光陰矢の如し。
「Yggdrasil」初プレイから12年の時が過ぎ、DMMO-RPG「Yggdrasil」の運営から遂にサービス終了のお知らせが届く。
2138年9月の出来事だった……
残り3カ月間ずっとナザリックで一人になっているモモンガさんの元へ遊びに行った。
ギルドメンバーのリアルでの仕事が更に増えて、とてもゲームに手をつけられない為に、ログインが全く出来ないのだそうだ。
「モモンガさ〜ん、居ますか〜?」
「今日もわざわざ来てくれてありがとうございます。シャボンさん。今日も一緒にレイドへ行きますか」
「よーし、向かうか〜」
モモンガさんと共に、ギルド維持費を稼ぐ為にレイドへ行く。
原作だとモモンガさんは雑魚をコツコツと狩って維持費を稼いでいたみたいだったけれど、僕がいる事で少しでも楽になって欲しいなぁ。
「そういえば今日はティルルを連れていますね。ギルドの防衛は大丈夫なんですか?」
「ぶっちゃけ、サンズ倒せるやついないから安心かなぁ〜と」
「む、そういう考え方もあるのか……」
「モモンガさんもlv100NPCを誰か連れて行ったらどうですか? 第八階層のあれらを倒せるやつなんて、そうそう来ないから」
「それもそうですが……」
「大丈夫ですって! ほら、タンクのアルベドを連れて行きましょうよ」
「うーん……そうしましょうか。少し待っていて下さい」
しばらく待つと、アルベドを連れたモモンガさんが帰ってきた。
ちなみに、アルベドはフル装備である。
「ここの第十階層にたどり着いた猛者は結局いなかったそうですからね。出番を与えないと」
「タブラさんに怒られる〜」
今日戦うレイドボスは、
元ネタはギリシャ神話だったような気がするけどまぁいっか。
「もうすぐ着きますよ」
前方には巨大な岩山が聳え立つ。
その粗々しい岩肌の一部に巨大な洞穴がポッカリ空いており、内部は深い闇で覆われている。やがてその闇ら大きな陰が這い出て来た。
「それじゃ、いっちょやりますか! 『
「『
一つ目の巨人王が、仲間の
それと同時に召喚された巨人達が一斉にこちらに向かう。
先ず一つ目の巨人王の攻撃をアルベドが受け止めている隙に、ティルルが召喚された巨人達を抑える。
モモンガさんは後ろに下がり、第十位階魔法「
僕は一つ目の巨人王の頭上へ
「ここだ! 『
モモンガさんの魔法を両手で防ごうとして、一つ目の巨人王が頸を曝け出した瞬間、僕はスキルを使用した。
ザンッッッッッ!!!!
「直撃! HPがごっそり削れました!」
「『竜爪』、追撃しっかり!」
「
「『聖撃』、駄目か。防がれた」
モモンガさんの魔法で朦朧状態となったところを狙ったが、間一髪の所で防がれた。
一つ目の巨人王はアルベドをノックバックすると、天に向かって雄叫びを上げる。
ゥゴオオオオ!
ズズズ
「2度目の眷属召喚です! モモンガさん、頼みますよ」
「
一つ目の巨人王と僕たち以外が消える。
「ティルル、『アストラル体になり、あの巨人をスキルで攻撃せよ』!」
「『
ティルルが持つスキルを使用し、聖属性付与の白い矛が一直線に巨人へと飛ぶ。MP消費による必中効果のおまけ付きだ。
ゴオオオオアア!
一つ目の巨人王はそれを片手で防ごうとして失敗し、矛は目に深々と突き刺さった。
「隙だらけだ。とどめの『
再び今度は真横から、巨人王の頸にスキルを叩き込む。
ゴオオォォォォォォ……ズゥーン
「HP0、私たちの勝利ですね!」
「そのようですね。獲得報酬は……金貨八千万枚と魔封じの水晶、あと何故かダグザの大釜ですね」
「金貨八千万か〜惜しい! 1億枚まであと少しじゃん!」
「高難易度でも所詮レイドですね」
ユグドラシル開始時は、高レベルプレイヤーが全くいなかったこととプレイヤーの意欲を沸かせる為に、レイド報酬がそれなりに高かった。
しかし、時が経つ程どんどんと高レベルプレイヤーやギルドが次第に増えていく。
高レベルプレイヤーがレイド報酬の高さを利用し、初心者プレイヤーとの開きが大きくなることを懸念した運営が、レイド報酬への調整を度々行った。
今では碌に金貨も貰えないレイドにしばしば当たったり、レイドバトルは1日に1回と決まっており、それ以上はできない仕組みになったりしている。
「出し渋んじゃねぇよ! このクソ運営め!」
「全くです。このクソ運営め!」
「……ホントクソ運営でしたよ、今思えば」
「残り3ヶ月、ですか。最終日は何かご予定はありますか?」
「無いですね。丸一日休暇を取りますから」
「でしたら、ペロロンチーノさんの結婚式も最終日にしたら……ちょっとペロさんに確認を」
「もしかしたら拠点にいるかもしれません。一旦戻りましょう」
そう言って僕たちはナザリックに帰還する。
──────ー3ヶ月後────────
ナザリック地下大墳墓の入り口で1人佇む
「ペロロンチーノさん! アンタ式の直前にどこ行っているんですか! 戻って下さい!」
「いや、シャボンヌさんがまだ……」
「残り三時間後にはサービス終了ですけど?」
「分かりました〜待っててね〜〜! シャルティア〜〜!」
DMMO-RPG『Yggdrasil』。
2126年に発売され、当初はその広大でリアリティ溢れる仮想世界と、膨大な量の職業・種族・魔法・アイテム等データから、世間からの注目を集めた体験型RPG。
このゲームの掲げる理念は、「未知の発見への喜び」をプレイヤーに享受してもらうこと。
情報を己で取得し、色々な事に挑戦して欲しいという想いが根底にある。
その為、新たに登場するモンスターや、アップデートの通知以外、製作社からこれといった告知など来なかったことから、一部のプレイヤーが
「マジでクソ運営だな!」
というようなコメントをする程謎に包まれたゲームだった。
謎を自分の力で解き明かしていき、その過程でどんどん強くなるというゲーム性が話題となり、数あるDMMO-RPGの中でも一番の人気を誇った。
そんな『Yggdrasil』も、今日をもって12年の歴史を終える。
プレイヤー達は各々、ゲーム内での思い出を振り返る者、最後だからと色々な所を見て回る者、今までに手に入れた宝物達を眺めて過ごす者、馬鹿騒ぎする者や悲しみに暮れる者など、皆思い思いの「最終日」を送っている。
そんな中、この男「モモンガ」は、最高の「最終日」を向かえていた。
「モモンガさん! 俺感激です! シャルティアが、シャルティアがウェディングドレス着ている!」
「シャボンさんが作成してくれたやつですね」
「あれ? ウェディングドレスは事前に貰った筈では?」
「今日まで敢えてシャルティアに着せていなかったんですよ。今日着させてみたら可愛いすぎて悶えましたね。良いものを見させて貰った……」
「それにしてもどうしてシャボンさん来ないんでしょうか?」
「……遮られた。多分会社が遅れたとか?」
「少し心配ですね」
「ヤッホーペロさん! 建やんと遊びに来たぜ〜。マジでNPCと結婚すんのか」
「我、汝に問う。汝は汝の見定めた女子を、一生を尽くして守り通せるか?」
「弍式さん、建御雷さん」
「おっお久〜弍式さん〜、建御雷さん、護りますよ、シャルティアを。例えこの身が滅びようとも〜!」
「引いた」「同意」「同感」
「酷い!」
「さて、主役のペロロンチーノさんは壇上に」
「ほーい!」
「全ナザリックのNPCに招集かけて……これで準備完了です」
「シャルティアへのプログラミングも終わりました〜」
「ヘロヘロさんありがとうございます!」
「ハハ、まさかゲームでもプログラミングとは……プログラミングから俺は一生離れられないのか〜ヘナヘナ」
「ちょっ! 大丈夫ですかヘロヘロさん、そこに座って休んでいて下さい、あとは私達で何とかしますから!」
「ヘロヘロさん、何というか、うん、エナジードリンクで新たに旨いやつが出ましたよ」
「普通そこは『休んだ方が良いです』でしょうに……」
「まもなく始まりますよ。ほら! 席に着いて下さい」
予定時刻の22:30となり、ペロロンチーノさんとシャルティアの結婚式が始まる。
披露宴開宴の合図で、来宴者が一斉に拍手を鳴らす。
テンパランスさんの作った「エーリッヒ擦弦楽団」がYggdrasilのオープニングテーマを演奏し、それと同時に玉座の間の扉が開け放たれる。
鳴り響く拍手喝采の音を背後に、二人の男女が互いに腕組みながら中央の赤い絨毯を歩いていく。
二人はそのまま壇上へと登り、玉座の前にある豪華な二席へと其々座る。
「え〜本日はお忙しい中ご来賓頂き、誠にありがとうございます。今回の結婚式に置いて、司会を努めさせて貰います、モモンガです。ただいまより、ペロロンチーノさんとシャルティアさんの披露宴を開宴いたします。ではまず、新郎新婦紹介を行いたいと……」
《シャボンヌサイド》
「転移後に拠点隠蔽できるように……ツヴェークがウザいからな。ギルド武器の腕輪だけ持って……さて、そろそろ行きますか」
僕は拠点ごとヘルヘイムのグレンデラ沼地に転移する準備を完了した。
大分前になるが、僕はワールドアイテム《五行相克》により、1日一回の回数制限、全てのMP消費と引き換えに拠点丸ごと好きな場所へ転移することが可能な魔法『
今、その『
「今行きますよ、少し待っていて下さい。『
次の瞬間、防壁都市ホーンバーグを眩い光が覆う。23:48 ミズガルズより防壁都市ホーンバーグが消滅。
代わりにヘルヘイムのグレンデラ沼地奥地に防壁都市ホーンバーグが出現する。
ホーンバーグ最上階に居たシャボンヌは、屋上からとても巨大な沼地を視認。同時に転移成功を確認する。
「よし、着いた。大分遅れちゃったな……すまない! ペロロンチーノさん、モモンガさん!」
そう言いながら右手親指に嵌めている指輪《リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》を作動させる。
披露宴が終盤に差し掛かる。誓いのキス以外は一通り終わり、あとはペロロンチーノの一世一代の挑戦(笑)のみ。
ペロロンチーノさんは
「どうせ最後なんだし、シャルティアに18禁行為したい! 垢バンされても痛くも痒くもねぇから!」
と言い、敢えて誓いのキスを最後の最後に持ってきていた。
少女の唇を奪う変態男……
お巡りさん、コイツです。
わざわざ《
「すいません……もう俺ダメみたいです……zZZ」
「ヘロヘロさんが寝落ちしてしまいましたよ。そろそろ頃合いですかね。私はお暇します。流石に俺も眠くなってしまいました」
「え〜建やん、最後なんだし残ったら?」
「すまない、明後日までに作らないと行けないものがあってな……」
「そっかー、なら俺も帰ろうかな。流石に会社遅刻したら怒られちまう」
「モモンガさんはどうされます?」
「せっかくなので、最後までここに残ろうかと思います」
「そうですか。またいつか会いましょう。その時は、ペロロンチーノさんがちゃんと男見せたか教えて下さいね。では!」
「それじゃあモモンガさん、また会いましょうね!」
そう言いながら、弍式さんと建御雷さんはログアウトしていった。
「いつかまた、会いましょうね……か……」
「モモンガさん、残り3分を切りました。そろそ「私が来た!」……シャボンさん?!」
「シャボンさん! 遅かったですね、何かあったんですか?」
「会社が今日に限って無理難題吹っかけてきやがったんですよ!」
↑実際には会社の相続権を有能な部下に託したり、全財産をユグドラシル金貨に変えたりしてたんだよね〜
「そうだったんですか、災難でしたね」とモモンガさん。
「ほんと碌でもない、これだから上司は!」とペロロンチーノさん。
「ちなみにギルド拠点ごと此方に来ましたので」
「えっ?! どうやって? てか何してくれちゃってんのアンタ!」
「最後だし、別に良いかな〜と」
「えっ、てことは……」
「ホーンバーグが沼地の一部と入れ替わりましたね」
「やっぱやることが一々ぶっ飛んでいやがる……」
「あっそれとモモンガさん、一つ宣言しても良いですか?」
「良いですよ(?)」
一拍置いて、高らかにこう宣言する。
「我ら『七つの竜星』は、これまで『アインズ・ウール・ゴウン』とあくまで同盟関係だった。しかし、この時をもって、私は『アインズ・ウール・ゴウン』に忠誠を誓う!」
『ちょっと! 何言って……』
『何って、ウチらが貴方方の傘下に下るって言う意味ですよ』
『いや、古参プレイヤーのシャボンさんが部下とか、やめてくださいよ! せめて私達と同じ立場でないと……』
『分かりましたよ。それじゃあそういうことにして下さい』
「我が世界、ヘルヘイムとは別の世界の長であり、我が盟友よ。相も変わらず面白い冗談を言うな。其方は我等が仲間として、同じ円卓を囲もうではないか!」
「つまりは、我らは対等な立場と?」
「その通り! 皆に告げる、我が盟友シャボンヌは我等と同格の存在。敬い、讃えるのだ!」
『ちょっと、やり過ぎでは?』
『遅刻した罰と心臓に悪いことを言った罰です』
『いや、会社が……』
『言い訳は無用ですよ』
『手厳しい……』
「ちょっと〜俺は?」
「本当にすんません! 提案しておきながら遅れてしまって……」
「大丈夫大丈夫。それより、俺の勇姿を見届けてくれ。今からシャルティアとのファーストキスだ!」
「ペロさん、カウント取りますね」
「いや突っ込めよ! ペロロンチーノさんの台詞何処もかしこも突っ込み所満載だったじゃん!」
「なるべく遅めでキスして、ギリギリを攻めましょう。残り20秒〜19、18、17、16、15……」
「14、13、12、11、10」
「9、8、7、6、5、4、3、2、1今!」
ー0:00:00:00ー
チュッ
01、02、03…
『『『……あれ?』』』