『どの依頼もゴミモンスターの討伐か護衛任務なんですが…』
『簡単すぎて逆にやることがねぇ…』
モモンが《物知りメガネ》で判読した依頼内容は、余りにもこの3人にとっては簡単すぎた。
【エ・ランテル冒険者組合フロント】
そろそろお昼時という時間帯だが、真剣に依頼票を眺める僕達。
お腹空いてきたかも。
「モモン、この中で一番マシなものは?」
「このカッツェ平野でのアンデッド討伐依頼なんてどうですか?」
「それで決まりだ。」
依頼票の羊皮紙を丁寧に壁から剥がすと、カウンターの受付嬢の前に提示する。
この一連の動作だけでも多くの冒険者達から視線を送られているが、極力無視する。
「この依頼を受けたいと思うのだが。」
「それはミスリル級冒険者の方々の御依頼です。
「構わない。昨日登録したばかりでこの階級だが、本国で最強のパーティーだ。人助けの為だ。我等に任せて欲しい。」
「ですから、
「なら、上の人に会わせてくれないか?」
「今プルトン・アインザック組合長は経理の業務を行っており、面会不可です。日を改めてお越し下さい。」
「これでもナーベもモモンも第四位階までの魔法を習得している冒険者だ。ナーベは近距離戦も出来る。モモンは味方への補助魔法を多く習得している。これでもダメか?」
第四位階、と言った瞬間から辺りが騒然としているが無視する。
「お引き取りを。」
は?
「…カッツェ平野周辺の土地を通る一般人達に厄災が降りかかるやもしれない!我等を行かせてはくれ」
「お引き取りを。」
くっ!正義の人アピールでも駄目か!
受付嬢から既に濃厚な帰ってくれオーラを感じる。
見るからに顔も面倒くさがってるの隠せてないし。
後ろのナーベがどんどん殺気を放っていることが背中で分かる。
ここは一時撤退か、
と思った時鶴の一言が!
「すいません、もし良かったら私達と一緒に依頼を受けませんか?」
ペテルブルク!←ペテル・モークな。
「ふむ、感謝します。その提案、受けましょう。私はリューシという名の旅の冒険者です。こっちはナーベでこっちはモモン。あなたのお名前は?」
「私はペテル・モークといいます。チーム『漆黒の剣』って知ってますか?」
「すみません、つい最近この街に来た新参者でして…」
「あーデスヨネー。銀級冒険者チームの端くれです。そのリーダーなんです、俺。ハイ。」
と、こんな感じで雑談しながら、さりげなく受付嬢に組合内の一室を貸してもらい、そこに全員移動する。
「ペテル〜探したぞー」「手洗いから戻ったら誰もいなくてビックリしたである!」
向こうから金髪チャラ男とがっしりとした体格のドワーフっぽい人がやってくる。
クルット・パルプとアンダイン・ウッドデッキだったっけ?
「まったく、受付のレディが親切に教えてくれなかったら今ご…」
クルットがナーベを見て硬直する。
お前が次に言う言葉は「一目惚れです!付き合ってください!」だ!
「一目惚れです!付き合ってください!」
案の定だ。
ナーベ?目、怖い怖い。
「黙れ、
よく見ると手から血が滲んでいる…ナーベなりに自制したんだなぁ…
「かわい子ちゃんなら大歓迎!」
「死ね!」
「ナーベ!」
クルットェ…
馬鹿なことすんなや…
ナーベも殺しちゃあかんって。
「あっ、す、すみません…」
「良いのって」キラーン☆
「お前じゃない。」
「ナーベちゃんっていうんだ〜もしよかったらこの後俺と二人でお茶でも」
「しません。」
「おおっと手厳スゥィィ〜〜♪でも、そんな冷たいところが好きだよ。」
「永遠に黙らせられたい?」
「ナーベちゃんの冷たい一言頂きましたー!!ありがとうございます!」
「いい加減にしたら?ルクルット。」
おっとまた一人別なの来た。
男女ことニニャちゃんだ!
すんげ〜ジト目!
というかクルットではなくルクルットっていうのか、このチャラ男。
「呆れて物も言えない…ウチのルクルットが本当にとんでもない…」
「いえ、ナーベは軽薄そうな人苦手なだけなので、お気になさらず。」
「ありがとうございます…」
ペテルブ…ペテルさんめっちゃ不憫…
「では改めて自己紹介を、私の名はリューシ、ダニヤ・リューシという。好きな様に呼んで欲しい。」
「えーと僕はモモンといいます。リューシさんの仲間で
「ナーベ。
「こらっ!」ポコッ
ナーベの頭をモモンが杖で軽く叩く。
ナーベの口が一瞬ミ◯フィーみたいになって可愛い。
「ちゃんと自己紹介しなくちゃ。」
「はい…」
「抜けてるナーベちゃんマジ天使!」
「黙れ。…リューシさんの付き添いです。」
「じゃあ次は俺達から!俺の名はルクルット・ボルブ!ナーベちゃんの夫となる男!」「死ね」
「ナーベちゃんからまた冷たい一言頂きましたー!!!」
「おい、ルクルット。今のはリーダーが先に言うところだろ。ゴホン、『漆黒の剣』リーダーのペテル・モークです。チームでは前衛の守りと指揮を担当しています。」
「ダイン・ウッドワンダーという者である!
「僕はニニャといいます。
「中々に個性的な人達ですね。」
「ハイ、ヨクイワレマスヨ。」
「ペテル?何でそんなカタコトな言葉遣いすんだ?」
「いっつもお前がやらかすからだろ!ここぞとばかりに女性に手を出そうとして!」
「俺は将来全てのかわい子ちゃんを股にかける男だからな!」
「おい!ナーベさんの前でなんて破廉恥な!…もうほんとにすいません…」
ペテルb…ペテルが今にも消え入りそうな声を上げる。
可哀想に(小並感)
「いえいえ、こういうことには慣れっこですよ。話は変わりますが、あなた方の御依頼の内容を教えて頂きたいのですが。」
「分かりました。大まかに説明すると、大森林から溢れてくるゴブリンやオーガとかの討伐ですね。私達は報奨金目当てですが、かなりの頻度で強いヤツが出て来るようになったので、苦戦してしまうことが多くなってしまいまして…」
「ほうほう、なるほど。事情は分かりました。共に討伐に行きましょう。報奨金は要らないので。」
「えっ!?いや、せめて5割くらいは受け取ってください!不当契約はしたくありません!」
「分かりました。では、分け前の3割程度頂くことにしましょう。」
「…本当にいいんですか?」
「無論。昼食を取ったら早速準備に取り掛かりましょう。」
丁度その時、部屋の扉がノックされる。不思議に思いながらも扉を開けると、開けた先にいた受付嬢から声を掛けられる。
「リューシ様宛てに、たった今、御指名の依頼が入りました。」
「すいません、依頼者だというのにこんな格好で…」
ポーション材料の薬草を潰した汁がこびり付いた作業着に、ボサボサで目元を隠す程の長い髪を持つ少年。
依頼主のンフィーレア・バレアレ君登場。
別名覇王の夫。
愛称ンフィー。
いや早いな!ブリタにポーション渡したの昨日の午後やぞ!?
「あなたが依頼主であるンフィーレア・バレアレ殿ですね?」
「はい、その通りです。依頼を受けるということでよろしいでしょうか?」
「申し訳ありませんが、先約がある為お断りしてもよろしいか?」
「リューシさん!せっかくの御指名の依頼ですよ!」
「しかし、あなた方との約束を反故にする訳には…」
こっそりモモンへと目配せする。
「んーよくわかんないけど、僕達がお兄さん達の依頼を同時にしちゃえば良いんじゃないかな?」
「うん?それだ!ありがとうモモン!」
「えへへ〜」
典型的な三文芝居だな。
バレてないよな?
「ンフィーレア殿、まずは今回の依頼の内容を聞かせてもらってもよろしいか?」
「はい!リューシさん達には、僕が薬草を採取する為に森に行く時の護衛をしてもらいたいのです。」
ーーーーーー
「ここは、我々が二班に別れてそれぞれの任務を遂行する方針にします。私がンフィーレア殿の護衛に付き、モモンとナーベは漆黒の剣の皆さんと共に討伐へ向かいます。」
「ヒューゥナーベちゃんと一緒だー!!」
「うるさい黙れゴミムシ。リューシさんの言葉を遮るな。」
「ハフン…」
「えっ!?リューシさんお一人でですか?」
「私の実力は本国では最強だったものでね。貴方を守り通しましょう。」
「いや、パーティーを分断するのは役割的に色々と不足しませんか?」
「問題ないですよ。我等は群としても個としても活動可能ですので。それか、他には漆黒の剣の皆さん。」
「「「「あ、はい?」」」」
「我々とあなた方でチームを二分割し、成功報奨金を最初の割合で折半する方法があるのですが、これにはあなた方のチームの指揮を下げてしまう可能性があります。よって、一番はそれぞれの任務を一つづつこなしていく方法が一番かと。ンフィーレア殿。」
「えあ、なんでしょうか?」
「漆黒の剣の皆さんとの先約により、依頼遂行を後に回すことになります。もしお急ぎの用であれば、優先順位の調整を検討しますが。」
「急ぎという訳ではないです。ですから、優先順位は後でも大丈夫ですよ。」
ンフィー君大人で助かった。
子供だったらこのタイミングでごねてるんだよなぁ。
「感謝します。では、昼食後、出発の準備を開始しましょう。」
「了解です。」
その言葉を後に、立ち上がり部屋から出る僕達。
『シャボンさんシャボンさん』
『なんすかアインズさん?』
『なぜあのンフィーレア少年は』
『ブフォw少年に少年と言われるンフィーレア君ェw』
『茶化すなや話聞け』
『ヘイヘーイ』
『…ンフィーレアは何故まだ昨日今日で駆け出しだった我々を指名したのかについて引っかかっています。明らかに我々と接触する為にしか見えない。ンフィーレアは危険人物として監視対象に加えるべきでは?』
あーなるへそ。
『あの少年の服装からして、ポーション職人か薬草販売店の店員でしょう。まぁ薬草がこびり付いている服着ているだけかもしれませんが。普通に考えるのなら昨日のポーションがあの子の手に渡って我々に興味が湧いたから、とか?』
『その線が高そうです。しかし、それでも不安ですね。カモフラージュの可能性も考慮して、やはり
『良いと思います。あの女に付いていてもこの先メリットがないでしょうし。』
まぁ、ブリタに付いているよりはマシな使い道だな。
『じゃあ飯食いに行きますか。』
『思考放棄万歳!』
取り敢えず手頃な今でいうファミレスっぽい店に入る。
「中は思ったよりキレイだな。」
「宿屋が汚すぎたからですかね。あと何か寒気がしたんですが…」
しばらくして、店の奥からウェイトレスさんが出て来る。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「見ての通り3名だ。」
「お席にご案内いたします。」
そのままテーブル席へ。
「ご注文がお決まりでしたらお呼びください。」
ウェイトレスさん退場する。
「さて、メニュー表だ。」
「これとか美味しそうかも?」
「私は…」
「ナーベ、遠慮しなくていいからな?」
「いや、しかしそんな恐れ多い…」
どうやら主人と同じ席で食事を取ることが失礼だと思っているようだ。
「食事は皆で食べた方が美味しいと思うぞ?」
「リューシさんのごめ…言に従います。」
まぁ取り敢えずナーベをいつものように宥めながら、店員さん呼んでスパゲティを注文する。
帰ったらパピのスパゲティの監督しないといけないからな。
「お待たせしました。ミートソーススパゲティ大盛りです。チーズや胡椒と一緒にお召し上がりください。」
うお、これはまた凄い量だな。
食べがいがありそうだ。ジュルリ
「リューシさーーーんにこんな粗雑な…」
「ふむ、これはこれでまた粗くて美味しい。」
「…至高の御方に美味しいと言わしめるなんて…ガガンボもやはりリューシさーーーんの仰る通り侮れないものね。」
「ん?なんか言ったかな?ナーベよ。」
「あ、いえ、私めの独言ですのでお気になさらず。」
「先に頼んだのにまだ来ない…」
「まぁ待てば必ず…」
「至高の御方をお待たせするなど言語道断!やはりガガ…」
「抑えよ、ナーベ。」
「はっ。失礼…すいませんでした。リューシさーん。」
『ナーベは気が昂ると素がどうしても出てしまうようですね。』
『困りましたね。ボロがでないように矯正しましょうか?』
『いや、弍式さんに殺されそうなんでやめましょう。』
『そうですね。』
冒険者活動初日から波乱が起きそうで不安だなぁ…