『冬獅郎君、もうすぐノイズの発生場所に到着するぞ』
「あぁ、こっちでも見つけた。もうすぐ着く」
空中を走りながら耳につけたインカムから弦十郎に答え、冬獅郎は数m先にいるノイズを見ながら二課でのやり取りを思い出していた。
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「ノイズの反応は二つある、しかも片方の数はいつもの倍以上ある」
「なっ!?」
弦十郎が告げた言葉に翼が声を漏らす。
「策としては、四人で多い方に向かって殲滅したあと、もう片方に向かうのがベストだが」
「―――いや、多い方には俺一人で行く」
「「「「「「ッ!!!!!!?」」」」」」
その言葉に冬獅郎以外の全員の顔に驚愕が浮かぶ。理由は二つ、一つは一人でノイズの群れを相手にしに行くと言ったこと、もう一つは、彼が響を連れずに一人で向かうといったこと。
「ノイズなら、百体だろうが、二百体いようが俺からしたら変わらねぇ。下手な犠牲を出す前に手分けするのが得策だと考えるべきだ。それに俺の瞬歩なら倒したあとにすぐ合流可能だ」
「なるほど、だが一人というのは……。」
「―――教えといてやるよ、死神ってのはそう簡単には死なないってことをな」
それは冬獅郎が二課に対して、自分の力を見せつけるために言った言葉にも聞こえた。
「立花、お前はそこの二人の戦いを見て戦い方を学んでこい」
「えっ?」
「お前の力はそこの二人と同じだ、だったら俺よりもその二人の戦い方を見るべきだ」
冬獅郎は響を見ると予想外の言葉を口にした。二課のメンバーも同じ思いだった、冬獅郎はてっきり響についていくつもりだと思ったからだ。
「安心しろ、お前の
「でも……。」
響は不安な表情で冬獅郎を見る、今まで一緒だった存在が今回はそばにいてくれない。そのことをの不安は皆推して知るべし。冬獅郎はバツの悪そうな表情をすると、響の額を指先で弾いた。
「いたっ!」
「辛気臭ぇ面してんじゃねぇ。お前はさっき俺になんて言った?」
「ッ!!?」
「俺に『護られるだけなのはもう嫌』なんだろう。だったら、いつまでも甘えんな……!」
今まで聞いたことのない冬獅郎の罵声。思ってもいなかった言葉に響は怯える。冬獅郎はそんな響を放って背中を向ける。
「―――いつか俺に認めさせてみろ、『俺が背中を任せてもいい』と思えるくらい強くなってな」
「うんっ!!」
そういって、響は力強くうなずいた。
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『しかし驚いたな、君が響くんにあんな事を言うとは』
「―――戦場に立つ以上、あいつはもう餓鬼じゃいられねぇ。例え、あいつに嫌われようがあいつは力をつけなきゃならねぇ。それに、俺は若輩の身で隊長になった、部下にやっかみを受けることも偶にあった、嫌われるのには慣れてる」
(寧ろ、少し嫌われるくらいが丁度いいのかも知れねぇ……。)
空中を駆けながら冬獅郎は、通信機から聞こえてくる弦十郎の言葉に答える。人にはいつか巣立ちの日々が来る。いつまでも護られてばかりの雛鳥でいさせるわけには行かないのだ。なにより、下手に執着させて―――かつての幼馴染のようになられては困るからだ。
「しっかし、今日のは随分多いな」
ノイズを眼下に捉えた冬獅郎は、氷輪丸を抜きノイズたちに斬りかかる。
(本当に数が多い、昨日といい。最近のこの量は妙だな)
冬獅郎は氷輪丸でノイズを蹴散らしながら、目の前のその異常な数に違和感を覚える。
(あんなこと言っちまったが、立花達に合流しといたほうがいいか)
そんなことを思うあたり、冬獅郎はやはり過保護である。
「―――はぁ、あの野郎の得意技を使うのは心底嫌なんだがな。この数を蹴散らすにはこれが最善か」
思い浮かぶのはかつて幼馴染を尸魂界を裏切った、大罪人。冬獅郎が初めて心の底から殺したいと思った男の姿。これから使おうとしている鬼道は、その男がよく使った術なので嫌でも思い出す。
「破道の十二―――『伏火』」
冬獅郎の周りに霊圧が蜘蛛の巣のように張り巡らされ、冬獅郎に近づいていたノイズ達をすべて捉える。冬獅郎は締めに入るために霊圧を安定させるための詠唱を開始する。
「『滲み出す混濁の紋章 不遜なる狂気の器 湧き上がり・否定し 痺れ・瞬き 眠りを妨げる 爬行する鉄の王女 絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち 己の無力を知れ』」
詠唱を続けると、冬獅郎の指先に現れた黒い光が冬獅郎ごと周りのノイズを包み、その場所に巨大な黒い直方系の物体がそびえ立つ。
「破道の九十―――『黒棺』」
黒い棺の内側で凄まじい重力がノイズを飲み込み、そのまま砕け散っていく。棺が崩れたたとき、そこにいたのは冬獅郎一人だけだった。
冬獅郎は死神の戦い方の基本である、斬拳走鬼のうち体型に恵まれなかった為拳以外の戦い方を高いレベルで習得している。冬獅郎の氷輪丸は六番隊隊長、朽木白哉の斬魄刀『千本桜』のように刀の形状自体はそれほど変化しないため、斬術を修めるのは当然。瞬歩による高速移動も
隊長になったときの冬獅郎は若く、才能も鍛える時間も経験も、
―――現存する最強の死神、と。
「こちら日番谷、視認できるノイズは殲滅した。まだ残りの反応はあるか?」
『い、いえ、こちらでもノイズの殲滅を確認しました』
「そうか、後処理は任せた。今から立花達と合流する」
『わかりました』
インカムから流れてくる藤堯の言葉に冬獅郎が相槌を打つと、冬獅郎は再び足元を霊圧で硬め瞬歩で飛び去っていった。
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「まさか、ここまで圧倒的とはな……。」
冬獅郎が戦う様子を二課の司令室で見ていた弦十郎がふと漏らす。
「弦十郎君、彼と戦ったとして勝てる自信ある?」
「無理だな、文字通り瞬殺されるだろう」
了子の質問に弦十郎は即答する。弦十郎は二課のメンバーや国の重鎮から『霊長類最強の男』と言われている。二課のメンバーも密かにこの質問の答を知りたいと思っていた。その彼を保ってしても瞬殺されると言わしめる男。日番谷冬獅郎、
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「くっ……!?」
響はノイズを拳で砕きながら、少し離れたところで戦っている翼と奏の実力を見て自分の実力不足を痛感していた。
(わかってたけど、私は弱い……このままじゃ、奏さんと翼さんの足を引っ張る!)
その焦りによるものか、彼女の動きは鈍い上に集中できていない。そんなとき彼女の背後から一体の人形のノイズがその手を伸ばす。
「響っ!」
「立花っ!」
「あっ……!」
衝撃が来ると思った瞬間、彼女の腕に何かが巻き付く。それは先端に三日月のような飾りのついた鎖、響はそれに反応するよりも早く、鎖に引っ張られる。
「えっ……!?」
「ったく、戦闘中にぼさっとすんな」
「シロちゃん……。」
強い力で鎖に引っ張られ、気づくと響は冬獅郎の腕の中にいた。響の腕に巻き付いた鎖は冬獅郎の氷輪丸の柄尻についた鎖だ。
「冬獅郎ッ!?」
「日番谷さんっ!?」
冬獅郎のあまりに早い合流に奏と翼は驚く。ここに彼がいるということは既に彼が向かった場所のノイズは倒しきっているということだからだ。だが、声をかけるよりも早く冬獅郎の背後に先程のノイズがまた手を伸ばす。
「―――邪魔だ」
冬獅郎がつぶやき、剣を振った瞬間ノイズの体はずたずたに斬り裂かれ崩れ落ちる。
(剣が殆ど見えなかった……!?)
同じ剣を振るうものとして翼は冬獅郎の斬術に目を奪われた。だが、それも一瞬、すぐに思考を切り替えノイズの殲滅に戻る。
―――冬獅郎が合流した四人がノイズを殲滅するのにそう時間はかからなかった。
「すみませんっ!!私、結局何もできなくて……。」
戦闘終了後、二課のメンバーが後処理をしている背後で響が開口一番出てきたのは自身の無力に対する謝罪の言葉、危うく二人に迷惑をかけることになったことに心から申し訳無さそうに頭を下げる。
「いいって、響。最初から強いやつなんているわけないんだからさ」
「そのとおりよ、だけど、戦闘中に集中を切らすのは絶対にしてはいけない。死に直結するわよ」
「うっ」
慰めながらも自身の駄目だったことを指摘する翼に、響は寧ろ更にげんなりする。
「ほら、冬獅郎もなんか言ってやれよ」
「―――護廷十三隊の中には虚との戦いで心に深い傷を作った奴が四番隊という治療を専門とした隊に入ることが珍しくなかった」
「「「?」」」
いきなり護廷十三隊のことはなされわけのわからないという表情をする三人。
「だが、その恐怖を乗り越えて前に立てるやつはたいてい強くなる。―――誇れよ立花。お前は戦場に立てるだけ十分強い。」
「シロちゃん……。」
やはり、冬獅郎の言葉は重みが違う。
「響、あんた旦那に鍛えてもらったら?」
「旦那って、弦十郎さんですか?」
「そっ、あの人尋常じゃないくらい強いからさ。いや、冬獅郎も強いけど、響の戦い方って旦那のほうが似てるからさ。私から話してみよっか?」
「是非お願いします!!」
奏からの提案に響は食いつく。冬獅郎も弦十郎が強いことは察していたのでそのほうがいいかと止めようとはしなかった。
「―――日番谷さん」
「どうした、風鳴?」
奏と響が話しているのを見ていると、翼が真剣な表情で話しかけてきた。何事かと思い、翼の方を向くと、彼女はまっすぐと自分を見据え、こういった。
「私に―――剣を教えてはくれないでしょうか?」
「なに?」
『死神図鑑!』
「どうも〜、このコーナーは作者さんの気まぐれでつくられた死神についての基礎的な知識をレクチャーするコーナーや。ん?僕が誰かて?そんなん気にせんでもええで、わかるひとにはわかるやろうから」
「さて、今日レクチャーするのは斬魄刀についてや」
「真央霊術院にはいった子らは皆『浅打』いう無銘の斬魄刀を与えられるんや。院生はその浅打と寝食をともにすることで自身の魂の精髄をその刀に写し取ってその死神の斬魄刀になるって仕組みや。まぁ要するに自分の分身みたいなもんやな」
「その形は多種多様、日番谷くんみたいに氷とか炎が出せる鬼道系に、槍やら鎌やらに変わるのもあるで。僕のなんて伸び縮みするし」
「さて、今日はこのへんで、ほな、さいなら〜」