ある転生者のオーバーロード   作:Solo Mon

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13.冒険者組合

「モモンよ。ここから先は街の検問所だ。武器を下ろせ。」

 

 

「はい! 分かりました、リューシさん!」

 

 

【城塞都市】エ・ランテル 周囲1km、

 三人の冒険者が姿を表す。

 1人は白と緑の全身鎧(フルフェイス)と腰から《ワールドチャンピオン・ミズガルズ》が特徴的な戦士、1人は黒色のローブに神器級(ゴッズ)の杖を持つ少年魔法詠唱者(マジックキャスター)、1人は艶やかな黒髪に整った端正な顔、抜群のスタイルの良さを持つ旅人姿の美女ウォー・ウィザード。

 シャボンヌ、アインズ、ナーベラルである。

 

 

「ナーベ、慎重にな。」

 

 

「畏まりました! リューシ様! この端小なる我が身を持ってしてでもリューシ様を……」

 

 

「ナーベ、今は私やモモンと対等な存在だぞ? 気軽に接してくれた方が気が楽だ。

 それに、街の人間達に変に思われたくはないぞ。」

 

 どうやら冒険者モードでは、シャボンヌはリューシと、アインズはモモンと、ナーベラルはナーベと各々が偽名を名乗るようにしているようだ。

 

 

「し、しかし……」

 

 

「さん付けでも良いから不自然の無いように」

 

 

「わ、分かりました……モモンさーーーー

 

 

 

『あちゃ〜、ナーベラル完全に畏っちゃってるよ……』

 

 

『やっぱユリにしておくべきでしたかね?』

 

 

『いや、ナーベラルは矯正すれば治ると思います。それと、ショタ魔導師役お疲れ様です。』

 

 

『……この姿で突き通すしかないのか……演技するのとても疲れるんですけど。』

 

 

『そこは頑張って下さい。おっと、検問所に着きますよ。』

 

 前方に見るからに強固そうな大門が聳え立つ。その横手の大きめの施設から、検問所に駐屯する王国兵が出て来る。

 

 

「はいそこで一旦止まってください。通行料か通行許可証を確認いたします。」

 

 

「通貨料の銅貨4枚だ。」

 

 

「確かに丁度いただきました。お通りください。」

 

 

「うむ。」

 

 スムーズに城塞都市エ・ランテルに入る。

 

 

「意外とあっさり検問所通れましたね。」

 

 

「こういう検問所で働く者達は皆、朝から晩までスパイの監視を行っているからな。

 見るからに腕利きの冒険者とかは隠密に長けてないだろうと踏んでいるんだ。

 だから、そういった者達はさっさと通って欲しいという魂胆なんだろう。」

 

 

「わ、わー! やっぱりリューシさんってすごーい!」

 全力ショタアピールするモモンことアインズさん。

 

 

「流石です。リューシさーーーー。」

 まだ冒険者ロールに慣れていなさそうなナーベことナーベラル。

 

 

「まずは街での情報収集だ。このエ・ランテルがどういった街か知りたいからな。」

 

 

「OKです。リューシさん。」

 

 

「了解です。リューシさーーーーん。」

 

 

「大分慣れてきたようだな、ナーベ。私は嬉しいぞー(棒)」

 

 

「なんと勿体なき御言葉……! このナーベラ……」

 

 

「ナーベ。今は冒険者ナーベであることを忘れるな。」

 

 

「……はっ! 畏ま……分かりました! リューシさーーん。」

 ナーベラルお供にするのやっぱ反対すべきだったな……

 

 まさかここまでポンコツ設定が反映されているとは……

 防御力ゼロ忍者(弍式炎雷)め! 

 

 

「では、またここで落ち合おう。」

 

 

「了解です。」

 

 

「分かりました。」

 

 当初の打ち合わせでは、

 アイテム収集をナーベラルが、

 エ・ランテルに潜む強者の調査をアインズさんが、

 そして僕がここリ・エスティーゼ王国の情報収集を担う予定だった。

 しかし、()()()()()()()()()()()の全貌を知っている僕は、アインズさんに強者の調査を僕へ委託して貰うよう持ちかけた。

 

(さーて、お目当ての()()は今どこにいるかな〜、まぁ、目星はもうついちゃってるんだよなぁ……)

 

 

 そう言って僕は、エ・ランテル内の()()()場所を街掲示板で確認する。

 

 

()()()は住居地域から離れた場所にあるからなぁ。きっと……おっとこれは典型的な墓石マーク!)

 

 

 掲示された案内地図にマークを見つけた。

 

 

(それじゃ、クレマンとカジッちゃんに会いに行くか。)

 

 そして、共同墓地の方向に走る。

 

 

 


 

 

《クレマンサイド》

 

 

「……追手はまだ来てないか……」

 

 

 風花聖典からの追手を警戒しつつも、エ・ランテル内のスラム地区を徘徊する。

 

 

「なんだぁ〜お前はぁ〜?? この辺りじゃぁ見ねぇ顔だなぁ?」

 

 

「そのフード上げな!」

 

 

「ん〜? じゃぁ魔法二重化(ツインマジック)人間種魅了(チャーム・パーソン)』!」

 

 絡んできたゴロツキ2人に洗脳魔法をかけるクレマンティーヌ。

 ゴロツキ達は瞬時に動きを止め、虚ろな目になりその場で棒立ちになる。

 

 

「あんたたちはどこのだーれ?」

 

 

「へへ、やだなぁ友達。俺のこと忘れたか? 俺だよマルクスだ。」

 

 

「おいおい、まさかこのダーダム様を忘れたか? スラムの王のよぉ」

 

 

「アハハ! 私としたことがついつい忘れちゃってね〜! ごめんねぇ〜〜? んーと、前どんな仕事についてたっけ?」

 

 

「ハハ、お前も人が悪いなぁ、あんなパワハラ冒険者パーティーのこと思い出させるなんてよぉ??」

 

 

「新入りへの試練にあったんだっけなぁ? お前も災難だったなぁ。」

 

 

「へへ、ほんとそうですよ。ボス」

 

 

「じゃ〜あ〜、この辺で〜変な噂とか聞いたことある〜?」

 

 

「いや、最近は戦士長の遠方派遣が終わったことぐらいしかねぇなぁ。」

 

 

「戦士長がこんな定期戦の直前に派遣されるのはどうも変でなぁ、公では帝国兵の村への襲撃を鎮圧する為だったらしいが……どうも戦士長がスレイン法国の特殊部隊とやらを捕虜として連れていたらしいんだよなぁ。」

 

 

「それって何聖典?」

 

 

「あぁそうだ何ちゃら聖典だな、そいつらの呼び名。確かよーこ聖典だったな。」

 

 

「ようよう聖典じゃなくて?」

 

 

「あーだいたい把握したから、あんたらもう用済みねぇ〜??」

 

 

「え? 用済みってどういうーーーーーー」

 言い切る前に脳天に風穴を開けられるゴロツキM

 

 

「な?! お、おい、お前ら友達じゃぁなかったのか?」

 

 

「ごめんねぇ〜? 私、最初(ハナ)からあんたらとは友達じゃないからっ!!」

 ドシュ‼︎

 

 容赦の無い刺突攻撃がゴロツキDの顎を襲う。

 痛烈な痛みが顔全体に染み渡る。

 

「ギィやぁぁアァァぁぁグァあ!!!!!」

 

「もっと良い悲鳴を聞かせてねぇ〜???」

 

 絶え間の無い痛みがゴロツキDを襲う。

 クレマンティーヌはゴロツキDの腕、足、五指、そして腹に小さめの穴を開けていく。

 やがて、ゴロツキDは全身を蜂の巣にされて絶命した。

 

 

「あはは!! やっぱやめらんねぇわぁ〜この感覚!!」

 

 

 顔から溢れんばかりの狂気を曝け出し、凶悪な高笑いをするクレマンティーヌ。

 しばらく経ってから顔をいつもの三日月ニンマリ顔に戻す。

 

 

「さぁ〜〜て、カジッちゃんの所に行くしよっか〜。」

 

 

 ゴロツキ達の死体を脇に置き、周りに誰もいないことを確認する。

 ローブのフードを再度被り直し、血に濡れたスティレットを丁寧に拭き、懐にしまう。

 

 血のように赤い夕日を背に、クレマンティーヌはエ・ランテルの闇へと歩を進めていった。

 

 


 

 

《シャボンヌサイド》

 

 

(あれ? 記憶違いだったか? 

 なんでクレマンとカジッちゃんいないのーー!!??)

 

 墓地に不法侵入して、墓地に隠された地下神殿らしき所に来たのだが、一向にお目当ての2人組がやってこない。

 待ち合わせ時刻まで後1時間しかないっていうのに〜!! 

 

 

(ヤバい……クレマンさんとカジッちゃん気になって強者の確認していない!! そんな奴クレマンティーヌとカジット以外にそもそもここに居ないことに賭けるしかねぇ!)

 

 

 クレマンさんとカジッちゃんがこのまま来なかったら、偽の情報をアインズさんに届けるしかない! 

 原作知識を持っていることが下手したらバレかねない……

 

 早く来て! クレマンティーヌ様! カジッちゃん! 

 

 

「周りには誰もいないな?」

 

 

 墓地神殿前にいきなり現れやがった! 

次元の移動(ディメンジョナル・ムーブ)』か? 

 

 

「はい、そのようでございます。カジット様。」

 

 

 カジッちゃんだよ! 生カジ! 

 あの中央でフードを下ろしてご立派なハゲ頭を晒している奴だな! 

 

 

「ふむ、あの女はまだ来てないようだな。まぁ良い。先に神殿内で死の螺旋の準備を開始せよ。」

 

 

「「は!」」

 

 

 見るからに怪しいフード集団が墓地神殿内に入っていく。

 

(良かった〜これで首の皮一枚繋がったよ。)

 

 

 墓石の影で『完全不可視(パーフェクト・インヴィジヴィリティ)』を使用しながら安堵するシャボンヌ。

 

 

(アインズさんには、怪しい輩が墓地に入っていくのを見たと報告するか。)

 

 

 墓石から立ち上がり、カジット達に気づかれぬよう慎重に移動する。

 完全にカジット達が神殿内に隠れ切ったと判断した後、すぐに墓地の柵の方まで走り去る。

 

 


 

 

《アインズサイド》

 

「はぁ……」

 

(やっぱこの姿本当に疲れるよ……シャボンさんめ!)

 

 

 エ・ランテル広場にて、様々な人々にリ・エスティーゼ王国についての情報を聞き回り疲れたモモンことアインズ。

 

 

「ミスリル級冒険者のイグヴァルジさんだ!」

 

 

「クラルグラの旦那、この串カツでも食ってかねぇかい?」

 

 

 しばらく広場のベンチに腰掛けていたら、イグヴァルジと呼ばれる男が広場にやってきたようだ。

 外見は屈強な戦士であり、装備品もこの辺にしては性能が高い方だ。

 エ・ランテル内の実力者と見て良いだろう。

 

 

「じゃあ三本貰うぜ、おっちゃん。」

 

 

「へーい、一と半銅貨だ。まいどありぃ!」

 

 

「やっぱここの串カツうめぇな!」

 

 

「もっと食ってくかい?」

 

 

「いや〜今日は遠慮しとく。」

 

 

「そうかい、またご贔屓にな。」

 

 

「ああ、また来るぜ。」

 

 

 イグヴァルジは何処か別の場所に行ってしまった。

 

 

(イグヴァルジ……この辺では強者に入る者だな。取り敢えず覚えておこう。)

 

 

 そう思いつつ、モモンは屋台に向かう。

 

 

「ん? ボウズも串カツ食べるかい?」

 

 

「遠くから見て美味しそうだったので、半銅貨です。」

 

 

「ほーい頂戴するぜ。冷めねぇうちにな。」

 

 

「ありがとうございます。あっ、それとさっきのイグヴァルジさんってどういう人なんですか?」

 

 

「アイツはミスリル級冒険者っていう、この辺だとトップの階級の冒険者だ。俺の見込みではなぁ、アイツは英雄になる男だな。」

 

 

「英雄に……」

 

 

「そう、アイツは英雄になる為には努力を惜しまない男だ。

 実力はチームメンバー含めてそこらのミスリル級よりも強い。この街に来たのも英雄になりてぇからだとよ。

 ボウズも英雄になりたいのか?」

 

 

「うん!」

 

 

「ハッハッハッ、人一倍の努力をすれば誰でも成れると俺は思うぜ? 

 まぁ、ボウズは優しい奴だからな、きっと良い英雄に成れるさ。」

 

 

「ありがとうおっちゃん!」

 

 

「また来いよな〜」

 

 

(ミスリル級がどれくらいの強さか……この都市では、高位冒険者は国の高官とかと同じ、憧れの存在の一つらしい。高位冒険者達の力量を計る手立てを考えないと……)

 

 人混みを避けながら、モモンは思考を巡らせる。

 ふと街の時計台を見ると、時刻は待ち合わせ時刻の30分前になっていた。

 

(そろそろ待ち合わせ場所に向かうとするか。)

 

 

 ドンッ

「わわっ」

 

 考え過ぎで前方が疎かになっていた。フード姿の人とぶつかってしまったモモン。

 

「ん〜? 大丈夫、ボク?」

 

 

「すいません、ぶつかってしまって……」

 

 立ち上がり、今ぶつかった人を視認するモモン。

 フードからは金髪が覗いているが、顔は陰りが差してよく分からない。

 声質から女性ということは分かったが……

 

 

「いんや〜こちらこそごめんねぇ〜? お姉さん急いでたもんでね〜。」

 

 

 フード姿の女性? はこちらに片手を振ると、そそくさと何処かへ行ってしまった。

 

 

(この姿になってから色々と不便だ……あ〜もう! シャボンさん何故にこの姿に……)

 

 

 小柄な身体にまだ慣れないせいか、色々な人とぶつかりまくっている今日この頃のモモン。

 

 

(まあ? 美味しい物食べれるし? しっかりと寝ることも出来るようになったし? 悪いことばかりではない。しかし! この姿だと()()を思い出しちゃうんだよ〜!!!)

 

 

 頭の中で、鏡の前でドイツ語言いながらカッコつけてた記憶が蘇る。

 

 モモンは人知れず心の中で悶絶する。

 

 

(いかんいかん! ちゃんと待ち合わせ時刻は守らないと!)

 

 

 サラリーマンの交渉術の基本である待ち合わせ時刻の厳守を徹底する辺り、リアルでの鈴木悟の働きぶりが容易に想像できる。

 

 モモンは待ち合わせ場所の広場へと向かう。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 広場で合流し、冒険者組合へと向かう三人。

 リューシとモモンは伝言(メッセージ)での密話をしていた。

 

 

『この街での強者は、ミスリル級冒険者チーム「虹」、「クラルグラ」、「天狼」の三つですね。』

(原作知識使うしかねぇ!)

 

 

『ふむ、「クラルグラ」のイグヴァルジという男を見ましたが、私達からすれば取るに足らない者でした。』

 

 

『ほうほう、それは良い情報ですねー。後、共同墓地内の隠れ神殿に怪しげなフード姿の集団が入っていくのを見ました。強さは私達と比べると雑魚ですが、奴等から多くの負のエネルギーを感じたので、一応の警戒が必要かと。』

 

 

『なら、ナザリックから《影の悪魔(シャドウ・デーモン)》を派遣して様子見しましょうか。』

 

 

『|影の悪魔でも3匹居れば十分対処可能かと。良いと思います。』

 

 

『王国のアダマンタイト級の青の薔薇についても気になります。影の悪魔(シャドウ・デーモン)達にはこれからもっと働くことになるかと。』

 

 

『このままだとブラックですね。週休制を導入したらどうですか?』

 

 

『私もそれを考えていた所でして。』

 

 

『まぁおいおい考えて置きますか。これ渡しときますね。』

 

 アイテムボックス内からメガネを取り出す。

 

 

『何ですかそれ?』

 

 

『これは《物知りメガネ》というガチャの外れアイテムで、効果は全ての文字が判読可能になる(笑)ってやつです。外人ユーザーには受けましたけどね。』

 

 

『ピンポイントなアイテムを……運営、異世界に転位すること知ってたのか?』

 

 

『かもしれません。ないと思うけど。』

 

 

 密談している内に、先程の地図に載っていた冒険者組合を示すと思われる紋章が塗装されている看板を見つける。

 カルネ村の村民や捕虜達からの情報からも確証が持てる。

 一行はその看板が掲げられている建物の扉を開ける。

 組合の中は手入れが行き届いており、中には多くの冒険者がいた。

 その誰もがこちらに視線を向ける。

 そりゃそうだ。

 女子供を連れた鎧丈夫が乗り込んできたら誰もが注目するよなぁ。

 そう思いつつ、建物奥のカウンターまで行き、受付嬢にこう告げた。

 

 

「今よろしいかな? 冒険者登録をしに来た者だ。私を含めた3人を冒険者として登録したい。後手頃な宿屋を紹介してもらってもよろしいか?」

 

 

 

 

 

 

 

「冒険者登録した後は宿屋の確保だ。ナーベ、モモン、行くぞ。」

 

「畏まり……」ナーベェ……

 

「ナーベ、畏まっちゃダメダメ!」モモン演技上手っ

 

「ア、じゃない! モ、モモンさーーーん、ごめんなさいっ」

 

 目を潤ませてナーベが謝る。ギャップ萌えやんめちゃ可愛い。弍式さんはこの光景が見たかったのかな? 

 

 

「まぁ、次からは従者口調をやめような?」

 

 

「はい!」

 ナーベは元気よく返事する。

 まぁ、またしばらくはやるだろうけど。

 

 

 その内、歩いて行くと受付嬢が示した絵と同じ印が付いた看板を視認する。

 目的の宿屋だと判断し、戸を開く。

 

 

(うわっ汚ったな。)

 

 

 金曜夜の繁華街並みに汚れている宿屋。

 床にある食べカスやら酒を溢して出来たと思われる染みやらが独特の異臭を放っている、クセェ。

 部屋の天井には蜘蛛の巣張ってるし、ゴツいオッサンしかいないし……

 これ程酷いとは……ナーベなんか今にもこの宿屋破壊せんとしていることが目からありありと分かる。

 

 

『汚すぎ』

 

『それな』

 

 

 店内にいる客の殆どがこちらを観察している。

 

 一部のオッサンは力量を計ろうとこっちの装備とか体格とかを見ているけど、殆どはナーベやらモモンに下賤な目を向けている。

 それらを極力努めて無視して、奥のカウンターにいる店主らしき剃り上げおじさんに向かう。

 

 

「一泊取りたいのだが、よろしいか?」

 

 

 おじさんはこちらを見てこう言葉を零す。

 

 

「あぁ、構わない。お前さんらは銅級(カッパー)だな? なら、相部屋で良いな?」

 

 

「いや、3人部屋、無ければ4人部屋でお願いしたい。」

 

 

「……おい、俺が何故相部屋を勧めるか知っているか?」

 

 

「横の繋がりは不要、私達だけで十分だ。相部屋ではなく個室で頼む。」

 

 

「ほーう、中々の自信をお持ちで。1日八銅貨だ。」

 

 店主のおじさんに八銅貨丁度を無言で手渡す。

 

 

「丁度だな。ちょっと待ってな。」

 

 

 店主は一旦バックヤードに消える。

 しばらくしてから姿を見せ、鍵束をこちらに放って寄越してきた。

 

「それぞれ、部屋と荷物入れの鍵だ。無くすと罰金貰うかんな。部屋はそこの階段を上がって真っ直ぐ行った突き当たりをすぐ左だ。」

 

 

「感謝する。」

 

 

 そう言って階段に向かおうとすると、席に座っていたオッサンが進路を塞ぐように足を寄越してくる。

 

『足で妨害しようとしてます。』

 

『アインズさん、分かってます。今対処しますんで。』

 

 

 オッサンに向かう。

「足を退けてもらっても?」

 

 

「あん? テメェ先輩への口の利き方がなってねぇなぁあ???」

 

 

「テメェの身体に叩き込んでやるよ! この兜野郎!」

 

 

 絵に描いたような小物で草w

 アニメでも書籍でも安定したやられ役だな。

 

 

「すまないが、ザコに構っている暇はないんだ。」

 

「んだと?!」

 いきり立つが、無視して続ける。

 

「これ以上絡むのなら……」

 包み隠さずありったけの殺気を2人のチンピラに向ける。

 

 

「君達が明日(あす)の日の目を見ることは決してない。」

 

 

 冷たい風がリューシの背後から吹き抜ける。

 殺気を当てられたチンピラ2人は漏らしながら瞬間的に土下座した。

 

「「ス、すすすすびばぜんでじだあ!」」

 

 

「では、通させて貰う。」

 チンピラは難なく撃退する。

 後ろから別の殺気が二つも飛んでいたから少し焦ったが、これで騒動を鎮圧しただ……

 

「おっきゃあーーーーーー!!!!」

 

 

 何だ何だ? 今度はぁ!? 

 声がした方を振り返れば、赤毛の女戦士が泣き叫んでいた。

 

「わ、私の倹約生活が……やっと買ったポーション……ぅ、うわぁぁあああああん!!!」

 

 

 何か可哀想に思った。

 元を辿ればチンピラのせいだが、ここは恩を売るチャンス。

 

 

「受け取れ。」

 

 

「……へっ?」

 

 

「《下級治癒薬(マイナー・ヒーリングポーション)》だ。モモンの作った物、効果については申し分ない。迷惑かけてすまなかった。」

 

 

「えっ……はえっ、あ、貴方はただ抵抗しただけで……あ、ありがとうございます!」

 

 

「うむ。名は?」

 

 

「わ、私の名前はブリタと申します!」

 

 

「分かった。覚えておこう。モモン、ナーベ、行くぞ。」

 

 

「分かりました〜」「はい。」

 

 階段を上がって真っ直ぐ行った突き当たりのすぐ左っと、ここか。

 宿屋の部屋に入り、荷物を下ろす。

 

 

「リューシ様、何故あのようなウジ虫共に御慈悲をお与えになられたのでしょうか? あのガガンボ達はあろうことかリューシ様を愚弄し……」

 

「ナーベ、言いたいことは分かる。だが、冒険者登録後直ぐに事件を起こす訳にはいかない。」

 

 

「……ですが、あのグギドなるゴミムシに御身のお持ちになられていたアイテムをお与えになるなど……」

 

「待て、ナーベ。これ以上人間達への中傷をするようならこちらも考えがあるぞ。」

 

 ちょっとキツいとは思うけど、ナーベには人間=ゴミ思考を治して貰いたいので、敢えて強めに言い聞かせる。

 

「……も、申し訳ありませんでした!」

 

 

 目を潤ませながら必死に謝るナーベ。

 流石に可哀想だと思った。

 でも可愛い。

 ギャップ萌えやん最高だぁ。

 もしや、弍式さんはこの光景をずっと前から望んでいたのか……? 

 やるやん、弍式。

 

 

 部屋の影から黒装束の忍者がグッジョブしている姿を幻視する。

 

 

「良いか、ナーベよ。この世にはこんな言葉がある。『情けは人の為ならず』」

 

 

「情けは、人のためならず、ですか。」

 

 

「うむ。人に親切にしたことは、えてして自分に返ってくるものだ。その逆もまた然り。人に恩を売ったことが、周り回って我等にとって思わぬ収穫をもたらすやもしれんぞ?」

 

 

「人に恩を、売る……善処いたします。」

 

 

「ナーベにとって、人と仲良くするなど苦痛でしかないことは分かっている。しかし、これはナーベの成長に必要不可欠なことだ。」

 

 

「私の成長……」

 

 

「これはお前達全員に言えることだが、ナーベよ、人間を侮ってはならない。彼等の力はその団結力にある。彼等を敵に回すことはあってはならないこと、親善を深めるために人間蔑視は不要だ。あってはならないものを切り捨てる為なら、我等はどんな試練でもお前達に課せるだろう。ナーベよ、いや、ナーベラル・ガンマよ。苦境を乗り越えて見せろ。我等にお前の成長を見せてくれ……!」

(それっぽいこと言ってればなんとかなるやろ(´ω`) )

 

 

「至高の御方々の試練……!」

 

 あれ? もしかしてガチで捉えちゃった感じ? 

 

『アンタ、やらかしましたね。』

 

 

『えっ』

 

 

『下僕達の忠誠心は初めからMAXなのに更に忠誠度上げて……どう収集つける気ですか?』

 

 

『あっヤベ』

 

 

 そうだよ。

 この子達皆忠誠心クライマックスやん。

 

 

「ナーベラル・ガンマとしての発言をお許しください。至高の御方々の御采配、身に余る幸せ……! 例えこの身が果てようとも御方々のご期待に添えられるよう精進いたします!」

 

 

「う、うむ。楽しみにしているぞ。」

 

 

「はい! リューシさーーん!」

 

 ちょっと? そこはリューシさん! ってバシッと決めるところじゃん! 

 

 肝心なところでボロが出るのがナーベの短所でもあり、長所ってことか……

 弍式さんの考えが少し分かった気がする。

 

 

『結果的にナーベの成長に繋がったので、結果オーライってことで』

 

 

『んーまぁオケです。』

 

 

『さて、この後は情報共有ですかね。さっき言いそびれたことがありましてね。』

 

 

『同じく。』

 

 

 ーーーーーー

 

 

 アインズさんからの情報では、このエ・ランテルは王国直轄領であり、三重の城壁に囲まれた要塞都市。

 また、貿易の要を担う都市でもあり、重要な軍事拠点でもある。

 というか、国王の半分はエ・ランテルって言っても過言ではないらしい。

 

 王国では貴族派閥と国王派閥の二つが対立し合っていて、いつ内紛が起こるか分からない状況らしい。

 ふーん。

 

 エ・ランテルは最内周部にある行政区、内周部の人民居住区と商業区、外周部の墓地、軍駐屯地と、それぞれの区画ごとに決まった役割があるそう。

 ふーん。

 

 エ・ランテル内の勢力は、神殿勢力、魔術師組合、冒険者組合、国の所属軍人達等が分かっていて、他には鍛冶師組合やら薬師の居住区やら高級娼館やら……

 とにかく多様な人々が集まっている大都市であるそうだ。

 ふーん。

 

 知ってた。

 

 

 ナーベラルからの情報によると、下賤なシロアリ(人間)共が売るのは至高の御方々からすればゴミと言っても過言ではない代物ばかり。

 はっきり言って程度が低すぎて哀れだとさ。

 

 知ってた。

 

「やはり、この世界の人間は皆、レベルが低い者達ばかりが集まっているようだ。」

 

 

「いや、そう決めるのは早計では?」

 アインズさんからの指摘を受ける。

 

 

「まぁ、まだ見ぬ強者達が潜んでいる可能性は考慮すべきだな。まぁ、強者達はこの国ではなく、()()にあった()()やら評議国やらに潜んでいる可能性が高いだろうが。」

 

 

「さむっ!」

 

 

「茶化すなや」

 

 

「すまない。」

 

 

「このエ・ランテルでは我等にとって強者と呼べる存在は皆無、もしくは隠蔽工作を取っているかだ。少なくとも、私の《|上位敵探知《グレーター・ディテクション・オブ・エネミー》》には反応が無かった。そして、共同墓地に入って行った者達の会話を待つ盗み聞きして分かったことだが、どうやら奴等はこの都市で『死の螺旋』という現象を引き起こそうとしているらしい。」

(原作知識投下! 困ったときの盗み聞き宣言つよっ)

 

 

「『死の螺旋』?」

 

 

「大量のアンデッドを墓地内に召喚する儀式のことらしい。これは名声アップに使えるだろう。」

 

 

『万が一強いアンデッドが来た時は?』

 

 

『ティル呼びます。あと補佐にヴァルも。』

 

 

『なら安心。』

 

 

「強い輩が介入してきたら基本援軍要請をする。相手が対話を試みてきた時は素直に応じ、相手の言い分を聞く。そうでなくいきなり襲ってきた時は全力で迎撃せよ。」

 

 

「はい、分かりました。リューシさーん。」

 

 

「了解です。」

 

 

 さて、これで一安心っと。

 明日は初依頼だ〜。

 確か直ぐ死んじゃう仲間達と出会うんだっけ? ナーベにアタックかけるヤツとか男女がいるパーティーだと記憶しているけれど。

 楽しみだなー

 

 

 

 

 

 

 

 この時のシャボンヌは忘れていた。

 

 シャルティアとペロロンチーノを組ませるということのリスクを。

 

 シャルティアは夫のペロロンチーノにワールドアイテムを預けていた。

 夫を守る為に。

 

 これから起こる悲劇をまだ彼等は知らない……

 

 

 

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