1.異世界転移
『『『……あれ?』』』
『ちょっとこれどういうことですか? 強制ログアウトが来ませんよ!』
『僕もです!』
『クソ運営! 最後ぐらいしっかり締めろよ!』
『……しゃるてぃあのくちびるあまい』
『ぺ、ペロロンチーノさん?! それに今なんて?』
どうやら僕達はちゃんと異世界転移することができたようだ。
モモンガさん達には転生者であることがバレないよう、一緒になって慌てるフリをする。
しばらくして、モモンガさんが混乱のあまり、奇妙なダンスを踊り始める。
すると、真横から声が掛けられた。
「如何なさいましたでしょうか? モモンガ様、シャボンヌ様。」
「えっ……」
咄嗟に声の主を探すモモンガさん。
そちらを見れば、席に座っていた筈のアルベドがおずおずと席を立ち、こちらに顔を向けていた。
『……ゑ? NPCが喋って……ペロロンチーノさんがナチュラルに18禁行為をしているー!』
ペロロンチーノさんを見れば、シャルティアと熱烈なキスをしていた。
モモンガさんは咄嗟に両手で顔を覆い隠してそっぽを向く。
どこの乙女だよ!
よくよく見ると、シャルティアが頬を紅潮させながら喘い……これ以上は流石に恥ずかしいので見なかった。
童貞には荷が重い。
『というか、玉座の間一体が騒がしくなっていません?』
僕は気づいていた。
『……あれ?』の後辺りからずっと周囲から明らかにモモンガさん達とは別の声が聞こえてきていた事を。
「流石は至高なる御方々、いずれ来たるお世継ぎ問題まで解決してしまわれるとは……!」
「オオ、ナンタルスバラシキ光景! 後継ハ我、コキュートス二オマカセクダサイ、ペロロンチーノサマァ──!!」
「お、お姉ちゃん! へ、ヘロヘロ様が……!」
「溶けていらっしゃる?! へ、ヘロヘロ様〜大丈夫ですか〜?」
「ソリュシャンです……お願いですから、目をお開け下さい、ヘロヘロ様!」
「ソーちゃん……。」
そう、集められた全NPC達が、動き始めたのだった。
皆、其々まるで命があるかのように。
『え、NPC達が生きているかのように動き出しているのですが……』
『そうですね。……ひとまず、ペロロンチーノさんとシャルティアの披露宴を終宴させた方が良いかと。』
『シャルティア……もう、ゴールしても良いよね?』
『ペロロンチーノさんは置いておいて、そうしましょうか』
『頼みます。念のため魔王ロールで。』
『了解です。』
「皆、静粛に。」
シーン
モモンガさんの一声で辺りが静まり返る。
「これをもって、同志ペロロンチーノとシャルティアの婚姻の契りは結ばれた。皆、新たなる一組の誕生を祝福せよ!」
ワァァァァ!
「ペロロンチーノ様ぁん! 今日で妾はペロロンチーノ様と結ばれるのですね!」
『待って待って、気持ちの整理だけは……』
『良かったですね、ペロロンチーノさん。』
『良かったですー』
『ちょっと?! 俺』
『あとはお二人でどうぞごゆっくり(笑)』
『待っ待って……』
「シャルティアよ……」
「なんでありんしょう? モモンガ様?」
「ペロロンチーノさんとは、ドレスはちゃんと脱いでからやりなさい。」
「! ……分かりんした。モモンガ様のご命令なら今ここで!」
「部屋でやりなさい!」
「ここを汚すのは流石に許容出来んぞ。」
「畏まりんした。では、ペロロンチーノ様。少々失礼するでありんす!」
そう言ってシャルティアはペロロンチーノの腕を掴み、そのまま腕を組む姿勢で互いに身体を寄せ合いながら退場していく。
『モモンガさぁ〜ん、後で覚えていろ〜。絶対この恩は忘れません!』
そう言い残して、ペロロンチーノさんはシャルティアを伴って【玉座の間】を退出する。
『この後、どうしますか?』
『……まだNPC達が味方かどうか分かりません。まずは守護者達だけでも集めて真意を聞き出したかったのですが……ペロロンチーノォ〜(泣)』
『私も、自分の作ったNPC達に確認を取らないと〜』
『一旦、第六階層の【
『了解しました。』
「ではモモンガよ。私は一旦拠点に戻る。あとでまた落ち合おう。」
「あぁ。そちらにも何か異常がないか心配だからな。」
そう言って僕は《リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》を使おうとしたその時、誰かから『
『シャボンヌ様。申せられた通りに《隠蔽されし者の書》と《エンチャンター》を稼働させました。』
あ、そういえば拠点隠蔽のことすっかり忘れてたわ。
出発前の僕はティルルに予め二つのワールドアイテムを起動させるよう命じていた。
理由はツヴェーク達の侵入を警戒したものだったのだが……
『……ナイスタイミングだティルル。お前の働きはいつも優秀だな。それとあと一つ伝えておきたいことがあってだな……』
『は、何なりと。』
『これはホーンバーグ内にいる全員に言って欲しいことなのだが、我々はアインズ・ウール・ゴウンと合併することになった。至急全部下をホーンバーグ正門前に集めて欲しい。』
『! ……畏まりました。そのように伝えておきます。』
『あぁ、頼む。』
『失礼ながらシャボンヌ様、なぜこのたびはアインズ・ウール・ゴウンの方々と御身が一つになったのでしょうか?』
『その理由はこの後行う。とにかく正門前に全員集合だ。これよりナザリックへ向かう。』
『承知しました。直ちに行動を開始します。』
「シャボンヌ、何かあったのか?」
「モモンガ、私は予め部下に拠点隠蔽をさせて置いた事を伝えそびれていたな。これで絶対に我らを他者が見つけることは不可能だろう。これより私は部下達を連れて戻る。」
「……ありがとう、盟友よ」
「そちらこそだ。それでは失礼。」
そう言って僕は【玉座の間】を後にする
シャボンヌさんが転移した後、俺は即座にNPC達に指示を出す。
「まず、安心して欲しい。ヘロヘロさんはここに来る前に
「発言をお許しください、モモンガ様。無礼を承知でお伺いします。そのある事情とは一体何でしょうか? この卑小なる我々に、是非お教えいただけないでしょうか?」
そりゃこんな言い回しすれば、流石に気になるよな〜。
「デミウルゴス、モモンガ様に質問など……」
ちょっとアルベド?! 落ち着こうな!
「よせ、アルベドよ」
「はい、申し訳ありません!」
ふぅ。危うくウルベルトさんの息子が、タブラさんの娘に殺されるところだった。
「デミウルゴスよ。この
「な、なんと……」
返事をしようと口を開こうとした時、目の前でナザリック最高峰の知恵者がいきなり焼き土下座した。
「申し訳ありません! この偉大なるナザリックの防衛責任者をお任せしてもらっておきながら、非常事態が起きていたことに気づけなかった罪! どうか、この命をもって償いを……」
「落ち着け! 落ち着くのだ、デミウルゴス!」
本当に切腹しかねない勢いで頭を地面に叩きつけ、床に頭を擦り続ける悪魔を咄嗟に止める。
「このナザリック最高峰の知恵者であるお前を、そんなつまらない理由で失いたくはない。そして、何よりお前たちは、我らの愛する子供達なのだ。どうこうするつもりなどある訳なかろう?」
「……」
「お、お前た……」
「モモンガ様ぁぁああ──ー!!!」
全NPC達が顔に嬉しさやら涙やら鼻水やらを浮かべ、モモンガに迫る。
「ちょっと? 落ち着けお前達! 落ち着こう、な? な? ちょっと──!」
────ー
〜10分後〜
「守護者以外の全ての者に命ずる。各員、通常業務に戻れ。領域守護者に命ずる。このナザリックの警戒レベルを一段階上げる。守護者以外の者を率いて各自警備に当たれ」
「畏まりました!」
「それと、セバスと階層守護者達は全員ここに残れ。アウラ! マーレ!」
「はい! モモンガ様、何なりとお申し付けを!」
「は、はい! モ、モモンガ様!」
「今から先に【
「(か、)畏まりました!」
「それと、階層守護者達には、それぞれこれを渡しておこう。」
「こ、これは! 至高の御方々のみが所有を許されるという……」
「そう、《リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン》だ。予めお前たちに託す。お前たちに必要だと思うからな。」
「ありがたき幸せ……!」
「あと、セバス。お前に残って貰った訳だが、ナザリックからだいたい半径1km周辺の地理を確認してきて欲しい。お前にもこの指輪を渡しておこう。」
「畏まりました。このセバス・チャン、しっかりとご命令を果たして見せましょう。」
「頼んだぞ。なるべく急ぎ目でな」
「ははぁ!」
「では、各自行動を開始せよ。」
「「「「「は!」」」」」
こうして、各NPCはそれぞれ任ぜられた任務をこなす為に行動を始める。
こうして、【玉座の間】にはモモンガ1人となった。
(は〜緊張したわ〜。いや何あの目! あたかも俺を神を見るような目で見てくる)実際は神どころではないですよ!
(それにしても、一体どうしてこうなった?)全くその通りである。
「ヘロヘロさーん? 起きて下さいー、もう朝ですよー」
「え! 朝! どどどどうしよう! 上司に叱ら……あれ? モモンガさんじゃあないですか。あれ? あ、途中から寝ちゃったんだった。あれ? そうなるともうサーバーダウンした後? じゃあ目の前のモモンガさんは? サーバーダウン前でも周りにペロロンチーノさんがいるはずだし……」
「え〜っと、ヘロヘロさん、落ち着いてください。実はですね……」
────
「え! ってことは俺向こうで仕事しなくて済む? ィヨッシャ────!! ラッキィー!!」
「まず最初に心配するとこそこかい! この世界が何なのかも碌に分かっていないんですよ?」
「分かっています。まず最初はNPC達ですね。ある事情ってどう説明すれば……」
「そういえばヘロヘロさん、もう眠くないのですか?」」
「いや、全く……おかしいですね。さっきまでものすごい眠気が襲っていたのに……」
「確か、
「多分それですね。ってことは、身体には種族特性が効くようになっているって言うことですかね?」
「肉体は完全に人間をやめてしまったのか……ということは精神も……?」
「でもあんま変わった気がしませんね〜」
「取り敢えずは第六階層へ向かいましょう。」
「そうですね。」
そう言って俺は、ヘロヘロさんと共に第六階層へと転移する。