笑顔をつくる物語   作:エヌラス

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あけましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いいたします!


page105 最後の変身

〜羽沢珈琲店、2階・AM10:30〜

 

つぐみ「…ん」

 

目をぱちくりさせ、起き上がる。だがさっきまで布団は彼が使っているはずだと思い、一気に意識が覚醒する

 

つぐみ「…!」

 

机に紙が1枚、置いてあった。裏返したそれを見て、息を飲む

 

 

『ありがとう さよなら』

 

 

と綴られていた。つぐみは咄嗟にAfterglowの全員に連絡する。

 

〜モカ宅〜

 

モカ「嫌だよ…そんなの」

 

〜蘭宅〜

 

蘭「…」

 

〜巴宅〜

 

巴「さよならって…」

 

あこ「お姉ちゃんどうしたの?」

 

巴は、いつの間にかスマホを覗いてきたあこにビックリするが、何とか声に出さずに抑え込む

 

あこ「さよなら…?これ誰から?」

 

巴「あいつだよ…八意だ…」

 

あこ「え…!?」

 

巴「…あいつ多分、死ぬ気で行くつもりだ…」

 

あこ「やばいよ!それ!あこ、Roseliaのみんなに知らせてくる!」

 

そういい、自室へドタドタへと上がっていく。

 

巴(いくらなんでも…)

 

巴はそう思い、スマホを握りしめた。

 

〜リサ宅〜

 

リサ「嘘…さよなら…?」

 

さっき、あんな約束をしたはずなのに、まさか…

 

リサは頭が真っ白になった。だがすぐに落ち着きを取り戻す。大丈夫だ、彼は戻ってくる

 

〜紗夜宅〜

 

紗夜「…!」

 

日菜「おっねーちゃ…」

 

後ろから驚かしに来た日菜でさえ、文章を見て止まる

 

紗夜「彼が…0号と戦いに行ったらしいわ…」

 

日菜「そうなんだ…」

 

紗夜「…大丈夫よね?」

 

日菜「おねーちゃん?」

 

紗夜「彼…ちゃんと戻ってくるわよね?」

 

珍しい姉の泣きかけた顔、日菜は1度返すのに戸惑う。本当に帰ってくるのだろうか

 

日菜「うん…大丈夫だよおねーちゃん…!きっと戻ってくる…!」

 

〜燐子宅〜

 

燐子「…!」

 

燐子は送られてきた内容を見て、少し驚く。誰かに隠れて何かをするのはよくある彼だ。だがしかし、ちゃんと頼ってとはいったし、自分たちも極力、サポート出来たはずだ…だが

 

燐子「今回ばかりは…無理なのかな…」

 

何せ相手はこの3日で約10万人を殺した化け物だ。それに勝てる人間はもちろんいないし、クウガでも勝てるかは、怪しい

 

悔しい思いを、スマホを握る形で表現した

 

_________________________

 

〜とある道路・AM12:00〜

 

想「…」

 

昼だと言うのに空はまるで夜のようだった。雨が激しく降り、俺の体を冷やしていく。この異常気象さえ、あいつが引き起こしているのかと思うと笑いたくなる

 

警察と連携を取り始めてから約2時間、中々進展が掴めないでいた

 

その時だった。誰もいない道路に、1つバイクの音が聞こえる。同じ車線を逆走してくるバイクは、やけに懐かしく感じ…

 

 

想「トライチェイサー…!?」

 

俺は目の前に止まるトライチェイサーを見て、あまりの懐かしさに目を見開く。ヘルメットを上げて誰が乗っているのかと確認する

 

黒服「私も、ご一緒させて頂きます。八意様」

 

想「黒服さん…!」

 

あの3人のうちの1人、髪が長い黒服さんだった。トライチェイサーが直っていたことにも驚きだが相変わらずなぜ居場所がわかるのか…

 

黒服「今までのようにカラーは変えられませんが、一応直せました」

 

想「あ、そうなんですか…」

 

困惑する俺に、無線が鳴り響く。それは黒服さんのトライチェイサーも同じだった

 

無線『本部から転写、たった今レーダーシステムが0号を捉えました。』

 

無線から聞こえた女性の声、俺と黒服さんは同時に顔を見合わせる

 

想・黒服「…!」

 

無線『京都を離れ……この進路…東京へ来てます!』

 

想「都心…!?」

 

都心部であの時のような殺人行為なんかしたら…想像するだけでゾッとする。俺と黒服さんは、背筋が凍る感覚を味わいながら走り出した

 

_________________________

 

〜東京〜

 

ダグバ「…」

 

だがもう、八意達が高速道路で走っていた時には遅かった。都内の中心で発火現象を引き起こし、

 

 

____10万人の人が犠牲になった

 

突如自身から沸き上がる炎に、訳が分からず死ぬ親子。市民を守るために立ち上がった警官も…

 

___何もかも

 

そしてその死体を踏みつけにしながら立っていたダグバ。どれだけ殺せばクウガは僕と同じ者になるのだろうか、だがそれを引き起こすのは容易い。

 

あの女の集団を殺せば、僕と同じになる。だがそれは同時に、触れてはいけない禁忌に、決してやってはいけないとダグバさえ思っていた

 

だから回りくどいし面倒臭いが、周りの物を…

 

殺して__殺して___殺せば、きっと戦ってくれる。楽しい戦いになる

 

ダグバ「…」

 

この場に似つかわしくないバイクの音が聞こえた。それは真っ直ぐ、真っ直ぐ自分を目指し…

 

 

 

 

 

想「…!」

 

俺は前輪を上げ、相手を轢殺をしようとした。だが次の瞬間、ダグバは消えて、前輪は焼死体を踏みつけにしてしまった。

 

周りを見渡す。

 

あちこちが死体だらけだ。だがそこに立つ白い青年、雨が激しく降っているのに、まるでそこだけ降っていないかのように乾いていた。

 

ダグバ「今度はなれるのかな…僕と同じに…」

 

相変わらずの作り物の笑顔で俺に話しかけてくる

 

想「…」

 

ダグバ「待ってるよ…思い出の、”あの場所で”」

 

想(あの場所…?)

 

だが答えを聞くより先に、相手は消えてしまった。さっきまで立っていた場所には雨が降り、死体の火を消していく

 

黒服「…!」

 

遅れてやってきた黒服のトライチェイサー、その場を見渡し、地獄絵図に顔をしかめる。次に八意を見て、呼びかけるが返事は返ってこない

 

想(思い出の場所…?なんだ…いや、まて…アマダムの言ってたことを思い出せ…アイツらが封印された場所…)

 

黒服「八意様!」

 

想「…!?」

 

いつの間にか横にいた黒服に、珍しく大きな声で名前を叫ばれる。

 

黒服「奴はいましたか…!?」

 

想「…消えました…でも次現れる場所は…九郎ヶ岳だと思います…」

 

黒服「…九郎ヶ岳…、まさか…そこで決着をつけるつもりでは…!?」

 

想「…!___行きましょう!」

 

それに黒服は無言で頷き、2人は走り出した

 

_________________________

 

〜八意宅・PM1:00〜

 

リサ「やっぱりいない!」

 

寝室を探すが八意はいなかった

 

美咲「こっちもです!」

 

はぐみ「いなかったよ…!」

 

こころ「…いなかったわ!」

 

リビングにも、キッチンにも…トイレにも、お風呂にも彼はいなかった

 

25人が全員一致で彼を探している。街の中を隅から隅へ、だがどこを探しても、人が一人もいない街を探しても、見当たらなかった。最終的に全員が辿り着いた結論は…

 

リサ「弦巻邸に行って…黒服さんに聞こう…きっとあの人達なら何か知ってるはず…」

 

全員その意見に賛同する。実際今まで様々な協力を見てきたわけだ。知らないわけがない

 

_________________________

 

〜高速道路・PM1:24〜

 

想「…」

 

今更だが何も言わずに放って来てしまったことを後悔した。多分今頃、俺のことを心配して色々しているのだろうか?__否、さすがにそれは無い。政府が自粛を強制してるくらいだ。俺を探すより、自身の身を守ってくれた方が俺も嬉しい。

 

犠牲が出てしまったら…俺は多分、自身の感情を抑えきれなくなってしまう。

 

黒服「…」

 

最後まで、着いてきてしまった。最初は、こころ様が命じて、それに従い彼をサポートしてきた。だが今は、命じられなくてもやるつもりだ。

 

ここまで来たのなら、最後までサポートするつもりだ。弦巻邸の黒服の名に恥じないように…

 

あの白い悪魔に勝てるのかは正直言って分からない。アマダムにはヒビがはいり、もし壊れれば死ぬ状況。弱点を晒しているのも同然だった。

 

なぜ彼は戦っているのだろうか。

 

 

___必然的なのか

 

 

___運命のイタズラなのだろうか

 

 

仇もとったと聞いた。大切な相棒を失ったのも知っている。なのに何故、彼は戦うのだろう…

 

わざわざ、普段なら絶対に行く必要も無い場所へ向かい、決着をつけるのだろう

 

想『俺…戦う意味を見つけました。彼女達を…世界中の人々の笑顔を守る為に…もちろん、黒服さんもですよ』

 

まだ出会って間もない記憶が頭をよぎる。あの時は内心無理だろうな、すぐに諦めてしまうだろうなと思っていた。だが彼は諦めなかった。

 

ハロハピの皆を庇って1度はその生命を失い___

 

こころ様を救う為に爆発に巻き込まれ_____

 

circleを、そこに生きる全員を守る為に人間であることを捨て____

 

今一度考えれば、本当に自分の為になることが何一つない。学校の件だってそうだ。まだちゃんと登校出来てないじゃないか…

 

_________________________

 

〜弦巻邸〜

 

こころ「教えて頂戴、想はどこにいるの?」

 

美咲(メイドさんたち…黒服さん達…すいません…)

 

やけに静かな態度を取るこころにハロハピ全員は少し変わった空気を出す。あまり大人数も良くないので、ハロハピ5人だけに行くことになった。

 

黒服「お答えできません…」

目を伏せながら、髪の短い黒服が言う。

 

花音「ど、どうしてなんですか…?」

 

黒服「あなた達に言ってしまうと…止めに行ってしまう。彼の覚悟を、無駄にする訳にはいかないんです…」

 

はぐみ「でも…!」

 

黒服「私達だって止めたかった…でも、彼はもう私たちでは手をつけられない…今更行ったところで…多分間に合わないかと…」

 

こころ「決めつけるのはよくないわ」

 

黒服「…!」

 

こころ「そうやって悩むより、行動した方がきっと何かになると思うの!バスがあるでしょ?それに乗るの!」

 

薫「相変わらず凄い案だね…」

 

黒服「…」

 

こころ「早く行くわよ!間に合わなかったらみんなで迎えに行くわ!」

 

美咲「…そうだね、迎えに行かないとなんか迷ってそうだもん…」

 

黒服「負けた場合は…考えないのですか?」

 

こころ「いいえ!彼は負けないわ!___あら!」

 

花音「…雪?」

先程まで土砂降りだったのに、今は雪が強めに降っていた。

 

黒服「…わかりました。車を手配します…」

 

ハロハピ「「やった〜!」」

 

_________________________

 

〜長野県・九郎ヶ岳、PM2:40〜

 

想「…」

 

黒服「…」

 

2人はヘルメットを被り、ただひたすら走り続けた。高速道路から一般道に入り、山道をひたすら曲がったり坂を昇ったり、体を打ちつける雨がいつの間にか雪になっていたりしても、ただひたすら…

 

 

少し山奥に入り、自然の道をバイクで走り続ける。だがトライチェイサーとビートチェイサーはそこを難なく通り抜けた。

 

しばらくすると、バイクが入れない場所まで来た。2人は止まり、互いにヘルメットを外す

 

その奥は、まるで普通の人間には通れない。そんな境界線があるのかというほどの威圧感があり、この奥に奴がいるのだと実感させられる

 

しばらくの沈黙を破ったのは、八意の声だった

 

想「髪が短い黒服さんに聞いたんですけど…ベルトの傷、やっぱ治ってなかったみたいです。だから狙う時は、ここをお願いします」

 

黒服「八意様…」

 

想「いや、もちろん…万が一ですけどね。もし俺が、究極の闇をもたらす存在になってしまったらですよ…?」

 

そして再び沈黙。次は黒服だった

 

黒服「本当なら、本当なら今もこんな所にいずに、いつも通りを過ごせていたはずですよね…」

 

想「…」

 

黒服「だから…」

黒服は、謝罪の言葉を入れようとした時だった。

 

想「いや、俺むしろこっちに来れてよかったと思ってます。」

 

黒服「…!」

 

想「ここに来てから、色んな人と出会えました。リサ達やガールズバンドのみんな、黒服さん達が…サポートだってそうです。黒服さん達がいなければもっと早くに死んでたかもしれないし、彼女達にもこころから励まされました。だから…」

 

 

想「ありがとうございました」

 

サムズアップをしながら笑顔で答える彼、その瞳には、綺麗なくらいに迷いがなかった。

 

黒服「…!!」

 

黒服も初めて、サムズアップをする。それを満足気に見た八意は黒服の前に立つ

 

 

想「じゃあ見ててください…俺の、変身」

 

俺はすっかり慣れてしまった動作で、腰からベルトを出し、構える。

 

もう心には殺意も憎しみも何も無い。ただ、みんなが平和に過ごせますように、そう願う心が、俺を平常心にする。

 

想「…!」

 

構え、ベルトの横のスイッチを稼働させる。瞬間、ベルトに金の装飾がつき、全身に力が漲る。

 

 

足から姿が変わっていく。

 

 

吹雪の中、黒服はそれを見守る。拳銃も抜かずに、祈りを込めて

 

体が変わっていく。黒と金に覆われ、全身が刺々しくなっていく。

 

 

想「…」

 

ひときわ高い音を立てて、顔まで覆っていき、変身が完了する。ただ無言で、それを見る。

 

静かにこちらを見てくる。その目は…

 

 

___いつも通りの赤だった

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

黒服が何かを言う前に、奥へ走り去っていく。黒服は、目から浮かぶ涙を、いつも付けていたサングラスを取り拭いながら…

 

黒服「いってらっしゃいませ…どうか、ご無事で…」

 

と言った。

 

_________________________

 

〜高速道路〜

 

リサ「ほんと誰もいないね…」

 

気を紛らわすために窓から景色を覗くが…誰も、何も無かった。

 

はぐみ「あ!タイヤの跡がある!」

 

はぐみが道路を指さし叫ぶ。その場所を見れば、2つ、並ぶように走った跡があった

 

殆どが雪で埋もれてきえかけているが…

 

沙綾(一体どこまで行ったの…彼は…)

全員は尽きない不安を隠せずに、場所へ向かった

 

_________________________

 

〜九郎ヶ岳〜

 

想「…」

 

しばらく走ると、1番開けた場所に来た。如何にも決戦場所だ。始めてくる場所なのに、それを感じさせない。それは____アイツがいるからか…

 

ダグバ「…なれたんだね、究極の…力を持つものに」

 

まるで待ち望んでいたいたかのように弾んだ声。俺はただ、無言でその場にたった。

 

___相手が、白の化け物に変わる

 

 

なんの一言もなく、互いを見つめ合う。

 

 

ダグバが、右手を差しのべ、俺に手を伸ばす。

 

想「…っ!」

 

途端に体が炎に包まれるが、黒の金よりかはましだ。だが皮膚が焼ける感触は未だある。だが俺は歩くのを辞めない…

 

ダグバ『僕と同じに…』

 

その時、ダグバの言葉が脳裏を過った。あいつと同じなら、俺もできるはずだ。俺はダグバと同じ動作を行う

 

ダグバ「…!?」

 

___ダグバが炎に包まれる。

 

___互いは吹雪の中、燃えながら距離を詰める

 

徒歩が、走りに変わる

 

想「はぁっ…!」

 

ダグバ「やぁっ…!」

 

互いに鋭い気合いを込めて胸部を殴りつける

 

 

___白い景色に、赤の模様を描きながら2人は倒れる

 

 

_______最後の戦いが、幕を開けた

 

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