【トブの大森林】外周20㎞地点。
荷馬車を守る冒険者と薬草採取を行う薬師の一行が野道を前進していた。
エ・ランテルはもう視認不可能な距離にあり、遥か南の地平線を双眼鏡で覗いてどうかといったところだ。
冒険者は一人の少年が乗る馬車の周りを取り囲むようにして同行している様子。
(この姿の為か、色々と聞き出せちゃったんだが……)
その中で荷馬車の側方向の守備を守る冒険者、その中で最も背が低い少年
ニニャからは
武技のこと、
魔法の階位や今発見されている魔法の数々、
周辺地理の詳細な情報、
周辺国家の情勢・特色、
更には王国貴族の裏事情まで聞き出せた。(モモンくんは
また、ニニャは貴族の裏事情を話す際目に隠しきれない憎しみが浮かんでいた。
何か王国貴族達とは因縁があるのだろうか?
これから仲間として付き合っていくかもしれない冒険者だ。
彼の事情を知ることは大切だろう。
そう考えつつモモンはもっとニニャから情報をおねだりする。
「ニニャさんって凄い! なんでも知ってるんですね!」
「い、いやぁそれほどでもないよ。僕のお師匠様の方が何倍も多くの知識を持ってる。」
「お師匠様?」
「有名な帝国魔法省の重鎮フールーダ・パラダインと同じ
「へぇ〜、それは凄いですね!」
「ホントにお師匠様に出会えて良かったと思うよ。」
「そういえばニニャさんって、王国貴族に何か恨みがあるんですか?」
「……なんでそれを?」
「いや、王国貴族の裏事情を聞いた時に、何か怒りをニニャさんから感じて……すいません。」
「いやいや、別に隠してないから。そう、あれは私が7歳の頃、私の姉が貴族に連れて行かれた。妾として。あの時から僕はずっと奴らを断罪してやるって決めた。」
「断罪って、何をするつもりなんですか?」
「悪いことをしたお返しをするの。わ……僕から姉を強引に連れ去った領主にね。」
「お返しって……まさか」
「えーっと、殺すとかそんな物騒なのじゃないよ。安心して欲しいな。」(まぁ、殺しはしないけれど、ね……)
「なら安心です! ところで、何でチーム名が『漆黒の剣』なんですか?」
(この人めっちゃ深い闇持ってるわヤベーわ。これ以上深く掘り下げると奈落に落ちそうだな。)
「あー、えーっと、それか──、えーっとえっと、ごめん。」
しどろもどろなニニャ。
「?」
頭の上にハテナマークをつけるモモン。
「説明しよう!」
っと、今の今までナーベを口説こうとしていたルクルットが話に入ってくる。
「このチーム名はニニャが考案してくれたもので、十三英雄の一人、暗黒騎士が持っていたと言われる魔剣を全て集めることを誓うという意味があるのだ!」バーン
ルクルット、やりィィ!
「ちょっルクルット?! 恥ずかしいから言わないで欲しかったんだけど……」
ニニャはめっちゃ恥ずかしがってる。
「大きな夢を抱くことは何も悪いことでは無いのである! もっと自信を持つのである!」
同じく横を守っていたダインも話に参加してくる。
「いや、ダイン。そういう意味じゃない。」
顔から湯気が出ながらそう言うニニャ。
(若気の至り、か。)モモン、察する。
「いや、違うから! モモンくん! 違うからその可哀想な人を見るような目でこっちを見てくるのやめて!」
ニニャ、女であること、隠しきれてないからな。
アインズさんの質問がニニャの弱点を的確に突いているんだよなぁ。
そう思いつつも、声には出さずに隊の横を守備するシャボンヌことリューシ。
「もうそろそろ、かな。俺の勇姿を見といてくれよ☆ナーベちゃん〜」
「黙れ、不快。」
「さっきから同じ言葉言ってない?! ま、そんな冷たいところも好きなんだけどね〜」
「黙れ。」
「釣れないなー。あ、そういえば気になったんだけどさ、リューシさんとナーベちゃんは恋人関係なんじゃ……」
「こっ、こ、ここ恋人!? 何を言うのですか!? 私などではなくティルル様や」「ちょっ、ナーベ?」「おいちょっと待て!」
刹那、ナーベは自分の犯した失態を理解する。
顔から血の気が失せていくのがありありと分かった。
「んーやっぱリューシさんには思い人が……まぁあんなイケメンなら女の一人や二人いてもおかしくは無いか〜」
顔合わせの時に、リューシは兜を脱いで素顔を見せた。
まぁ、超イケメンに作っていたので、見ていた冒険者組合の受付嬢達からアプローチされたが……
「こら! ルクルット! 冒険者同士のチーム事情をあからさまに詮索するのは御法度だぞ! すいません、うちのルクルットが……」
ペテル謝り倒している。この人いつも謝っているような……
「いや、恋人がいるのは事実ですし、今更隠すことではありませんから。まぁ、ちょっと恥ずかしいので、これ以上の詮索はやめてほしいですね。」
「はい、すいません……ほら、ルクルット、ちゃんと謝って?」
「あれ? 俺なんかしちゃいました?」
「「「したよ!」」」
(ラノベの主人公みたいなこと言うな!)byリューシ
そんなこんなで道中を歩いていく一行。
「ん、向こうから敵影発見。姿は……ゴブリン十六体と
(雑魚だな)byリューシ
この世界の冒険者にとって、通常の
「まずいのである!」
「どうしましょう! 我々漆黒の剣では勝てない相手です! 撤退すべきでしょう。」
銀級冒険者の漆黒の剣では太刀打ちが出来ない相手。
「いや、必要はありません。私達に任せてほしいです。ナーベ、モモン!」
「「はい!」」
「お前たちはそれぞれ右方向から来る者、左方向から来る者への攻撃を行うよう。私は正面突破を行う。」
「正面から?! いくらなんでも危険です!」ニニャが止めようとする。
「大丈夫ですよ。見ていれば分かります。支援魔法もご自身や漆黒の剣の皆さんの為にとっておいてください。」
「では、平野部のゴブリン、オーガは我々が、あなた方はあのトロールやオーガ達を任せます。危なくなったら絶対助けますからね。」
「はは、大丈夫ですって。本国最強と名乗る以上、ここでトロールなんかに負けた日には、国の恥さらしですからね。」
リューシの言葉の後、ペテルは仲間達に指示を出しに行く。
手馴れた様子でペテルの作戦内容を瞬時に読み込み、それぞれの持ち場へと向かう彼等漆黒の剣の姿は、どこかアインズ・ウール・ゴウンの仲間達の姿を幻視させた。
『良いチームですね。もっと訓練を積めば、我々のような連携も出来るかも……』
『懐かしい……我等アインズ・ウール・ゴウンのメンバー全員が戻って来ていたらなぁ……』
『……戻って来ますよ。いつの日か。』
懐古。
至高の御方と下僕達から敬われる二人は、どこか懐かしい思い出に浸りつつ、戦闘準備を進めていくのであった。
「しまった! ダイン! そっち行ったぞ!」
前衛を守るペテルの剣捌きと、
しかし、ゴブリンの二体が左手から回り込み、左翼の守備を担当していたダインへと襲いかかる。
「大丈夫なのである!
『
「『
ゴブリン二体はダインの拘束魔法で動きが鈍くなった隙に、ニニャの魔法で仕留められた。
一方、トロール方面の草地に三人の冒険者が怒涛の勢いでモンスター達を倒していく。
「何処を見ている。」
「ホァ?! コ、コイツ、イツノマニ」ザシュ
リューシはまるで遊ぶかのようにオーガを次々と切り捨てていく。
(退屈だわ〜そういや、パピが新たなパズルを作ったっぽいな。)
いや、戦闘中に何考えてんだコイツ。
『リューシさ〜ん、こっちにもオーガ回して欲しいんですけど。』
『ダメー。まぁゴブリンで勘弁して欲しいです〜』
『ケチですね〜』
オーガ、完全におもちゃである。
「アノチビカラネラエ!」
「ゲヒャヒャヒャヒャ!」
森から新たに現れたゴブリン八体がモモンへと襲いかかるが……
「『
「ギャ!」
モモンのスタッフから出現した電気の塊が内五体のゴブリン達に貫通し、瞬時に丸焦げにする。
「ありゃ、通常の『
「モモンくん! 大丈夫?」
あらかたゴブリン達を倒し終えたニニャが加勢に行く。
「大丈夫です。『
ゴブリンの焼死体を増やしながら、
子供っぽい演技をして人差し指をニニャの眼前に翳すモモン。
「あぁ、うん、そう……だね?」
ニニャはモモンのギャップ差に苦しんでいるようだ。
別地点ではナーベが迫り来る
「『
容赦の無い魔法攻撃を浴びせる。
当たった者から次々と地面に倒れ伏し、そのまま動かなくなる。
後には肉が焼けた焦げ臭い匂いが辺りを満たす。
「さっすがナーベちゃん! 強かわいい!」
「黙れ」
ルクルットとナーベは戦闘時でも相変わらずの様子^^;
2チーム(主にリューシ)の活躍により、僅か1分もしないうちに残りのモンスターの頭数が五体となっていた。
「ゲキャ、ツヨイ、ニゲロ!」
力量差がやっと理解出来たのか、ゴブリン達が退却していく。
「ニンゲン、クウ」
だが、トロールが遂に動き出し、リューシへと向かう。
「遅い」
リューシはトロールが拳を振り上げたタイミングで相手の懐に急接近すると、そのままの勢いでトロールを肉薄する。
「手加減してやる。
瞬間、再生し始めていたトロールの肉片を灼熱の火球が襲いかかる。
トロールは瞬時に蒸発し、頭部の一部分を残して全て灰になった。
「すごい……」
「オリハルコン……いや、確実にアダマンタイトだろ……」
見ていた漆黒の剣の面々は唖然とする。
「あれだけの剣術を使えるというのに、魔法まで使えるんですか!?」
「イケメンで強いとか、反則じゃんか……」
「
惜しみのない裏表ない称賛がリューシに飛ぶ。
「アハハ、ありがとうございます。ところで、倒したモンスター達はどうすれば良いでしょうか?」
「耳を切ってこの皮袋に入れてください。組合の人達は耳の大きさや形状から倒したモンスターの情報を割り出すので。」
「了解です。ナーベ、モモン、仕事だ。倒したモンスター達の耳を切って持って来てくれ。」
「ラジャ」「分かりました。」
モンスター達の耳を回収し終えた一行は、ンフィーレアの待つ速攻で作った野営地に戻る。
焚き火と寝床を置いただけの簡素な物にする予定だったが、リューシ達が《グリーンシークレットハウス》を提供し、漆黒の剣が持ってきていた食料を詰めた食料袋をそこに置いて
「お帰りです、皆さん。お怪我はありませんか?」
帰還早々に薪を集めてきてくれてたらしいンフィーレアが出迎えてくれる。
奥に薪木らしき斬られた木が積まれている。
ンフィーレアの手には木片が付く斧があった。
「ないですよ。それよりもすいません、依頼主の方にこんな労働をさせてしまって……」
「良いんです。僕も好きでやってたので。それに薪割り位出来なきゃ……」
「出来なきゃ?」
「……何でもありません。」
ンフィーレアが頬を少し紅潮させながらそう言う。
その先は「エンリと一緒に暮らせないです。」とか?
「さて、では夕飯を作りますか!」
「久々にシチューを食べたいのである!」
「作るの手伝えよ〜、ただでさえルクルットとかルクルットとか女の子来たら手伝わないから頼むぞ〜」
「何で俺だけ!?」
「いや、お前だけやん、何を取り繕う必要がある。」
「うぐ……確かに俺はかわい子ちゃんを前にしたら口説かざる負えない究極の病を患ら」
「いや病でも何でもないだろ」
ルクルットとペテルが軽口を言い合いながら人数分の食材を取り出していく。
「では私達は食材のカットをしますね。」
シャボンヌが提案する。
そもそもシャボンヌ達に料理出来んのかという話だが、結論から言うと不可能。
コックの職業レベルを取得していないので、食材の調理で失敗するようになっている。
このことはナザリック内の厨房で明らかになっている。
試しにペロロンチーノさんがペペロンチーノを作ろうとしたらどす黒い炭屑が出来上がっていた。
(P氏:専業主夫は難しいかぁ)
しかし、ヘロヘロさんの洞察眼によって、調理以前の下準備(食材を捌く等)まではかろうじて出来ることが分かった。(H氏:いやーミス一つでも見逃したらこっ酷く叱られてたもんで……上司に……うっ、頭が……)
よって、食材の調理は漆黒の剣の面々に任せ、自分達は食材の下準備をする形で場を収めたいのだ。
「それじゃあ調理を僕たちがしますね。良いよね、ペテル?」
とニニャ。
思惑通り(ニチャア
「勿論OKだよ。さぁ早速取り掛かりますか!」
ペテルの一声により、楽しいお料理タイムが始まる。
────────
「完成〜!」
「おっじゃあ早速、全員分よそわないと 」
「手伝いますね。」
ペテルとシャボンヌが全員分シチューを均等に分けていく。
持ってきた干し肉とハーブのいかにも旨そうな匂いが鼻腔を突く。
シチュー独特の濃厚な香り、ほのかに香るスパイスと山椒の匂いがたまらない。
「……」
思わずモモンの方を見やる。
彼もまた、顔を綻ばせていた。
『美味そう。』
『同感。』
「じゃ、いただき!」
まずルクルットがシチューにがっつく。
「ルクルットはせっかちであるな。ここはゆっくり味わうところなのであるよ。」
それを穏やかに諫めるダイン。
「いただきます。」
彼等に続いて確自食事を始める一行。
シャボンヌはシチューを一掬い取ると、そのまま口に木製のスプーンを持っていく。
『美味い!』
『この体になってからずっと不便だったけど、ご飯が食べられるのは良いですね。』
『あ、お疲れ様です。』
『ほんと、貴方のせいでこの姿に……』
「食材の下準備を手伝っていただき感謝します、リューシさん、ナーベさん、モモンくん」
ニニャが不意に話しかけてきた。
『あっと失礼ニニャに話しかけられた。』
『むぅ』
「当たり前のことをしたまでですよ。我々は仲間みたいな、いや、仲間じゃないですか。」
とりま、相手を上げるスタイルで会話する。
「嬉しいですけど……私なんかあなた方の足元にも……」
「仲間に実力など関係ないですよ。共にこうして依頼を遂行した仲、食材の下準備などいくらでもやりますよ。」
ナーベ方面から視線を感じたが無視無視。
「そうですか……リューシさん、貴方に頼みたいことがあって……」
ナーベがニニャを殺気交じりに睨んでいる。
これは少し不味いかな? ということでナーベにしか見えないように首を横に振ってみたけど……あ、納得したみたい。
「ほう、なんでしょうか?」
ニニャからの頼み事って……貴族やな(確信)
「僕には一人の姉がいたんです。」
──────────ー
夕食を食べ終え、片付けをしているリューシ。
他の者達はモモン含めてペテルとリューシ以外全員寝ている。
ペテルは皆んなの分の武器の手入れをしているようだ。
どうやら漆黒の剣は鍛治係みたいなのをチーム内で作っているらしい。
ちなみに役割分担制。
(そうだ! サンズに
リューシは野営地の《グリーンシークレットハウス》内で何かを思い出す。
そして、顳顬に手を当てると『
『おーい、サンズ〜いるか〜?』
『うん? どうした、シャボンヌ? 』
『今ちょっと頼みたいことがあってな。』
『ついにオイラのジョークを』
『今から
『おいおい、てきびしいな〜。わかったぜ。いまからエボットホールにむかうよ。』
『助かる。』
シャボンヌの全勢力が竜達だけだといつから錯覚していた?
もちろんサンズ・パピルスいるんだったら《お馴染みのメンツ》もいるに決まってるぜ!
【スノーディン・ホットドッグ】最寄りにある【エボットホール】が地下世界の入り口になっており、地下世界はアズゴア王による平和が享受されている。
太古の封印により、地上に行けるのは限られたモンスター達だけという制約までバッチリ再現したシャボンヌの最高傑作みたいなもん。
それ故に、シャボンヌは最高傑作が壊されない為にと存在を隠蔽していた。
全員召喚の際に誤って連れてこられたことになっている。
ちなみにトリエルやグリルビー、マフェットちゃんとかもちゃんといて、普通にし店を持っている。
そしてなんとコックの職業レベルを持っている。
しかし、料理専属ってわけじゃなく、各々が地下世界の構成に必要不可欠な存在という設定を付けてしまった為に、シャボンヌは彼等に飯作ってもらうことが出来ずにいるのだ。
ここだけの情報だが、あそこには
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(よし、あとは……ティルとヴァルに動いてもらうか。ヘロヘロさんが気になるかんな。)