今回はグロが含まれます。それでもいい人はどうぞ
~北の秘境~
「ハァァァ!!」ガキン
レミリア達が全力で向かっている頃、秘境の地では春と死神長が刃を交えていた。互いに一歩も譲らず、攻撃を繰り出している
「中々やるじゃないか、少年よ!」
「そっちこそ!」
互いに一旦距離をとり呼吸を整える。そして束の間の静寂の中、最初に動いたのは春だった。春は大きく後ろに下がると剣を抜刀する形に構え、おもいっきり地を蹴り加速をつけた
「それくらいのスピードなら容易に見えているぞ!」
死神長は迫り来る春に向けて鎌を降り下ろす。だがそれは春が描いていたシナリオ通りだった
「わかってるよ…見えていることくらいな!」
春は降り下ろされる鎌を片方の剣を使って滑らす形で受け流した。そして空いた懐に抜刀斬りをおみまいしてみせた
「ぐっ…!(何か術を使ったのか?正直あれが交わされるとは…)面白い…私は貴様を舐めていたようだ。だがそれも終い、貴様は私に触れることすらできず…死ぬ」
「それはどういう…!?」
春は戦慄した。つい先程まで目の前にいた敵が自分の真後ろにいるからだ
「そんなに不思議か?私が今お前の後ろにいることが」
「(くそっ、こいついつの間に…だけどさっきまでのスピードを見ても到底できるとは思えない…となると)能力持ちか…しかも人間の領域では無さそうだ…ね!」
すぐさま背後に攻撃を入れるが鎌で防がれてしまう。だが春にとっては好都合だった、鎌で弾かれた反動で死神長と大きく距離をとった
(考えられるのは時間系の能力…咲夜姉ちゃんと同じなら勝機はあるがこっちもリスクが…)
「ぼーっとしていていいのか?」
「!?しまっ!」
春が思考を張り巡らしている間にも死神長は再び春に急接近する。春は咄嗟にかわすが、攻撃を脇腹に受けてしまった
「ぐっ…!」
危険を感じすぐさま距離をとる。だがそれもすぐにつめられ、春がおされる形となった
「ふぅ…はぁ…はぁ…」
再び大きく距離をとり、息を整え眼を閉じる。春は自分の能力を最大限まで引きだそうとしていた
(まだだ…相手が速いならその先を読めばいい。だけど僕の身体が耐えれるのは精々五秒…それ以上力を出すと持たないかもしれない…いや)
「どうした終わりか?」
「…そんなわけないだろう」
春は眼を開き死神長をじっと見据えた。その眼は深紅に染まっている
「悪いけど…主人を待たせているんだよ。絶対助けるって決めたんだ。だから…」
「まさか…っ!?」
「絶対に負けない!!」
自身の力を最大限まで発揮することで、数秒ほど能力が及ぶ時間を延長させた春は死神長の全力の攻撃を片手で受け止めた。そしてもう片方の剣で胴体を切り裂く、攻撃を食らった死神長は咄嗟に後退した。
「…ほう…限界突破か。だが貴様、それでは身体が持たんぞ」
「どうせ負けたら死ぬんだ。なら別に身体が多少ボロボロになるくらい構わないさ」
春が行った限界突破は、人間本来の潜在能力を100%引き出すものだ。普通の人間ならともかく普通の人間とかけ離れた身体能力を持つ春のそれは計り知れないものだ。その分代償も大きくなるが
「対した度胸だな。だがそれは無茶というものだ」
死神長は春の死角へ回り込み鎌を降り下ろす。しかし春はそれを易々と受け止めてしまう。限界突破したことにより能力の精度が上がるだけでなく力がも増しているのだ
「ぐっ…!」
「お前は強いよ、けど勝つのは僕だ!」
死神長の鎌を弾き飛ばした春は剣を身体の前でクロスさせ、飛び上がった
「幻想【春夏秋冬】」
両手に持つ剣から幾つもの斬撃が放たれ、死神長を巻き込み豪雨のように降り注ぐ。その様子はまるで無数のナイフのようだ
「はぁ…はぁ…げほっ!」
砂埃が舞う中春は少し離れたところに着地していた。いくら限界突破しているとはいえ、身体に負担の大きい技を使ったのだ。流石に疲労の色が見えている
(気配は消えていない…まだ生きているか…!?)
砂埃が徐々に消えたとき、春の目に映ったのは片腕を失いながらも立ち上がる死神長の姿だった
「そんな…あれで原型留めているとか化け物だね…!」
「確かに今の攻撃は凄まじいものだった。私も危険を感じたよ」
(身体強化ではなさそうだ…まさか時を停めて避けたのか?だけどそれなら全部避けられるはず…)
「一つ言っておこう」
「…っ!うぐっ!?」
死神長はその場で鎌を振り払った。すると離れているはずの春の右腕が縦に裂け血が飛び散った。その痛みで思わず剣を片方落としてしまう
「いつから俺が時間系の能力持ちだと錯覚していた?」
「くそっ…まだ終わってない!」
動かない片腕を引きずりながらも春は果敢に死神に向かっていく。だが焦りで思考が鈍っていた
「生き急いだか…哀れなり」
「しまっ…!!」
「去らばだ名も知らぬ少年よ」
~レミリア、幽香side~
「彼処が秘境よレミリア!」
「春…頼む無事でいて!」
レミリアと幽香の二人は迫り来る死神を蹴散らしながら北の秘境へと向かっていた。そして二人が秘境へとつく頃、戦いは終焉を迎えていた
「えっ…」
「は、春…?」
二人の視界に映ったのは死神長の鎌が春の身体を真っ二つに切り裂いた姿だった。腹部を切られた春はそのまま地面に崩れ落ちる
「春っ!!!」
「幽香!春を頼む!」
レミリアは幽香に春を任せ、自身は死神長へと突進していった
「貴様ぁぁぁぁぁ!!!」
「レミリア・スカーレットか…部下たちに足止めさせたは「喋るな」!?」
レミリアは翼を大きく広げ死神長を睨み付ける。手には魔力を纏った槍を握っている
「目障りなんだ、今すぐ消え失せろ」
「何を言っ…ガハッ…」
死神長が言葉を発する前にレミリアの槍が心臓を貫いた。死神長はその場で膝をつくがレミリアに顔面を捕まれ宙に浮く状態となる
「ぐっ、まだだ!」
レミリアの手を切り落とし後ろへと引き下がる
(ここは一旦引いて体制を建て直すべきか…)
「逃げれると思うな」
「ぐっ!」
レミリアは死神長の前へ一瞬で移動し、胸ぐらを掴み再び持ち上げた。先程切られた腕は綺麗に治っている
「やめろ!私を殺しても!運命は変えられんぞ!!」
「関係ない、散れ」
レミリアの手から放たれた高密度の魔力は容赦なく死神長を蹂躙し、そして跡形もなく消し飛ばした
「やったか…春!」
レミリアは春の元へと駆け寄った。幽香は止血処理を行っていたが春は既に満身創痍だ。レミリアは春のことをそっと抱き抱えた
「うぅ…」
「春?」
「レミリア…お嬢様…それに幽香さん?」
「良かった気がついたのね…」
「僕のリュックは?」
「しっかり持ってるわよ。ついでに死神も蹴散らしてきたわ」
「ありがとうございます。これでフランを助けられる」
「…ぐすっ」
「どうして泣いてるんですか幽香さん?」
「だって…貴方自分の状況分かってるの!?」
「へへ…知ってますよ」
「なら…何で笑っていられるのよ!?」
「だって僕のお陰でフランが助かるんですよ?嬉しいに決まってるじゃないですか」
「春…「ちょっといいか?」レミリア?」
「春…泣きたいなら泣けばいい。お前は咲夜と似て強情なところがあるからな。それでも泣きたいなら泣けばいいじゃないか。少なくとも…」
ずっと帽子で顔を隠していたレミリアはその帽子を脱ぎ捨て、春を見つめて言い放った
「少なくとも私達は悲しいから泣いているんだよ」
「お嬢様…やっぱり敵いませんね。そりゃ悲しいですよ。もっと生きたかったと言われたら生きたかったです」
「春…貴方を助ける方法は一つだけあるのよ。ただ…」
満月の今日、レミリアの能力を使えば春が死ぬ運命をねじ曲げることすら可能になる。だがその代償は大きい。使用すれば自分もしくは妹の命を削ることになるのは分かっていた。だがそれでもレミリアは悩んでいた。もし自分が犠牲になれば春は助かる。その方が妹のためになるのではないかと
「なに考えているんですかバカですか」
「え?ばれてた?」
「顔に出てましたよ。ったく…お嬢様は本当に優しいですね」
「春…私は貴方を「だからそれがバカなんですよお嬢様」春…」
「幻想郷に来て間もない僕に優しくしてくれた幽香さんや紅魔館の皆さん。常に笑顔が絶えなくて明るくて、そ…そんな…グズッ…皆さんと一緒に過ごせでっ!ぼ、僕は!」
泣きながらも春は必死に涙をぬぐい、そして笑顔で二人の方へ向いた
「僕は最っ高に幸せでした!」
「あはは…私達の負けのようね…わかったわ。後のことは任せなさい…」
「はい!じゃあ少し眠りますね。またいつかお伺いしますね」
「そのときは一人の男として見てやるわ」
「なんか照れますね。それでは」
春は目を瞑り、そして眠るように息を引き取った。春を抱き抱えるレミリアは何かを決心すると口を開いた
~紅魔館~
紅魔館が近づいてきたときレミリアは春の遺体を幽香に引き渡し、紅魔館の裏の森に行ってもらい自分は正門の方へ回った
「皆無事かな…あ、お嬢様お帰りなさい…ってどうしたんですかその血は!?」
「後で話す。これをフランに、すぐに回復するはずだ。フランが回復したら全員フランの部屋に集まるように伝えてきなさい」
レミリアはそれ以上話すことなく自分の部屋へと戻った。美鈴と咲夜は違和感を覚えながらもフランのもとへと急いだ
~二時間後~
「入るわよ」ガチャ
フランが回復したころレミリアは部屋に入ってきた。部屋には紅魔館の主要メンバーが集まっている。フランはベッドの上で座ったままだ
「お嬢様、妹様も無事回復しましたわ」
「あぁ…なら良かった」
「お姉様…」
「フラン、貴方に伝えなきゃいけないことがあるの」
「何?それよりも春はどこ?」
「春は…した…」
「え?」
「私が…春を殺したわ」
レミリアの一言で部屋の空気が凍りつく。それはあまりにも衝撃的で信じられない言葉だったからだ。だがその静寂はすぐに破られた
「お姉様…冗談だよね?春は出掛けてるだけだよね?」
「冗談じゃないわ。この服の血も春のものよ」
「ふ…ふざけないでよ…冗談でしょ?ほら冗談って言ってよ…早く…言えよ!レミリアァァ!!」
「妹様落ち着いて下さい!」
身体を起こしてレミリアに飛びかかろうとしたフランを美鈴と小悪魔が押さえつける。レミリアは無感情にフランのことを見つめていた
「離せお前ら!こいつをぶっ殺す!!」
「ダメです妹様!まだ完全に治ってません!」
「知るか!いいから離せェェェ!!!」
フランは力任せに魔力を放出するが身体が弱っているのとパチュリーの結界に拒まれてしまう
「うがぁぁぁぁ!!ゲホッ!ゲホッ!!」ビチャ
かなり無理をしたせいでフランは吐血してしまう。その様子をレミリアはただ見つめ、そして何も言わず部屋から出ていった。部屋の中にはフランの叫び声が響き渡っていた
~レミリアの部屋~
「…最低ね…私。でもこれで良かったのよ」
「何を独り言ぼやいてんのよ。らしくないわよレミィ」
「そうですよお嬢様」
レミリアが振り向くとそこにはパチュリーと咲夜の二人が立っていた
「レミィは嘘が下手よね」
「お嬢様が妹様に言ったとき…少なくとも私には何か隠しているように見えました」
「さぁ…真実を教えてもらおうかしらレミィ?」
「パチェ…咲夜…いいから出ていきなさい」
「嫌です!」
「…っ!?」
咲夜はレミリアの近くへと寄りじっと見つめた
「お嬢様が何かを隠しているのはわかるんです。それに私は真実が知りたい、あの子の末路が知りたいんです。だってあの子は」
咲夜は涙ぐみながらも言葉を発した
「私の大事な…弟ですから」
「咲夜…」
「感服ね。ここまで言われたら話すしかないわよレミリア」
外から話を聞いていたのか、咲夜が話終えたタイミングめレミリアの部屋に幽香が喋りながら入ってきた。既に仕事は終えたようだ
「私が代わりに話すわ。そのかわり、何があっても一切口外しないことを約束して」
「えぇ、誓うわ」
「私もです」
「レミリア、話していいわね?」
レミリアは黙って頷き幽香はそれをOKと捉えて話始めた
~三時間前、春没後~
「幽香。少しいいかしら?」
「どうしたの?」
「…私は自分が悔しいわ。あのとき春の意見を押しきれなかった自分が嫌になるわ。それでも残された私達にはフランを守る義務がある」
「それもそうね」
「もしあの子がこの事実を知ったらきっと暴走するわ。少なくとも自分のせいで春が死んだと思い込むでしょう。フランは優しすぎるから」
「…」
語るレミリアに幽香は何も答えない。幽香はレミリアが何を考えているか理解していた、そして敢えて止めなかった
「私の罪は春を助けれなかったこと。だから私はこの罪を背負うわ。今まで世話をかけたわね幽香」
「何を言ってるのよ。その話、私も乗らせてもらうわよ」
「幽香?」
「あのとき春に一人で行かせるように皆を説得したのは私なの。もし春を一人で行かせなければこのようなことにならなかった。私の罪はそれよ。だから私も一緒に背負うわ」
「幽香…ごめん。ありがとう」
~紅魔館裏、広場~
事件の数日後、幽香は一人春の弔いを行っていた。春の墓の前には大量の金盞花が手向けられ、周りには花が植えられている
「あのあと調べたわ。金盞花の花言葉…確かに辛いものね」
幽香は懐から手帳を取りだし、握りしめながら祈りを捧げた
「この手帳は咲夜に渡しておくわ。貴方の形見だものね、彼女なら任せられるわ」
幽香は溢れでる涙を拭い、手帳を懐にしまい墓を後にした。金盞花は美しく、周りの花は凛々と咲き誇っていた
今回で過去編は終わりです。本当はもう少し臨場感のある文章を書きたかったんですが下手くそですね私
さてさて、次回から本編に戻りますよ。果たしてどうなることやら
次回、やっと主人公できる
次回もゆっくりしていってね