VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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ライブオン常識人組4

ム〇キングガチ勢(性的な意味で)なお姉さまの話の後も、何個か私が出会ったことがある変人さんエピソードを紹介したところで、ひとまず私の会話ターンは終了となった。

次は流れ的にちゃみちゃんになるのだが……

 

「私はそもそも困るほど周囲の人間と関わる機会が少ないのよね」

「「あ~……」」

 

初っ端からそんな身もふたもない話が飛び出してきてなんとも言えない空気になってしまった。

 

「それはなんとも……でも何か一つくらいあるんじゃないかな? 些細なことでもいいからさ」

 

シオン先輩がフォローを入れて何とか話題を引き出そうとしている、私も協力しなければと思い言葉を考えていたのだが、ちゃみちゃんは予想に反してこんなことを言い出した。

 

「そんな心配しなくて大丈夫。だって今回の企画考えたの私よ? 困っている人はちゃんといるわ」

「え、そうなんですか? でもさっき困るほど人との関りがないって言ってましたよね」

「そうだよね!」

 

私とシオン先輩が首を傾げている中、ちゃみちゃんは高らかにこう宣言したのだった。

 

「私が困っているのはこんな状況に陥っている私自身よ! 改善策がないか一緒に考えて欲しいの!」

「「えぇぇ……」」

 

どうしようもなくちゃみちゃんらしい困りごとなのだった。

 

「私ね、最近思うようになったことがあるの。あれ、私って個性弱いのかなって」

「そんなことはないような気がしますが」

「だって私の個性ってセクシーなお姉さんっぽいけどコミュ障でポンコツってだけじゃない?」

「落ち着いてちゃみちゃん! 普通に属性てんこ盛りだから! ライブオンが魔境過ぎるだけだから!」

 

コメント

:草

:だけの意味を調べて、どうぞ

:特別な環境下に置かれた人間の心理実験でもしてるのかな?

:例えの癖が強い

 

引き留めるシオン先輩だったが、どうやらあまり効かなかったようだ。ちゃみちゃんの声色は晴れない。

 

「だって皆ドカンドカン話題になるじゃない? 私そういう経験あんまりないから……」

「でも話題になる=全てが良いではないですよ? ちゃみちゃんは常に固く人気を保ってると思います。熱心なファンの数の多さがそれを物語っていますよ」

「そう……なのかしら?」

「そうだよ! インパクトが大きいと話題にあげる人が比例して多いから、それが大きいだけだと思う」

「私なんか話題になると9割以上お笑い関連なので、純粋にかわいいと言われているちゃみちゃんがたまに羨ましくなりますよ」

「なるほど! これが隣の芝生は青く見えるってやつなのかしらね」

「そもそも個性って自分が持っていないものを後から付け足そうとするとろくなことにならないイメージあるからねぇ」

 

コメント

:分かる気がする

:というより天性の物じゃないとライブオンに付いていけないだけでは……

:あわちゃんもかわいいよ!(外見は)

:実は中身の可愛さもコアな人気があるという事実

:なんだかんだライブオンを支えてきた実績があるからね、面白さ以外も評価されてきてる

 

私たちの懸命な説得もあって段々とちゃみちゃんの声に明るさが戻ってきた。

難しい悩みではあるけど、シオン先輩の言う通りあまりに無理があることをやろうとしてコケると最悪だし、なにより本人が配信を楽しめなくなってしまう可能性がある。私は仲間のそんな姿見たくない。

向上心があることは素晴らしいことだけど、自分を受け入れることだって時には大切なはずだ。

あ、それと言っておきたいことがあと一つ。

 

「あと、私はちゃみちゃんの個性に声もあると思いますよ」

「確かに! シオンママも演技力とか含めてライブオンじゃピカイチだと思うよ!」

「声? ああ、確かにasmrとか好きでよくやってるからね」

「落ち着くし艶っぽくて聞いてて飽きないんですよね、癖になる感じ」

「ほんと? ふふっ、声を褒められるとなんだか嬉しくなってしまうわ」

「私の声はあまり特徴がない無個性なものなので、尚更そう思いますよ」

 

私の今の言葉、本心から何気なく口にしたものだったのだが――

 

「そ、そんなことないわ!!!!」

 

今までちゃみちゃんから聞いたことがない程の大きな声が返ってきた。

らしくない様子に困惑する私とシオン先輩だったが、立て続けにちゃみちゃんはまくしたてるように言葉を続けていく。

 

「淡雪ちゃんの声は全く無個性なものなんかじゃない! そもそも人の声は多種多様であり千差万別、無個性なんて概念は存在しないわ! 同じ人間という生き物の私たちだけど容姿や性格と同じく声も自分だけの物なの。この振動から生み出されているとは思えない鮮やかな音色、二人だってわかるでしょう? 声とは人間の進化の奇跡であり神秘なの、神々しく尊いものなのよ!! 私は淡雪ちゃんの声にもシオン先輩の声にも全く別の良さを感じるわ、淡雪ちゃんの声は少し低めで気怠げな感じが耳に幸せ、語尾を伸ばしたりするときに少しかすれ気味になるところとかもう最高過ぎてゾクゾクくるわ。シオン先輩は性格が声にそのまま出てるかのような全てを包み込む優しい声、もう生きるアヴェ・マリアね、喋るだけで人を癒して誇らしくないの?」

 

まるで自分の趣味を語るオタクのように絶妙な早口が止まらないちゃみちゃん。

え、嘘でしょ? もしかして今までの流れ……盛大なフラグだった……?




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