世界は間違えた。
異なる法則が支配する同音異義を、鳥間違えた。
──────いや、取り間違えた。

1 / 1
一発ネタ


喜助じゃなくてキスケだっピ

「キーくんはヒヨコじゃないっピ」

 

 ──────それは、どう見てもヒヨコだった。

 

「じゃあ何だと言うんだい? まさか死神とでも?」

 

「キーくんは、死神でも無いっピ」

 

 ──────それは死神ではなく、鬼だった。

 

 

 藍染惣右介は、自身の計画の最大の妨げになる男、浦原キスケを警戒していた。

 恐らくは霊王と同等であろう、閻魔大王とやらの部下であり、己の世界から出ることの無い閻魔大王に変わって実働を行う尖兵。

 

 その肉体に流れた年月は、本人曰く5年。

 オシャレな俳句(ポエム)に溢れた天才。

 しかし、ヒヨコだった。

 

 斬魄刀『鏡花水月』の完全催眠を、3歩歩くと忘れる鳥頭をもって克服した天才。

 催眠をかけられた過去ごと忘却してしまえば、催眠ごと無かった事になる。

 そして一度タネの割れた催眠はキスケには通用しなかった。

 

 ならば、物理的に排除するまで。

 藍染の斬術がキスケに襲いかかるが、小鬼トリオの組体操で一番下を務める脚力は伊達ではない。

 

 キスケは「危ないっピー」と言いながら躱した。

 斬術が駄目なら、鬼道で潰せば良いだけのこと。

 大凡全てにおいて万能であることが藍染惣右介の強味。

 相手の苦手な土俵が一つでもあれば、それを叩けば負けはしない。

 

「では、鬼道で挑むとしよう。

滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器、湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる。

爬行する鉄の王女、絶えず自壊する泥の人形、結合せよ、反発せよ、地に満ち 己の無力を知れ

──────破道の九十・黒棺」

 

 重力の奔流がキスケに襲いかかる。

 しかし、キスケには怯えは無かった。

 

「鬼道っピ? 鬼の道で人間が鬼に挑むなんて片腹痛いっピ。

まだあのニンゲンたちの方が頭が良かったピィ」

 

 藍染の黒棺はキスケのツノにぶつかったと同時に霧散した。

 

「これが本物の──────鬼道っピ。

破道の九十・黒棺」

 

 詠唱破棄で行われたそれは、藍染の黒棺よりも遥かに小さいものだった。

 

 それは、藍染を一瞬で覆うとボロクズの様に地に墜とした。

 

「重力の発生源は大きくある必要は無いっピ。

必要なのは密度により定められる重量ピィ」

 

「おのれ…天に立つのはお前ではなく私だ」

 

 『走・拳・斬・鬼』全てで下された事により、プライドを砕かれて余裕を無くした藍染。

 

「天に立つピィ? 興味が無いっピ。

キーくんの居場所は天の上では無く、地の底(地獄)だっピ」

 

 そして──────元よりヒヨコは空を羽ばたけない。

 物理的に天に立つことが出来ない。

 

 

「死の世界を導くのが死神なら、死者を裁くのが鬼だっピ」

 

 人智を超える戦闘力を誇る死神の、そのまた更に上澄みであっても、鬼からすれば非戦闘要員の文民でしかない。

 

「本物の鬼は鬼道に詠唱や名前や番号なんて付けたりしないっピ。

自由に好き勝手にやるっピ。

そんな事しないと制御出来ない死神には無理無理無理っピィ」

 

 キスケの霊圧が場を支配した。

 これから起こるのは、藍染が想像もつかない鬼道の極み。

 

「そうっピね。

敢えてそれっぽくやってみるっピ。

 

聞いて驚け見て笑え我ら閻魔大王様の一の子分

破道の零番──────閻魔大王之笏返」




終わり。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。