ある転生者のオーバーロード   作:Solo Mon

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今回は長めです!
そしてシリアス!
長文注意です!


19.選手交代

!?シャルティアが!?』

 

『にわかには信じがたいですが…』

 

 

 

翌日の早朝、リューシは宿屋の一室で目覚める。

朝日の明るい日差しが部屋の小窓から刺し、澄み切った空気が流れて来るにも関わらず、気分は最悪だった。

それも、昨日の深夜にモモンことアインズがアルベドから受け取った最悪の報せによるものだった。

 

(嘘だろ…シャルティア…ワールドアイテムを持たせた筈なのに…)

 

付き添いにペロロンチーノ、片手に《ヒュギエイヤの杯》を持たせ、任務に就かせたというのに本来の運命を変えることは出来なかった。

 

リューシは迂闊だったと思う。

自分というイレギュラーの存在がいるというのに、何故この世界に同じくイレギュラーが先にこの世界に来ている可能性を考慮しなかったのか、と。

 

 

(いや、まだだ。まだイレギュラーとは断定出来ない。先ずはペロさんに事情を聞こう。)

 

 

一旦【城壁都市ホーンバーグ】へと帰還するリューシ一行。

城下町にワープした時、奥に聳え立つ王城を見て、ニニャは「凄く…大きいですね…(城が)」と言う。

城下町をしばらく行った所で、突然指笛を吹き鳴らすリューシ。

すると、何処からともなく続々とリューシ使役下の竜達が現れ、リューシ一行の下にフライングダイブを次々と仕掛けてくる。

ニニャは余りの竜の迫力と頭数、そして見た目の怖さにより、恐怖で大きな叫び声を上げた(ニニャ『キャワワワワァーー!!!』)後卒倒してしまった。

 

後から来たティルルに事情を説明し、ニニャを預かって貰うことに(『?リューシ様って天使達の住む所に行ったんだったっけ?』byティルル)。

ナーベも付き添い人としてニニャとティルルに同行させ、【ナザリック地下大墳墓】へと転移するのであった。

 

ーーーーーーーー

 

『ナーベよ。ニニャが起きたら装備の点検の為、少しの間此処を留守にする。腕利きの鍛冶屋がいるのでな、と言う伝言を彼女に伝えて置いてくれ。モモン、つまり私もついでに行ったという設定で。』

 

 

『畏まりました。そのようにいたします。』

 

 

『任せるぞ。』

 

「ふぅ、さて、盟友ペロロンチーノよ。一体何があったのか我々にも説明してはくれまいか?」

 

ナーベに必要事項の伝達の為の伝言(メッセージ)を終えたアインズがペロロンチーノに尋ねる。

 

【ナザリック地下大墳墓 ペロロンチーノの部屋 ベッドルーム】

 

4人の異形達が1人の鳥人(バードマン)の眠るベッドの脇に其々腰掛ける。

鳥人(バードマン)、ペロロンチーノは、戦闘による傷が所々消えていないようだ。

肩に槍で貫かれたような大きな風穴が痛々しく残っている。

 

「シャルティア…」

 

「シャルティアに何があったんだ?」

 

「…」

 

 

「…シャルティアが反旗を翻したということは、一体どういうことなんだ?教えてくれ。」

 

「…」

 

返事が無い。只の屍のようだ。

 

「至高なる御方へ何てことを…!!シャルティア・ブラッドフォールンの討伐は私めにお任せを。全配下の総力を持って叩き潰して参ります。」

そんなペロロンチーノの姿を見て激昂する

「待て、アルベドよ。我々はまだ事情をまだ良く把握していない。シャルティアが暴走したのか、反逆を企てていたのか、洗脳されているのか、はたまた脅迫されているのかは分からない今、愚直にシャルティア討伐などすれば、たちまち此方の戦力が筒抜けになってしまうぞ。ここはシャルティアの今の状態が知りたい。」リューシ

 

 

「…承知いたしました。」

 

アルベドがシャルティア強硬討伐論を展開するが、リューシが瞬時に阻止する。

 

「先ず、今判明している情報としては、昨夜未明、シャルティア・ブラッドフォールンからの報告が途絶え、ペロロンチーノ様を攻撃したことがペロロンチーノ様御身自らのご報告と、付き添いの吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)達の証言で判明致しました。その原因は、敵対者の老婆が着た巫女服状のマジックアイテムによる物とのこと。精神支配を受けている可能性が極めて高いです。」

 

 

「ふむ、現在のシャルティアの居場所は分かるか?」アインズ

 

 

「詳しい座標は未だ掴めておらず、ねえさ…ニグレドに正確な座標の調査を3時間前に委託したのですが。」

 

「ニグレドの情報待ち、か。」アインズ

 

「さて、先ずはシャルティアの洗脳方法についてだが、皆も知っての通り、シャルティアは吸血鬼(ヴァンパイア)。それも真祖(トゥルー)だ。大体の精神攻撃を無効化出来るにも関わらず、洗脳を受けたということ。よって、シャルティアの精神支配は考えられる限り可能性は3つ。未知の魔法による物か、生まれながらの異能(タレント)による物か、それとも《ワールドアイテム》による物か…そして、この中の《ワールドアイテム》による物だと我は睨んでいる。」リューシ

 

 

「何故だい?もしかしたら《ワールドアイテム》以外にアンデッド系を強制的に洗脳出来るアイテムがあるかも知れないぞ。」ヘロヘロ

 

 

「我の治めていた【ミズガルズ】にさえそのようなアイテムの影は無かった。そして、そのようなアイテムがあるのだとすれば、他の探検家達がアインカベルによって駆逐される事は無かった筈。」リューシ

 

 

「それもそうだねぇ。まぁ、断定してもしなくても、やるべきことは変わらないね。」ヘロヘロ

 

 

「苦しい決断だが、一度シャルティアを殺し、蘇生しなくてはならないな…」リューシ

 

 

「な、何故?!《流れ星の指輪(シューティング・スター)》を使えば良いでは無いか!」アインズ

 

 

「いや、万が一《ワールドアイテム》だった場合、貴重な指輪の使用回数を一無駄に減らすこととなってしまう…我が傷付いただけでシャルティアを洗脳から解放出来るのなら安い物よ。」リューシ

 

 

「し、しかし、最悪リューシs…お前が死ぬこととなるのだぞ!」アインズ

 

 

「我を『洗脳状態の吸血鬼に負けるような、一つの世界の主であった聖騎士』だと言うのかな?アインズ。大丈夫だ。むしろ、今回の相手はシャルティア。アインズやヘロヘロでは信仰系魔法によって弱点を突かれてしまう。ここは、どの道私が行くしか無かったのだよ。」リューシ

 

 

「…しかし!油断は禁物だ。せめて私も同行させてくれ!」アインズ

 

 

「アインズ、ここはリューシに任せるべきだよ。我々は後方支援に努めよう。」ヘロヘロ

 

 

「う…」

 

 

「…!姉さん?どう?シャルティアは…へ?!激戦の渦中?!詳しく教えて!」

 

 

『今度は一体何が起きたんでしょう?』

 

 

『さあ、アルベドの話を聞かなくては…しかし、少なくとも悪いことだというのは確かですね。』

 

 

『…』

 

 

「失礼しました。アインズ様。ニグレドより調査結果が出ました。シャルティアの座標はトブの大森林内の研究施設から北西に20km離れた地点です。現在、シャルティアは鎧姿の何者かと正体不明・姿が完全に不可視化された何者かと激戦中とのこと。」

「は?」

 

(え?シャルティア何と戦ってんだ?)

 

「シャルティアに対峙しているunknown(正体不明)2人は、どうやら味方という訳ではないとのこと。完全に三つ巴状態です。如何なさいますか?」

 

 

「直ぐに現場に急行するべきだ。」

 

 

「同感です。」

 

 

「罠の可能性はありますが、シャルティアをこれ以上傷付けてはいけない。ペロロンチーノさ…最高のエロゲーマーの仇を討つぞ!」

 

 

「いや、俺まだ死んで無いです…」

 

 

「ペロさ…ペロロンチーノ?!!」「ペロロンチーノォ?!!」「ペロロンチーノs?!!起きたのか!!」

 

 

「シャルティアを洗脳しやがったBBAは始末しました。ですが、そいつらの親玉?みたいなのが他の面子を庇っていた上、槍で深傷を受けた次第なんですよ。だからそいつらの更に上位の存在が洗脳不完全なシャルティアの口封じに乗り出した可能性は大いにありますよ。」

 

 

「ふむ…」

 

 

「とにかく、現場に急行するぞ。アルベド、『転移門(ゲート)』の込められている《スクロール》を持って来るのだ。」

 

 

「それなら私のアイテムボックスに…あった!『地点・研究施設から北西20km地点へ』」

 

 

 

「では、アインズ、ヘロヘロ、行こうか。予め言っておく、ペロロンチーノ、今回は君と共に行くことは出来ない。」

 

 

「あぁ、昨日の槍使いに刺された傷が完治しねぇ限りは当分の間は無理だな。あと一つ、頼みがある。」

 

 

「何だい?」

 

 

「今回の一件は俺に責任がある。だから、もし、シャルティアを、殺すしかないんだろうな…せめて、苦しませないで殺してくれないか?」

 

 

「最善は尽くすつもりだ。だが、厳しいな。」

 

 

「…くっ、づぁああ!何で俺はあの時シャルティアを止められなかった!!」

 

 

「ペロロンチーノ…」

「ペロロンチーノ様…」

 

「…」

 

 

 

 

「シャルティアを洗脳した犯人は死すら生温い地獄を…」

 

「人を呪わば穴二つ、ですよ、アインズさん。今は犯人ではなく被害者のシャルティアのことを考えてやってください。」

 

アインズから死のオーラとは違う負の覇気のような物が全身から吹き出してきたので、咄嗟に諫めるリューシ。

 

「…そうですね。先ずは今を対処しなくてはなりませんね。」

 

言われてしばらくして冷静を取り戻したアインズ。

 

「あっ、あと相手に此方の情報をもう渡したくはないです。」

 

ヘロヘロが重要な事を思い出させてくれる。

 

「あの()()を使うんですね?把握です。」

 

偽名*1はナザリックの存在が他のプレイヤーにバレず、ギルメンには分かる程度のぼかしを施す為に予め4人で話し合って決めた物である。

 

「では私達はアウラ達と共に後方支援を行います。御武運を!シャボンヌさん!」

 

しばらくして、リューシに全ての補助魔法を掛け終えたアインズがこう激励を行う。

 

「絶対に死ぬんじゃねぇぞ!」

 

続いてヘロヘロも。

背後に松◯修造の幻影が見えたような気がした。

 

「死にたく無いから全力で行かせて貰うぞ!」

 

ヘロヘロに負けじと声を張り上げるリューシ。

ここら一帯の気温が何故だか2度ほど上昇した。

 

「そう言ったからには、必ず無事に帰ってきてくださいよ!絶対ですからね!…死の支配者が言うのも難ですけど…」

 

やはり不安なのか、中身おっさんサラリーマンの死の支配者は再度リューシへとヒロインのような問いを掛ける。

 

 

「勿論ですよ。じゃ、ちょっくら行って来ますね。」

 

そのアインズの不安を払拭するかのように軽快に言葉を返すリューシ。

そして『飛行(フライ)』が込められたネックレスを身に付け、激戦地点へと飛び去る。

 

彼は一冒険者リューシとしてではなく、至高なる御方々の一員、シャボンヌとして、反旗を翻した部下を倒しに行くのであった。

 

 

 

 

時は遡る。

 

 

〜3日前 18時30分頃〜

【エ・ランテル 黄金の輝き亭】

 

「不味いわ!何なのよ?この料理は!」

 

エ・ランテル随一の美味しさの食事を提供する高級レストランの料理を不味いと一言で切り捨てた女が居た。

ソリュシアこと、ソリュシャンお嬢様である。

 

「ソリュシアお嬢様、周りの他の方々にご迷惑が」

 

周囲の視線を指摘し、彼女を諌めようとする執事然の良男はセバスチャンことセバス。

そう、これはナザリックの作戦の一環なのだ。

 

「セバスチャン!さっさと行くわよ!こんなにも私の舌に合わない料理は初めてよ、全く!」

 

我が儘なお嬢様役を完璧に演じ切るソリュシャン。

彼女はそのままの勢いで乱暴に店の扉を開けて去っていくのであった。

 

「はっ。畏まりました。そのように。ザックさんでしたか?直ぐに出立の用意をしなさい。」

 

セバスチャンは、荒々しく店を出る主人の後ろ姿に向かって返事を返した後、壁にもたれ掛かり、ソリュシアとセバスチャンのことを四六時中観察していた御者の男、ザックへと声を掛ける。

 

「へい。分かりましたぜ。」

 

そう言って下卑た笑みを浮かべるザック。

彼の眼に邪な企みが映り、心音が増加したことをセバスは見逃さなかった。

ザックは御者としての任務を達成する為にソリュシアの後から店を発つ。

 

「皆様、御食事中の所、大変申し訳ありませんでした。そのお詫びとして、皆様方の酒代は私が持ちましょう。どうぞ好きなだけお飲み下さい。あと、店長さん、これは迷惑料です。それでは楽しい夜をお過ごし下さい。」

 

カウンターに2金貨を置いたセバスが退場し、数秒後黄金の輝き亭にいる客は喜びで爆発した。

セバスチャンという紳士的な執事の良男に感謝しつつ、客は冷たい生ビールを飲み干すのであった。

 

 

 

 

 

〜20分後〜

「任務とはいえ申し訳ありません、セバス様。」

 

「いえ、貴女は貴女の役目を全うした。只それだけですから。私は舞台劇とかには少々疎いのですが、私にも分かる名演技でしたよ、ソリュシャン。」

 

馬車の中でセバスに頭を下げて許しを乞うソリュシャン。

店での態度からは想像できない程の萎らしいソリュシャンの姿を見て、更に感心をするセバス。

彼女の演技力を素直に褒める。

まさに理想の上司である。

 

「セバス様にそう言って頂けるのはとても光栄です。セバス様、上手く獲物は釣れましたでしょうか?」

 

任務の一番の重要ポイント、ザックを釣れたかどうか、について問うソリュシャン。

 

「ええ、恐らくは。ザックという御者の心音が増長したことを確認しましたので。」

 

セバスはポイントクリアによる作戦の成功を告げる。

 

「ここまでは順調ですね。あと、ハンゾウ達、出ていらっしゃる?」

 

次の瞬間、席の下、影の部分から黒装束の忍者然をしたモンスターが四体姿を表す。

 

「何でしょうか、ソリュシャン様。」

 

その内の一体、リーダーと思わしき個体、がソリュシャンへと用件を尋ねる。

 

「ザック、御者の人間、は私の(獲物)だから手を出さないで欲しいわ。」

 

ザック、良かったな。

美人なスライムさんと交わることができるぞ。

 

「「はっ!」」

 

この瞬間、ザックの酸責め(消化)、即ち死が確定した。

 

「もし。ご機嫌麗しくて?ソリュシャン。」

 

不意に馬車のキャビン入り口が瞬時に開閉し、『完全不可視化』を解いたシャルティア・ブラッドフォールンが姿を表す。

 

「あら、シャルティア様。随分早くいらしてくれたのですね。打ち合わせはもっと後の予定ではありませんか?」

 

割と話が合い、仲良しなシャルティアの登場に、ソリュシャンは嬉しさに思わず笑みを浮かべつつそう言葉を零す。

Sコンビとして有名な二人が揃ってしまった…

 

「野盗の中に有用そうな者がいる可能性があったからでありんすえ。」

 

ソリュシャンに笑みを返しつつ、なぜここに来たのかという理由を説明するシャルティア。

二人共笑い方がニヒル。

 

「すまんな、ソリュシャン、セバス。少し同行させてくれないか?」

 

続いてキャビン内に直に転移するペロロンチーノ。

 

「「!ペロロンチーノ様!我々は如何のようにも。全ては御身の御意向のままに。」」

 

突然現れたペロロンチーノに少し動揺しつつ、セバスとソリュシャンは同時に返答を贈る。

 

「ありがとう。先ず、同行させて貰いたい訳を話そう。野盗内にブレイン・アングラウスという名の用心棒がいるのだが、其奴がこの世界の強者に当たる者だというのだよ。我々は彼を勧誘し、ナザリックに連れ帰る事が任務となる。」

 

 

「左様でございましたか。」

 

ブレインはヤベー奴らに目を付けられてしまった!

ドンマイ!

 

「そこで、野盗の捕縛による情報・食糧確保と戦力確保を両立して行いたいと思っているのだ。セバスとソリュシャンの役目は最初の任務通りで構わない。」

 

 

「畏まりました。そのようにいたします。」

 

ペロロンチーノの説明を了承し、理解したことを伝える為に頷くセバス。

 

「あと、そうだな…シャルティア」

 

 

「はぁい〜何でありんしょうか?ペロロンチーノ様ぁ〜」

 

ペロロンチーノの腕に偽乳を押し付けるシャルティア。

 

「ブレイン・アングラウスという名の者以外は我々が対処する。シャルティアは先に標的の人物の元へ向かって欲しい。」

 

ペロロンチーノはシャルティアからのアタックに内心動揺しながらも言葉を上手く繋げる。

 

「?畏まりんした。しかし、ペロロンチーノ様は?」

 

 

「俺は…そうだな、上空の監視を行う。」

 

完全不可視化(パーフェクト・ノンアンブル)使うか。これは決してストーキングデハナイ、娘兼嫁の安否確認だ!決してストーカーじゃないぞー!)

 

おまわりさんこいつです。

 

「ペロロンチーノ様ぁ、それでは私がペロロンチーノ様を御守りすることが出来んせん!どうか、一緒に…その…来て…

 

(不味い…可愛い過ぎる!!昔の俺だったら卒倒だぞ!ハアハア)

 

おまわりさんこいつです!

 

 

「…んぐっ!わ、分かった!いつでもどこでも一緒だ!」

「ペロロンチーノ様ぁーーーー!!!!!」

「わっ!ちょっ!大きな声出すな!そしてここで押し倒しちゃらめぇ!」

「はっ!失礼致しんした。私としたことがはしたなかったでありんす…」

 

ナニヤッテンダコイツラ。

 

(シャルティア様羨ましいわ…私もヘロヘロ様と…)

 

シャルティアとペロロンチーノの淫行を目にし、ヘロヘロとの情事を想像し始めるソリュシャン。

馬車の中が若干カオスになった所で、不意に馬車が急停止する。

 

「おや?止まりましたね。」

 

 

「あぁ、作戦通りに行くぞ。シャルティアはまだ馬車から出なくて良いからな。」

自分の嫁が下衆から下品な目で見られたくなかったのか、嬉々として殺戮しようと飛び出そうとしたシャルティアを止める。

 

「はい!」

 

良い返事だ。

 

「では私めが。」

 

セバスがシャルティアの代わりにキャビンの扉を開き、馬車の外を見る。

 

「おい!爺さん!そこをどけ!」

 

爺さんに用はないとでも言うかのようにセバスに飛び掛かってくる野盗の下っ端。

セバスへナイフを突き出すも、そこに彼はもう居なかった。

 

ナイフは空を切り、下っ端の両手が切れる。

 

「へ?」

落ちた自分の手を見、ひょうきんな声を上げる下っ端。

 

「その程度でしょうかな?では、こちらから行かせて貰いますよ!」

拳を下っ端の顔面へと音速を超える速さで打ち出し…

バンッ

下っ端は足首を残して消滅した。

 

「な!何ィ!」

 

「気をつけろ!あの爺さん強いぞ!」

 

「取り囲んで潰…ぐぁあ!」

 

取り囲む間も無く、野盗達の影に既に忍び込んだハンゾウ達が次々と野盗達を狩っていく。

 

「おい、どうし…」

 

「い、一体何ガッ…」

 

物の数秒でザックを含めた2人以外の野盗は殲滅された。

 

「ぇ?…ぁ…ぇ?」

眼前で起きた事象を未だに捉え切れないザック。

 

「御者さん…」

そんな彼の元へソリュシャンが寄ってくる。

 

「な、何を…」

 

「さあどうぞ好きなだけ。」

 

ザックの眼前に突き出される豊満な果実二つ。

思わず喉をゴクリッと鳴らすザック。

普通であればこんなあからさまな色仕掛けに引っかかる筈も無いのだが、ザックは男としての性を抑え切れず、その禁断の果実に触れる。

 

ズブリッ

しかし、触れた手は胸を貫通し、ソリュシャンの体内へと引き摺り込まれていく。

「な、グギャァァア!!と、溶けてる溶けてる!あ、あついいいいいいいぃぃい!!!!」

 

消化液が肌を焼く痛烈な痛みに叫び、手を引っこ抜こうとするも、ソリュシャンになす術なく引き摺り込まれる。

やがて全身を飲み込まれたザックは、ソリュシャンの体内へと収まり、悲鳴を上げながら溶かされるのだった。

 

「さて、残るはお前だけだが?」

 

ペロロンチーノが残りの一人の額に弓矢を当てがう。

 

「ヒィ!い、命だけは!命だけはお助け下さい!」

 

 

「今から言う質問に答えろ。」

 

 

「え?は、はい!」

 

 

「ブレイン・アングラウスは何処にいる?」

 

 

「あ、あの洞窟の奥で待機してらぁ!し、質問には答えたぜ!こ、これで俺の、俺の命だけは助け」

「駄目だ」

「ワハハハハハハハハァ〜〜ッ!」

(そ…そうか!これは夢だッ!この今までに多くの女を犯し捨てて来た俺が死ぬ訳がないッ!夢だッ!夢だッ!バンザイ〜ッ!)

 

ドスッ バタッ

野盗は呆気なく矢に額を刺し貫かれて絶命する。

 

「洞窟の奥だな。行くぞ、シャルティア。」

 

 

「はいっ!ペロロンチーノ様ぁ!」

 

 

「俺は後ろから援護をするぞ。姿を消してな。」

 

 

「ペロロンチーノ様がお側に付いてくださるなんて、私はどうにかなってしまいそうでありんす〜!」

 

そう言ってペロロンチーノの下腹部に自らの頬を押し当てるシャルティア。

 

「こ、こら!それは任務が終わってからだっ!」

 

そ・れ・は?

 

「この任務が終われば、抱いて下さるのでありんすね!」

 

 

「しまった!」

 

しまった!じゃねーよ!!!!

否定しろやこのリア充め!

(嫉妬マスク同盟からのメッセージですた。)

 

「もうここが疼いて疼いて仕方ありんせん…」

頬を紅潮させ、物欲しげなトロンとした瞳で上目遣いにペロロンチーノの顔を見遣る。

ペロロンチーノに効果は抜群だ!

 

「止めて!その顔!理性飛ぶから!」

 

これ以上は俺の理性が危ないとシャルティアを諫めるペロロンチーノ。

 

「ガーン、でありんす…」

 

ガッカリするシャルティア。

 

「全く…先に行ってくれ、シャルティア。」

 

 

「はーい、でありんす。」

 

もう惚気んな。

 

 

 

 

洞窟の奥へと足を進める一行。

野盗達の死体があちこちに散らばり、ペロロンチーノが吐き気を催したので、シャルティアは虐殺を最小限に留めた。

その為、幸運な事に、シャルティアが『血の狂乱』を発動することは無かったのだった。

やがて、前方を行っていた吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)達が強者の気配を感じる。

 

「貴女達には荷が重い相手でありんす、双方、下がりなんし。」

 

吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)達を下がらせて直ぐ、日本刀を腰に収めた30代前半位の青髪の男が洞窟の奥から姿を表す。

 

「洞窟の入り口がやたら騒がしかったのはお前達の仕業って訳ね。んで?お嬢ちゃんたちは何者だい?」

 

青髪の男は、軽い調子で話を振りつつ、腰の刀にはしっかりと手を掛けている。

 

「立場を弁えなんし、人間。まぁ、素直に出て来た御礼にその言葉使いは目を瞑りんしょう。妾は、ジュリアーナ。貴方はブレイン・アングラウスでありんしょう?」

 

彼の言葉遣いを少し不快に思いつつ、ペロロンチーノの前なので我慢して慎重に事を対処するシャルティア。

 

「言葉使いは失礼だとは思ってるが、敬語を知らずに育った者でな、すまない。あと、お嬢ちゃんたちは人間では無さそうだな、差し詰め、吸血姫とやらかな?特徴がそっくりだ。」

 

ブレインもブレインで敬語を使う余裕なんて無い。

相手の強さを武技により事前に感知したブレインは、自身が命の危機に晒されていると悟っているのだ。

 

「吸血姫?違う違う、妾は真祖。その吸血姫などとは格が違う存在でありんすえ。」

 

しっかりと強者アピールをするシャルティア。

益々ブレインの心中は緊迫する。

 

「これは失敬。それにしても、真祖?の吸血鬼の嬢ちゃんの耳にも俺の名前が届いていたとはな。感動物だ。今度からは名前隠しとかなきゃな、化け物達までおびき寄せちまう。」

(コイツらに勝てるビジョンが湧かねえ!あの魔力量と圧倒的な力はなんだ!とてもじゃねぇが対処不可能だぞこれ!)

 

ジョークでも言っておかないと気がもたないと判断し、まるで自分に言い聞かせるかのように冗談を言う。

まぁ、笑うのもやっとの状態だった為に、引きつった顔になっていたことは言うまでもない。

 

「さて、単刀直入に言おうか。」

 

ペロロンチーノが『完全不可視化』を解き、ブレインの前に姿を表す。

 

「なっ!鳥人(バードマン)!?ど、何処に隠れていたんだ!?」

 

いきなり現れたペロロンチーノに驚き、危うく腰を抜かし掛けるブレイン。

シャルティアと同程度の存在が2つも眼前に並べば当たり前の反応である。

むしろ、腰を抜かさず、衝撃に耐え切ったブレインを称賛するべきだろう。

 

「良い反応だ。姿や気配を完全に消すことも出来るんだよ、私は。そこにいるジュリアーナの師匠、ペテロだ。お見知り置きを。」

 

ムッとして槍で刺そうとするシャルティアを片手で抑えつつ、ペロロンチーノがブレインへ自己紹介をする。

 

「お、おう…」

 

ブレインはただ頷く事しか出来なかった。

 

「お前は強くなりたいか?」

 

 

「…あぁ、強くなりたいさ。何故そんな事を聞く?」

 

 

「ガゼフ・ストロノーフに僅差で負けた雪辱があるのだろう?君には。」

 

 

「うっ」

 

痛い所を突かれたブレイン。

実際の所、ブレインとガゼフの実力に差など全く無いのだ。

ブレインはガゼフに勝ちたいという一心でここまでやって来れた。

努力のブレイン、才能のガゼフ。

しかし、ブレインは既に限界を感じていた。

肉体の全盛期でこれ以上の伸びは期待出来ないことも熟知していた。

もし、()()()()の可能性があるのだとすれば、その希望に必死でしがみ付くだろう。

そして今、その()()()()を実現しうる者達が眼前に佇んでいる。

 

「私は弓専門だが、剣術の神と呼ばれる私の友人がいる。彼を紹介してやっても良いのだがな。」

 

ペロロンチーノことペテロは、言葉に詰まったブレインへ更なる追い討ちを掛ける。

 

「…魅力的なお誘いだが、アンタらはちと信用ならねぇなぁ。」

 

 

「私達が異形種だからか?」

 

 

「まぁ、そうだな。」

 

それ以外にも不審な点は多々有るのだが…一番の不審点を指摘するブレイン。

 

 

「それを言うのならばジュリアーナと私は亜人種と異形種、互いに相容れない者達だったにも関わらず、深い関係を結んだ。種族など関係無いのだよ。むしろ、我々は種族間の隔たりを破壊する為に今、ここで君を誘っているのだ。」

 

種族など関係無いのだよ。

 

このニュアンスが、ブレインの胸中でライバルのかつての言葉を思い出させる。

(師と弟子の関係に、種族など不要。例えそれが竜だったとしても、だ。)

「…アイツと同じ、か。」

 

思わずそう言葉を零すブレイン。

 

「何か言ったか?」

 

 

「いや、知り合いにな、アンタと同じような考えを持つ奴が居てな。…分かった、ここはその提案に乗ってやるよ。」

 

ブレインは自身に足りなかった物を見出す。

それは師の存在。

更なる高みに移るには、師の存在が必要だと気付く。

かつてのガゼフに感謝しながらペロロンチーノに向かう。

 

「決まりだな。」

 

 

「おっと、人間を辞めろなんて言わないで欲しいかんな!」

橋◯かーんな

 

「そんな事はしない。あと、言い忘れていたが、ジュリと私は夫婦だ。」

 

爆弾投下!

 

「はぁ!?ちょっ、ペテロ、さん?あ、アンタ、弟子と結婚したのかよ!それもこんな幼い娘と?!」

 

 

「そうだが、何か問題でも?」

 

 

「い、いや、何もないが…」

 

 

「ふふふ、ペr…テロ様は私の旦那様でありんすえ。手を出すなら容赦はしないでありんすよ?」

 

 

「あ、ハイ。」

 

 

「ジュリ、【大白球(スノーボールアース)】に『転移門(ゲート)』を。」

 

 

「畏まりんした。」

 

 

「うわ!何だ!急に目の前に闇が!」

 

 

「魔法の一つ、転移魔法の最終形態だ。気にしないでくれ。」

 

 

「さらっととんでもねぇこと言わなかったか?!」

 

 

「気にするな!」

 

 

「え、えぇ…(困惑)」

 

(コイツらの仲間になるの、やっぱ辞めたほうが良かったか?)

いや、ブレインの選択は賢かっただろう。

この世界で最強の戦闘力を保有する集団、《アインズ・ウール・ゴウン》、《七つの竜星》といち早く仲間になったことは、もはや末代までの安泰を約束されたも同然である。

 

 

「案内は彼女が。吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)、彼を案内してあげて。」

 

 

「はっ!」

 

そう言ってブレインを闇の中に無理矢理押し込み、姿を消す吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)の一体。

他の者は周囲の警戒に当たらせ、後にはシャルティアとペロロンチーノの二人が残される。

 

シャルティアとペロロンチーノは2人きりの時、お互いに素の自分で話し合おうという約束をしている。

 

「ブレイン・アングラウスは無事にナザリックに連れ込めたな。」

ペロロンチーノは作戦の成功を喜ぶ。

 

「ペロロンチーノ様ぁ、何故あの者をナザリックに?この場で不敬の償いとして処刑してもよろしかったのでは?」

シャルティアはブレインの不敬な態度に腹が煮え繰り返りそうだった。

 

「なるべく事は穏便にしたいんだよ、シャルティア。今まで事を荒立てて結果的に良かった事など一つもなかったからね。」

 

 

「それもこれも『キギョウ』との戦いの時の経験から来る物なんですね!流石はペロロンチーノ様!」

 

(まだその設定忘れて無かったんかーい!)

シャボンヌが咄嗟に言ったアホなラノベ的設定を、まだ部下達は間に受けてしまっている模様(汗)

 

「あ、あぁ、そうだな、シャルティア。」

 

 

「ペロロンチーノ様ぁ、少しお願いが。」

 

「ん?何だい?」

 

「私の事を、『まいすいーとはにー』って呼んで欲しいです!今回のご褒美として…」

 

(か、かわわわ…)

「そ、そんなので良いの?分かった。い、言うぞ?……愛してるよ、マイスイートハニー。」

 

「〜〜〜〜〜!!!!!!わ、私もです!ペロロンチーノ様ぁ!!!!」

 

ナニヤッテンダコイツラ  ( ^ω^ ) 

 

「む?どうした?ハンゾウよ。…洞窟裏口へ冒険者が向かって来ているだと?分かった。…始末?…そうか、やむをえんな、そうしてくれ。…死体の後片付けだ。行こうか。シャルティア。続きはまた後で。」

ペロロンチーノは報告のあった洞窟裏口へと進み始める。

 

「む〜!了解でありんす!」

 

不満げに了解しつつ、洞窟の奥へと向かう。

しばらく歩くと、ハンゾウ達の気配が次々と消えていく事を感じ取った。

 

「ん?ハンゾウ達の気配が消えた…?ハンゾウは高レベルモンスター、そう易々と倒される訳ない筈なのだが…」

 

 

「この先に敵がいるのでありんすね、始末致しますか?」

 

 

「いや、強者の可能性が高い。少しハンゾウ達を倒した奴の面を拝みに行くか。」

 

 

「でもペロロンチーノ様が危険ではありんせんか?」

 

 

「大丈夫だろう、100レベルがいきなり襲ってくるかもしれないが、シャルティアと俺なら対処は可能だ。」

 

 

「それもそうでありんすね。」

 

洞窟裏口を抜け出て直ぐにハンゾウの気配が消失した場所まで急行する。

『完全不可視化』を掛けた二人は、やがて謎の人間の一団と遭遇する。

 

「あの長髪ロンゲ野郎か。」

 

冒険者然とした男と話すリーダー格らしきロンゲを忌々しげに一瞥する。

 

「ペロロンチーノ様が今仰った者は、その後ろに立つ高レベルの者達のリーダー格でありんしょう、しかし、対話している冒険者は低レベル、雑魚でありんす。あの中で最もレベルが高そうな者は…やはりあのロンゲでありんすね。」

 

漆黒聖典第一席次はロンゲ・ロンゲと名付けられてしまったようだ。

 

「対話は不可能、か。素直に撤退だな。気付かれると洒落にならんし。」

 

 

「そうでありんすね。」

 

そう言って立ち去ろうと茂みから立ち上がった瞬間のことだった。

 

「その茂みに何か居ます!」

第十一席次、「占星千里」が茂みに隠れていたシャルティアとペロロンチーノのそんさを捕捉してしまう。

 

「何?!」「さっきの魔獣の仲間か!?」

 

(な、何ィィ!!!!)

 

「見つかってしまいんしたね。口封じを致しんしょうか?」

 

 

「いや、ここは対話を試みるぞ。我々は君達と敵対したくは無い!話をしようではないか!」

わざと『完全不可視化』を解き、両手を上げながらペロロンチーノは対話を持ち掛ける。

 

 

「醜い亜人が!カイレ様!お願いします!」

 

「心得た!」

 

しかし、この言葉は後方にいた神聖呪歌とカイレには届いておらず、勝手に《ケイセケコウク》を使用してしまう。

 

「待て!止めろ!カイレ様!駄目です、待っ…」

隊長格のロンゲが止めに入ろうとするも、もう遅い。

 

「はぁっ!!!」

老婆のチャイナドレスから眩い光が放たれる。

 

「何をする!?このババア!『清浄投擲槍』!」「『毒矢の雨(アシッド・レイン)』!『一点狙撃』!」

 

それを攻撃だと認識したシャルティアとペロロンチーノは、瞬時に攻撃へと移る。

 

「か、カイレ様!」「セドラン!?大丈夫か!」「ボーマルシェ!頭が!」

 

シャルティアの放った槍がセドランを、毒矢を大量に浴びて第十二席次とカイレが、一点狙撃を防ごうとしてボーマルシェがそれぞれ負傷する。

内、セドランとボーマルシェは即死した模様だ。

 

しかし、カイレの放った竜型の光はシャルティアに直撃した。

 

「大丈夫か!?シャルティア!」

 

光を浴びたシャルティアは動きを止め、虚空を見つめている。

 

「シャルティアァア!!!」

 

目が虚になったシャルティアの姿を見て、ペロロンチーノはシャルティアが精神支配を受けたのだと感づく。

今の彼女にはペロロンチーノの声さえ届かなくなっていた。

 

「よくも仲間を!『一の突き』!」

 

セドランとボーマルシェを立て続けに失った隊長が武技でペロロンチーノを攻撃する。

隊長の槍はペロロンチーノの左肩を指し貫いた。

 

「グゥ、シャルティアに何をしたぁーーー!!!!『千の矢武雨(サウザンレイン)』!」

 

しかし、負けじとペロロンチーノも一旦距離を取った後、スキルを使用する。

使えなくなった左腕の代わりに左足を使い、幾千もの矢を謎の集団に浴びせる。

 

「総員!撤退だ!冒険者の方を守りつつ退避!」

 

隊長は撤退を判断し、迅速に逃亡を謀ろうとする。

 

「逃がさねぇ!『洛陽の礫(ガレット・デ・ルオ・ヤン)』」

 

 

「グハッッ!」ベシャッ

 

しかし、味方への指示に気を割いた為、ペロロンチーノの攻撃を回避できず、もろに右腕を刺し貫かれる。

 

「「隊長!」」

 

「『五里霧中』!」

 

第七席次のスキルによって、謎の集団は行方を晦ます。

 

「クソッ!逃すか!」

 

後を追おうとするも、煙幕が晴れる兆しはない。

 

「シャルティア!大丈夫か!?シャルティアァア!」

 

再びペロロンチーノはおかしくなったシャルティアへと向かうが、やはりシャルティアは虚な目をペロロンチーノに向けるだけ。

 

「シャルティア!!!っ〜!なぁ、返事をしてくれよ!う、うぁあああ!!」

 

帰ってこない返事。

シャルティアを守れなかった悔しさでペロロンチーノは打ちひしがれる。

 

「ペロロンチーノ様!ここは危険です!お戻りを!」

 

シャルティアの状態の急変を察知した吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)の一体が、シャルティアの前で蹲るペロロンチーノを発見する。

 

「嫌だ!シャルティアを置いて行く訳には!!」

 

 

「ペロロンチーノ様!シャルティア様のご様子が明らかに変です!今のシャルティア様のご様子を見るに、精神への干渉の可能性が高く、このままでは御身がシャルティア様に襲われる危険性が!ここは一旦退避を!」

 

そう、シャルティアの今の状態は誰がどう見ようと精神への干渉によるものだと分かる。

迂闊に何かすれば、攻撃を受ける可能性だって十二分にあるのだ。

 

「ぐっ………シャルティア、待っていてくれ、必ずお前を元に戻すからな!」

 

ペロロンチーノはそう言い残し、この場を去る。

残されたシャルティアはただ微笑を浮かべて佇むだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

〜数時間後〜

 

「ふむ、漆黒聖典を追っていたが、まさか世界を穢す者と接触するとは。やはり、こぞって強い者に執着する物だなぁ、プレイヤーという者は。」

 

(あの者をこのまま放置しておく訳にもいかない。強さは…戦ってみるしか確かめる手段は無さそうだねぇ。)

 

やがてシャルティアの頭上に謎の白金鎧が現れる。

白金鎧は動かないシャルティアをじっくりと観察した後、片手を掲げ、始原の魔法を使用してシャルティアを周囲一体ごと大爆発させる。

 

「あら?随分と痛い事してくるでありんすねぇ???」

 

しかし、その攻撃を耐え切ったシャルティアは、即座に白金鎧との距離を詰めると同時に《スポイトランス》を突き出す。

 

(中々の強さ…っ!タイマンだと全力を出さなくては太刀打ちが困難な相手か…!)

 

スポイトランスによる攻撃を大剣で受けつつ、白金鎧の操縦者、ツアインドルクス・ヴァイシオンはそう判断する。

 

「デカブツのくせに、動きはやけに速いでありんすね?まるで恐怖公のようでありんす。あぁそれだと恐怖公に失礼でありんしょうか?まぁどちらにせよ、お前を消すことには変わりありんせん。」

シャルティアが猛攻し、その攻撃を、多くの武器を自在に操ることで何とか防ぐ白金鎧。

 

(ぐっ、何とか対抗するだけで精一杯だ、隙を見て逃げ出さなくては…!)

 

その時、シャルティアと白金鎧の周囲に骨の竜(スケリトル・ドラゴン)のような竜の頭部が大量に召喚される。

 

「ケンカか?オイラもまぜてくれないかい?」

 

上空から声がした。

しかし、上を見ても誰もいない。

 

「な、何故貴方がここにいるのでありんすか!?」

 

しかし、シャルティアはその声質と特徴的な竜の頭部から声の主を特定する。

 

 

 

 

そう、サンズだ。

 

「hehe、それはヒミツだ。まぁ、しいていうなら、おまえさんがいまひじょうにヤベーんだ。かんたんにいうと、けんのんだったからけねんしててんけんしにきたしだいだ。だって、

hehe、おまえさんら…

 

なかみからっぽだろ?

 

なにもつまってないのによくうごけるな。

それとも、だれかさんのあやつりにんぎょうか?

hehe、まぁそれはいいとして、おまえさんにひとつききたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

おまえ、最悪な目に遭わされたいか?(Do you wanna have a Bad time?)

 

 

シャルティアとツアー(操り人形)はさいあくなときをすごそうとしている…!

 

エwウwデwッwデwアwッwドゥwッwドゥ〜ワドゥワw

ーーーーーーーー

 

 

〜そして1日と数時間後〜

 

 

「やはり…攻撃が当たらないでありんすね、不可視化など捨ててかかってきなんし。」

 

サンズの攻撃は休みなく続き、シャルティアも白金鎧も攻撃の回避だけで精一杯だった。

シャルティアや白金鎧からの攻撃をサンズはどれ一つとして受け付けはしなかった。

互いに避け、シャルティアや白金鎧は被弾すれば回復して、サンズはこの世界のアンデッドの種族特性により、疲れることを知らず。

そして戦いは長期戦となり、1日掛かってもまだ終わりなき戦闘が続く。

 

「hehe、そうはいかないぜ?」

 

そうシャルティアに返答しながら骨の竜の頭、ガスターブラスターと骨をまた大量に召喚するサンズ。

竜の口から放たれる青白い炎と青白く発光しながら迫る骨の山。

まさに地獄絵図である。

 

(逃げるなら今の内に…)

白金鎧はシャルティアとサンズの戦いから逃亡を何度も謀るが、逃げる為にはサンズのスキル『空間封鎖(スペイシアル・ロック)*2の範囲外に出なくてはならず、当然それをサンズが見逃す筈は無い。

 

「おっと、どこいくつもりだ?ちゃんとやったことへのつぐないはしなくてはなぁ?シャルティアにわびのひとつかけられねえのか?まぁ、からっぽのやつになにいってもむだか。」

 

進路に回り込まれ、骨攻撃を仕掛けられる。

 

「…私はスレイン法国の漆黒聖典を追っていた者だ。彼等と私はまず国籍から違う。そして、お前たちはこの世界を穢す者、攻撃にもれっきとした大義名分がある。謝罪をする義務は私には無い。」

 

攻撃を戦斧で塞ぎつつ、白金鎧はそう言葉を発する。

 

「おっ、やっと口を開いてくれたか。まぁ、まだ口を割ってはいないがな。おまえさんがどこのだれかによって、このあとのオイラの行動が変わってくるが、おまえさん、何者なんだ?」

 

 

「…」

 

*ヨロイはダンマリしている。

 

「まぁ、だいたいはわかるが。おまえさん、アーグランドのやつか?」

 

 

「…っ!」

 

*ヨロイはとてもおどろいている。

 

「おどろいてるな、そしてドラゴンだな?」

 

「おんし、目が狂ったのでありんすか?どう見てもドラゴンには…」

追い付いたシャルティアがそうツッコミを入れるが…

 

「…何故分かった?」

 

「ヴェッ!??」

 

「ドラゴンのニオイならかぎなれてんだよ。ながくいっしょにいたからな。まぁオイラはハナなんてないがな。なにせ、オイラはスケルトンなんでね。」

 

 

「…」

 

とうとうシャルティアも白金鎧もダンマリを決め込む。

 

 

「おいおい、おしゃべりはなしってか?」

 

「違うでありんす!さっきの話でおど…少し考え事をしていただけっ!そんなにお喋りがしたいなら、妾が相手になるでありんすよ、サンズ?」

サンズに『清浄投擲槍』を向けながらそう言葉を零すシャルティア。

 

「ひとに『清浄投擲槍』むけながらいうヤツのセリフではねえだろ。まぁ、オイラがヒトではなくスケルトンだからか?」

 

 

「この…っ!いい加減一発位は食らいなんし!」

 

必中効果付きの攻撃まで何故か避けられる有様に、シャルティアが痺れを切らす。

 

「ざんねんだが、おことわりだ。こんなにてんきもいいのだから、みんなでヴァンパイアのBBQたいかいなんてどうだ?まぁ、おまえさんには『粗挽きソーセージ』としてさんかしてもらうがな。俺のブラスターで一方的に焼かれてみないか?」

 

 

「お断りでありんす。誰が好き好んで炎属性と聖属性の青白い炎に炙られるものでありんすか!」

 

そう、ガスターブラスターの青白い炎には炎属性と聖属性、つまりアンデッド系、悪魔系、暗殺者系等、カルマ値が悪になりやすい職の者達の弱点が付けるようになっている。

そこに『終末の寄生木(ミストルティン)』のカルマ値善への極ダメージ効果も付与。

シャルティアと白金鎧・ツアインドルクスがサンズを突破する事は絶望的なのだ。

 

「hehe、それだけじゃないぜ?『闇属性』と『竜属性』もプラスな。オイラのこうげきはほぼすべてのヤツにとおるぜ。そう、アンデッドもドラゴンもヨロイもまとめてねんしょうできるといっておこうか。」

アンデッドの特権『闇属性』負のエネルギーの付与に加え、ガスターブラスターの元の土台は『骨の竜(スケリトル・ドラゴン)』。

竜の吐息(ドラゴンブレス)に付与される『竜属性』も付いてくる!

本当にどうしようもない、防ぎようが無いのだ。

 

「…」

(この者達は明らかに危険だ。できればこの鎧を爆破し、出来る限りのダメージを与えたい。だが、スケルトンと吸血鬼に上手く魔力を削がれ、二体同時に爆破するタイミングをも逃した…!…まさかっ!このスケルトン、まさかわざと私と吸血鬼と自身の距離を的確に操作して…?くっ、向こうの方が一枚上手だったか…っ。)

 

サンズの行動の真の狙いに気づき始めるツアインドルクス。

 

「おいおいまただんまりさくせんか?いいかげんまともにかいわしてほしいぜ。」

 

 

「っ…」

 

 

「分かったでありんす!おんしは差し詰め、何処かの竜の操作する鎧、といったところでありんすね?」

 

先程のサンズと白金鎧の会話から白金鎧の正体にようやく気付くシャルティア。

 

「おっと、バレちまったようだなぁ?そして、そのヨロイのいろからして、おまえさん、『白銀』か?」

 

どうやらサンズは白金鎧の正体を全て見破ってしまったようだ。

 

「…っ!」

 

 

「すこし動きが鈍ったな?図星だろ。まぁ『白銀の鎧』、『強さが異様に高め』、『十三英雄の中に()()()()姿()()()()()()()()()ということ』、けっていだになるある『情報G』、これらのようそをふまえればおまえのしょうたいはおのずとつかめてくる。まぁ、そっくりさんがいればまたべつだがな。」

 

サンズは種明かしを行う。

遂に正体が完全にバレた白金鎧、ツアインドルクス・ヴァイシオン。

彼はアーグランド評議国の奥地で悔しさに歯噛みするのであった。

 

「…確信した。お前達はこの世界を穢す者だと。…お前達の目的は何だ?この世界との共存か、それとも傍観か、それとも侵略か…」

 

 

「まだこっちにきてまもなくてな。まだきめてないぜ。ただ、オイラはへいわにいきたいとおもっているぜ?まぁ、せんのうなんてされちゃあはなしはべつかもな?」

そう言って右目に青い光を灯すサンズ。

 

「…」

白金鎧は黙ったまま回避に専念するようになる。

 

 

「!くるか…選手交代、だな。そんじゃ、オイラはこれでにげさせてもらうぜ?後は頼んだ、ヒーロー。」

不意にサンズは何かを察知する。

踵を返し、シャルティアと白金鎧に背を向け、骨の竜達と骨を撤収させる。

 

「なっ!逃げるつもりでありんすか!絶対逃がさない!『究極の妨害(アルティメット・ディスタープ)』!」

咄嗟に魔法を掛けてサンズをこの場に留めようとするシャルティア。

 

「『魔法耐性』あげてくれてサンキューな。スキル『空間操作』」

魔法使用を不可にする呪文も、スキルを使った転移をするサンズには無意味である。

 

「ちぃっ!逃げられた…だが敵はもう1人残っているでありんすねぇ?」

残った白金鎧を見やり、ニヒルな笑みを浮かべるシャルティア。

 

「…悪いが、私も退避させてもらう。『世界い…「『次元断切(ワールドブレイク)』」…くっ!」

 

彼女の笑みを見てか、『世界移動』に必要な魂が溜まったのか、術を発動させようとした白金鎧。

しかし、寸での所で何処かからの斬撃により、鎧の外殻に甚大なダメージを受け、魔力が雲散してしまう。

 

「不可視化のヤツは…逃げたな。ちっ!追っている暇はねぇな。」

そう、シャボンヌが参戦したのだ。

 

「『清浄投擲槍』二本でありんすえ。これでも喰らいなんし!」

シャルティアはシャボンヌを攻撃対象に定め、白金鎧共々排除しに掛かる。

 

「おっと、『次元断層』、危ないではないか。そんなにペテロが恋しいのか?」

それを軽々と防ぎつつ、白金鎧への一芝居を打つシャボンヌ。

 

「ペテロ…様!そうだわ!旦那様はご無事でありんすか?!」

 

シャルティアも良い感じに乗ってくれた模様だ。

 

「いや、かなり手痛くやられたのか、まだ傷が治らない。あと一つ、ジュリアに聞きたいことがある。昨晩お前とペテロを襲った犯人は分かるか?」

 

シャルティアへ本題を切り出す。

犯人は本当にスレイン法国なのか、それともまた別の存在なのかを知るために。

 

「そこの鎧によれば、スレイン何ちゃらの特殊部隊?だと。話は終わりでよろしいでありんすか?」

 

この瞬間、スレイン法国のギルティがシャボンヌの中で確定する。

 

「あぁ、有難う。では、シャルティアよ。鎧共々一度倒させて貰おうか。」

 

そして、本当の戦闘が始まる!

 

「お受け致しんす。では、本気でかからせていただくでありんすえ?」

 

向かうシャルティア。

瞬間、シャルティアはシャボンヌへとスポイトランスを一直線に突き出す。

しかし、これは《ワールドチャンピオン・ミズガルズ》で容易く受け流されてしまう。

続いてシャボンヌがもう一本の剣《ドラコグリードソード》を引き抜くと、白金鎧共々滅多斬りにしようと掛かる。

シャルティアは上手く回避し、被弾を最小限に抑える。

白金鎧は守りの体制に入り、ダメージを軽減された。

しかし、狙いはダメージの蓄積では無い。

剣撃に誘導されたシャルティアと白金鎧は背中合わせとなり、しかもシャボンヌの剣の可動域内に入る絶好の位置に移動させられていた。

 

「…そこかっ!『次元断切(ワールドブレイク)』!」

 

二人が十分に近い距離になったと同時に『次元断切(ワールドブレイク)』を叩き込む。

 

「『不浄衝撃盾』!」

「…何っ?!」

しかし、シャルティアに完全に塞がれてしまったようだ。

 

(っ!『自己時間加速(タイム・アクセラレータ)』、うおっと、危ねぇ〜な!シャルティアの不浄衝撃盾のこと忘れてたわ…)間一髪、跳ね返ってきた『次元断切(ワールドブレイク)』を避けたリューシ。

その為、体制を崩したシャボンヌへシャルティアが特攻する。

しかし、剣道で死ぬほど鍛えられた反射神経が反応、瞬時に剣をシャルティアの槍に合わせる。

刹那、体制を立て直し、自らの剣と交差するスパイトランスをシャルティアごと力任せに薙ぎ払う。

運良く、シャルティアはノックバックされたようだ。

 

「『竜爪』、そして『龍牙』!」

 

ノックバックされたシャルティアと、『次元断切(ワールドブレイク)』のダメージがまだ回復出来ていない白金鎧に、立て続けに武技を放つ。

 

 

「『不浄衝撃盾』!また追加効果の衝撃波を躱した?!、『死せる勇者の魂(エインヘリヤル)』!」

何とかスキルを使い、この攻撃を受け切るシャルティア。

「『遁逃』、『庇保』!」

 

一方、白金鎧も始原の魔法を使い、上手く攻撃を受け流す。

 

「そして『馘首(ディケイプ)』、『宝樹龍牙突 壱式』!」

 

しかし、それだけでは止まらないシャボンヌの猛攻。

更に二つの斬撃が2人を襲う。

そして、るろ◯に剣心文化は近未来の社会の中でもまだ根強く残っていたのだった。

 

「ぐっ…『不浄衝撃盾』、『第四位階死者しょ(サモン・アンデッド・4)…グバッ…な、は、早い!エインヘリヤルごと私の魔法を無効にするなんて…」

 

馘首(ディケイプ)』は完全に防ぐものの、続く『宝樹龍牙突 零式』は防げず、しかもクリティカルを引き、今の攻撃でシャルティアのHPを2.5割削る。

 

「『庇保』、『防…』…間に合わなかったか。」

 

一方白金鎧も始原の魔法のリキャストタイムによって防げず、損傷率は3割。

 

「まだスキルの打ち合いの段階だぞ?『善なる極撃(ホーリー・スマイト)』、『焼夷(ナパーム)』」

 

そう、まだシャボンヌは只の攻撃スキルを使っただけに過ぎない。

聖騎士(パラディン)の職を取っているリューシは信仰系魔法も使用可能なのだ。

シャボンヌの指先から眩い光の束が一直線にシャルティアへと向かう。

空中から豪炎が吹き出し、白金鎧を巻き込みながら空中へと吹き上がる。

 

「ガァあっ!」「…『自己再生』」

 

モロに直撃し、2人の体力はもはやレッドゲージにまで差し掛かっていた。

 

「くっ、はあああ!!!魔法三重最強化(トリプレットマキシマイズマジック)朱の新星(ヴァーミリオン・ノヴァ)』!」

 

ここでシャルティアが光を力技で押し除け、シャボンヌの眼前で炎系第九位階魔法を唱える。

 

「ぬぅ、おめでとう、初ダメージだ、シャルティア。そして終わりの時だ。『七の御使い(セブン・トランペッター)』」

 

喰らったシャボンヌはHPが中々削られるが、お返しと言わんばかりに今度は第十位階の信仰系魔法を唱える。

 

「精霊達よ、あの者達を攻撃せよ。」

 

召喚された7体の其々属性が異なる精霊達が、シャルティアと白金鎧へと向かう。

 

「『第十位階死者召喚(サモン・アンデッド・10th)』!」

 

それに対して、シャルティアは破滅の王(ドゥームロード)精霊髑髏(エレメンタル・スカル)を其々二体ずつ召喚する。

しかし、それに引き換えシャルティアのMPは底を尽きてしまった。

 

「くっ…」

 

一方、白金鎧は7つの武器を操作し、何とか精霊達二体に応戦する。

幸い、精霊達の攻撃はシャルティア側に矛先が向いていた。

やがて召喚された者達の熾烈な争いは、お互いの相討ちで決着がつく。

 

「精霊達は全員相討ち、か。良くここまで粘ったな、シャルティアよ。だがこれで終わりにしよう。『道具操作 (オペレート・オブ・マジックアイテム)』」

 

満身創痍のシャルティアを更に追い込めるように、リューシは更なるスキルを使用する。

 

「な!私の蘇生アイテムが!」

 

ペロロンチーノより授かりし蘇生アイテムの突然の喪失。

辺りを見渡すシャルティア。

シャボンヌの右手には、その無くなった蘇生アイテムが握られていた。

 

「このスキルは相手から一部を除いて全ての相手の持つアイテムを一つだけ任意に選んで自分の物に出来るという物。まぁ、一つだけだから使い勝手は悪いが、このスキルでお前から蘇生アイテムを取り上げることなど造作もない。」

 

スキルの解説が終わると同時に、《剣聖のオーラⅣ》を展開し、剣を握り直すシャボンヌ。

 

「くっ!最後の『清浄投擲槍』!」(ヤバい、来る!!)

 

危険を感じ、咄嗟に最後の攻撃スキルを使用するシャルティア。しかし、もう時は既に遅し。

 

「引導を渡してやろう。『次元断層』、そして、魔法最強化(マキシマイズマジック)束縛(ホールド)』、『次元断切(ワールドブレイク)』!」

 

シャルティアの『清浄投擲槍』を防ぎつつ、動きを制限する為の『束縛(ホールド)』を放つ。

束縛(ホールド)』は瞬時に解かれるも、その後にくる『次元断切(ワールドブレイク)』は到底受け切れる筈も無く。

 

一閃。

 

シャボンヌの放った斬撃は、シャルティアの心臓を上半身、更にはその場の空間ごと真っ二つにした。

同時にシャルティアのHPゲージは0を指し示す。

 

「い、一撃…わ、私を…こ…れが…偉大…なる………至高なる…御方………ペロ………ロン…………チーノ…様………ごめ…ん…なさい…傷……付け……て……しま………」

 

瞬時にシャルティアの身体は淡い光に包まれる。

意識が薄れ行く中、シャルティアは身体が完全に消滅するまでペロロンチーノのことを想った。

 

 

「すまない…シャルティア………さて、残るはお前だけだ。」

 

シャルティアへの謝罪。

しかし、時は待ってはくれない。

逃亡を謀った白金鎧の眼前に回り込み、退路を完全に塞ぐ。

 

(まさか消耗していたとはいえ、強大な吸血鬼を一撃とは……不味い…体力がまだ『世界転移』を使えるだけ回復出来ていない…ここは…)

白金鎧、ツアーに取っては最悪の盤面。

せめて『世界転移』分の魂が回復するまで時間稼ぎをすることしか手は無かった。

 

「…お前は『ぷれいやー』だな?」

 

普通のプレイヤーであれば、この単語を聞いた瞬間、「何故分かった!?」という反応を示す。

しかし、シャボンヌは違った!

 

「何のゲームのプレイヤーかな?」

 

相手の鎧の正体がツアインドルクスだと気づいていたシャボンヌ。

相手を混乱させる嘘情報を刷り込ませつつ、時間稼ぎも潰せる良策を取る。

 

「…」(げーむ?…ぷれいやーに種類見たいな物は無かったと思うのだが…まさか、ぷれいやーはぷれいやーではなかったのか?それともブラフか?)

効果は覿面だ。

ツアインドルクス・ヴァイシオンを困惑させることが出来た。

 

「話は終わりか?『竜爪』」

 

黙り込み、動かなくなった白金鎧に更に一撃を喰らわせる。

 

 

「……」

しかし、操作権を放棄されたのか、

白金鎧はその一撃を喰らった瞬間、力無く空中から落下する。

 

 

()()()な。」

 

 

鎧の残骸を一瞥しつつ、

苦々しげに空を仰ぐシャボンヌだった。

*1
シャボンヌはリューシ、ヘロヘロはヘイロー、ペロロンチーノはペテロ、シャルティアはジュリアーナ、ナーベラルはナーベソリュシャンはソリュシア、セバスはセバスチャン

*2
次元封鎖(ディメンジョナル・ロック)』の上位版で、WI所有者であるか使用者の討伐でのみ術が解ける。範囲内ではスキル使用者自身以外は転移不可である。しかし、その他の手段で空間からの脱出は可能である。強力なので、効果範囲がその分狭くなっている。

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