異なる法則が支配する同音異義を、鳥間違えた。
──────いや、取り間違えた。
「キーくんはヒヨコじゃないっピ」
──────それは、どう見てもヒヨコだった。
「じゃあ何だと言うんだい? まさか死神とでも?」
「キーくんは、死神でも無いっピ」
──────それは死神ではなく、鬼だった。
藍染惣右介は、自身の計画の最大の妨げになる男、浦原キスケを警戒していた。
恐らくは霊王と同等であろう、閻魔大王とやらの部下であり、己の世界から出ることの無い閻魔大王に変わって実働を行う尖兵。
その肉体に流れた年月は、本人曰く5年。
オシャレな
しかし、ヒヨコだった。
斬魄刀『鏡花水月』の完全催眠を、3歩歩くと忘れる鳥頭をもって克服した天才。
催眠をかけられた過去ごと忘却してしまえば、催眠ごと無かった事になる。
そして一度タネの割れた催眠はキスケには通用しなかった。
ならば、物理的に排除するまで。
藍染の斬術がキスケに襲いかかるが、小鬼トリオの組体操で一番下を務める脚力は伊達ではない。
キスケは「危ないっピー」と言いながら躱した。
斬術が駄目なら、鬼道で潰せば良いだけのこと。
大凡全てにおいて万能であることが藍染惣右介の強味。
相手の苦手な土俵が一つでもあれば、それを叩けば負けはしない。
「では、鬼道で挑むとしよう。
滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器、湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる。
爬行する鉄の王女、絶えず自壊する泥の人形、結合せよ、反発せよ、地に満ち 己の無力を知れ
──────破道の九十・黒棺」
重力の奔流がキスケに襲いかかる。
しかし、キスケには怯えは無かった。
「鬼道っピ? 鬼の道で人間が鬼に挑むなんて片腹痛いっピ。
まだあのニンゲンたちの方が頭が良かったピィ」
藍染の黒棺はキスケのツノにぶつかったと同時に霧散した。
「これが本物の──────鬼道っピ。
破道の九十・黒棺」
詠唱破棄で行われたそれは、藍染の黒棺よりも遥かに小さいものだった。
それは、藍染を一瞬で覆うとボロクズの様に地に墜とした。
「重力の発生源は大きくある必要は無いっピ。
必要なのは密度により定められる重量ピィ」
「おのれ…天に立つのはお前ではなく私だ」
『走・拳・斬・鬼』全てで下された事により、プライドを砕かれて余裕を無くした藍染。
「天に立つピィ? 興味が無いっピ。
キーくんの居場所は天の上では無く、
そして──────元よりヒヨコは空を羽ばたけない。
物理的に天に立つことが出来ない。
「死の世界を導くのが死神なら、死者を裁くのが鬼だっピ」
人智を超える戦闘力を誇る死神の、そのまた更に上澄みであっても、鬼からすれば非戦闘要員の文民でしかない。
「本物の鬼は鬼道に詠唱や名前や番号なんて付けたりしないっピ。
自由に好き勝手にやるっピ。
そんな事しないと制御出来ない死神には無理無理無理っピィ」
キスケの霊圧が場を支配した。
これから起こるのは、藍染が想像もつかない鬼道の極み。
「そうっピね。
敢えてそれっぽくやってみるっピ。
聞いて驚け見て笑え我ら閻魔大王様の一の子分
破道の零番──────閻魔大王之笏返」
終わり。