VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

125 / 332
有素ちゃん家にお泊り2

「すぅーはー……すぅーはー……」

後ろを向き何度か深呼吸をして正常な精神を保ったところで、とりあえずこの状況を外の誰かに見られないようにドアを閉め、再び玄関に居座るキメラと対峙する。

 

「えーっと、とりあえず有素ちゃんで間違いありませんよね? もし違ったら私は今すぐにでも逃げ出しますけど」

「はい! 相馬有素なのであります! 今日ははるばるお越しくださり感謝感激なのであります!」

「うん、そっかそっか、私も会えてうれしいですよ。でもですね、その身なりは……どうしてそうなってしまったんですか?」

 

真っ先に未だに直視できないその服装と言っていいのかも分からない身なりにツッコミを入れる。

おかしいな、目の前にほぼ全裸の若い女がいるにもかかわらず一切の興奮が湧いてこない。それどころか視界に入れることを脳と眼球が断固拒否している。これが照れによってもたらされた拒絶ならどれほどよかったものか。

 

「淡雪殿が我が家に降臨なさるということで、生半可な装いでは無礼に当たると思い、考えに考えた結果これになったのであります!」

「その考えに考えた部分をもっと詳しくお願いします!」

「了解であります! まず淡雪殿に体を差し出すことを考えて下着なのは前提としまして」

「なるほど、いちいちツッコミを入れていると会話が渋滞して進まないので、とりあえず最後まで聞きましょう」

「その、私照れ屋なものでして、実際に尊敬する淡雪殿を目の前にしてしまうと動悸によってまともに喋れなくなってしまう可能性があるので目隠しが欲しかったのでありますよ。でもブラで目隠しが上手くできなかったので、そうだ、パンツを被ろうと」

「……はいはい、それで?」

「でもそうすると下が丸出しじゃないですか? 流石にこれは如何なものかと思いまして、そうだ、逆転の発想でブラを下に穿こうと」

「ふむふむなるほど、まだありますよね?」

「はい、自然と余ってしまったおっぱいエリアをどうしようかすごく悩んだのでありますが、ここは淡雪殿の興味を引くものを付けてアピールすべきだと考えまして」

「考えまして?」

「空のストゼロを紐につないで」

「空のストゼロを紐につないで?」

「乳首に吊るしたのであります!」

「そっかぁ乳首に吊るしちゃったかぁ。確かに乳首が空いてるの勿体ないですもんね」

「はいであります!」

 

…………。

 

「頭大丈夫ですか?」

 

途中何度もツッコミを入れたい衝動に襲われたが必死に我慢した結果、最終的にこの一言に帰結した。

やばい、この子は私が遭遇してきた猛者たちの中でもトップクラスにやばい。筋金入りだ。

 

「おや、気に入ってもらえなかったでありますか? 私の勝負下着」

「むしろどうしてそれでいこうと思えたのかがしりたいですよ。あと確かに勝負はしてましたね。私じゃなくて世の中にですけど」

「むー、やはり体が貧相なのがいけないのでありますね。もっと食べて動いて鍛えなければ!」

「そうじゃなくて……いや、とりあえず一旦普通の服に着替えてもらえませんか? さっきから目のやりどころに困っているのですが」

「興奮するでありますか!?」

「いや、絶望します」

「むー、明日から牛乳いっぱい飲むのであります……」

「いや、だからちがくて……」

 

なんか会話が通じなすぎて強烈なカルチャーショック受けてるよ……。

 

「まぁ服は自室に行かないとないので、とりあえず上がってほしいのであります」

「はい……」

「あー! (家の)中に入っちゃう! 淡雪殿が私の(家の)中に入っちゃうのでありますー!」

「帰っていいですか?」

「だめであります」

 

渋々靴を脱ぎ、頭のパンツを度々上げて道を確認しながら廊下を先行する有素ちゃんの後ろに続く。

 

「今(カーン)が(カーン)でして(カーン)」

「うん、その両乳首にぶら下げてるの一旦手で持つか何かして固定しましょうか。歩くたびにぶつかる音が響いて何言ってるのか分かりませんよ」

「おっと失礼しましたのであります。それでですね、今両親がリビングにいまして、お手数おかけしますが顔合わせするだけでもお願いしたいのであります」

「え、まだ昼過ぎなのにもうご両親いるんですか?」

「はい。私もびっくりしたのでありますが、大事なお客様が来るので気合いを入れて今日は仕事を休んでしまったようなのであります」

「まじですかぁ……」

 

うわぁこういうの慣れてないからなんか緊張するなぁ。ライバーのご家族にお会いするのはこれが初めてだ。

というかさ! ご両親いるんなら娘のこの痴態を止めてくださいよ! どう考えても違和感しかないでしょう!

いや待てよ? 娘がこれってことはまさかご両親まで――

 

「ここがリビングであります。まぁ生活感満載で綺麗ではありませんが」

「ごくり……」

 

有素ちゃんがためらいもなく扉を開ける。そこに広がっていた光景は――




活動報告にてマシュマロとリクエスト募集中です!
本編に出てくるライバーに質問したいことなどあれば、活動報告『マシュマロ募集』のコメント欄に、やってもらいたいことや見たいシチュエーションがあれば『リクエスト募集』のコメント欄に書き込んでくだされば、本編にて採用されます!
よろしければ是非書き込んでみて下さい!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。