VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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仁義なきホラゲ6

さぁ、エーライちゃんに襲い掛かる次の関門は直線状なら一瞬で距離を詰めてくる紫鬼の亜種だ。

見た目は非常に平べったい板のような化け物なので、もろに空気抵抗を受けるはずだがそこは気にするな!

 

「シュワちゃん先輩、こいつ名前なんですよ? なんか見た目がプールとかで子供とか泳げない人が使うあれに似てますけど」

「ビート板のこと?」

「そう! それですよ~」

「それなら名前ビート板だちゃんとかでいいんじゃない?」

「メロンパン〇ちゃんみたいに言うなですよ! アンパ〇マンの世界にこんな化け物はお呼びじゃねぇですよ!」

「個人的にはバイキンタマン推しです」

「どこのどいつですよ!? 余計な文字入れたせいで性病みたいな名前になっちまってるですよ!」

「アンアンマン、新しい竿よ! アンアン! マンがアンアンしてアンアンマンになっちゃうううぅぅ!!」

「こいつ本当に頭大丈夫なのかですよ……」

 

コメント

:頭おかしなっとるで(手遅れ)

:即落ち2コマンガちゃん推しです

:コシアンマンとツブアンマンが戦う話好き

:最後合体して羊羹マンになって大炎上したの好き

:お前らは何を言ってるんだ……?

:コメント欄の最近の暴走具合を見るにリスナーは配信者に似るんやなって

:てか組長普通に避けてるな

 

コメントの通り、後ろのゲーム画面ではエーライちゃん操るヒロキがうまく敵の正面を避けることで攻撃を躱し続けている。

もうゲームも終盤の終盤、幾たびの抗争の中で死線をくぐり成長を続けた組長には大したものではなかったようだ。

完璧とまではいかないも丁寧な躱し方でうまく逃げ切ることに成功した。

 

「よくやったエーライちゃん! もう脱出間近だよ!」

「マジですよ!? と、とうとうこの地獄が終わる……涙が出そうなのですよ」

「泣いてる場合じゃないよ! ほら、紫鬼来てる! 逃げて逃げて!」

 

最後まで執拗に襲い掛かってくる紫鬼だが、追ってきたのは所詮普通の個体。今のエーライちゃんの敵ではない。

余裕綽綽といった調子で、まるでこちらが手玉に取っているかのようにエーライちゃんは逃げ始めた。

でもなエーライちゃん、実はこのゲームの最後の紫鬼はな――二体セットなんや。

 

「アッーーーー!!」

 

エーライちゃんのその叫び声はあまりにまぬけで、悲壮的で、あまりにもチンパンであった。

逃走方向から現れたのはかつての友人、タクミだった。

最後の最後で再会とはなんて喜ばしいことだろう。まぁ彼がおぞましい紫鬼へと変わり果てていなかったらの話だが。

美しいまでの挟み撃ちになすすべもなく、ヒロキは命を散らしたのだった。

 

コメント

:声がwww

:今の声どこから出したんや

:フクロテナガザルの鳴き声そっくりだったぞ

:叫び声のバリエーション豊富やな

 

「おい今私のことフクロテナガザルのケイジ君って言ったやつ事務所来いや」

「せめて事務所じゃなくて動物園って言おうか。あと個体までは指定してなかったよ」

 

その後も流石に紫鬼二体となると慣れてない分きついようで、再び多くのゲームオーバーを積み重ねることになった。

 

「ふぁっきゅー! ふぁっきゅふぁっきゅ!(ダンダンダン!)」

「お、落ち着いてくだせぇ組長! もうお年なんだからお体に障りやすぜ!」

「おい、今誰が私のこと年寄りって言った?」

「ケイジ君です」

 

コメント

:おい

:これほどまでに潔い擦り付けは中々見れない

:カイジ君、君の雄姿は忘れない

:雄姿を覚える前に名前を覚えてもろて

:指定愛護団体栄来組

 

あまりにも容易く絶えるヒロキの命。最後だけあって相手も本気だ。

だがその時はふと訪れた。

またもや挟み撃ちの状態から、今度は間一髪で紫鬼の側面を潜り抜けたエーライちゃん。

そしてそのまま足は止まらず逃走路で見つけた脱出口から脱出、そのまま一度たりとも振り返らず洋館を後にした。

ゲームクリア――罰ゲーム終了だ。

 

「お、終わった……?」

「おめでとうエーライちゃん。正真正銘これで終わりだよ」

「やった……長かった……」

 

コメント

:8888

:¥50000

:けじめ付けたな、かっこいいぜ

:おめでとー!

:物凄く濃い時間だった

 

「それじゃあエーライちゃん」

「はい? どうかしたのですよ?」

「明日から頑張れ☆」

「あ」

 

私の言葉でこの配信前までは組長のくの字すら見せていなかったことを思い出したのだろう。かたったーは今でもお祭り騒ぎだ。

最後の最後までエーライちゃんの絶叫たっぷりの配信になったのだった。

 

 

 




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