明したわ」
((やはり(やっぱり)か……))
二人は自分の中の仮説が正しかったことを確信した。そして、奏は響の前に立ち頭を下げる。
「か、奏さん!?」
「ごめん!本当にごめん!守れなかっただけじゃなく、こうして一生消えない傷を残しちまった!ゆるされないことだってのはわかってるだけど、謝らせてくれ!」
「そ、そんな……。」
「私からも謝らせてほしい」
「翼さんまで……!?」
「私達の使命は無辜の民を守ることだ。だというのに望まぬ力をもたらし、こうして厄介事に巻き込んでしまった。―――本当に申し訳ありませんでした。」
「違いますっ!!」
「「ッ!!」」
響は二人の謝罪を大声で否定する。
「私はお二人のお陰で生きてるんです、二人があのとき私を護ってくれたからこうして生きていられるんです!だから、お願いです、お二人共頭を上げてください。」
「「…………。」」
「立花響はこういう奴だ、だからとっとと頭を上げろ」
冬獅郎の言葉で、二人は頭を上げる。
「……ありがとう、響」
「立花、ありがとう」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
そうして、三人は互いに礼を言い合う。なんとも妙なものだが、悪いものではない。
「……回りくどい話はこの辺にしようぜ。本題に入れよ、俺達二人をここに呼んだ理由を」
「やはり、気づいていたか」
冬獅郎の言葉で弦十郎の表情が歪む。二人をここにつれてきた理由、即ちノイズを倒すための協力要請。自分達は昨日まで一般人だった少女を戦いに巻き込もうとしているのだ。
「言っとくがこいつは話の内容は了承済みだ。あとは、こいつ自身の答えだけだ」
「ッ!?驚いたな、君は彼女を大事に思ってるから、戦場に立たせようとはしないと思ったが」
「大事に思ってるからこそ、こいつの意思を尊重したい。それに―――俺の隣以上に安全なところがあるのか?」
冬獅郎は眼前の弦十郎を見ながら、なんの慢心でもなくそう告げた。二課の職員の中には『なるほど』と納得するものが大半だった。彼の言う通り、彼の隣以上に安全な場所などないだろう。それだけ、彼は強いということだ。
全員の視線が立花響に集中する、彼女は一度深呼吸をすると、答えを口にした。
「私は、奏さんや翼さんみたいに戦うことに実感なんてありません……それに、シロちゃんみたいに強くもないです。でも、私の力が誰かのためになるんだったら―――私はやります」
それは昨晩、夜空の下で冬獅郎が響に問うた覚悟の言葉。さらに、そこに響は「それに……」と付け足して冬獅郎を見る。冬獅郎も静かにその視線に向き合う。
「もう……護られるだけでいるのは、嫌なんです」
それは、響の心からの言葉。今まで、知らないところで自分はずっと護られてきた。今度は自分が彼を護れるようになりたい。それが響のもう一つの本音だった。
「うむ、響君の気持ちはよくわかった。……では、今度は冬獅郎君の答えを聞きたい」
弦十郎は響の肩に手を置きその覚悟を受け取ると、今度は彼女から壁に寄りかかって腕を組んでいる冬獅郎に視線を向けて響と同じ質問を投げかける。
「答える必要があるのか?こいつが戦うって言ってるんだ、だったら答えはわかりきってんだろ」
「我々に協力してくれるということでいいのか?」
「あぁ」
ぶっきらぼうではあるが、確かな了承の言葉。二課のメンバーたちが密かに、ガッツポーズを取る姿が見られる。当然だ、彼を味方に加えるのは二課のかねてからの目標の一つだった。
「だが、俺はあくまでノイズの敵で
「―――敵の敵は味方、そういう関係でいいということか?」
「その認識で構わねぇ、そっちの指示には答えてやる。」
「そうか……だが、それで構わない。君の力はそれだけで多くの命を救える」
弦十郎はそれだけで十分と頷くと満足げな笑みを浮かべた。それを見ていた冬獅郎の背後から奏が腕を回し、肩を組む。
「これからよろしくな、響、冬獅郎!」
「……昨日から思ってたが、馴れ馴れしいぞ、テメェ。少しは風鳴を見習いやがれ!」
「えっ、私ですか……!?」
「ったく、立花はともかく、いきなり名前で呼ぶわ、タメ口で話してくるわ……社会人としての自覚あんのかテメェ!?こんなナリでもテメェらの数十倍生きてんだぞ」
「あっ、それ私も思った。奏さんはちょっと、シロちゃんに近すぎると思います!」
「いいじゃん、別に減るもんじゃないんだからさ」
そうって、冬獅郎の背後から腕を回し抱き着く奏。お陰で冬獅郎の後頭部には柔らかいものが思いっきりあたっている。
「あぁっ!!?奏さん、何してるんですかっ!?」
「奏、それは流石に失礼じゃ……!?」
いつかの言い争いが再び勃発し、冬獅郎は心底めんどくさそうな顔でその機中にいた。
「青春ねぇ……。」
「了子さん、発言が完全に……。」
「なに?」
「なんでもないです」
余計なことを言おうとした藤堯だったが了子のドスの利いた声に押し黙った。
冬獅郎はその声で了子の方を向くと。
「一応言っとくが、あんただけは信用しねぇぞ」
「ええっ、なんで私だけ!?」
「テメェみたいな危ない女、信用できるかっ!!立花に変なことしたら叩っ斬るからな」
「……一応、あの人はあれで有能なんだけどな」
そんな話をしていたが、冬獅郎の表情が一変する。
「来やがったな……。」
冬獅郎がそう呟いたあとに二課のアラートが一斉に鳴り響く。
「―――ノイズだ」
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