笑顔をつくる物語   作:エヌラス

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page106 悲壮の拳

〜九郎ヶ岳〜

 

想「ぐっ…!」

 

ダグバ「っ!」

 

互いに白い世界に赤を描きながら、互いに倒れる。だが2人ともすぐに立ち上がる。次の一撃を入れるため…

 

想「ぐっ…うぅああああぁぁぁ!!」

 

俺は、最初の一撃を打ち込んだ瞬間、右腕の骨が粉々に砕けたのを感じた。腕に激痛が走り、喚きかける。

 

想「ぐぅ…あぁ…うぅ…!」

 

だが次に起こったのは、自然の摂理に反した回復能力。それを使い右腕を治すが、それにも激痛が走る。

 

想「はぁ…はぁ…」

 

つまり、相手に一撃を入れる度、硬い装甲を壊し、内側にダメージを入れるには

 

____これを繰り返さなければならない

 

ダグバ「ふっ…!」

 

想「おぐっ…」

 

俺に早く立ち上がったダグバは俺の頭を掴み、殴り飛ばした。再び転がる俺、今度は頭蓋骨が砕ける

 

想「!?」

 

だが脳みそまではいかず、骨を再生する。そのまま追い打ちを入れようとしたダグバの腕を掴み、拳を打ち込み、胸骨を砕き、一撃をいれる

 

ダグバ「っ!?」

 

想「ぐっ……うぅ…!」

 

また繰り返す現象。結局好きになれなかったこの人を殴る感触。それが続く

 

ダグバ「はぁっ!」

 

想「ぐぅぅ…!」

 

ダグバが俺の胸辺りを殴り、俺は後ろによろめく。さらなる一撃を入れようと走り出したダグバを目掛け…だが

 

想「はぁ…!」

 

今度は俺がふらつきながらも腹部に蹴りを入れる。血飛沫がまるで華のようだ

 

想「ぐぅ…!」

 

ダグバ「あははっ!」

 

俺に拳が2発打ち込まれ、血を出しながら呻く。だが俺も負けずに、拳を入れ、相手を殺すためにまた殴る

 

想「はぁっ!」

 

__________また殴る

 

 

ダグバ「あははははぁっ!」

 

 

__________殴られる

 

 

それをただひたすら、馬鹿みたいに繰り返す。雪景色がどんどん染まっていく。

 

 

白き悪魔は笑いながら壊すために…

 

黒き化身は守るために…

 

_________________________

 

〜高速道路〜

 

黒服「あともう少しで長野県です、皆様準備を」

 

運転手をしていた黒服が、カーナビを見ながら指示を出す。

 

美咲「結局人…いませんでしたね…」

 

友希那「こんな事態だから…仕方ないのかもしれないわ…」

 

あこ「まさか…全滅してる場所があるとか…」

 

巴「あこ!不吉なことを…」

 

紗夜「無いとは…言えないわ。だって約2日で20万の死者を出したのよ?当然村の1つや2つ…なくなったって…」

 

リサ「あー、もう!やめよこの話!」

 

リサがやってられないとばかりに頭を掻きながら叫ぶ。それに全員がビックリする。

 

モカ「後ろばっか見て後ろ向いてても何も変わらないしね〜、彼だっていつも前見てたんだから」

 

花音「大丈夫…かな?」

 

薫「花音、心配することは無い。彼は…負けない」

 

千聖「たまにはまともなことを言うのね…」

 

燐子「信じるしか…ありません。」

 

_________________________

 

〜九郎ヶ岳〜

 

想「おぉ…!」

 

ダグバ「はははっ!」

 

互いに雪に埋もれながら殴り合う。時に俺が上に馬乗りになりただひたすら殴る

 

時にダグバが俺の腕をへし折りみぞおちに蹴りを入れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

想「はぁ…はぁ…」

 

ダグバ「楽しいね…はぁ…はぁ…あははっ」

 

今どれ位の時間が経ったのだろう。もはや痛覚すら無くなってしまったに等しい。寒さなどとっくの昔に消えてしまった。

 

想「はぁ…はぁ、」

 

凄まじい音を立て再生した右腕を見やる。相手も右腕を再生させたのか笑い声を上げる。

 

想「おぉぉああああ…!」

 

ダグバ「はああああ!」

 

俺は右腕を上げ、殴り掛かる。だがそれより一瞬早く放たれたダグバの拳が

 

_____バキッと音を立てて俺の腹、霊石アマダムをほぼ全壊にさせた。ヒビ割れが酷くなり、もう潰れていると言っても過言では無い。

 

想「くぅ…ぐぁ…!__あぁ!」

 

今まで味わった痛みを遥かに凌駕した痛みが俺を襲う。全身の血液が沸騰しているかのような熱。神経系全てに直接入った痛み。今すぐ雪に全身を埋めたい。だがそれらを堪え、拳を放つ

 

ダグバ「ぐぅ…!」

 

____だがその拳は、ダグバのベルトをヒビ割れさせ、ほぼ全壊にした。

 

互いに腹を抑えながら後ろに下がる。相手も同じくらいの痛みを体に感じているはずなのに相変わらず笑っている、心底狂気じみている。理解できない

 

想「…っ!」

 

俺たちは互いに掴み合い、その身を雪に叩きつけた

 

_________________________

 

〜九郎ヶ岳付近〜

 

黒服「…!」

 

バスが急ブレーキをかけて止める。それに全員揺られ、一体何事かと前に詰寄る

 

黒服「雪が酷すぎてここから先はバスでは行けません…!」

 

悔しそうに絞られた声。全員が今度こそ諦めかけた時だった

 

彩「いや、まだ大丈夫だよ。歩けば…行けるはず…」

 

蘭「本気で言ってるの?」

 

彩「え…?」

 

蘭「外、めちゃくちゃ寒いから多分私たちじゃすぐに死ぬ…」

 

確かに、蘭の言っていることは正しい。この異常気象、凍える寒さ、だがここまで来て諦める訳には行かない

 

有咲「それでも、行くしかねーだろ…」

 

蘭「市ヶ谷さん?」

 

有咲「あいつはそん中戦ってんだ。歩くくらい、私たちならできるだろ…__だぁ〜!恥ずかしいな!」

 

香澄「有咲…!うん、行こう!」

 

美咲「ま、ミッシェルで登山よりかはましか…」

 

燐子「はい…行きましょう…」

 

互いに励まし合い、共に手を取り進んで行く。これが素晴らしい人間の光景なのだ

 

 

 

 

 

 

 

〜10分後〜

 

有咲「寒すぎだろぉぉぉぉぉぉ!あと足が…!」

 

有咲の絶叫が山中に響き渡る。歩き始めてから約10分、雪に足を取られるせいで体力を余計に使うのか運動できる組さえ少し息が上がっている

 

美咲「ちょ…思ってたより…キツい…」

 

燐子「はぁ…はぁ……」

 

紗夜「大丈夫ですか…?白金さん…」

 

はぐみ「まだまだ〜…!」

 

それに寒さが加わり、流石にキツい。これ以上は命に関わってしまいそうな人もいるため、一旦引き上げようとした時だった

 

つぐみ「あ、あれ!」

 

つぐみが雪景色の先を指さす、強い吹雪で見えにくいが意識すればうっすらうっすらと見え…

 

蘭「あ…あれ…!」

 

流石の蘭も叫ぶ。そこには、トライチェイサー。そしてビートチェイサー、そして…

 

黒服1「…。」

 

1人、そこに立つ黒服だった。全員なにかに押されるように走り出す。立っていた黒服に詰め寄り、話しかける

 

リサ「想くんは…!?」

 

黒服1「もう…行かれました。全てを終わらせるために、凄まじき戦士となって…」

 

黒服2「究極の闇をもたらす者には…!?」

 

全員「…!」

 

そうだ。凄まじき戦士になれば、究極の闇をもたらす者になり、全てを破壊してしまう。もしそれになっていれば取り返しがつかないことになる。それだけは避けなければ

 

黒服1「いえ、なってはいません…」

 

だが元から居た黒服からは、想像と全く違うことを言われた

 

黒服2「どうゆう事だ…!?」

 

黒服1「私が見た目の色は…いつも通りの赤でした。」

 

それに全員が驚き、涙をうかべる人物もいた

 

あこ「伝説を塗り替えたんだ…!想兄は!」

 

いつものあこの厨二病が入った言葉も、今では何故かしっくりくる。

 

友希那「彼らしいわね…、皆を守る為に伝説を塗り替えるなんて」

 

リサ「ほんと、すごいよ…」

 

美咲「さて、迎えに行きますか。多分…彼すごい傷おってますよ…」

 

苦笑いしながらさらに奥を指さす美咲。全員がそれに少し笑う。

 

燐子「ですね…早く行きましょう…」

 

日菜「よぉーしっ!早く行って!帰ろう!」

 

頷き、また再び歩き出す。

 

黒服1「…」

 

黒服2「…」

 

2人は互いに見つめ、微笑む。

 

 

_________________________

 

〜九郎ヶ岳・決戦場〜

 

彼女達が思っていたよりも、その場は地獄だった。ただひたすら交互に殴り合い、どちらかが先に倒れるかを競い合ってるのと同じだった

 

想「おぁ…!」

 

ダグバ「あはぁっ!」

 

俺はもう人間にもどっていたダグバの頬を、思い切り殴り飛ばす。

 

ダグバ「あははぁっ!」

 

想「ぐふっ!」

 

ダグバからの拳が、変身が解け、人間になっている俺の頬にあたる、俺は口から血を吐きうしろに倒れかける。当たりは吹雪でも覆えない速度で赤色が染められていった。

 

____そして、互いのベルトの破片がそこら中に散らばっていた。

 

互いに既に心臓より重要なベルトを失って生きているのか。執念か、奇跡か…

 

だが既に、もう戦いの意味はなかった。

 

 

 

 

_____もう、どっちも生き残ることはないのだから

 

 

 

 

 

想「うっ…ぐぅ…」

 

なんのためにこんなことをやっているのだろうか。一体この拳が何になるのだろうか。なぜ大昔、人間とグロンギで別れてしまったのか、なぜ互いに滅ぼし会おうとするのか。

 

俺は気づけば泣きながら拳を振るっていた。なんの意味もない暴力の悲しさからか、痛みからか、もうそのようなまともな考え方は既に消えてしまっていた

 

ダグバ「あはは…!あはははっ!」

 

思い切り振りかぶった拳を俺はまた頬に受ける。からっけつの血がさらに無くなり、意識が掠れていく。

 

想「うぅあっ!」

 

ふらつく視界のまま俺は拳を振るう。握力があるのかないのか、それすら分からない。

 

ダグバ「あはははっ!あはははっ!ははは!」

 

想「うぅ…!あぁ……」

 

____一方が笑い

 

 

____一方が涙を流し

 

 

互いに譲れねものを背負い戦う。だがそれももう終わる。次の一撃が、互いの残り少ない寿命を、根こそぎ刈り取るからだ。

 

想「おぉぉっ!」

 

ダグバ「あはははははぁっ!」

 

互いに大きく振りかぶり、拳を構える。互いの頬をめがけ、命を刈り取り、勝者を決めるために…

 

ダグバ「ゴフッ…!」

 

ダグバの頬に拳が打ち込まれ、残りの血をを全て吐いた。

 

想「はぁ…はぁ…」

 

だがダグバが放った拳は、ギリギリ想の頬を掠めた場所で止まっていた。

 

ダグバ「…」

 

後ろに倒れたダグバは、1度笑ってから、二度と目覚めることはなかった。

 

想「…はぁ、勝った……でも俺も…ダメみたいだわ…」

 

誰もいない場所で1人笑い、その場に倒れ込む。もうほとんど目が見えていない。身体の感覚がうっすらと消えていくのがわかる。

 

____あぁ…これが死か…

 

俺はここで、1人で死ぬ、誰にもみられずに…

 

想「…?」

 

だがその願いも、今打ち壊された。大人数の足音がこちらに来る。

 

黒服1「八意様!…っ、0号!」

 

黒服2「大丈夫です、死んでます……」

 

想「黒服…さん…?」

 

リサ「想くん!想くん!」

 

黒服1「あそこに散らばってるのは…ベルトの破片…!___まさか…」

 

想「ごめんな…リサ、俺…お前との…約束…破りそうだわ…」

 

リサ「…え?」

 

想「黒服さんなら…分かりますよね…ベルトが、壊れてしまったら…どうなるか…」

 

黒服は目を見開き、呟いた

 

黒服1「命を…落とす…」

 

リサ「そんな…」

 

美咲「嘘でしょ…」

 

つぐみ「…」

 

あっちこっちからへたり込む音が聞こえ、俺は弱々しく苦笑する

 

想「なんだ…全員来てたのか…俺もこれだけの、人数に、…見送られるとは…幸せ者だな…」

 

俺の頬を、暖かい雫があたる。きっと、泣いてくれているのだろう。まさかここまで幸せな死が来るなんて、想像すらしていなかった。

 

リサ「嘘つき…」

 

想「…ごめん…」

 

沙綾「ちゃんと生きてよ…!新作パン食べてよ…!」

 

想「…ごめんな」

 

美咲「生きてくださいよ…!私まだあなたに伝えたいこと、話したいこと沢山あるんですよ?」

 

つぐみ「私も…沢山伝えたいことがあるんです…」

 

薫「…ここで生命を散らしてはいけない…まだ沢山のお姫様達が待ってる…」

 

たえ「オッちゃん…まだ見てもらってないよ…?」

 

想「うぅ…ごめん、みんなほんと、ごめんなぁ…」

 

リサ「こんなので平和を貰っても、私たちいらないよ!平和になった世界で…みんなのライブ見に来てよ…!遊びに来てよ…!」

 

俺は涙が溢れ出る。約束を破る情けなさに、もっと行きたいという願いに、死にたくないと初めて思った。

 

想「皆…今まで色々迷惑かけて、悪かった」

 

リサ「誰も迷惑だなんて思ってないよ…!お願いだから死ぬのはやめて!」

 

こころ「死なないで…想…!」

 

美咲「こころ…」

 

見ればあのこころでさえ涙を流し、想には死んで欲しくないとそう訴えていた

 

想「よかった…じゃあ、俺…いくわ…。あんまり……はやく……来たら……押し返すからな……」

 

全員から涙が溢れ、一部の者は大号泣していた。

 

リサ「いやだっ!いやだよぉ…!」

 

想「俺の……代わりに……この平和な……世界で生きろ……」

 

美咲「やめてくださいよ!そんな事言わないで…!」

 

想「ちゃんと……学校いって…彼氏作って、結婚して………家族つくっ…て……、幸せにな……」

 

俺は震える手を伸ばし、泣きじゃくるリサの頭を撫でた。

 

想「…あ……りが………とう………」

 

虚ろな目がリサ立ちを捉え、その僅かな輝きさえも消えてしまう。

 

__全員が泣きじゃくった。

 

リサ「わぁぁぁぁん!ああああああっ!」

 

ダグバがもたらしていた吹雪が止んだ。だがそれを彼女達は喜べなかった。

 

 

 

_________________________

 

想『…』

 

俺は白い世界に立っていた。そうか、死んだのかと思いながら歩き出そうとした時だった。後ろから懐かしい声がした

 

一条『八意!』

 

想『一条さん…!』

 

一条『…終わったな』

 

想『はい…おわりました』

 

一条『…そうか、じゃあ行こう。』

 

想『はい、そういえば…』

 

2人はまるであの時のように、笑いあって

 

 

白い世界の彼方へ消えた






大丈夫です。ちゃんと生存ルート作ります。その後に生存ルートでその後や恋愛などをぼちぼちと…





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