笑顔をつくる物語   作:エヌラス

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お久しぶりです!!



page17.後悔の雨

 

 

「……」

 

雨が降り続けるこの町で、八意想は1人ビートチェイサーを走らせていた。今日は珍しくcircleに寄っていくというRoseliaのメンバーのLimeを見ており何となく予定は把握していたし、態々俺が出向くほど過保護って訳でもない。

 

だが、その出向く程では無かったはずの予定が総狂いしたのは、リサから届いたひとつのメッセージだった。

 

『circle前で倒れてる男の人いた!!想君も来て!』

 

それだけの一文、だが俺を動かすには充分すぎる文章だった。すぐさま外着に着替えて扉を開けてて――――雨だったので1度家に戻り雨装備を装着。ビートチェイサーに跨ってひた走る。

 

とりあえず途中のドラッグストアで手当できそうなものをあらかた放り込んでいた。それと同時に警戒心も高める。

 

(circleで迷い人って大概訳ありもしくは……)

 

こればかりは俺も思い上がりだと思ってるんだけど、俺に何かしら用事がある人間だ。クソ親父と言いグロンギといい、とりあえずなんかcircleに来る。

 

グロンギは絶滅した、だが新しく現れたアンノウンという奴ら。もし俺のことを知り尽くそうとするならば、circleに来るのも妥当な事だ。

 

その時は俺の全力を持って排除にあたろう。そう考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジで行き倒れだったのか……?」

 

アンノウン関連では無いということが分かったのは、俺がcircleに入ってすぐに分かった。リサ達に囲まれて客用のソファに寝かされていたのは一人の男だった。

 

(なんだ……コイツ、初めて見る顔だが……どこかで見たことがある気がするな)

 

心の中で募る不信感を頭を振り拭う。とりあえずパッと見怪我とか無さそうなんで絆創膏とかは保存。

 

「八意さん、貴方……」

 

俺が机の上に置いた袋の中身を見た紗夜が、一瞬にして怪訝そうな顔を向ける。その理由がわかった俺は紗夜から目を逸らしつつ弁明しようとする。

 

「いや、それは……なんか、もしけが人とかだったら……」

 

「だからってなんで牛乳とあんぱんなんて……これじゃ刑事の張り込みと変わりませんよ??」

 

「いや、なんかさ……行き倒れとかしてたら腹も減ってるだろうし……」

 

「それとこの包帯とか絆創膏とか過剰なくらい買ってきて……無駄遣いもいい所ですよ……!」

 

「すまん……この身体になってから長らく傷の手当なんてあんまりしてこなかったからさ。どういう感じがいいのか、もうわかんなくてよ…」

 

「……それは、いえ、すいません」

 

俺の言葉に返せなかった紗夜が俯きつつ謝る。俺はすぐさま首を横に振って「大丈夫」とだけ伝えた。

 

「最悪大怪我だったら包帯ぐるぐるでミイラにして病院まで突き出せ――――――グエッ!!!!」

 

俺が自慢げにそう言う途中でどこぞのチョコボールのキャラのような悲鳴を出したのは、紗夜が絆創膏の箱の角が当たるようにぶん投げてきたからだ。俺の頭にクリーンヒット。

 

いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ごめんなさい。

 

 

 

誰もいないところで1人呟く。

 

 

 

騙してごめんなさい。

 

 

誰も聞いていないのは知っている。だけど謝りたい

 

 

殺してごめんなさい。

 

 

化け物だったから、なんて言い訳にならない。殺したんだ、この手で。斬り殺して、蹴り殺したんだ

 

守れると思った。この呪いのような物でも、誰かの居場所を守るために、誰かの命を守る為に。

 

だけどそれはどこまでいっても綺麗事で、薄いガラスのようなものの地面で踊っているようなものだった。

 

「やめてくれ……っ」

 

無数の声が聞こえる、見知った声、大切な人の声。みんながみんな、俺を虐げる。

 

「いやだっ…もう…!!」

 

聞こえる。ひたすらに聞こえる。耳を塞ぐ。聞こえる。

 

「づぁ…っ!!あああぁっ!!!」

 

指をねじ込み鼓膜を潰す。それでも消えてくれない。頭の中に直接響く。

 

ならばもう…………いっその事ここで死んでやれば――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、大丈夫か??」

 

「う、うわぁぁぁぁぁっ!!!……あぁっ!!」

 

夢の中のようなところで頭を潰そうとした次の瞬間、声が聞こえ意識がはっきりと現実に戻された。右手を伸ばし何かを掴み、盛大に起き上がる翔一。

 

「やっと起きたか、お前。すごいうなされてたぞ」

 

目の前の男性が、翔一に頭を鷲掴みにされながら外を見ていた。

 

「あ、貴方…は?それにここは……」

 

次第に息が落ち着きを取り戻し、色々と疑問が先に浮かび始める。

 

「circleってこと。ライブハウスだよライブハウス。それに俺はただの大学生。友達がcircle前で倒れてる君を見つけてここに運んだ、目が覚めるまで俺が見てたってことだ」

 

「え……あ……」

 

色々と混乱し、感謝の言葉すら出てこなくなる翔一。目の前の青年は落ち着いた様子でこちらを見る。

 

「とりあえず頭離してくんね?色々と聞きたいことはあるだろうし俺も別に逃げはしねーからさ、夜は遅いしアイツらには帰ってもらった。あの人からcircleの鍵も渡されたし今は俺と君しかいねーよ」

 

落ち着いた目でこちらを捉え、青年が最初に言ったのはその言葉だった。

 

「……すいません」

 

八意想と津上翔一。2人がまともに会話をしたのは、これが初めてだった。

 

 

――――――――――――――――

 

 

「サイズ合ってるか?」

 

「はい……」

 

「よく見れば擦り傷とかあんじゃねぇか、そんな傷だからって放置してたら危ないだろうがよ。ほら腕貸せ」

 

とりあえずボロボロの服もなんだからと、そこら辺で見繕ってきた服を着せられる翔一。その途中腕などにある傷が見えたのか、青年はそう言ってほれほれと手招きする。

 

「でも…」

 

「それとも警察とか病院の方が良かったか?お前なんとなく訳ありっぽそうだっから敢えて呼ばなかったんだけど……余計なお世話だったか??」

 

「いえ……」

 

そう言われれば従うしかあるまい、翔一は諦めて大人しく座り青年の介抱を受ける。

 

「んしょ……あれ、こうだっけな」

 

「…………」

 

青年の介抱はやってもらってる立場から言うのもなんだがお世辞にも上手いとは言えなかった。だが今はこの優しさが翔一の心に染みていく。

 

「っと、とりあえず終わりだな。次は、ほらこれ」

 

一先ず絆創膏などを貼られ一通りの傷は隠せた翔一、青年はそんな翔一を満足そうに見てから袋を漁り、中身を翔一に押し付けてきた。

 

「あんぱんと……牛乳?」

 

「おうよ、腹減ってんだろ?」

 

「……いえ、今は」

 

「そうか、まぁ持っとけよ。もしかしたら食いたくなるかもしれないしな」

 

「ありがとうございます……」

 

俯く翔一とは対照的に、青年は寛ぐように上を向いた。circleの照明はほぼ消され自分達のいるところだけ電気が付いていた。

 

「げっ……、雨さっきよりキツくなってる。こりゃここで朝方まで待機かなぁ」

 

「……どうして」

 

「……ん?」

 

「どうして、僕の事を助けてくれたんですか?」

恐らくcircleという施設の物である鍵を手でくるくるさせながら呟く青年に、ふと津上翔一が尋ねた。同時にあまりにも捻くれた質問を出してしまった自分自身を嫌悪する。

 

「どうしてって言われてもな、それは俺に聞いても仕方ねぇよ。アイツらに聞かねぇと」

 

「じゃあ貴方なら助けてくれなかったんです?」

 

「いや、助けてるよ。理由はともかく……倒れてる人を見殺しには出来ない」

 

「そうですか……」

 

「……ああ、それは君も同じだろ?目の前で人が倒れてば助ける。俺の勘だけど君はそんな人間な気がする」

 

「……僕はそんな人間なんかじゃないですよ、大切な人を振り回して、傷つけるような人間ですよ。そんな人間が人助けだなんて……」

 

「……そうか、君」

 

「……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大事な人を、自分の手で傷つけたのか」

 

青年がそう口から言葉を放つのと

 

 

 

「ッッ!!!!」

 

 

 

翔一がその青年を押し倒し、睨み付けたのは――――同時の出来事だった。

 

 

 

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