ある転生者のオーバーロード   作:Solo Mon

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27.反撃

ーーーーーーーー

 

竜爪(ドラゴン・タスク)族 村大広場】

 

 

「俺は緑の爪(グリーン・クロー)族のザリュース・シャシャ!」

 

「私は朱の瞳(レッド・アイ)族、族長代理のクルシュ・ルールです。」

 

「族を代表する者として、竜爪(ドラゴン・タスク)族の族長と話がしたい!」

 

「ザリュース…囲まれているわよ…」

 

 

「…対話の余地無しか?最悪の場合、君だけは逃げてくれ…俺は時間稼ぎをする。」

 

 

「そんな!一人でなんて逃げたくない、私も戦うわ。」

 

 

「大丈夫だ、上手く逃げ果せて見せる。これでも幾つもの修羅場を乗り越えてきた…」

 

しかし、周囲を囲む屈強な竜爪(ドラゴン・タスク)族の戦士達は、それ以上の行動を起こしはせず、しばらくは二人(+ロロロ)との睨み合いに留まっていた。

やがて、包囲網の中から一際体格が大きく、ゴツい蜥蜴人(リザードマン)が一人、姿を表す。

身体に刻まれた幾つもの傷、そして周囲の蜥蜴人(リザードマン)達の反応から、こいつが族長だと確信するザリュース。

 

「ほ〜う、お前が四大至宝、《凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)》の持ち主、か。んで、そこのちっこいのは…植物系モンスターか?」

 

「な!?違います!」

 

 

「冗談を本気にすんなや、女々しい。俺は竜爪(ドラゴン・タスク)族族長、ゼンベル・ググーだ。ゼンベルで良いぜ〜。」

 

 

「…こちらもザリュースで構わない。それで…」

「お前の言いたいことは大体予想が付く、だが!俺達が信じるのは強者のみ!」

 

そう言って徐に戦斧を振り回し、ゼンベルはこうザリュースに告げる。

 

「剣を抜きな。」

 

 

ーーーーーーーー

その頃…

 

【ウォーターフェル waterfall ???】

 

 

「Ngaaaaaaaaaaaaaaaa!!!暇だァアアアアアア!!!!」

 

 

「ど、どうしたの?暇って…アンダイン、ロイヤルガードの仕事は?」

 

「陛下が私に働き過ぎだから休めって…それで何すれば良いか分かんないのだ!」

 

 

「うーん…皆で集まってお茶をするのはどぉ?」

 

「お!それ良いな!私の手料理も持って行ってやろう!」

 

 

「ママがいるから、アンダインまで手料理を持って行っちゃうと皆食べきれないよ?」

 

 

「ふぅむ………………お土産にどうかと思っていたんだが…」

 

 

「お土産なら良いんじゃないかなぁ。この前サンズがお寿司をお土産に持って行ってくれたし。」

 

「お寿司だと?!聞いたことないが、私も食べたいぞ!!」

「共食いになっちゃうからダメ。」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「…クソォ…俺の負けだぁ…このままやっても俺が不利だ。」

 

ザリュースとゼンベルの決闘は早期に終わった。

開始早々はゼンベルが攻勢に出て、ザリュースは防戦一方だったが、ゼンベル側はザリュースに擦り傷一つ付ける事が出来なかった。

しばらくして、ザリュースは罠を仕掛ける。

自然なタイミングで、敢えて隙を作り、カウンターを狙う作戦だ。

そうして隙をあえて見せたザリュース。

防戦一方で全く隙をつく事が出来ないもどかしさから痺れを切らしていたゼンベルにとって、それは絶好の機会だと思わせた。

必殺技を叩き込むゼンベルに、その攻撃を的確に避けつつ、手痛い反撃の一撃をお見舞いする。

ザリュースの勝利は明白だった。

 

 

「大丈夫?ザリュース、今治癒魔法を掛けるわ。『中傷治癒(ミドル・キュア・ウーンズ)』」

 

最終的なザリュースの負傷は擦り傷一つであったが、クルシュの厚意に甘えて置くザリュース。

体力もそこそこ削れていたので、ザリュースにとってはとてもありがたい物だった。

 

「あぁ、ありがとう、クルシュ。」

 

 

「おいおい、ズリィじゃねぇか、俺にも魔法掛けてくれや。」

 

ザリュースよりも負傷し、体力も削れているゼンベルに治癒をしない訳にもいかない。

 

「ハイハイ。」

 

クルシュはゼンベルへザリュースと同様に治癒魔法を掛ける。

 

「さて、双方回復も終わったことだ、そろそろ本題に入らせて貰いたい。」

 

 

「おぉ!もっとお前らのアツアツぶりを見たかった気もするがなぁ。まさか決闘前まで惚気を見せつけてくれるたぁ思わねぇよ。」

 

 

「//」

 

その言葉に少し頬を赤らめるクルシュ。

 

「さぁ〜て、これからお話、と行きたいところだが、その前に酒だ!」

 

 

「????」

 

「????」

 

 

「ア〜、ホラ、面倒くせぇ話は酒の席でするモンだ!分かるだろ?!」

 

 

「分かんねぇよ!!!!」

 

 

〜結局〜

 

竜爪(ドラゴン・タスク)族領の広大な広場を舞台に、多くの蜥蜴人(リザードマン)達が巨大な焚火の周りを踊り回る。

族長席の隣に座るザリュースは、物思いに耽っていた。

 

「…」

(この賑わいも、最後になるかもしれないな…)

祭り囃子の太鼓の音、騒ぎ声、唄声、手拍子…

勝てるか分からない相手との戦争に行くザリュースにとっては、二度と聞くことが叶わない物であった。

 

「おぉ!植物系モンスター!」

 

ゼンベルが不意に、いつのまにか近づいて来ていたクルシュへと声を掛ける。

しかし、クルシュは無視してロロロを撫でる。

女性の外見を馬鹿にしてはならない。

 

「…話は終わったの?」

 

 

「一通りな。」

 

 

「それで、どうするの?」

 

 

「あぁ?戦うに決まってんじゃねぇか!」

 

 

「ホンット戦闘狂ね。」

 

クルシュは呆れ顔になる。

 

「褒めんなよ!照れんじゃねぇか!」

 

クルシュの視線が少し冷ややかになったことなど意にも返さず、ゼンベルはこう言葉を続ける。

「んで、勝てるのか?」

 

「分からない。先触れとして来た、あのモンスターを覚えているか?」

 

 

「スマンな、寝てた⭐︎」

(寝るな。)

ザリュースは内心でツッコミを入れる。

 

「…向こうは、こう言ったんだ、『必死の抵抗をして見せろ』、ってな。」

 

 

「ムカつくな、最初(はな)から此方を下に見ていやがる…」

 

 

「そうだ、向こうは完全に此方のことを舐め切っている。それも、こちら側を確実に潰せるだけの兵を集めているということ。その思い上がりを俺達は叩き潰す!」

 

 

「おぉ、良いねぇ!」

 

 

「でも、向こうのプライドをズタズタにして、メリットは無いと思うわ。私は、例え鎖で縛られても、皆命がある方がいいと思う。」

 

その意見を内心では尊重しつつも、ザリュースは黙殺する。

先触れのモンスターの態度、そして、ソイツが立っているだけでも感じる程に強大な戦闘力、それが到底不可能な事を悟っていた。

 

「…耳を澄ませてみてくれ。」

 

祭りは終盤に差し掛かり、蜥蜴人(リザードマン)達は更に熱狂的に踊り回る。

まるで四肢を止めることを忘れてしまったかのようだ。

酒に酔ったヤツの雄叫び、祭り囃子の太鼓の音、それに合わせて歌う声、手拍子に地団駄…

 

「…戦に負ければ、こんなことももう二度と出来ないかもしれない。」

 

 

「出来るわ、きっと。そうでしょ?」

 

無意識にそっとザリュースの手を握るクルシュ。

 

「…そうかな。俺達が死んでいくのを見て、楽しもうと言うような者達に、慈悲が有るとは思えない。」

 

 

「確かに。…でも、言いたいのは……

 

 

         死なないでね。」

 

「死なないさ。()()()()を聞くまではな。」

 

 

「!//」

 

 

「ア〜もう酒無くなっちまった……追加持ってかねぇとな〜」

ーーーーーーーー

 

〜そして、決戦の日〜

 

シャースーリューを筆頭に、各部族の長達が率いる蜥蜴人(リザードマン)連合軍は、戦場となる沼地にて布陣を整えていた。

全ては蜥蜴人(リザードマン)の存亡の為に…

 

「聞けぇ!全ての蜥蜴人(リザードマン)達よ!認めよう、敵は多い。しかし、恐れることはない!我等五つの部族は、歴史上初めて同盟を結んだ!これにより!我等は一つの部族となったことにより、五つの部族の精鋭達が互いに協力し合い、我等を守ってくれる!敵を一体でも多く倒し、奴らに蜥蜴人(リザードマン)の力を見せつけるのだ!」

 

 

ウオオオオオオオオ!!!!

 

 

「出陣っ!」

 

 

ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

決戦の火蓋が、切って落とされた。

 

〜〜

 

序盤は骸骨騎兵(スケルトン・ライダー)達のスペックと数の差で、ナザリック側が事を有利に運んでいった。

 

「成る程、騎兵で強引に包囲殲滅、といった所か。」

 

見ると、移動速度の速い騎兵連隊の動きに翻弄され、周囲を本隊から切り離された蜥蜴人(リザードマン)達が次々に殺されていった。

騎兵へな対応が遅れた蜥蜴人(リザードマン)側は、既に前線を浸透されつつあった。

 

「では、こちらも最初の手を打つとしよう。」

 

太鼓の音が鳴り響き、作戦の第一段階を知らせる。

蜥蜴人(リザードマン)軍は一旦全員が前線を放棄して、後方へと退避していく。

これを追撃しようとする骸骨騎兵(スケルトン・ライダー)達に異変が生じる。

 

不意に馬が転倒し、大部分の部隊が行動不能にされたのだ。

 

それを好機とこれ幸いに追撃の矢を浴びせる蜥蜴人(リザードマン)

騎兵で強引に突撃して来たナザリック軍は、予め蜥蜴人(リザードマン)達が仕掛けた罠に大部分の部隊が引っかかり、追撃の弓矢によって、騎兵師団に多大なる損害を受けた。

ナザリック軍は反撃として、長弓師団を投入。

蜥蜴人(リザードマン)達はその一撃でかなりの数葬られたものの、それを受けて彼等は硬い装甲を持つ鋭き尻尾(レイザー・テール)族の戦士達が長弓兵に向けて特攻、大部分を殲滅に成功する。

 

「アイツらナメてんのかぁ?」

 

「何だか理解できないな。」

 

 

「…まさか、指揮官がいないのか?」

 

「ってことは、頭数だけ揃えりゃ良いって思われてんのか?」

 

「ふざけやがって!」

 

 

「だが、今は出来るだけ敵の数を減らしておいた方が良いだろうな…」

 

「チッ、俺も行けりゃあよ…」

 

 

「マァマツ、ゼンベル。」

 

 

「敵の親玉が出るまでの辛抱だ。それまでは各部族の精鋭達の実力を信じて待とう。」

 

 

 

程なくして、ナザリック軍は急遽魔獣部隊を前線に参加させ、大規模攻勢に出ようとした、が…

蜥蜴人(リザードマン)達の召喚した精霊により、その攻勢は阻まれ、ナザリック軍は更に兵を失うこととなる。

 

 

「こんな短時間に、これだけの湿地の精霊(スワンプ・エレメンタル)を召喚出来るなんて……協力って、こんなにすごいことだったのね!」

 

 

「…そうだな。実は、かの戦いの後でも、細々と情報は交換していたのだが…今回の件から、またやりたいことが増えてきたな…」

 

 

「…そうね、ザリュース。」

 

二人は気づいていなかった。

二人共、無意識のうちに、互いの尻尾を絡ませあっていたことを。

 

ーーーーーーーー

 

【トブの大森林 自然研究所 参謀司令部】

 

 

「……蜥蜴人(リザードマン)ノ指揮ノ高サヲ見誤ッテイタカ………」

 

ナザリック側の軍の参謀長たるコキュートスは、度重なる蜥蜴人(リザードマン)達の反撃に、苦汁を飲まされていた。

不意に、コキュートスは『伝言(メッセージ)』のスクロールを取り、そのまま使用する。

 

「…『伝言(メッセージ)』、『デミウルゴスカ?』

 

相手先は同じ階層守護者でかつ、バーでの飲み仲間である友、デミウルゴスへ、だ。

 

『そうだ、友よ。君が私に伝言(メッセージ)を飛ばしてくるとは、一体何事だね?』

 

「…実ハ……」

 

 

〜コキュートス事情説明(助けてデミエモン)中〜

 

 

『……成る程…事情は大体分かった。《xsmall》…シャボンヌ様の予見は当たっておられた…流石は至高の御方…《xsmall》…それで、私にどうして欲しいのかね?』

 

 

「知恵ヲ貸シテ欲シイ…私ダケノ敗北ナラマダシモ、至高ノ御方々へ泥ヲヌルヨウナ真似ダケハシタクナイ…」

 

 

『ふむ……では、今回の戦争の意味とは何か、考えてみてくれ。』

 

 

「…今回ノ戦争ノ真ノ目的ハ、蜥蜴人(リザードマン)達ノ制圧デハナイ、ト?」

 

 

『そうだ、友よ。そして何より、何故アインズ様は力量的に決定力に欠ける、薄弱な部隊を君に寄越して来たのか、そして何故、至高の御方々は、指揮官クラスのモンスターをその場で召喚せず、わざわざスクロールとして君に送られたのか…』

 

 

「マサカ…」

 

 

『至高の御方々は、コキュートス自らが部下達に指示を出し、軍を上手く統率することを望んでおられたのだよ。事前に敵の情報を収集し、戦場に手を加え、軍の指揮をアインズ様から授かった者達と協力して行い、そして、コキュートスが確固たる勝利を収める。その為にね。』

 

 

「何トイウ事ダ…」

 

 

『しかし、友よ。安心してくれ。至高の御方々は最初から君の敗北を望まれていた。その事は、ナザリックの持つ戦力とコキュートスへ配属された部隊の力量差然り、()()()()()()()()然りだ。』

 

 

「ソレハドウイウ…?」

 

 

ピーーーピピ

『ん?おっと、すまない友よ。急遽用事が入ってしまった。また後でゆっくりと会話しようじゃないか。では、友よ、健闘を祈っているよ。』

プツッ

 

コキュートスは、頼みの綱のデミウルゴスを今は頼ることが出来ないことを理解した。

 

「……全テハ後ノ祭リ、カ。シカシ、コノママデハ御方々ノ御尊顔二泥ヲ……ソレダケハサケタイ。………サーべ二告グ。我等ナザリックノ力ヲ見セツケルノダ!」

 

ーーーーーーーー

 

【トブの大森林奥地 決戦の場 湿地】

蜥蜴人(リザードマン)軍は犠牲を出しつつも、多くのアンデット達を殲滅していき、遂には数える程までに追い詰めていた。

 

「よし!重症の者は村まで運べ!残った者は、俺達に続いて…」

チュドオォォォォン!!

 

 

「なっ…!!」

湿地の精霊(スワンプ・エレメンタル)をたった一度の攻撃でだと…)

 

突如として巨大な火球が出現し、召喚された湿地の精霊(スワンプ・エレメンタル)の内の二体を消し飛ばした。

 

ドォォォォン!

「グォワァア!」

 

更に続いて二発目が後方に着弾し、直ぐ後ろにいた仲間が眼前で灰と化した。

 

「っ………ぬぅ…逃げろ!お前達!アレは到底敵う相手ではない!お前達は戻って族長、そしてザリュースに伝えよ!」

 

「俺たちが時間を稼ぐ!」

 

やがて、森林の奥から一体の強大なアンデットが姿を見せる。

死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)だ。

 

「時間など与えん…至高なる御方々に勝利を捧げる為に消えろォォォ下級種族がァァァァ…」

 

次々に放たれる火球(ファイヤーボール)になす術も無く燃やし尽くされていく蜥蜴人(リザードマン)達。

 

「へっ!やっと俺の出番だな!」

 

それを高台で見ていたゼンベルは愛用の斧を片手に立ち上がる。

 

「アレが軍の指揮官か…?」

 

 

「あれ程の力だ。そうではなかったとしても、相手の切り札である事には変わりない。」

 

「そう…でもどうやって近づけば良いのかしら…あの攻撃の射程範囲は最低でも100mはあるわよ…」

 

 

ロロロの頭を撫でてやる

 

「…そうか、その手か…っ!」

 

「?ザリュース?」

 

 

〜〜

 

ドドッドドッドドッ‼︎

 

蜥蜴人(リザードマン)の陣から一体の多頭水蛇(ヒュドラ)が放たれる。

ロロロだ。

 

「真っ向から我に向かってくるとは…やはり下級種族、考えるだけの脳が無い。力量差という物を馬鹿にも分かりやすくその本能にねじ込んでやろう…まぁ、恐怖というおまけ付きだがナァッ!!」

 

そして無慈悲にも放たれる火球(ファイヤーボール)

 

ドォォォォン

 

死の大魔法使い(エルダーリッチ)がそう易々と攻撃を外す訳もなく、ロロロに命中する。

しかし、ロロロはその攻撃による火傷を意にも返さず、決して足を止めはしなかった。

 

「一発ではまだ倒れぬか、ならば数お見舞いさせてやろう…」

 

死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の手から新たに三発の火球(ファイヤーボール)が放たれ、真っ直ぐロロロに飛来していく。

 

ドドドォォォォォン

 

「フンッ」

 

着弾後、燻った煙があがり、辺りを焦げ臭くする。

ヒュドラは死んだと確信する死者の大魔法使い(エルダーリッチ)

 

 

しかし、その見解は間違いだったことを気付かされる。

煙の中を傷付き、火傷で目も当てられない状態になりながらも走る八つの頭が覗いたからだ。

 

「何っ!」

 

見れば、後方に二つの炭屑が落ちていた。

ザリュースの持って来ていた身代わり人形だ。

ザリュースは飛来してくる火球(ファイヤーボール)に向けて、アゼルリシア山脈で鍛え上げられた反射神経を駆使し、身代わり人形を投げ付けたのだ。

 

しかし、防ぎ切れなかった一発分をロロロは被弾してしまった。

ロロロはそのダメージで前に崩折れ、それに合わせてザリュース、ゼンベル、クルシュの三人もロロロから飛び降りる。

 

「まだまだ人形は沢山残っている!お前の魔法が俺達に届く事はない!!」

 

嘘である。

ロロロへの攻撃を防げなかった理由は、他ならぬ身代わり人形の不足の為。

もう身代わり人形は残っていないのだが…

 

 

「………炎は効果が薄い、か。ならばこれを喰らうが良い!『電撃(ライトニング)』!!」

 

死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の深読みにより、結果的に欺くことに成功したようだ。

 

「させるかよ!」

ビジジジジッ

「ゥオオオ!『抵抗する屈強な肉体(レジスタンス・マッシブ)』ゥウ!!!」

バチッ

 

「ありがとう、助かった。ところで大丈夫か?」

 

「へっ!こんなモンどうってことねぇよ!」

 

「『第四位階不使者召喚(サモン・アンデット・4th)』…」

 

接近戦は不利と考え、即座に骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)四体を召喚する死者の大魔法使い(エルダーリッチ)

 

「……我は至高なる御方に生み出され、至高なる御方々よりサーベという名を賜わった者…たかが下級種族如きに我等が敗北を喫するなど、ありえん!!」

 

イグヴァ=41と同じようにアインズ自身によって作成された為なのか…絶対的なる忠誠心を、蜥蜴如きに傷付けられた怒りを原動力に、ザリュース達へその力を見せつける。

 

「ウオラァ!先に行け!ザリュース!」

 

ザリュースへそう呼びかけつつ、ゼンベルは骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)を殴りに掛かる。

 

「ゥオオオオオ!!!」

 

真っ直ぐサーベ=04へとひた走るザリュース。

火球(ファイヤーボール)雷撃(ライトニング)を間一髪で回避していきながら、着実に敵との距離を狭めていく。

 

「ならばこれはどうかな?『恐慌(スケアー)』!」

 

「う……な………かっ!…………」

 

ザリュースの意識はたちまち恐怖と闇で覆われてしまった。

目の前にいるはずの敵を倒すどころか、指一本すら動かす事が出来ず…

 

獅子のごとき心(ライオンズ・ハート)!」

 

心臓から熱い物が込み上げてくる。

その熱い物はたちまち光となり、覆われた闇を打ち破る矛となった。

ザリュースは再び、現実の世界に戻る事が出来た。

 

「…!助かったぞ!ありがとう、クルシュ!」

 

クルシュがその言葉に軽く頷く。

 

「小癪な………『雷撃(ライトニング)』。」

 

しかし、サーベがそれを見逃す筈もなく、容赦の無い第五位階域魔法をブッパなしていく。

 

「キャァッ!」

 

「クルシュ!」

ライトニングがクルシュの身体に直撃し、抵抗する間も無く彼女を感電させる。

「クソッ!」

自分が恋をした相手に攻撃を加えられ、ザリュースは今までに無い程に激怒する。

そのままの勢いで高笑いをするサーベ=04の肩へ刃を振り下ろす。

 

「ぐぉおッ………下等生物如きに、下等生物如きにぃいいいいガァアアア!おのれぇ!!」

 

自身の肉体が傷付けられたことを、創造主への侮辱だと取ったサーベ=04もまた、とてつもない怒りを覚えた。

魔法の矢(マジック・アロー)を連射し、ザリュースを確実に痛めつけ、嬲り殺しに掛かる。

 

「くっ……」

(今、俺が持てる最大の一撃を…………)

身一つで多くの矢を身体に浴びても尚弁慶の如く仁王立ちをするザリュース。

しかし、逆転の一手を放てる程の体力は、彼に残されてはいなかった。

 

「『ミドル・キュア・ウーンズ(中傷治癒)』…」

 

「クルシュッ!」

 

クルシュが最後の魔力で放った魔法は、たちまちザリュースの体力を回復させた。

必殺技が放てる程までに…

 

「チッ……あの蜥蜴人(リザードマン)、まだ生きていたのか…」

 

(不味い!クルシュに注意が…いや、まさか!クルシュはアイツの注意を逸らすためにわざと…?しかし、距離が大分離れてしまった!急がなくては!!)

サーベ=04の注意がザリュースから一時的に飛んだ隙に、一気に距離を詰める。

 

「…止め喰らえ!『電げ(ライト…)…」

「ゥオオオオオ!!!」

 

「距離を詰め…」

「武技『斬刃(ブレード)』!!」

 

時既に遅し。

サーベの目と鼻の先までに《凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)》の切っ先が迫っていた。

 

「『石…(ウォール・オブ・ス…)ぐぉおっ!!!!っ!」

防御魔法を詠唱する間も無くモロに顔面へ攻撃を喰らうサーベ=04。

 

「まだまだァ!」

 

「舐めるなあァァァァア!『火球(ファイヤーボール)』!」

 

追撃を喰らわせようとするザリュースへ反撃の火球(ファイヤーボール)をお見舞いする。

辺りが一気に赤い炎で覆われる。

 

「ッグ……流石に魔力を使い過ぎた………下級種族如きにここまで遅れを取るとは……仕方がない、此処は一時撤退を…」

 

 

 

「その下級種族に遅れどころか、背後まで取られちゃあどっちが下か分からねぇな。」

 

 

「なっ、馬鹿なっ!お前は先の魔法で死んだ筈では…」

 

火球(ファイヤーボール)で消炭にした筈の蜥蜴人(リザードマン)が、いつの間にか背後に剣を構えつつ此方を見ている。

サーベは驚きに目を見開く。

 

「そんなもの『回避』で十分だ。背負っている物が違うんだよ、俺とお前では。」

 

ザリュースは火球(ファイヤーボール)を見切り、魔法の矢《マジック・アロー》を自然な素振りで避けていく。

 

「貴様っ!」

「これで、終わりだァァァァア!!!!」

足を踏み切り、両手に力を込め、有りったけの力と集中を《凍牙の苦痛《フロスト・ペイン》》に注ぐ。

 

ドシュッ………

 

 

 

横一閃。

サーベの身体は上と下で別れ、ゆっくりと後方に倒れていく。

「も…申し訳………あ……り……ませ…………ん………………」

灰と化す自身の両手を天に掲げながら、サーベは塵となって消える。

 

フゥ…………

 

後にはボロボロのローブの残骸のみが残るだけだった。

 

「終わった…のか…?」

 

 

「…ザリュース…」

 

「く、クルシュ!」

 

未だに地面に倒れ伏すクルシュに駆け寄り、身体を支える。

 

「大丈夫か?待ってろ、直ぐに回復を…」

「…私達…勝ったのね……」

 

「あぁ、もうこれ以上の切り札は無い、と信じたい。一先ずこの戦は俺達の勝ちだっ!」

 

 

ーーーーーーーー

【トブの大森林 自然研究所 参謀司令部】

 

 

「……負ケタ……」

 

コキュートスは参謀司令部長官の席に座りながら、身体を更に青くしていた。

部下達はコキュートスを心配そうに見遣る中、エントマだけはおやつを片手に部屋の外へと出て行ってしまった。

 

「………実ニ惜シイ物ダ。アレ程ノ知恵ヲ持チ、アレ程ノ指揮統制ヲ行イ、我ガ軍勢ヲ完敗ニ持チ込ム所業…ソレダケニ…トテモ惜シイ………」

 

「……へぇっ!ア、アインズ様がこちらにぃ!……し、失礼致しました。ではお待ちしております…」

 

コキュートスの言葉を遮るように、エントマのビックリした声が聞こえてきた。

しばらくして、彼女が部屋にまた入ってくる。

 

「…コキュートス様ぁ、今直ぐにアインズ様が御身自らこちらにいらっしゃるそうですぅ。」

 

 

「……アインズ様ガ……アノ御方モオ怒リニナラレテイルダロウ……全テハ私ノミスニアル、オ前達ニハ全ク責任ハナイ。コレヨリ私ハ、アインズ様ニ此度ノ失態ヲ報告シ、自害スル。私ガ消エタラ、第五階層ノ事ヲ、ソシテナザリックノ事ヲ頼ンダゾ…」

 

「コ、コキュートス様…」

「コキュートス様ぁ……」

 

コキュートスがもう定年退職間際の部長みたいになり、室内まで青くなっていく。

コキュートスは青を通り越して白くなっている。

この場はもはやお通夜ムードだ。

 

ブオンッ

 

不意に室内に『転移門(ゲート)』が現れ、闇からアインズ・ウール・ゴウンその人が現れる。

続いてアルベドが現れ、アインズの側までしずしずと歩き、コキュートスに向かい合う。

目には怒りの炎が燻っていた。

コキュートスはアルベドからの怒りのオーラに圧倒され、白から灰色になっていく。

 

「コキュートス、この度の戦争だが………敗北を喫したそうだな。」

 

 

「ア、アインズ様………!!!モ、申シ訳……」

 

 

「コキュートス、何か申し開きは?」

 

アルベドが冷淡な声でそうコキュートスに問い掛ける。

 

「コノ度ハ、ナザリックニ敗北ヲモタラシテシマイ、申シ訳アリマセン!!敵ハ、想像以上ニ手強ク、御身ニオ借リシタ兵ノ大部分ヲ損失スルコトニ…」

「コキュートスよ、その件なのだが、再び現地に戻ってくれないか?それも、()()()()()で戦場になっている湿地へ。」

 

 

「!ソレハドウイウ…」

 

 

「実は…シャボンヌさんがな…」

 

 








シャボンヌは一体何をしたんでしょうかね?
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