笑顔をつくる物語   作:エヌラス

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覚悟


page104 別れ

〜circle〜

 

想「突然でごめん、みんなに話したいことがあるんだ。」

 

皆はこんな遅くだと言うのに、誰一人欠けることなく集まってくれた。その事に感謝しながら俺は言葉を発する

 

想「俺は…0号と…戦って、勝たないといけない。だけどその後はどうしようか、迷ってたんだ」

 

その言葉に息を飲む全員。

 

想「俺…旅に出ようと思うんだ!この世界に来て、あまり花咲川から出てないからさ、この目で何かを見て、そして触れたりして感じたいんだ」

 

その言葉に、全員が黙り込む。だが次に起こったのは、クスクスという笑い声だった

 

リサ「あははっ!想くんらしいね!」

 

美咲「いや〜…まさかなにかあるんじゃないかって冷や冷やしましたよ…!まったく…」

 

はぐみ「旅ならコロッケ沢山持ってってね!」

 

沙綾「そうだ!うちのパンも!」

想「全員一気に喋るなぁ…!」

 

俺は頭を抱えながら叫ぶ。それに笑いが巻き起こる

 

日菜「旅する前に!絶対勝ってね!約束!」

 

想「ああ…!」

 

俺は日菜と指切りげんまんをした。だが…

 

 

 

____ごめんな

 

 

俺は彼女達に嘘をついている。確かに0号と戦い、決着はつけるつもりだ。だが大切なことを伝えていなかった

 

 

”凄まじき戦士”となることを、心の闇に飲まれ死ぬかもしれないのに…

 

 

だがしかし、俺が生き残れる確率は10も無いだろう。多分リサ達はほとんどのことを黒服から聞いてしまってるはずだ。もし俺が本当の事を言ってしまえばきっと俺を止める。

 

 

だが例え、相打ちになったとしても倒す。それで彼女達…いや世界中が笑って過ごせるなら…

 

_________________________

 

〜次の日・まりな宅〜

 

 

 

まりな「凄まじき戦士…それになるのね…そして戦って勝って旅に出ると」

 

想「はい、短い間お世話になりました」

 

俺は頭を下げる。この人には本当にお世話になった。

 

まりな「死んだら…ダメだよ?」

 

想「はい、分かってます」

 

俺は微笑み、まりなさんに答える。俺は他にオーナーや、スタッフさん達に声をかけに行った。もちろん、亡くなった人にも必ず仇はとると伝えた。

 

_________________________

 

〜弦巻邸・PM11:35〜

 

俺はバイクで弦巻邸へ、入って行く。しばらく進むと相変わらずでかい玄関が俺を迎えた。そこに立つ女性が1人

 

想「黒服さん…」

 

黒服「お待ちしておりました。第0号は未だ行方を眩ませています…」

 

想「そうですか…」

 

黒服「なにか憑き物が落ちたような顔ですね…もしかして、なるんですか、凄まじき戦士に…」

 

想「はい…」

 

黒服「…もう止められないでしょう…」

 

想「そうですね、多分俺も聞かないと思います…」

 

1番お世話になったのはこの人達かもしれない。記憶喪失の俺を何一つ疑うことなく…こころのお陰でもあるだろうが何から何まで用意をしてくれて、未確認生命体関連でも協力してくれて、

 

想「お世話になりました。これを…」

 

俺はそう言いながら手紙の入った封筒を黒服に渡す。1度それを見てから目を瞑る

 

想「もし、俺が死んだら…これを、アイツらに渡してください」

 

黒服「…わかりました」

 

そこで、無線が鳴り響く。一条さんからだった。俺は少し離れたビートチェイサーに走り「俺です」と言った

 

一条『対0号用の特殊レーダーがあともう少しで完成する!目安は…あした午前10時だ』

 

想「はい、分かりました。一条さんは?」

 

一条『俺は…また後で連絡する…!』

 

そう言われ、無線を切られる

 

想「ちょ…一条さん…!一条さん!」

 

俺はビートチェイサーに跨り、走り出そうとした時だった。いつの間にか、弦巻邸のメイドや調理師、黒服などが俺の前に立ち、敬礼をしていた

 

黒服「ご武運を、私達はあなたの無事を祈っています…」

 

想「ありがとうございます、それともうひとつ…!」

 

黒服「…?」

 

俺はとある頼み事をした

_________________________

 

〜とある廃墟・PM11:42〜

 

一条「すまなかったな…八意…お前にこれ以上負担を背負わせたくなかった。」

 

一条は、特殊レーダーを伝え少しほっとした。これで後は杉田や桜井あたりがどうにかしてくれる。自分は今この状況に集中出来る。

 

それは1時間前の事だった。警察に1本の連絡が入ったのだ。

 

『B1号と思われる人が廃墟に入っていくのを見た』

 

それは各地の警官に無線で伝えられ、一条もそれを無線越しに聞いて、今ここにいる。

 

 

いわゆる独断行動だ

 

一条「俺も昔なら勝手に行動しなかったからだろうな…」

 

 

そう呟く一条の全身は雨に濡れ、右手には神経断裂弾が5発入った拳銃を持っていた

 

バルバ「人間も…変わったな…」

 

一条「バラのタトゥーの女…」

 

バルバ「昔の人間は、我らグロンギ族にただ殺されているだけだった」

 

一条「また何を言い出す…」

 

そう言いながら拳銃を構える。

 

バルバ「これが私の最期になるか…?戦う人間よ」

 

そう言っている時には既に一条はハンマーを引き起こしていた

一条「終わりだ…0号もすぐに倒される。」

 

バルバ「そうだといいな…」

 

一条「何故戦おうとしない…?」

 

バルバ「私は戦うグロンギでは無い。だがしかし…!」

 

相手は予備動作無しに薔薇の刃を打ち出す。数発放たれたそれを、一条は長年の感で躱し、神経断裂弾を打ち込む

 

バルバ「!?」

 

一条「うぐっ…!」

 

足に数発刺さってしまった。そこから血が吹き出し、口から血を吐き出す。寒気が全身を襲う

 

バルバ「耐えるか…だがその薔薇には毒が入っている。クウガなら耐えられるかもしれないが…人間はもって1分だな…」

 

そこまで言いかけた所でバルバの腹から何かが突き出す。見慣れた金色の刃

 

一条「…!」

 

バルバ「クウガ…!ダグバは…そう簡単には死なないぞ…」

 

そこで尽きたのか、がくっと倒れ、動かなくなった。その奥から走ってくる影が1つあった

 

一条「あのバカ…」

 

 

 

 

俺は無線が途切れた場所を、黒服に頼み込んで調べてもらった。その通りに行ったら、今、一条さんが刺されていて、俺は咄嗟に紫の金のクウガになり、後ろから突き刺した。

 

 

想「一条さん!一条さん!」

 

抱き抱えられ、馬鹿の一つ覚えのように自分の名前を呼ぶ。続いて自分の頬に彼から流れた涙が落ちる

 

一条「八意…」

 

想「一条さん!いま救急車を…!」

 

救急車を呼ぶ手を掴み、止める

 

想「なんで…!」

 

一条「もう俺は無理だ…助からない…貴重な救急車を使いたくはない…」

 

想「そんな…」

 

話せるうちに、話しておきたい。

 

一条「今まで…様々なことに君を巻き込んですまなかった…君には、普通の青春を、送って…欲しかった…」

 

八意は目を見開き、さらに涙を流す。

 

想「…っ!一条さん…!でも俺…良かったって思ってますよ…?一条さんと…沢山の人と出会えましたから…!」

 

一条「…!」

 

気づけば、一条自身も涙を流していた。

 

一条「…0号を…頼んだ…」

 

そろそろ、潮時のようだ。体の痛みが遠ざかり、視界が白く、染まっていく

 

一条「…君…と…もっ…と、話を……した…かった…」

 

一条悠介は、心優しい少年に看取られ、短い人生を終えた

 

想「ううっ…うううぅっ…!」

 

俺は一条さんの骸を抱き抱え、ただ泣いた。あともう少し早ければ、助かっていたかもしれない。

 

想「うううぅっああああああああぁぁぁ!」

 

夜中の廃墟に、1人の少年泣く声が、響き渡った。

 

_________________________

 

〜次の日・廃墟・AM7:00〜

 

想「…」

 

いつまでボーッとそこにいたのだろうか、朝日が顔を照らしても、俺は何も感じなかった。ただ、自分が抱いている、大切な人の体の温度が下がっていくのを感じていた

 

杉田「おい、2人とも…一条!」

 

一条さんの同僚の杉田さんが現場に来た。俺は虚ろな目を杉田さんに向ける

 

杉田「一条は…そうか…」

 

俺はポツポツと、昨日のことを話した。杉田さんは黙って聞いて、聞き終わった後、俺の肩を叩き、言った

 

杉田「ならそこでボーッとしてるな、一条が託してくれたんだ。その分まで俺たちが頑張らないでどうする。前を向いて、歩き出さなければ…」

 

想「…!」

 

杉田「きっと…一条も見守ってくれてるさ、不器用で生真面目なあいつだからな…」

 

想「杉田さん…」

 

俺は涙を零しかけるが、何とか止める。それに満足したように頷く。杉田さん

 

特殊レーダーが作動するまであと3時間。

 

 

つまり、八意の自由時間はあと3時間という意味でもある

 

_________________________

 

〜羽沢珈琲店・AM7:30〜

 

想「…」

 

味のしなくなったブラックコーヒー、味のしなくなったケーキ、だが今は、無性に食べたくなったのだ。無理矢理訪問してしまったことは申し訳なく思っている。だがつぐみも母も父もこころよく出迎えてくれた

 

つぐみ「…」

 

遠くからつぐみが心配そうな顔で八意を見る

 

想「つぐみ…?」

 

つぐみ「いや…!」

 

想「…ちょっと話、しないか?」

 

つぐみ「…、うん」

 

つぐみはエプロンをしまいながらこちらへ歩いてきて、俺の前に座る。

 

つぐみ「…」

 

想「…」

 

しばらくの静寂、先に口を開いたのはつぐみだった

 

つぐみ「…やっぱり、戦うの?」

 

想「うん、そのつもりでいるよ。あと2時間もすれば、多分この街にいない」

 

つぐみ「そっか…リサさんには、ちゃんと言った?」

 

想「言ってないなぁ…あいつ絶対止めるだろうし…」

 

つぐみ「あはは…確かに」

 

2人で苦笑する。

 

つぐみ「私は…止めたいけど…止めないよ?だって…止めても聞いてくれなさそうだもん」

 

どこか拗ねたように聞こえたその声、俺は苦笑いをする。

 

想「おっと…」

 

俺はそろそろ行かなければと思い、立ち上がろうとするが、何故かふらついてしまった。

 

そういえば、2日くらい寝ていなかったし食事もロクにしていなかった気がした。それを今思い出し、一気に体を疲労が襲う

 

つぐみ「大丈夫…?」

 

つぐみもあとから立ち、俺の近くによる。

 

想「ああ…大丈夫だ…つぐみ…」

 

つぐみ「わっ…!」

 

ラッキースケベというものなのだろうか、体が限界を迎え一気に眠る八意は、頭をつぐみの胸に乗せていた。

 

つぐみ「…やっぱり…無理してるじゃん…」

 

つぐみは胸の中で眠る彼を見ながら

 

つぐみ「好きだよ…」

 

と呟いた。だがきっと、この恋は叶わない。だって彼には沢山の恋敵がいる。自分より魅力的な女の子は沢山いるからだ、自分じゃそこには到底並べない

 

だからせめて、戦いに勝って、いい彼女さんを見つけて幸せに、普通の生活を送って欲しい

 

つぐみ「…」

 

___そして、自分という存在が、記憶の片隅にありますように。

_________________________

 

〜羽沢珈琲店、つぐみの部屋・AM9:00〜

 

想「…ん、」

 

俺はやけにいい匂いがする部屋で目覚めた。いつの間にか布団が被せられ、その近くで頭を置いて眠ってしまっている1人の少女。

 

その姿を見るだけで、誰が俺をここまで運んでくれたのかを知れた。

 

想「ありがとな…」

 

静かに起き上がり、俺に変わってつぐみを布団に入れる。すやすやと寝息を立てているので、多分バレていないはずだ。

 

想「…」

 

黙って出ていく事には少し申し訳なくなりながら、歩みを進める

 

つぐみ「…想さん…」

 

想「…!」

 

呼ばれたことに驚いて振り返るが、寝言だった。涙を流しながら寝ているつぐみ。

 

想「……行ってくる」

 

つぐみの頭を少しだけ撫でて俺は窓から飛び降りる。受身をとりながらビートチェイサーの横に着地、すぐに跨り羽沢珈琲店から走り出した

 

_________________________

 

〜とある道路・AM9:30〜

想「…雨がすごいな」

 

俺はバイクで道路を走り抜けていた。対向車線にも、自分がいる車線にも、何一つ車は通らなかった。歩いてる人もいない。まるで花咲川はゴーストタウンのようだった

 

俺はあと一人に、別れの言葉を告げたかった。何より俺を心配してくれた人物に

 

 

残りの自由時間も少ない中、自分は早く会いたいと一心でバイクを飛ばした

 

_________________________

 

〜リサ宅・玄関、AM9:45〜

 

 

リサ「それで私の家に来たと?」

 

想「あはは…まぁそうだね…」

 

俺は微笑みながら言う。リサは「ふーん」と言ってから俺に近寄って来た

 

リサ「黒服さんから電話で聞いたよ?…凄まじき戦士になるんだってね…」

 

想「…そうだな」

 

リサ「正直アタシにはわかんないけど…凄まじき戦士がなんかやばそうに聞こえるのは分かるの…」

 

想「うん…」

 

リサ「死なない…よね?」

 

想「…どうだろうな」

 

リサ「…じゃあ、目、瞑って」

 

想「…え?」

 

俺は瞬きをしながらリサを見る。その顔は赤く、何かをしやろうとしているようで…

 

リサ「いいから…!」

 

想「お、おう…____!?」

 

俺が目を閉じた瞬間、俺の唇にリサの唇が重なる。いわゆるキスをリサはしてきたのだ。

 

しばらくした後、息が続かなくなったのか「ぷはっ」と互いに唇を離す

 

想「はぁ…何すんだよ…びっくりした…」

 

リサ「これで出来たでしょ…?」

 

想「…?」

 

リサ「帰る理由…!ちゃんと倒して帰ってきて!女の子の初めてのキスとっておいて死んだら許さないよ…!」

 

とった…?俺はとってない…リサからやってきたんだよ…

 

というのを俺は我慢する。その代わり、サムズアップをひとつ

 

想「分かった、必ず勝つ。勝ったらさ…みんなでパーティだな!」

 

リサ「うん!約束!」

 

俺とリサは指切りげんまんをした。

 

_________________________

 

〜埼玉県〜

 

 

ダグバ「…」

 

相変わらずの不気味な笑顔で街の道路に佇むダグバ、だがその周りには、花咲川のように、車や、人の遺体があり、地獄絵図となっていた。駆けつけた警官も瞬殺され、埼玉の警官は全滅寸前となっていた。

 

警官「現場に到着!でも…0号がいません…!」

 

あとから駆けつけた警官は、地獄絵図を見回し0号を探す、だがいなかった。

 

 

 

 

 

その後0号は驚異的な移動スピード…いや、殆ど瞬間移動というものに近い…そして、あちこちで目撃され、殺戮という”遊び”をしていた。

 

 

______茨城で

 

 

______青森で

 

 

______京都で

 

 

死者は6万人を上回る…

 

 

_________________________

 

〜とある道路・AM10:00〜

 

想「…」

 

俺は次々と来る0号の出現と、殺戮を無線越しに聞き、戦慄していた。叩きつける雨が体を冷やしていく

 

杉田『聞こえるか?』

 

想「…!_はい!」

 

無線から杉田さんの声が聞こえる

 

杉田『対0号の特殊レーダーが今作動し始めた!0号はまだ観測できてはいないが…発見次第すぐに連絡する!』

 

想「分かりました!」

 

俺はさらに速度を上げ、行くあてもない道路をただひたすら走る。

 

 

ただ、ひたすら…

 

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