マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
デイビットが編入してからしばらく。傍から見る分にはレッド寮に馴染んで上手くやっているように見える……というか実際上手くやっているのだろう。
陽気で闊達。コミュ力も高い。多少能力の高さゆえの傲慢さと天然の口の悪さはあるが、その辺りはレッド寮生からすれば万丈目で慣れたもの。
長く一人部屋だったので最初は落ち着かなかったが、今ではルームメイトとしてまあまあ折り合いをつけている。時折アメリカチックなやらかしをしそうになる度にサポートしている内に、気のせいか向こうも少し気を許してきた感があるな。
さて。その間も当然だが幾つかの出来事があった。例えば、
「十代のアニキ。肩でもお揉みいたしますドン!」
「くおらああっ! 剣山君っ!? アニキの弟分ポイントを稼ごうと姑息な真似を。アニキはボクのアニキなんだぞっ! さっさと自分の寮に帰りなよ」
「固い事言いっこなしだドン丸藤先輩。俺はこうして十代のアニキからカリスマを学ぶ為、少しでも長くお傍に居たいザウルス!」
この野性的な風貌と特徴的な語尾の男はティラノ剣山。今年からラーイエローに入ってきた一年生だ。
入学直後はラーイエローの生徒達を集めてティラノ団なるチームを組織し、実力を見せつけるようにデュエルディスク狩りを行っていた荒くれ者だったのだが、十代に負けて以降アニキと慕ってこうして部屋に押しかけるようになった。
どうも翔とは十代を取り合うライバル的な立ち位置に居るようで、こうして毎度毎度じゃれ合っている。微笑ましい限りだ。……なお、こんな見た目で恐竜使いなのに、無印のダイナソー竜崎とは特に関係はないらしい。解せぬ。
「それを言ったら丸藤先輩こそ、さっさと自分の寮に帰ったらどうだドン? 折角昇格したんだから」
「それはそれ。これはこれだよ。やっぱりご飯はこっちでアニキと一緒に食べた方が良いというか」
そうそう。実は
これはこの度長期出張中の鮫島校長に代わり臨時校長となったクロノス先生、及びナポレオン教頭が突如始めた政策……通称
先日プロデュエリストであるエド・フェニックスが学園に入学したものの、どうしても学業と仕事の両立は難しく出席率はイマイチ。代わりに学園の宣伝の為、見込みのありそうな一部の生徒を学園側がガンガン推していこうという少々アレな政策である。
先日は明日香をアイドルとして売り出そうとしたが本人がレッド寮にプチ家出するほど拒否し、今度はプロになったカイザーの弟という事で翔を担ぎ上げる事にしたようだ。
まあその第一歩として無事試験デュエルの結果ラーイエローに昇格した訳だが、相変わらず暇な時にはレッド寮に来ているのであまり変わった感がない。制服が黄色になったくらいか?
ただ、良い風に変わった事ばかりではない。
現在それが学園の議題に上がっていて、特にナポレオン教頭が強硬に進めるべきと訴えているという。
当然オシリスレッド寮生、そして新任寮長たる響先生の猛烈な反対があって現在小康状態だが、何かこちらに落ち度があればそこから難癖をつけてくる気まんまんらしい。学園物には割とありがちなイベントだが、実際にやられるとこちらは行き場を失いかねないので止めてほしい。
次は……そうだな。
もう一度言おう。万丈目ルームが出来た。そのまんま万丈目が万丈目グループの力を使い、オシリスレッド寮に自分用の部屋を増築したんだ。個人用トレーニングルームや小型スパ完備。家財道具一切を運び込み、ちょっとした一軒家をそのまま寮の端に増築した。
……いや別にとち狂った訳じゃないんだ。本人は自分にふさわしいゴージャスな部屋を造っただけと言っていたが、おそらくこれが彼なりのオシリスレッド寮を守るやり方なのだろう。一部とはいえ万丈目グループの建築物となれば、物理的にも手続き的にも撤去は難しくなるからな。一種の防波堤としての役割を持たせたいのだろう。
と言っても出来上がった万丈目ルームは現在解放されていて、良くいつメン達の溜まり場になっている。あそこで柔らかいソファーにもたれながらテレビを見るのは中々に気分が良いんだ。万丈目自身嫌そうな顔をしながらもOKを出しているから良いのだろう。
その万丈目に何かスター発掘計画的な誘いはなかったのかって?
…………まあ、うん。あったな。わざわざ中等部で一番の成績で進級したエリートの五階堂宝山という一年生をぶつけて、万丈目がブルーに戻るきっかけを作ろうという一件が。
結果? 聞くまでもない。如何に中等部トップだろうが、入ったばかりの新入生に万丈目が負けるものか。
そう。あんな勝手に万丈目に憧れてエリート意識を強め、勝手におジャマを使う万丈目をそんな雑魚カードを使うなんてと失望し、挙句の果てに今のアンタはただの他のレッド生と同じ落ちこぼれだ等と嘲る様なファンの風上にも置けない身の程知らずの新米は、万丈目が軽くおジャマ達と共にフルボッコにしたともさ。
えっ!? やけに私情が入ってるって? いやいや入っていないとも。あくまでアレは戦っている万丈目自身が格の違いを見せつける戦いだったからな。静観していた俺はすこぶる冷静だったさ。……何故か他の面々が少し距離を置いていたけど。
その後も口では色々言いながら、他のレッド生の為に軽く説教をかましたりブルーへの昇格を断ったりと、仲間思いの所をこれでもかと見せつけた。流石は俺の推しだ!
「まあこんな所かな。ここ最近の主だった出来事は」
『ははは! そんな事があったんだねぇ』
という事を、俺は画面越しに茂木に語って聞かせていた。
そう。
しかし三幻魔の件で手助けした事で一定の評価は得られたため、段階的に外出の許可を出していくというのが学園側の意向だという。先日は短い時間だが久しぶりに外に出て日向ぼっこをしたと、茂木は嬉しそうに話していた。
ただ残念な事に、現在俺の精霊使いの力が弱まっているため茂木の部屋に遊びに行く事が出来ない。なのでここしばらくは通話のみで留めていた。十代や万丈目は時々会っているらしいが、わざわざ俺の口からこれまでの事を聞きたいというのでこうして話していた……という訳だ。
「そっちの精霊達や幻想体達の様子はどうだい?」
『相変わらずかな。時々一緒に遊んだり、お菓子を食べたり、昼寝したり、幻想体達もそれなりにストレス発散にはなっていると思うよ』
幻想体達には交代制で茂木の所で羽を伸ばしてもらっている。託児所のように扱って悪いと思っているが、こればかりは純粋に精霊使いの力が一番強い茂木にしか頼れない。
幻想体達の方もどうやら茂木ともけもけののんびりさに良い影響を受けているようで、一度実体化したレティシアに尋ねた所ほとんどトラブルらしいトラブルは起きた事がないという。
『それにしても、肝心の久城君はどうなの?』
「俺? そうだな……最近はぼんやりと姿なんかも見えるようになってきたし、声も微かだけど聞こえるようになってきたから、もうしばらくしたら力もそれなりに」
『え~っと……そっちもだけどそうじゃなくて』
茂木は少し困ったように笑う。てっきりいつになったら力が戻るのかという意味かと思ったが違ったか。キュートちゃんはもう数日もしたら実体化が解ける予定だけど。
『さっきのスター発掘計画だよ。十代君は嫌われているみたいだからしょうがないにしても、君は何か誘われていないのかい?』
「ああ。そっちね……ははは! 誘われる訳ないだろう?」
珍しく的外れな茂木の言葉に俺は笑ってそう返す。
成績はまあそれなりに勉強しているからレッド内ではそこそこ良い方だとは思う。しかしそれだけだ。
言っちゃあ何だが俺は本来ならここに居る筈のないイレギュラーだ。まあセブンスターズ事件ではバランサーとして多少働いたが、あれも公にはされていない以上実質只の一生徒。
万丈目のような実力も、明日香のようなルックスも、翔のようなコネもない。精霊使いとしても故障中。それをスターとして売り出そうなんて誰が思うよ。
『そうかなぁ。僕は結構あると思うんだけどなぁ。十代や万丈目君もそう言うと思うよ』
「言うかぁ? まあお世辞として有り難く貰っていくよ。……じゃ、今日はこの辺りで。また近い内に連絡するからな」
『うん。また近い内にね!』
そう言って俺は茂木との通話を切る。評価してくれるのは嬉しいけど、そんな事ある訳ないのにな!
「シニョール久城。現在推し進めているスター発掘計画。これに是非アナ~タを推薦したいノ~ネ!」
「……はい?」
そんな事あったよ。おかしいな。
クロノス先生のにこやかな笑みと言葉に、俺は思わず間の抜けた声を上げた。
遊児のこれまでの功績
・成績優秀(座学だけなら学園全体でも上位二割をキープ。ただしこれは前の世界でのデュエルモンスターズの知識も積み重ねているため)
・授業態度良好(授業はほとんど出ており、かつ授業中居眠りする十代達を叩き起こしたり個人的な勉強会を開いて学力の向上に協力しているため。佐藤先生もちょっぴりにっこり)
・生活態度良好(問題児の十代達のストッパーもやっている。……極稀に本人も悪ノリするが全体で見れば良好)
・バランサーとしてセブンスターズ事件の解決に一役買う(公にはされていないが、教師陣にはそれなりに伝わっている)
・クロノス先生を身を挺して幻魔の攻撃から庇った(結果として非常に消耗し、事件後それも込みで倒れてしまって期末テストを受けられず、特別措置でレッドのまま昇級。負い目を感じる関係者達)
結論。教師陣(特に鮫島校長とクロノス先生)から高い評価を得ている。ナポレオン教頭も成績自体は文句なし。……スター発掘計画に推されるのも残当だね!
次話はちょっと間が空きます。他にも書きたい話が多すぎるっ!?